【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

20 / 128
第20話 首がパァンってなるやつじゃん!

 俺の心に安寧が訪れた。

 そう、セナノちゃんが出て行ったのでお留守番です。

 

 大量のコンビニスイーツやお菓子があるので、オラの村の神様もご機嫌だっぺよ。

 じゃあ、オラは昼寝するっぺ。

 

「エイ、これ美味しいです! こっちも!」

「良かったっすね」

「はい! エイは食べないんですか?」

「さっき朝ご飯食べたから……」

 

 俺は育ち盛りだが小食である。

 何故なら、村にいたころは基本山菜とジビエ肉しか出されなかったからだ。

 しかもずっと捧げものみたいな料理しかなかったので、健康的かつ少なめの食生活を送っていたのだ。

 両親と食卓を囲んだのは誕生日の時くらいで、基本は一人で飯を食う。これ、ほんまもんのガキならとっくの前にグレてるわ。

 

「じゃあこっちのシュークリームも私が食べちゃいます!」

「うっす」

「もぐっ……モグモグモグモグ!」

「落ち着いて食べたら?」

 

 ソラは俺の言葉には耳も傾けずに必死に甘いものを口の中に次々と放る。

 こんな食い意地の張ったコンテンツモンスターをうちの村では祀っていたのか……?

 食いしん坊なオタクじゃねえか。

 

「所でエイ、一つ言っておかなければいけないことがあります」

「何?」

「間もなく、ここに人が来ます。さっき会った男の人と、他には縁者が数名。全員武器を持っています。ファイト!」

「え」

 

 間もなく、インターホンが鳴る。

 俺たち以外誰もいない部屋では、やけにその音が響いた。

 

 助けを求めるようにソラを見るが、全てを食べつくした食いしん坊はそのままお腹を撫でながらソファへと身を投げる。奴はもう駄目だ、使い物にならん。

 

「エイ、演技です。無垢な少女であるように」

「ウィッス」

 

 俺はインターホンの音に周りをキョロキョロと見渡しながら、ぱたぱたと廊下へと駆けていく。

 へっへーん、家にもインターホンはあったもんねー!

 

「はい、今出ますよ」

 

 エイは無垢で人を疑う事を知らない。

 だから、インターホンが鳴れば扉を開けてしまうし、その先に黒服のお兄さん達が待ち構えていても笑顔で迎え入れてしまうのだ。

 

「あら、貴方は先程の」

「……どうも、折津エイさん」

「後ろの方たちは、お友達ですか? ……あっ、ごめんなさい。お茶の用意をしないといけませんね」

 

 そう言って俺が背中を向けた瞬間、背後から呼び止める声が聞こえた。

 

「折津エイさん、急を要するのでここで手短に」

「……はい?」

 

 なんか嫌な予感がするぞ!

 

『おっ、来ましたね^^』

『何が来たの?』

『コンテンツ』

『返せそんなもの』

 

 とりあえず小首をかしげて振り返ると、黒服のお兄さんの後ろに控えていた一人が前に出てアタッシュケースを差し出した。

 かちりと音を立ててロックが解除され、ゆっくりと開く。

 

 中にあったのは、白いチョーカーのようなものであった。

 何か文字が刻まれているのか、よく見れば表面に模様のようなものが見える。

 

 か、カッコイイ~!

 

「わあ、綺麗ですね。これは何ですか?」

「NARROW……日本での正式名称を神経封録異志抑制装置(しんけいふうろくいしよくせいそうち)と言います。これは世界の平和を守るための道具です。セナノ縁者も持っています」

「そうなんですね、へぇ……」

 

 欲しい。

 というか絶対にこれ俺用じゃん。

 すっごい強いチートの奴じゃん。

 

「先程、セナノ縁者の反応がロスト。一時的行方不明判定が為されました。任務の続行は難しいというのが私達の判断です」

「えっそれって……セナノさんは大丈夫なのですか!?」

「……事態は流動的に動いているので、断言はできません。折津エイさんの想像することが起きている可能性も高いでしょう」

「そんな……」

 

