【8/24 1巻発売!】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~ 作:不破ふわる
いやぁ、夜神楽は強敵でしたね。
まさか澄目村にあれだけの異縁存在が現れるなんて、俺がいなかったらどうなっていたことやら。
本当、空写でSSSSS階位の俺に感謝して欲しいよね(笑)
「エイ……」
セナノちゃんも、ナイスファイト!
やっぱり焔の攻撃は映えるね。ヒバリと一緒に戦っている姿は本当にかっこよかったよ。俺が女なら恋に落ちていた。
まあ疲れただろうから俺の事は放っておいて、一度休憩していいよ。
師匠と一緒に俺の傍で正座しなくて良いから。
「恐らく、空澱大人の力を使ったせいだろうな」
「私が一人で戦うべきでした……」
「それではエイの意思を無視することになる。エイは、この村を守りたかったんだ」
神社の本殿でふわふわお布団に寝かされた俺と、どんより反省会中の二人。
正直、空気の差が凄い。
俺としては、三人で「S階位にはちょっと物足りなかったかな?」とか言って、強者ムーブがしたいのに。
そういう三人組って、すぐに寝たりするマイペースな奴いるじゃん。
あれが俺ってだけなんだから、むしろ小突いたりして欲しいくらいだ。
こっちはこの脱力感を楽しんでいるんだから。
『エイ、楽しんでいるところ悪いのですが次のスケジュールの相談です』
『いつの間に秘書のコスプレを……?』
ソラは子供サイズのスーツに身を包んで、眼鏡をスチャっとしている。その仕草が気に入ったのか、片手で常に眼鏡をスチャスチャし続けていた。キッザニア因習村支店?
『この後は最終曇らせ夜会、村脱出、夜神楽殲滅となっています』
『夜神楽殲滅……?』
なんだか漢字がいっぱいでカッコいいな。
『はい。先程のお試し夜神楽ではなく、真の夜神楽です』
『それってつまり……!』
『エイ、異縁存在の貯蔵は十分ですか? 』
『……ハッ、そうだね! この間に作っておかなくちゃ!』
スケジュールが夜まで空いていると思ったが、それは違うようだ。
ソラは夜神楽で扱う異縁存在を沢山作るように時間を確保してくれたのだ。
なんて完璧なスケジュール……!
『夜神楽自体は既に始まっているのですが、焦らず作って明朝に出陣しましょう』
『大丈夫なの? SSSSS階位の助けがすぐにいるんじゃないの?』
『もうエイったら。主役は遅れてやってくるものでしょう?』
『へへっそれもそうかぁ!』
「この髪……エイはもう……」
「少なくとも、これ以上力を使わせては駄目だ。セナノ、お前に話しておかなくてはならない。実は、S階位が一人敵に回った」
「S階位が……!?」
二人は相変わらずシリアスだねぇ。
その敵に回ったS階位、師匠が熊と一緒に木にぶん投げていたけどね。
「奴はまた来るだろう。……恐らく、夜神楽にエイを使う為に」
「……っ! そうでした! 師匠、実は村を襲った異縁存在に、縁理庁の封縁杭が刺さっていて――」
なんだかよくわかんないけど、とりあえず俺は苦しそうな顔を継続してたまにうなされるやつをオートでやっておけばいいか。
それよりも、異縁存在を作るぞ!
『ソラ、俺もさっきの夜神楽みたいにいっぱい異縁存在を引き連れて登場したい。俺の後ろに大小さまざまな異縁存在がいっぱい従っている演出お願い……!』
『うーん……ヨシ!』
『わぁい!』
やっぱこういう時は沢山の異縁存在を同時顕現だよね!
さっきの翠角と禍角もいれるでしょ。
他にも現代っぽい異縁存在も欲しいなぁ。あんまり和風に寄りすぎるのも時代に合ってないもんなぁ。
あ、ドラゴンとか欲しいかも!
いや、竜の方がそれっぽいか?
ちょっとエッチなお姉さん型異縁存在も捨てがたいし……怖さにステータスを振った奴も欲しいなぁ。
日本人形と西洋人形のコンビ異縁存在もいいなぁ! 呪殺やってみたいんだよね。異縁存在を呪いでねじ切りてえよぉ!
『ふふふ、エイったら楽しそうですね。いっぱい作ってください』
『オソエキットだけじゃ足りなくなりそうだけど大丈夫なの? 今後のオソエ制作に支障をきたすようなら、量も考えるけど』
あくまで材料の提供はソラなので、迷惑をかける量を作るのは避けないといけない。
そう考えて問いかけた俺だったが、ソラはそんなことはまったく気にしていないようだ。
『ご安心ください。足りなくなったら取って来るので』
『え、どこから?』
『その辺』
『へえ、異縁存在の材料ってその辺にあるんだぁ。怖いから詳細は聞かないね!』
そもそもソラにとってのその辺って、どの辺なんだ……?
