【書籍化決定】因習村出身でも現代ダンジョンでなろう系をやれますか?~俺の後ろの上位存在があまりにもラスボスすぎる~   作:不破ふわる

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第75話 先に教えて! 依頼の陰に潜む怪しいあれこれ!

 S階位縁者に休みはない。

 それをセナノは自分の身を以って証明していた。

 

「着いたわね」

「わぁ、ここの名産はなんですか?」

「観光じゃないわよ。……ん、美味しいラーメン屋があるみたいね!」

「やったぁ!」

 

 ご当地グルメの案内に慣れてしまったセナノと、既にお腹をくうくう鳴らしているエイは今、とある街へと来ていた。

 日はとっくの前に上り、人々はせわしなく仕事に励んでいる。

 そんな中、学生であるエイと卒業したとはいえ17歳のセナノは少々その存在が浮いていた。

 

「さて、まずは依頼を出してきた縁理庁の関係者と合流したいところだけれど……」

「どうかしたんですか?」

 

 眉を顰めスマホを眺めるセナノを見て、エイも背伸びをしてその画面をのぞき込んだ。

 

【縁理庁任務書】

 

文書番号:EN-MSN-20■■-0■■■

任務分類:捜索・鎮圧任務

任務対象:縁者 三鎌セナノ 疑似媒介体 折津エイ

発令部門:縁理庁兵装研究課 第4班

 

■ 任務目的

 

 当班の実験対象であった異縁存在を回収、あるいは鎮圧することを主とした極秘任務である。

 これは縁理庁対災害課補佐官■■■■■の許可を得た正式な任務でもある。

 

■ 危険度評価

 

 本件は対象の現状が不明である為、評価をすることは不可能。

 S階位縁者の任務遂行にあたり、対象の危険度評価は価値のないものと判断する。

 

 

■ 特記事項

 

 対象異縁存在の現在の形状は不明。

 効果や範囲、その結果に至るまでも全てが未知数であり、観測は必須である。

 そのため、携帯型観測器具、結界兵装を支給する。

 

 アーカイブにも記録は存在しないため、対象異縁存在の事前調査は不可能。

 現地でも臨機応変かつ柔軟な対応で任務にあたるように。

 

 

発令署名:縁理庁 兵装研究課 第4班 班長███

発令日:西暦20██年■月■日

 

 

 

「……なんか、あっさりですね」

「エイ、いい事を教えてあげるわ」

 

 セナノは笑顔でスマホをしまい込みながら、優しく相棒を教え導く。

 

「こういう曖昧でこっちに丸投げしてくる部署は、二度目からは無視していいわよ」

「いいんですか?」

「ええ。私の貴重な休日を奪っておいて、このクソみたいな文言は無視に値するわ!」

 

 異縁存在との戦いは情報が重要である。

 事前の情報収集で任務の成功が決まると言っても過言ではないだろう。

 それでもセナノがこの任務を受けたのは、過去の経験からであった。

 

「こういう時はね、大抵上には内緒でこっそり解決して欲しい時なのよ。記録には残せないようなヤバめのやらかしを曖昧な言葉で誤魔化す。だからこの依頼は弱みを握ることが出来るってわけ」

「なんだか悪い顔をしてますね……!」

「ふふふっ、私達は少しでも味方が欲しいわ。だから、こんな聞いたことがない末端の班であっても弱みを握っておくに越したことはないわ。……向こうもそれを見越して私を選んだんだと思うわ」

「難しい大人の世界ですね……」

 

 エイは最初こそ頑張って理解しようとしていたようだが、すぐに目を回してふらふら体が揺れ始めた。空腹も重なった結果だろう。

 

「ま、難しい事は私が担当するから貴方はいつも通りに縁者の仕事を学べばいいのよ!」

「おぉ、流石はS階位ですね!」

「ふっふーん! 私ってばエリートだから当然よ! ほら、さっさと合流するわよ! 確か、ホテルの一室で待っているって話だから――」

 

 セナノはそう言って、エイと共に街の人混みの中へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

『オッケーソラ! 今回の任務のやばさを教えて! あと、回収する異縁存在の正体!』

『すみません、よくわかりませんでした^^』

『絶対嘘だろそれ』

 

