【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~ 作:不破ふわる
俺達の出番って、いったいどういう事だ?
俺はここでヨシノリ君相手にそれっぽい苦しみを艶やかに演出するだけで良かった筈。
打ち合わせと違いますよ監督! 今回はここで囚われのお姫様をする予定だったじゃないですか!
『エイ、外では今BIGコンテンツが開催されています。人外二体による矮小な人間の取り合いです。しかもその人間も偽りの記憶に縋る愚か者ときました。共依存NTR百合ですよ! これは一発目から素晴らしいものを提供してくれましたねぇ!』
『そうですね。心底、ここで幽閉されていて良かったと思っています』
『本当にそうでしょうか?』
『はい』
『実はあのコンテンツに混ざりたくて仕方が無いのでは?』
『いいえ』
『実はあのコンテンツに混ざりたくて仕方が無いのでは?』
『いい『実はあのコンテンツに混ざりたくて仕方が無いのでは?』……はい』
『ですよねぇ!』
選択肢が俺には無かったようだ。
俺はここでダブルコンテンツシステムを使用しているだけで体が限界だというのに。
というかセナノちゃんはどうなってんだよアレ。
こういう時に俺を守ってくれるんじゃなかったのか? なんで一方その頃みたいなノリで謎空間に閉じ込められているんだよ!
何故か春目ルウちゃんもいるし、ヨシノリ君もいるし。
もう誰でもいいからあの怪獣倒してくれよ。俺には流石に手に余るよあの怪獣。
『エイ、翼と嘴ならどっちが良いですか?』
『久しぶりに変な選択肢だなぁ』
『安心してください。出てくるのは同じモノです。大きすぎるので一部しかこの世界に出てこれないだけですよ』
『どこに安心する要素あった?』
ソラの言葉をそのまま受け取るなら、海にいる怪獣よりもデカいやべえもんを出そうとしているという事になる。
君、張り合おうとしてない?
「おい、大丈夫か?」
「……ええ、大丈夫ですよ」
おっと、俺の葛藤が表に出てしまったようだ。
ヨシノリ君に余計な心配をさせてしまった。
『エイ、外で何かを感知した演技』
『はい』
俺は目隠しをしたまま、真っ直ぐにある方向を見る。
その方向には海があり、現在大怪獣バトルが繰り広げられていた。
「どうかしたのか」
「古の怪物が解き放たれてしまいました。これは……潮哭ノ巫女?」
これで、合ってますか監督。
「外で何か起こっているのか? ここからじゃ外の音が遮断されているから何もわからないな。……少し様子を見てくるから、エイちゃんは待っていてくれ」
「ヨシノリさん、待ってください。外は危険で――」
俺が止めようとしたその時、テントが勢いよく開けられた。
目隠しをされているが、俺は今ダブルコンテンツシステムのおかげでテントを開けた人物がはっきりとわかる。意地悪な黒服だ。
その瞬間、俺はソラの言っていたことが理解できた。
出番と言うのはこういう事だったのか。
黒服はあの怪獣達を倒して欲しいのだろう。
「っ!?」
「――お前、何故A-E1の口を自由にしている!?」
「……何か言いたそうにしていたので、現場判断で口だけ解放しました」
マズイ、このままだとヨシノリ君が上司に理不尽な説教をされてしまう。
ここは俺が動かねば!
「私がお願いしたんです! 外で何か大きな力が働いている気がして、どうしても確認をして欲しくなって」
いますよね? 海にでっけえでっけえ化け物が。
ちなみにこのままだともう一体出てきますよ。
「この遮断構文でも外の事を知覚できるだと……!? いや、今は好都合だ。説明の手間が省けたと考えるべきでしょう」
こっちはそれを感知出来ているのだとアピールすることで、何とか意識を俺に向けることが出来た。
黒服は俺の目隠しを外す。他の拘束具を付けたままなのは、まだ警戒しているからだろう。
良い警戒心だ。お前の背後で御空様がポップコーンをムシャムシャしているがな。
『ムシャムシャ^^』
『いいなぁ』
『エイにもあげますよ。これを人間が食べると雲に乗ることが出来るんですよ』
『マジ!? たまにはまともに心が躍るもの出してくれるんだねぇ!』
『まあ次第に雲と体が同化して、最後には小さな雲になりますけどね』
『絶対に食べないよ俺』
メリットとデメリットが釣り合ってなさすぎるだろ。
流石に死因が雲化は嫌ですよ監督。
「察しの通り、今湾口にて二体の異縁存在が争っています。このままでは周辺の街にまで被害が及ぶでしょう。……ですから、貴女の力が必要です」
「これは海の意志です。私が介入することは許されないでしょう。皆さんを逃がすだけなら可能ですが、恐らく貴方が望んでいるのはその先ですよね?」
