TS転生パルゥムがダンジョンで冒険する 作:とある社畜
俺は転生者。今世の名前は特にない。気が付いたら一人森の中をさまよっていたからだ。なんで前世の名前にあやかってノアと名乗っている。
名前から分かるかもしれないが今世の俺は女だ。前世は男だったので唐突な性転換には驚かされた…が、数年もたてば多少は慣れてくるというもの。今では特に問題なく生きている。
そんな俺はどうやら小人(パルゥム)という種族らしく、見た目は完全なロリだ。このパルゥムという種族は割と弱小種族としてみなされているらしく、どこに行っても割と舐められている状態。
この世界は剣と魔法の世界に近い。ただし強いのは神と眷属になった人間だけで、その他の人間は魔法すら使えない。生活も前世で言う中世ヨーロッパ程度のもので、正直生きやすいかと問われると首を横に振るしかない。
そんな世界で弱小種族で生きていくのは、楽ではない。しかも身寄りも手に職もないただの子どもというのは、もはや身を売るくらいしか生きていけないレベルだ。
俺は前世の記憶がある為何とか旅人もどきみたいなことができているが、それも綱渡りのようなもので、正直明日倒れるとも知れない状況だ。
というわけで、俺はこの世界で最も栄えていると言われている迷宮都市オラリオにやってきていた。理由は二つ。一つは安定した場所に定住したいというもの。二つ目は強くなりたいというもの。
中世ヨーロッパレベルの文化の中で生きていくには子供レベルの腕力と体格というのはあまりにもデバフすぎるのだ。神の眷属、ファミリアの一員になれればその辺の問題も解決する(かもしれない)らしく、こうしてえっちらおっちら遠い砂漠の国からやってきたというわけだった。
なんとか身を売ることだけは回避できたけど、泥水啜ったりネズミを捕まえたりはやった。前世日本人の俺にとっては地獄以外の何物でもない。とっととこの生活から抜け出さなければならない。
そんな固い思いを抱いてオラリオにやってきたわけだが…現在就活20連敗中。
どこに行っても『パルゥム風情が何のつもりだ』で突っぱねられる。中には泥棒扱いしてくるファミリアまであって、八方塞がり感が強い。
冒険者ギルドなる組織もあるにはあるのだが、基本ファミリアに入れるか入れないかはそのファミリアの自由であり、斡旋なんかはしていないようだった。一応紹介してはくれたものの全部外れだったし、はっきり言って現時点では役に立たない。
で、そうこうしているうちにオラリオに来てすでに2日目。行くところ行くところ大体半数から「イシュタルファミリアにでも行け」とか娼婦落ちを勧められ続けている。
娼婦落ちはないにしても金もないしマジでそろそろ潮時かもしれない。
どうしたもんかと悩みながら路地裏を歩いていたら、なんか寝ている同族らしきガキを発見。身なりも俺と同じくらい汚いしシンパシーを感じる。
俺と違うところといえば、表情だろうか。グースカ寝ていて傍らに酒瓶まで抱えていて、いい夢でも見ているかのように緩んだ顔つきをしている。
こっちは今日食う飯もない状態だってのに、のんきな奴だ…そう思ったその時、ふと直感にビビッと感じるものがあり、俺はそいつを見つめて立ち止まっていた。
「…アンタもしかして神か?」
「んあ…?」
話しかけると起き上がって、そして俺を見上げてきた。
よく見るとコイツ性別も俺と同じだな。つまりロリだ。とろんとした目をこすりながら口を開く。
「そうだよ、あたし神様。神様のヒダルガミ。なんか用?」
「神がこんなところで何やってんだ」
「うへ、ここあたしのお気に入りスポットなんだよ~」
そう言ってまたごろんと転がった。今度は酒瓶を枕にしている。
なんか某青い記録の暁のピンク髪みたいな喋り方だなコイツ。まあ黒髪だけど。
というか質問に答えてなくね。
「…まあいいや。なあ、ヒダルガミ様とやら。俺をファミリアに入れてくれないか?」
「ふむぅ、なんかここ数日ファミリア探ししてるネズミがいるって噂立ってたけど、君のことだったかぁ」
「ネズミて」
その噂流した奴誰?