 セナノちゃん……エリートだけど明らかに猪突猛進だったもんね……。

 ってことは、これは俺が助ける流れだね。うーん、主人公みたいで大変よろしい。

 

「よって我々縁理庁は貴女への協力を要請します。どうか、セナノ縁者を救っては頂けないでしょうか」

「私に出来る事なら、なんでもやります!」

 

『ん?』

『こっちは反応しなくていいの』

 

 黒服は俺の言葉を聞いて安堵したのか、首輪をアタッシュケースから取り出し俺へと差し出す。

 やっぱ俺用のNARROWじゃん!

 ヤッター!

 

「では、これをどうぞ。迷宮内での貴女のサポートをしてくれます。どうか、自分でお付けください」

「わざわざ私にこんな素敵なものを用意してくれたのですか?」

「私共に出来るのはこれくらいです」

 

 その言葉に俺は自分が選ばれし者であるという実感がひしひしと湧いてきた。

 よっしゃ、やったるでー!

 

「では、遠慮なく頂戴いたします」

 

 俺は両手でチョーカーを受け取ると、首へと嵌める。

 不思議な事にチョーカーは俺の首にぴったりフィットし、なんの違和感もなくなった。

 

『どうどう似合う?』

『いいですね。ちなみに、それたぶん逆らったら死ぬシステム入ってますよ』

『えっ』

『首に爆弾が付いているようなものです。怖いですねぇ』

『なっ、なんで言ってくれないの!?』

『かわいい^^』

『俺の事好きなのか嫌いなのかどっちなんだよぉ!』

『大好きだから、虐めたいんです。死なない程度に』

 

 助けてくれ。

 死のリスクが二倍になった。

 天移と首輪の二倍だ。

 これから俺は神様と縁理庁の二つのご機嫌取りをしなければならない。

 

「首に違和感はありますか?」

「……いいえ、大丈夫です」

 

『そう、それでいいですよ。貴女は何も知らずに首輪を付けられた可哀そうな子です。それをあの人間に見せつけて曇らせてやりましょう^^』

『なんて惨いことを……』

 

 しかしどれだけ残酷な事であっても我が身可愛さが断然勝るので、俺は無垢な美少女の仮面を崩さない。

 

「それでは、案内してください。セナノさんを助けないと」

 

 俺は黒服たちと共に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【縁理庁内部提出】

 

書類番号:EN-EXC-2025-0913-EIA

種別:緊急運用要請(媒介体投入許可申請)

提出先:対縁災課 第二局 局長(決裁)/庁内安全監査部(閲覧)

作成部門:縁理庁 特殊運用室(SOU)

作成日:西暦20██年8月■日

 

件名

 

「蛇影窓事案における緊急措置 — 媒介体《A-E1》(通称:エイ)実戦投入の許可要請」

 

■要旨

 

 ██市██マンションにおいて、救難信号を発している縁者一名(先遣隊生存者)が確認されている。先遣隊1組(計6名)は既に消息不明。現場状況は当初想定のC級事案(影蛇ノ障子)を超えるA級挙動を示しており、通常派遣による人的救出は極めて死亡率が高い。

 そのため非常措置として疑似媒介体《A-E1》を一時実戦投入し、現場の認知汚染解析および救難対象の所在確認・誘導を実施することを要請する。投入は限定的・監視下で行い、リスク最小化策を併用する。

 また、セナノ縁者が現地縁者と合流せず単身で処理に向かったため、異縁存在による認識改変への対抗策として追加で派遣。

 

■投入理由

 

・救助優先性:生存者の信号が継続している以上、即時対応が必要。人的再派遣は過去二度の壊滅事例を踏まえ極めて危険。

 

・媒介体の能力適合性:エイは認知域との低干渉接触、並びに媒介的観測能力を有する。窓の認知汚染領域の境界を同定し、被害者の精神情報位置を推定可能(過去類似任務での予備評価)。