「なっ……!?」
俺が断ると思っていなかったのだろう。
黒服は意外そうな声を上げながら、俺を睨みつけた。
弱いぞ黒服。
その程度じゃ俺は動かない。もっと「仕方が無いですねぇ」と思わせるような何かを提示するんだ。
そんな簡単にホイホイついて行くわけないだろ。
俺はたまたまセナノちゃんの善性に従っている世間知らずの巫女様♂だぞ。
「何を言っているのですか、貴女は! このままでは被害が及ぶと言っているでしょう!? いいからいう事を聞いてくれ!」
「空と海の争いは許される事ではありません。それでは世界の均衡が保てなくなってしまいます」
「いいから、我々の指示に従えA-E1!」
「きゃっ」
肩を掴まれ、俺は悲鳴を上げる。
ソラのポップコーンを食べる手が加速しているので、きっとこれで良いのだろう。
「空澱大人は人類のための異縁存在なんでしょう? だったらここで役に立ってくださいよ……! あの超巨大異縁存在を処理すれば、シオマネキはこちらで何とかしますから! ねえ!」
「う、痛……」
「おい離せよお前! エイちゃんに何をやってんだ!」
ヨシノリ君が黒服を羽交い締めにして、俺から引き離す。
俺は黒服の次の台詞を待って「うぅ」とうめくだけにとどめる事にした。
「うぅっ……(迫真)」
「お前のような小娘如き、いつでも殺す事が出来たんですよ! それでも生かしているのは我々の慈悲に他ならないっ!」
焦った様子の黒服は、目をむき出しにして口の端から泡を飛ばしながら叫んだ。
まああんなのが出たらそりゃ必死になるだろう。
だからこそ、冷静に折津エイの弱点を思い出すんだ!
頑張れ黒服! お前ならいやらしいカスみたいな脅しを思いつくはずだ!
「なんと言われようと、私は……」
「この期に及んで貴様……ああ、そうだ」
お、黒服もしかして思い出したか?
エイ説得チャンス来たか?
「お前はまともな思考が出来ないようですねA-E1!」
相変わらずヨシノリ君に完全に押さえつけられたまま、黒服は意気揚々と俺に向けて言葉をぶつける。
ほぼ錯乱状態の彼は、折津エイにとって弱点とも言える名を感情のままに口にした。
「ここで我々に逆らえば、それを口実に三鎌縁者と引き離すことだってできるんですよ!? それにあの異縁存在に三鎌縁者が殺される可能性だってある!」
「……それ、は」
「いいのですか!? 三鎌縁者の監視下にあったA-E1は有事の際に協力を拒否。この報告だけで貴女達の関係は破壊できるのですよ!」
百点満点だ、黒服!
御覧、空も喜んでいるよ。
『キャッキャッ』
キャッキャッ。
『でも勝手にエイの肩をイタイイタイしたので、後でお前は殺します。既にお前の親族は全員、空の下です』
ヒエッ。
ソラが黒服を覗き込みながら、真顔でそう告げていた。
彼は相変わらず見えていないので、俺が固まった理由を自分の言葉が効いたからだと思っているのだろう。
黒服ごめん……お前を救えなかった……。
「A-E1。、これでもまだ逆らいますか?」
「…………わかり、ました」
「エイちゃん駄目だ!」
「良いんです、ヨシノリさん」
俺は口元だけは笑みを浮かべて頷く。
可哀そうにきっと目隠しの下は涙を浮かべているんだな……。
そして俺は、黒服の願いに応えるように告げた。
「協力します」
『では、出撃申請書類はこっちで作っておきますね!』
『サービスが行き届いているなぁ』
【極秘緊急投入申請】
文書番号:EMG-EN-THEOS-01016
機密区分:最上位機密/縁首決裁案件
提出先:縁首・副縁首・縁理局長・^^
提出者:縺昴i縺ョ繧医$縺昴→
提出時刻:西暦20██年10月██日 ██:██
■件名
A-E1投入許可申請
■現状況
シオマネキが制御限界を超過し、封応値は観測上限を突破し計測不能。
黒海内部にて災主級異縁存在 「海喰尊(EN-Ψ-6218-JP)」 の構造反応を確認。
現在、シオマネキと海喰尊が相互干渉状態へ移行しており、双方の異常構造が急速に拡大している。
本状態を放置した場合、造海領域全域が完全遷海へ移行する可能性が極めて高い。
■申請内容
特別管理対象『A-E1』を現地へ投入することを申請する。
投入目的は以下の通り。
・シオマネキの停止。
・海喰尊との異常共鳴の遮断。
・災主級異縁現象の終息。
ただし、A-E1未投入時の被害は上記を大幅に上回ると判断する。
■備考
本件は『計縁構想運用規程 第零条』に基づく緊急措置とする。
承認を待たず、拒否命令が確認されない限り投入準備を開始する。
以上。