【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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久しぶり、元気してた?

所でさ、今度うちの村でお祭りやるんだけど来ない?^^


第18話 見送るのもヒロインの務め

 俺は悪くねえ!

 監督がやれって言ったんだ!

 電子レンジを壊せって!

 

 そうした方が、結果が良くなるからって……!

 

『機械とかいう精密さだけが取り柄のガラクタに頼る人間は可愛いですね。あんなもの、少し空白を作り出してやればすぐに壊れてしまうというのに……。こんなもので発展しようとするは……ふふ、愛おしい』

『……ほ、本当に壊して良かったの?』

『はい。これでお出かけの口実とエイの無垢かつ無知であることを強調できます』

『でも、あれきっと高いやつだよ? セナノちゃんが可哀そうじゃない?』

『エイ、貴女にはこの言葉を送りましょう。――可哀そうは、可愛い』

『限度があると思うんですけど!』

『それは私が決める事です。貴女は貴女の役割を果たしてください。今の貴女は可愛い女の子です。その距離感で人間の思考を破壊し、翌朝には男になって怖がらせましょう!』

『ウィッス』

 

 すまねえセナノちゃん。

 俺はソラの傀儡みてえなもんなんだ。

 イエスマンに意思は存在しねえ!

 

「コンビニに行くだけなのに、そんなに楽しいの?」

「はい!」

 

 俺達は今、朝ご飯の為にコンビニに向かっていた。 

 

 薄暗い道を、スチームパンクを感じさせる街灯が照らす様はあまりにも俺にクリーンヒットしている。

 唯一の不満点と言えば、ソラが少し離れた場所からじっと見つめているホラー演出だろうか。

 俺にしか見えない彼女は、今は俺とセナノちゃんのコンテンツを満喫しているようで、腕を組んで頷いていた。

 後方腕組み上位存在っているんすねぇ。

 

『コンビニは良い文明ですね。美味しい物もあります』

 

 こういう都市内にもコンビニがあると知って少し感動している。

 

 なんかファンタジーな道具とか一緒に売ってないかなぁ。

 NARROWとか、1500円くらいで充電アダプタの隣にぶら下がってたりしない?

 

「もう、はしゃぐのは良いけど、あまり私から離れないでね」

 

 セナノちゃんは疲れた様子でそう言った。

 ごめんね……。

 

『今です。馬鹿みたいに距離を詰めてくっついて歩きなさい』

『ウィッス』

 

 俺はパタパタと駆け寄りセナノちゃんにぴったりとくっつく。

 セナノちゃんは突然の行動に驚き俺の顔を観察するようにまじまじと見つめてきた。

 

「急に何?」

「……離れないようにと言われたので。ふふ、私が幼い頃にはこうして母様にくっついて歩いたものです」

 

 俺は小首をかしげてそう返事をした。

 セナノちゃんの方が若干背が高いので、見上げる形でお目目ウルウル無垢美少女を演じる。

 チラリとソラを見れば、再び頷いている。

 

『良いです。こういった積み重ねが、コンテンツに深みを出すんですよ』

『そっすか』

『……興味が無いと? それは教育的天移が必要ですね』

『ひえっ、ご、ごめんなさい! マジ興味あります!』

『ならいいんです。怖がらせてごめんなさい。でも、怖がっているエイも可愛いですよ^^』

 

 勘弁してくれ。

 

「くっ、顔が良いのが余計に私を狂わせる……」

「? セナノさん、どうかしましたか?」

「なんでもないわ。私はエリートだから何でもないの」

「? わかりました」

 

 セナノちゃんはもうボロボロです。

 俺もついでにボロボロです。どうかここは一つ穏便に今日はコンビニイベントだけで済ませてくれませんかね。

 オイラ、朝から疲れちまったよ。

 

『うんうん、いいですねいいですね。このままこの人間にはエイを愛してもらえればより良いコンテンツになるのですが』

 