 

・封鎖回避策:窓を破壊せずに遠隔的に情報を得る手段が現状では限定的であり、エイの投入は「窓を開かずに」生存者の位置把握・誘導を行う可能性が高い。

 

・時間的猶予の欠如:住民避難は完了しているが、対象個体の窓化進行は時間経過で加速する見込み。迅速な行動が必要。

 

・セナノ縁者の安否確認:現地で待機していた三名の縁者との合流をせず、迷宮内へと侵入した形跡がNARROWの位置情報ログから確認済み。認識改変を受けている可能性が高く、疑似媒介体による認識の上書きでの救出を試みる。

 

 

■実戦投入計画

 

投入形態:エイは現地での接触を行わず、ベランダ越し・窓外面からの媒介接触に限定。室内侵入は原則不可。

 

目標任務:

 

(A) 生存者の精神位置(声の発生源)を確定する。

 

(B) 窓の認知空間の境界を観測し、窓が開く・拡張する条件を解析。

 

(C) 生存者誘導(音声媒介/幻覚干渉の相互遮断)を試行、成功時に最短経路での回収を実施。また、これにはセナノ縁者も含まれる。

 

 

■行動制限:エイは自己保全回避動作の禁止を受け、現場にて縁理庁のNARROWにより遠隔的に監視・強制終了が可能な状態にする(緊急処理回路)。

 

支援体制:後方管制(ラク)による常時通信、上空待機の防護機動隊(非干渉)を配置。縁者一名(救出後の回収要員)を最短にて突入待機。

 

■リスク評価

 

予測される利点:人的損失の削減、生存者の早期回収、窓の挙動解析による封鎖戦術確立。

 

主なリスク:エイが認知汚染を受けた場合、媒介体としての二次的危害(観測情報の汚染/拡散)を招く可能性。エイが対象となる特殊事態は過去最小確率だが排除不能。

 

被害想定:エイ損失時は情報が失われる一方、人的投入を継続した場合の死亡想定値よりも被害は小さいという評価。

 

■代替案との比較

 

通常縁者再派遣(複数):高死亡率(過去事例基準)→非推奨。

 

遠隔観測装置のみ投入:装置の認知汚染耐性不足、精度低→限定的効果。

 

窓破壊(即排除):異空間門開放リスク→最も危険。

 

総合的に、媒介体投入が現時点で最も救助確率が高く、二次被害を抑えうる手段と判断。

 

■倫理・法令的配慮

 

エイへの実戦投入は媒介体保護条項に抵触する恐れがあるため、限定的かつ可逆的な投入を条件に特例承認を求める。

 

投入前にエイの同意(可能な範囲での意思確認)を試みること。不可の場合は局長裁可のもと「緊急措置」として強制実施。

 

事後に独立監査部門による報告を義務付ける。

 

■緊急撤収・最終手段

 

エイが窓の影響下で挙動異常を示した場合、直ちに緊急処理回路を作動し、地上回収を中止。以降、窓の強制封鎖(封札複合)を実施。

 

最悪の場合、局長決裁のもと「対象異縁存在の遺棄」=人命救助継続を断念する判断を執ることを事前承認願う。

 

■要請

 

上記の通り、被害状況と時間的制約を鑑み、疑似媒介体《A-E1》の限定実戦投入を許可いただきたく申請します。

本措置は救助成功の可能性を高め、かつ従来の人的再派遣による更なる壊滅を回避するための最善策と考えます。迅速な決裁を要請します。

 

提出者:縁理庁 特殊運用室 室長 ████

承認欄(局長)__________(署名・捺印)

監査確認(必須):庁内安全監査部長 ________(署名)

 

 

 

 

 

 

 

備考

 

※本書は庁内決裁用の公式文書です。実際の運用目的は「Project EN-THEOS」を参照。文書提出前にこの備考は必ず消去するように。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。