【8/24 1巻発売!】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~ 作:不破ふわる
父さん母さんに対する俺の演技は完璧だった。
時代を越えて語り継がれる名演技となった事だろう。
本当は子供として接したいのに、もしも親が自分を空写としてしか見てくれなかったら……我ながら会心の演技であった。
それからも俺は、必死に明るく取り繕う演技を続け、セナノちゃんに見える所でだけ一瞬笑顔を消すという事を繰り返している。
何故そんな事を、と言われても今俺の横でたこ焼き喰ってる神様がそれを望んでいるからだ。
『美味しいです!』
『よかったっすね』
祭りと神は深くから関わるものだ。
であれば、俺が神の為に演技を捧げたとしても不思議ではない。
生贄ではない分、優しいね。一年に一度、村娘♂を喰うとかじゃないだけマシだね。
『エイも食べますか?』
『うーん、遠慮しておきます』
『食べなさい』
『はい』
こんな風に、自分のたこ焼きを分けてくれたりするんだ。
神様なのに、心が広いなぁ。
こんな神様と一緒だと、青空も綺麗に見えるね。目に染みるね。
あとこのたこ焼き、なんか色が変だね。
さっきは直接口の中に現れたからわからなかったけど、おかしいね。
青と宇宙が混ざったみてえな色してるね。なんで?
『いいから食べなさい』
『いただきます……やっぱりうまぁっ!? ソラ、もっと頂戴!』
『はい^^』
うめ……うめ……!
「エイ、大丈夫?」
「……っ、はい」
俺がたこ焼きをソラから餌付けされていると、隣でセナノちゃんが心配そうに問いかけてきた。
既に広場からは離れ、俺達は今、神社の階段に座っている。
師匠は気を利かせたのか、それともシンプルに焼き鳥が美味しかったのかわからないが、また屋台に行った。あの……一応、護衛なんですよね?
『ほら、チーズ明太マヨやネギポン酢もありますよ』
『ラインナップがチェーン店すぎる』
でも美味しいから食べちゃうよぉ!
それに食べれば食べる程、なんだか美味しさが増していく気がする。
「大丈夫な割には、焼き鳥を全然食べないじゃないの」
「そ、そうですかね。もうこんなに減りましたけど」
俺は残り二本になったパックを指さす。
しかし、セナノちゃんはそれを見て呆れた様子だった。
「殆ど師匠が食べたじゃない。さっき「すまん……つい……」って言ってたの忘れたの?」
「あはは……まあ、気に入ってくれたのなら嬉しいです。澄目村の食べ物が褒められると嬉しいですからね。あの鶏肉もきっと、この村のものでしょうから」
「えっ、そうなの?」
『そうなの?』
『そうですよ』
「そうです」
視界の中央に急にtipsみたいなのが現れたから、セナノちゃんにその通り告げたけど本当なんだ……。
というかこれ、俺の視界がいつでも簡単に操作できるってことじゃない?
視界を奪うの意味が、視力の抹消じゃなくて、まんまジャックなの驚いたなぁ。
【オソラTips:この村の動植物は異縁存在である】
怖いtips流れてきたんだけど。
それと、右下の【なうろぉでぃんぐ……】って何?
何をローディングしてるの?
「……ってそうじゃないわ。私は騙されないから」
セナノちゃんは俺の頬を両手で挟んでこちらを向かせる。
そして、真っ直ぐな眼で告げた。
「ご両親の事、気にしているんでしょう?」
「……いえ」
たこ焼き喰わされたからお腹いっぱいなだけだよ。
君もいずれ喰うよ。楽しみにしててね。
「私にくらいは正直に言っていいのよ? 大丈夫、ここには私とエイしかいないから」
むっ、これは御空様への供物チャンス!
「今の私は空写で、きっと多くの村人の期待を背負っています。だから……あの人達の期待も背負わなきゃいけない」
俺が言葉を吐露すると同時に、辺りに風が吹き木々が揺れる。
恐らく偶然じゃないだろう。
「親ではなく、救われる者として扱わなきゃ……なんて、本当は怖いだけなんですけどね。あの人達の中で、折津エイが消えていくのが」
セナノちゃんは俺の言葉を真剣に聞いている。
相変わらず頬に添えられた手に俺は、自分の手を添えた。
「そして、私が消えた場所に、空写が入る。きっと私を見ても、もう自分の子供じゃなくて空写としてしか見てくれない。それが、何故か今になって怖くなってしまいました」
俺は無理矢理笑顔を作って「私ってわがままですね」と言う。
すると、セナノちゃんは俺を勢い良く抱きしめてきた。
「私は貴女を見てる。折津エイをずっと見てるから。だから……私の前では素直でいいのよ」
「……はい、ありがとうございます」
抱きしめ返し、風の吹く中で俺達は暫くの間そのままだった。
【なうろぉでぃんぐ……】
ねえ、それでこれは何なんで――あっ、目が見えなくなった。
こ、こいつぅ……! 丸っこい字で視覚を奪う事を予告してやがった……!
『サプラーイズ』
『ああ、驚かされたよ。ソラは日本を代表する最高のエンターテイナーの一人だね!』
くそっ、視界が真っ青で何も見えねえ。
このブルーバックみたいな視界は改善してくれよ。
「エイ……?」
俺の異変に気が付いたのか、セナノちゃんのぬくもりが体から離れる。
恐らくは俺の顔を観察しているのだろう。
『へい、ソラ。今の俺の様子を教えて』
『目が、素敵なオソラ色です』
おっけー。祝福、やね。
「セナノさん」
俺は離れたセナノちゃんを探すように手を伸ばす。
その手は間もなく掴まれ、存在を伝えるように握られた。
「私はここよ」
「あぁ……ありがとうございます。なんだか、視界が閉じてしまって。良ければ、再び目が見えるようになるまで、私の傍にいてくれませんか?」
「……当たり前じゃない」
悲しそうな声が聞こえる。
『いいですよぉ!』
嬉しそうな声も聞こえる。
これはつまり……一石二鳥?
「なんだか、安心しました」
俺はセナノちゃんの手を辿って近づき、身を寄せる。
そして、頭を預けて瞳を閉じた。
「少しだけこうしていても良いですか?」
「勿論」
目を閉じたのに視界が変わらない。
世界は相変わらず真っ青だ。
それでも、こうして頬を撫でる風は心地が良い。
「風、気持ち良いですね」
「そうね」
二人の間に沈黙が降りる。
風が遠くから運んでくる祭囃子だけが、今俺がここにいるという事を証明してくれた。
『良いですよ良いですよ!』
こっちは証明してくれないからね。
【オソラTips:ソレらは常に窓を求めて視線を送っている】
なんなら怖い事ばっかり教えてくるから。
しかも説明が不十分なの。それも故意にやってるからまいっちゃうよね。
【オソラTips:ソレらは時折、窓を求めて降りてくる】
ブルーバックにtipsだけ表示されるの怖いんだけど!
それやめてよぉ!