【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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上位存在好きが集まってきて嬉しいソラ~!


第4話 ナワバリバトル(怪異)

 俺は今、突然の肝試しに強制参加させられていた。

 

「ひっ、あっちで音鳴ったよ!」

「格下格下」

「何かいることは否定しないの何なんだよ!」

 

 映画館の中はボロボロで、いつの物かわからない日焼けしたポスターや、割れたガラスなどが散らばっている。

 工事現場で見るような道具が散乱しており、壁にはカラースプレーで自己主張の強い落書きと、かつての面影は殆ど無かった。

 最初にシネマの文字を見ていなければ、ここがどんな施設かわかる訳もないだろう。

 

「こっちです」

 

 ソラは平気な顔で歩いていく。

 その後ろを付いて行きながら、俺は細心の注意を払って辺りを見渡していた。

 

 ここでようやくわかった事なのだが、俺は心霊などに慣れた訳ではなかったようだ。

 ソラという上位存在に食われることが決定しているのだから、無感情キャラでやっていけるかと思ったらそんなことはなかった。

 ソラのいる時間が基本昼間である事と、彼女が幼い子の姿で存在していることが恐怖を緩和しているようである。

 

 つまり、夜の廃映画館は滅茶苦茶怖い。

 

「地下劇場が良いですよ」

「良い訳ないだろ」

 

 言葉では抵抗しつつも、俺は追従することしか出来ない。

 ここで別行動しても良い事なんて一つもない。

 情けない事にソラに守って貰うしかないのだ。これが転生した人間の姿かよ。

 

「さ、つきましたよ」

 

 そう言ってソラに案内されたのは、真っ暗な闇であった。

 今までランタンの明かりで道を照らしてきたのだが、この場所は不自然なまでに暗い。

 まるで何かが口を開けて待っているかのような恐ろしい錯覚すら感じてしまう。

 思わず呼吸すら押さえて、身を縮めてしまうのは闇に対する本能的な物だろうか。

 

 俺には、その闇の奥に何かがいることがわかった。

 わかってしまった。

 

「っ、ソラここはやめよう」

「大丈夫です。この程度なら」

 

 ソラはずんずんと歩いていく。

 片手を掴まれた俺もまた、情けない足取りで地下劇場へと足を踏み入れた。

 

 ボロボロで表面がさび付いた扉を開けて、廊下と部屋の境界を踏み越える。

 その瞬間の事だった。

 

「……っ!?」

 

 確かに何かに背中を見られている感覚に襲われ、俺は咄嗟に振り返る。

 あるのは、薄汚れた暗い廊下に広がる闇だけであった。

 

「じゃあ、この辺にしましょうか。私、シート持ってるので広げますね」

 

 ソラは何も気が付いていないのか、どこからか取り出したシートを腐りかけの席に敷いている。

 と、その時舞台上に何かが動いたことに気が付いた。

 

 暗闇で良く見えないが、何かがうごめいている。

 ランタンの小さな明かりを頼りに目を凝らしてみれば、次第にその輪郭を掴むことが出来た。

 

 楕円状の穴のようなものに、連なる様に黄色がかった何かが突き刺さっている。

 穴の奥では赤黒い何かがランタンの明かりを反射しててらてらと妖しく光っていた。

 

 見えたのは――巨大な口。

 そう認識した瞬間、口である筈のそれと確かに目が合った。

 

「――」

 

 俺は慌ててソラへと声を掛けようとする。

 が、そこでようやく気が付いた。

 

 体が一切動かないのだ。

 それどころか声も出せない。

 

 視線のみ、僅かにずらすことが出来るがそれでも中央には巨大な口があった。

 それから口はゆっくりと形を変え、笑みのような物を浮かべる。

 まるで獲物が罠にかかったことを喜ぶかのように、それは笑みを浮かべたまま舌なめずりをした。

 

「――」

 

 俺は必死に口を開閉させるが、依然としてソラに伝えることは出来ない。

 それどころか、今まで喋っていた筈のソラの声が突然聞こえなくなったのだ。

 

 辺りが静寂に包まれ、目の前には巨大な口。

 間もなくそれは、大口を開けるとゆっくりと俺に迫ってくる。

 まるで壁のように大きな口が近づいてくると同時に、生臭く冷たい息が感じられるようになった。

 

 人の口臭ではない。

 もっとひどく、鼻を突くような腐臭に思わず俺は顔を顰めたくなったが、既にそんな自由すら奪われていた。

 

「――」

 

 やがて、口は俺の目の前まで来た。

 さび付いた鉈のような歯は、断頭台にも見える。

 

 それは俺の頭部に狙いを定めて――。

 

「えい」

 

 無邪気な可愛らしい声と共に、夏の暑い風が吹く。

 同時に、目の前の口がパッと姿を消した。

 

 辺りを覆っていた重圧感が消え、俺の体の自由も取り戻され思わずその場にへたり込む。

 

「エイは人気者ですねぇ。流石は私の空写です」

「……そりゃどーも」

 

 伸ばされた小さな手を握り、俺はなんとか立ち上がる。

 この場合俺は感謝するべきなのだろうか。

 

 助けてくれたのはこいつだが、そもそもこうなったのもこいつのせいだ。

 

「さあ、読みましょうか! これとこれと……あとこれも!」

 

 無邪気にウキウキなソラを見ているとなんだか、これで良かったという気さえしてくる。

 とりあえず、今は漫画でも読むとしようか。

 

「そのランタン、もっと明るくできないの? ちょっと暗くて読みづらいんだけど」

「できますよ。……はい、どうぞ。これで明るくなったでしょう? それじゃあ私は最新刊の方を」

 

 ソラは中の綿が漏れ出た椅子に深く座り、足をパタパタとしながら漫画を読み始める。

 その隣で俺もまた、漫画を一冊手に取った。

 

 




今日は二回行動です
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