【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~ 作:不破ふわる
一夜明けておはようございます。
昨日はとんでもない事件に巻き込まれ、巻き起こした疑似媒介体こと折津エイです。
今は廻縁都市の高級マンションに帰ってきています。
ただいま我が家!
『エイを刺激しないように、穏便にお家に帰されましたね』
『まさか特殊部隊の次に派遣されるのがめっちゃ物腰低いサラリーマンみてえな奴らだとは思わなかった』
慟哭からいっちょかましてやった俺たちの元へとやってきた黒いワゴン車から降りてきた縁理庁の職員たちは、それはそれは青い顔で俺の機嫌を必死にとりながら、なんとか帰るように促してきたのだ。
その際、セナノちゃんがちゃっかりこちらの要求を飲ませていたのを覚えている。
『まあ、今更機嫌を取っても手遅れですが』
現場は酷いものだった。
というか、日本中が酷いものだった。
御空様パワーを解放した俺は、どうやら日本全土へと「えいっ」とやってしまったようだ。
そうしたらまあ色々起きた。世界終焉シナリオ体験版みたいなことが起きまくって、結果俺をここで殺処分するのはマズイと判断したようである。
それが正しいだろう。
例え俺が許したとしても、後ろの上位存在が許さずプッツンする可能性があるので、本当に正しい。
人類がまだ存続してくれてよかった。
『セナノさんは異縁存在が決して観測できない部屋に行ったようですね。後で覗いてみます』
『観測出来ない部屋なのでは……?』
『はい。らしいですね^^』
なんで笑ってんだよ。
『それよりもエイ、私達の活躍は天津裁と呼ばれているらしいですよ! 漢字を使っていてカッコいいですね!』
『おお、響きがかっこよくていいなぁ』
『はい。製作途中の報告書を見たのですが、被害が大きくて笑っちゃいますね!』
『……そっすね!』
でも俺は悪くないよ、御空様がやれって言ったんだからね。
所詮、俺は傀儡よ。
言うなれば最初の被害者なんだよ。俺は村の神様に踊らされた哀れな存在だったって事さ。
『エイ、私のスーパーオソラアタックはどうでしたか?』
『めっちゃ気持ち良かったです』
すみません! 傀儡は嘘です!
チートパワー全開で俺TUEEEE出来たので、滅茶苦茶に気持ちよかったです!
やっぱり最強は規模のデケエ事をして周りを振り回してなんぼだよな!
『良かった良かった^^ 私も久々にこの国を一瞥した甲斐がありました。お土産にノイズも貰いましたし』
『ノイズ?』
『はい! 縁理庁ではがびがびって言うらしいですね。面白そうなので、天移しました!』
『さっすがソラ!』
『『いえーい!』』
気分はハイである。
それも無理はない。
だって俺は、謎の特殊部隊を一瞬で倒し、日本全土に侵食していた悪い異縁存在も片手間に倒して見せたのだから。
特殊部隊を倒すなんて、俺が夢見たシチュエーションそのものである。
しかも決して激しい動きで立ち回る訳ではなく、静かにそして一方的に相手を倒す。
THE COOL……俺はやはり最強系転生者の素質があるようだ。
『やっぱりエイの力を定期的に周囲に示すことでクソヤバ感を出しておかないと^^ 人間ごときが簡単に操れる存在ではないとわからせないといけませんね』
怖い事を言っているが、正しいだろう。
最強なろう系主人公が舐められて良い訳がないのだ。
なろう系主人公なら、向かってくる恐れ知らずの馬鹿共をなぎ倒していき、涼しい顔で無双をしなければならない。
掛かってこいよ縁理庁、異縁存在。
まじ俺がワンパンすっからw
俺の攻撃(概念)、速すぎて見えねえべw
マジで俺、村で鍛えってからさw
『エイ』
『ん? どうしたのかな』
『調子に乗ったら天移ですよ^^』
『すんませんした』
何故だが心を覗かれていた気がする。
……ま、まさか流石に俺の心まではわからないだろ。
だってわかってたら俺が転生者だってバレてたことになるし、俺が精一杯ついていた嘘やごまかしが全部、ソラの掌の上だったって事になる。
そ、そんなわけねえよぉ……。
オイラ、それじゃあまるで滑稽じゃあないか!
やっぱり力を振りかざすのは無しだ無し。
そもそも借り物の力でイキって恥ずかしくないのかね。
俺はその辺はわきまえているから常にソラに感謝と尊崇の念と性別を捧げているが。
無双だとか俺TUEEEの前にやる事があるだろ!
俺は何の為にあの力をお借りしたと思ってるんだ!