 コンテンツの奴隷である俺に休日はない。

 今日も今日とて、異縁存在と上位存在を相手に仕事をしていくのだが。

 

 ……なーんか、今回はよりきな臭くないですかねぇ。

 この手の依頼で情報が不足しているのって、どう考えてもマズイ兆候だと思うんですけど。

 

『縁理庁がわざと情報を曖昧にしているならやばくない? がびがびよりも危険度は高いんじゃない?』

『いえ、あれ単体での危険度はそこまでですね』

『今回の異縁存在について知ってる?』

『知りませんねぇ』

『もしも初見殺し系だったらどうしよう。セナノちゃんだけで事件解決できるか心配なんだけど』

『ああ、別に遭遇してすぐに死ぬタイプじゃないですよ。安心してください』

『今回の異縁存在について知ってる?』

『知りませんねぇ』

『……』

『^^』

 

 全然教えてくれないよぉ……。

 どうせ今回も最初から最後まで知っているだろうに、我らが上位存在様は俺が掌の上で四苦八苦するのが楽しみなようだ。

 これで被害が出たらどうするんですか!

 あ、どうもしねえか。わはは!

 

『ちなみに、今回は色んな所から人材が派遣されてくるようですね! 人間たちの醜く美しい争いを見れそうでワクワクです!』

『心躍ってるの君だけだよ』

『心躍りなさい』

『ワクワク!』

 

 楽しみだなぁ!

 今回はどんなことをさせられるんだろうなぁ!

 

『あ、そう言えば人間は新しい首輪を貰ったようで、エイに渡すチャンスを窺っているようですよ?』

 

 ようですよ? じゃねえんだわ。

 えっ、また俺は首に爆弾みてえなの装着されるの?

 

『それって、前回効かなかったって判断されたから新型を開発したって事?』

『^^』

 

 なんで答えてくれないんだよ。

 というかそれがもう答えじゃないか。

 

『なんでも特殊な技術を使っているらしいですね』

『じゃあもっと痛いしやばいじゃん!』

『私の口からはなんとも^^』

『うわぁん! どうして俺だけ痛い思いをするんだよぉ!』

『エイは可愛いですねぇ』

『そりゃどうも(怒)』

 

 絶対にやばさを知っているであろうにニッコニコの御空様は、ただただ俺を眺めている。

 人混みの中に一瞬姿を表したり、次の瞬間には反射したガラスの中にいたり、あるいはビルの屋上からこちらを見下ろしていたり。

 なんの予兆もなく瞬間移動しているのは如何にも上位存在なのだが、やっていることが情報を小出しして俺をビビらせているだけという。

 もっとうまい事使ってくれよそう言うの。

 

 俺が瞬間移動を使えたら、主人公みたいにクールに立ち回って見せるというのに……!

 

『さあ、今回の任務はどんな結末になるのでしょうか。今から胸の高鳴りが抑えきれません!』

 

 皆に教えてあげたい。

 この任務がより強大な存在の娯楽になりかけている事を。

 陰謀とか思惑が全部コンテンツにされてしまう事を。

 

「ラーメン!」

「もう、後で一緒に行ってあげるから」

「『わぁい!』」

 

 今の俺は純真無垢生贄娘♂として責務を全うすることしか出来なかった。

 

『あ、それとこれから行くホテルで人死んでます。合流する予定だった職員ですね!』

『えっ』

 

 もうやだよ!

 お家に帰りたいよぉ!

 

 

 

 

 

 

 ホテルの一室へと足を運んだセナノ達がそこで目にしたものは予想だにしていない光景だった。

 

「……成程、そうきたか」

「っ、そんな」

「エイ、アンタは部屋の外で待ってなさい。誰かが来ないか監視しておくのよ」

 

 仕事という体でエイを部屋の外に出したセナノは、改めてそれと向き合う。

 一般的なビジネスホテルで、特徴など何もない筈のその部屋はそれが存在することで異質な空気を醸し出していた。

 使用された形跡の無い綺麗なベッドにもたれかかる形で、血塗れで息絶えているパーカーの女が一人。

 

「……どうにも面倒事よねこれ」

 

 既に犠牲者は出た。

 初めから最良の解決など無い前提で、この依頼は幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ね?』

『ね? じゃないんだよなぁ』

 

 




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