 なんか怖い事言ってるんだけど……。

 

「……止まって」

「?」

 

 セナノちゃんは唐突に足を止めた。

 まだ辺りにコンビニらしいものは見当たらない。

 

『お、接触してきますか』

 

 ソラはわかっているかのようにそう言った。

 しかし俺には何も教えてくれない。

 

「朝から見たくない制服を見ちゃったわね。縁理庁さん」

 

 間もなく、目の前の暗がりから一人の男が姿を現した。

 男は、深い夜のような色を基調として肩口には深紅のラインが一本走っている制服を着ている。

 彼は一目見ただけで、あやしいという言葉が脳裏に浮かんでしまうおかしな雰囲気を纏っていた。

 

「A階位縁者、三鎌セナノさんですね」

「一々確認取らなくていいわよ。どうせ見張ってたくせに」

「……セナノさん」

「大丈夫だから」

 

 俺が服の裾を強くつかんだことに気が付いたセナノちゃんは、安心させようとして頭を撫でてくれる。

 

 どうっすか監督!

 ……あっ、監督が「^^」って顔してる!

 お気に召したみたい!

 

『良いアドリブです。2天移ポイント』

 

 なぜ良い行いをして地獄に近づくことに……。

 

「三鎌セナノさん、貴女に緊急の依頼があります。これは貴女の昇級試験を兼ねたものです」

「それは随分と急な話ね。こっちは二回も任務でイレギュラー喰らってそういうのに疑心暗鬼になっているんだけど」

「……前回は、どうやら情報伝達に齟齬があったようで。申し訳ございません」

「齟齬ぉ? 何をどうしたら齟齬であんな高ランクの異縁存在と戦う事になるのよ!」

 

 詰め寄ろうとしたセナノちゃんだったが、俺の存在をすぐに思い出して踏みとどまる。

 そして冷静さを取り戻すように一度深呼吸をした。

 

「……まあいいわ、それで任務は」

「東北にある集合住宅にて発生した異縁存在を処理してもらいます。詳細はこの後データで送ります」

「そう。わかった」

「……セナノさん、もしかしてまた戦いに行くのですか?」

 

 セナノちゃん忙しすぎない?

 もしかして本当にエリートだったりする?

 

「大丈夫。ちゃっちゃと片付けて戻ってくるから。ねえ、この子の面倒を見るために誰かそっちから一人寄こしなさい。良識があって私と同じくらいにエリートなやつ」

 

 男はその言葉を聞いて、眉一つ動かさずに淡々と言葉を返した。

 

「ご心配には及びません。今回は縁者の初実地研修として折津エイさんに同行してもらいますので」

「えっ、わ、私ですか!?」

 

 俺の初任務って事は、ここから俺TUEEE伝説が始まる……?

 楽しみだなぁ!

 

「……ふざけた事言ってんじゃないわよ」

 

 セナノちゃん……?

 

「まだNARROWにすら触ったことがない、異縁存在の事も詳しく知らない。そんな子がいきなり実地研修? そんな訳ないでしょ。そんなの、この子にとっても国にとっても良くないわ!」

「ですが、これは決定です」

「知らないわよそんな事。この子を連れて行くって言うなら、私はその任務を受けないわ」

「ですが、せっかくの昇級試験ですよ?」

「別に構わないわ。私はエリートだから、しばらくしたらまた昇級試験を受けられる。一度機会を逃したから何よ。こっちは既に二回逃してんのよ!」

 

 セナノちゃんはさりげなく俺を庇うように前に立ち、そう宣言した。

 魂が主人公過ぎる。

 

「セナノさん……」

「……それが貴女の選択なのですね」

「ええ。気に入ってくれたかしら」

 

 男とセナノちゃんは暫しにらみ合う。

 俺は取り敢えずオロオロする演技をしながら事の成り行きを見守っていたが、やがて最初に動いたのは男の方であった。

 