『ソラ、それでセイカちゃん達は助かったの?』
『はい。全員、眷ぞ……ではなく、お友達になったので無事です! 私が死なない限りは寿命以外では死にませんよ。望めば寿命も取り除きますが』
『今、眷属って言った?』
『言ってないですよ^^』
『えっ、だってさっき』
『私の言葉を疑うような悪い子ではないですよね?』
『はい』
セイカちゃんは生きていたようなので良かったです!
いやぁ、脳天をぶち抜かれてもあのイチジクを食わせたら蘇るだなんて、アレ本当にパワーフードだね。ニンニク何個分のエネルギーあるんだろう。
超絶美味、滋養強壮、死者蘇生なんて、至れり尽くせりな果物だなぁ。
『……ちなみに、アレって俺も前食べたけど大丈夫なんだよね? あ、疑っているわけじゃないんだよ!? ただ、人間を簡単に生き返らせる果物を元気いっぱいの田舎者が口にしたらむしろ危ないんじゃないかって思ってさ!』
『大丈夫ですよ。エイは心配性ですねぇ^^』
『そっか、良かった良かった』
『アレは私からの祝福のようなものです。害なんてないですよ』
その祝福が怖いって話をしてるんだけど……。
『何か言いたい事があるのですか? 』
『無いです』
『ヨシヨシ^^ では、早速次のコンテンツに移りますよ』
『はい』
『あの眷属達は今、廻縁都市の特別病棟にいます』
『ん? 今はっきりと眷属って……』
『彼女達のところに顔を見せに行って無邪気に無事を喜んでください! 疑似媒介体が一人でうろつくことで廻縁都市はちょっとした騒ぎになりますが、貴女の相棒に対するサプライズですよ!』
あぁ、セナノちゃんがまた過労死する……。
ただでさえ、俺達とは別ルートで廻縁都市に帰ってきているというのに。
俺のせいでお偉いさんに直接報告するらしい。ごめんね。
でも御空様が楽しかったって言っていたし、またやるかも。
『力の行使で発生した被害を理解せず、目の前の人間を助けられて喜ぶその純粋すぎるあまり歪にも見える精神性を見せつけましょう!』
『はい』
そして俺も楽しかったし。
■
空澱大人とその疑似媒介体が引き起こした天津裁から6時間。
夜明けと共に街に昇る朝日をセナノは目にすることが出来なかった。
彼女がいるのは廻縁都市の最奥に存在する特殊な部屋である。
対・認識災害特化シェルター。
それは本来は縁理庁の上層部が有事の際に避難するための特殊構文が施された部屋であった。
本来、いくらS階位と言えどもセナノのようなただの縁者が立ち入ることは許されない。
真っ白な部屋の中心で、これまた白い椅子に座らされたセナノは、自分の存在がこの空間で浮いているような気がしてぎこちなく体を動かす。
しかし、目の前にいる存在の事を思い出してハッとしてすぐに背筋を伸ばした。
あの事件の後すぐに使いを寄こし、セナノだけを呼び寄せた縁理庁の上層部が一人。
「審縁導師の肩書に緊張しなくていいよ。ほら、僕ってば案外気の良いお兄さんだから」
陶器のような白い面を付けた人間にそう言われて果たして誰が緊張を解けるだろうか。
雪を束ねたような白い髪は、どこかの民族衣装のような髪飾りによりまとめられている。
身に纏う服もまた、縁理庁の制服ではなく簡素な和服、あるいは古びた病衣に見えた。
(この方が審縁導師様……初めて見たわ)
セナノは緊張からこぶしを握る。
審縁導師は仮面で視界を覆っているにもかかわらず、まるでセナノの目を見つめているかのようだった。
「……あー、逆に緊張させたかな」
「……っいいえ! そんな事は」
「はは、そうか。なら良いんだ」
優しく笑う人だ、セナノはそう思った。
かつて、自分がまだ幼い頃に施設に時折来ていたボランティアの縁者達の事を思わず思い出す。
外から遊びに来る兄や姉代わりの存在が聞かせる経験談や土産がセナノの数少ない楽しみだったのだ。
(あの人たち、元気かな)
ふとそんな事を考えたセナノは、自分がリラックスしていることに気が付いた。
それに合わせて、審縁導師もまたゆっくりと背もたれに体を預けて、息を吐く。
「じゃ、そろそろ内緒のお話をしようか。ここなら、空にも海にも陸にも聞こえないからね」
ここにいるのはセナノと審縁導師だけである。
「じゃあ、日本が安全に生き残る方法についてお話しようか」
「……はい」
『はーい^^』
そう、ここには二人しかいない。
だって、それが入り込むことなんてありえないのだから。