『ふふ、そんなパーツの心配をしていないで作業に取り掛かったらどうですか? 早くしないと、私のナイナイした異縁存在を代理で使っちゃいますよ? それとも、キャラが揃っていない時に貸し出されるNPCを使いたいんですか?』
『相変わらず、例えが神様とは思えないな』
でも神様がこうしてコンテンツに興味を示して、オソエキットまで提供してくれるなんて、神と人間の相互理解も近いのかもしれないね。
世界の未来、明るくなってきてます。
コミケに神々が降りてくる日もそう遠くないのかもしれない。
『よーし、じゃあ作るぞぉ!』
『がんばれー!』
俺は脱力ボディを放って、異縁存在作りを始める事にした。
パーツは無限種類! その組み合わせは無限大!
君自身の手で、最強の異縁存在を創り出せ!
DX 異縁存在オソエキット! 豪華創造エディション!
■
同時刻、とあるZONEでの作戦が失敗に終わった。
理由はただ一つ、時間切れである。
多くの縁者を投入し、一日を掛けて行われたとある学校の奪還作戦は失敗したのだ。
既に死者は複数名確認されており、これ以上の作戦続行は不可能と判断されている。
故に、それはこの後に控えた大規模処理作戦の一部として組み込まれた。
「――位相揺差の値が規定値を突破、これより迎撃フェーズに移行します」
三日以内に起きるとされていた災害は、学校奪還作戦の制限時間であった翌日の正午きっかりにその前兆を見せ始めた。
正午の鐘が町中に鳴り響く。
次第にそれはノイズ交じりになり、青空は海の端からゆっくりと夜に飲み込まれた。
水平線しか見えない筈の平坦な景色が、ある時を境に一変する。
世界を塗り替えるのは、色形様々な入り口であった。
罅が、渦が、穴が、神々がこの世界に繋がる為の空白が無理やり世界に現れていく。
猛暑であるというのに、いつの間にか世界は底冷えするほどの寒々とした風が吹き荒れていた。
暗雲が空を包み、街中に設置されたスピーカーからは次々と聞き覚えない音階の祭囃子が聞こえる。
「早く封縁杭で結界を敷け! ルート通りに侵攻させろ!」
「カラワリを持ってる奴は前線に出てくれ! 姿が見えた異縁存在から処理していい!」
「感情抑制処理がまだのやつはこっちだ!」
観測用の仮設テントでは常に怒号が飛び交っている。
第一防衛ラインの準備は完了していたが、夜神楽を前にすると誰もが声を荒げてしまう。
その行進を見たとき、人間は本能的な恐怖から冷静ではいられないのだ。
大声で死への恐怖を押し殺す。
オペレーターは数値の変化を見逃すまいとモニターを凝視し、縁者達は既に動ける者から異縁存在の処理を始めていた。
その時、海岸に一際大きな穴が生み出された。
景色を真っ黒に塗りつぶしたような穴はやがて、一つの神輿を吐き出す。
姿かたちが様々な異縁存在が背負うソレは、骨や腐りかけの肉を元に作られており、黒漆に似たもので塗装し見た目だけを整えた神輿であった。
縁者達は、その上に乗せられたものを睨みつける。
「……アレが今回の第一陣の親玉か?」
「オペレーター、縁波密度の測定を急げ。アイツの推定ランクは?」
夜神楽の行列中央に出現した、黒漆塗りの神輿に鎮座した異縁存在。
それは、夜神楽が本格的に始まった事を示すおぞましい見た目をしていた。
『推定……準災主級です』
「いきなりかよ……!」
頭部は異常に肥大しており、額から顎にかけて幾重もの皮膚が垂れ下がった胎児のような姿をしていた。
顔面には大小様々な人間の顔が埋没しており、それぞれが別々に呼吸し、ときおり口を開いてくぐもった声で笑っている。
主となる大きな顔には眼球がなく、眼窩の奥から白く細い指が何本も伸び、まるで自らを慰めるように、まぶた自ら撫でていた。
体はどうやら神輿の座面と癒着しているようで、胡坐をかいた足からは無数のへその緒のようなものが伸びて、神輿と繋がっている。
『疑似神格型と判断します。カラワリを使用して、遠距離からの処理を――ぁ』
唐突に無線にノイズが走り、オペレーターとの通信が途絶える。
間もなく観測用仮設テントのある方角から、耳を突き刺すような甲高い何かの鳴き声が響いた。
縁者達は、互いに顔を見合わせて頷く。
「俺達はこっちに集中するぞ。……おい、聞こえるか第二観測所」
『はい、聞こえています。こちらでも、第一観測所の物理的消失を確認。これよりオペレーションを引き継ぎます』
少し前まで共にいたオペレーターの死も、感情抑制された縁者にとっては些事である。
些事でなければならないのだ。
「第一波くらいは、ここで終わらせるぞ」
命を戦いの勘定に入れて、縁者は引き金に指を掛ける。
そして祈りの言葉も無しに、引き金を引いた。
『お、やってますねぇ。じゃ、ちょっと材料貰っていきますよ』
祈りが無くとも、神は気まぐれで時折手を差し伸べる。
後に、縁者達の奮闘により異常な速度での第一波処理として記録されるこの戦いも、裏には神がいた。
『あ、こっちも素材としていいですね。……うーん、エイって神輿があったら喜びますかねぇ』
厚い雲程度では、青空の視線は遮れない。