「わかりました。私達の負けです。貴女単独での任務遂行を許可しましょう。しかし、任務前に折津エイを同行させない理由を報告するようにお願いします」

「相変わらずアンタ達は書類が大好きね。一生デスクに張り付いてなさい」

 

 セナノちゃんがそう言うと、男はもう用は済んだとでも言わんばかりに俺を一瞥して立ち去った。

 残された俺とセナノちゃんは、顔を見合わせる。

 彼女は俺を安心させようとしているのかもう一度微笑んで頭を撫でた。

 

「さっさとコンビニでご飯を買いましょうか。その後で、私は少し家を空けるわ。きちんと留守番できる?」

「はい、お任せください」

「いい返事ね」

 

 セナノちゃんは、そう言って俺の手を取り歩き始めた。

 ごはんごはんー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【縁理庁任務書】

 

文書番号:EN-MSN-2025-0913

任務分類:救難・異縁封鎖任務(危険指定)

任務対象:縁者 三鎌セナノ(A階位)

発令部門:縁理庁対縁災課 第二局

 

■ 任務名

 

蛇影窓(だえいそう)事案」救難および封鎖任務

 

■ 背景

 

██市郊外に所在する高層マンション██棟にて、数週間前より「窓に蛇眼が映る」「住人が姿を消す」との報告が続発。

 

調査のため派遣された縁者チーム1組(計6名)が消息を絶った。

 

しかし先日、隊員一名(氏名未公開)が救難信号を断続的に発していることが確認された。信号は依然としてマンション██階から発せられている。

 

当初「影蛇ノ障子(EN-2819-JP)」と誤認されていたが、被害規模・構造変質・信号波形の乱れから、別異縁存在の関与が濃厚と再判定。

 

■ 任務目的

 

・救難信号を発している縁者一名の生存確認および救出。

・当該マンション内における異縁存在の実体を確認。

・被害拡大を防ぐため、出現地点を特定し封鎖結界を展開。

・必要に応じて対象の排除、もしくは一時収容を実施。

 

■ 任務条件

 

任務遂行者:三鎌セナノ(単独派遣)

 

装備:NARROW、標準対縁携行具、観測封札、緊急結界符、携行通信端末

 

支援:現地縁者二名

 

制約事項:マンションの破壊は禁止(異縁空間への完全接続の恐れあり)

 

救助対象の優先順位は高いが、対象が異縁存在化している場合は収容対象とみなす

 

■ 危険度評価

 

本件は「救難任務」として表向き発令されるが、実質は A級異縁存在対応任務 に分類。

先遣隊が壊滅していることから、交戦リスクは極めて高い。

救難信号が「囮」である可能性も考慮すること。

 

■ 特記事項

 

本任務はセナノの S階位昇級最終試験 を兼ねる。

現場のマンションは既に住人避難済みだが、外見は通常の集合住宅と変わらないため、一般人の接近リスクが高い。

 

セナノが遭遇する可能性があるのは、救助対象となる縁者(生存者)、先遣隊を喰った異縁存在の本体、またはその裾野的派生体のいずれかである。

 

 

■ 追記事項(随行候補の排除について)

 

当初、庁内調整会議において、媒介体的存在《A-E1》(通称:エイ)を同行させる案が提出された。

 

これは異縁存在の認知汚染に対抗する観測的価値を鑑みたものであった。

しかし任務発令直前、セナノ本人が強く拒否。理由として以下を報告。

 

・本任務は自らのS階位昇級試験を兼ねており、第三者に依存すべきではない。

・対象が「媒介」を強く喰らう性質を持つ可能性があり、エイの随行はむしろ危険である。

 

本拒否は通常であれば却下対象であるが、セナノの強硬な姿勢と、局長裁可により単独行動が認められた。

よって、当任務における同行者は存在せず、エイは後方待機とする。

 

 

発令署名:縁理庁 対縁災課 第二局 局長 ███

発令日:西暦20██年8月■日

 

 

 

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