「あたしみたいなカミサマモドキはやめといたほうがいいよぉ。眷属も一人もいないし。他行った方がいいよ~」
「他に行く場所無いから頼んでんだよ。最初の眷属に俺はいかが?」
「ふーん、そういうことならいいよぉ」
「マジで?」
意外と一発目でオーケー貰えた。もっと時間かかりそうだと思ってたんだけどな。
「でも、あたし見ての通り怠惰だからさぁ、ロキとかヘファイストスみたいに働くのを期待されても応えられないよ~」
「別にいいよ」
「眷属も増やす気無いし、働く気もないよ~?」
「それでいい。とりあえず恩恵の付与と更新さえしてくれれば」
「ふーん。なら条件。毎日ご飯食べさせて~」
…なんだそら?別に稼げるようになれば簡単に叶えられるけども。変な条件だ。
「契約成立だ」
「うへ、おっけ~、んじゃ今日からよろしくぅ~」
というわけで、俺はそのまますぐに路地裏でステイタスを刻んでもらった。人が通らなかったのは僥倖だった。
「はい、コレ君の恩恵」
「おう」
さて、これで念願の恩恵…ステイタスが得られたわけだけれども、どれどれ?
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ノア
Lv.1
力 I0
耐久 I0
敏捷 I0
器用 I0
魔力 I0
《魔法》
《スキル》
【天輪】
・常時発動
・ステイタスに高域補正、この補正による経験値取得阻害を緩和
・任意発動:魔力を消費
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これが俺のステイタスか。
能力値は初期値なので置いておいて、魔法は空欄。まあ当然だな。
でスキルだけど…なんか発現してんな。なんだこれ。
俺は立ち上がって、近くの窓のガラスに近寄った。他の国とは違いオラリオの窓ガラスは透明なので鏡の代用ができる。
ふむ、今は特になにもない状態。
で、ちょっと力んだら…なんか出た。頭の上に、光る輪が。綺麗な光の環というよりかは、若干システムチックで幾何学模様が組み合わさってできたみたいな輪だ。
これがスキルの効果か。身体の芯がポカポカしはじめ、力が湧き上がる感覚がする。
逆に消えろと念じると、光輪はすぅっと消えていった。
なんかどっかで見たことあるな。某青い記録とか某ノゲノラとかで。
詳しいことはダンジョンの中で試してみるか。街中だと危ない。
「フーン…自己強化系スキルか。武器も防具もねえ俺にはちょうどいいな」
ちなみに、今の俺は極貧パルゥム。武器もなければ防具どころかまともな服もない。
プラチナブロンドで綺麗な髪だけど、伸ばしっぱなしになっていてぼさぼさだ。
ヒダルガミ様は黒髪だけど、こっちも伸ばしっぱなしでぼさぼさ。つまり俺たちは色違いだけどよく似ているってことだ。
「ヒダルガミ様はどこに住んでんだ?」
「最近はずっとここで寝てるかなぁ」
「おい、マジか」
流石に主神を路地裏に寝かせておくわけにはいかない。
「宿取るか…」
「いってらっしゃ~い。たぶんあたしここから動かないから、会いたかったら来てね~」
「いや、アンタも来るんだよ」
「うへ、そうなの?でもあたし移動する気無いし、動かしたいなら勝手に持ってってよ」
こいつ無気力の化け物か?いや、神様だったわ…。
仕方なく、ぐでえっと脱力の極みみたいなロリボディの背に腕を回して持ち上げて、背におぶさる。「うへぇ~」と気の抜けた声と緩んだ口元がすぐそばにあり、なんだかこちらも力が抜けるような感覚があった。
「じゃあ行くか…」
「あ」
「…どした?」
「あたし、そういえば家あった気がするなぁ」
ヒダルガミ様がそんなことを言いだした。
家があった気がするってなんだ。一体どれくらい長い間帰ってないんだ。
「…それ、本当に家か?」
「心外だなぁ、ちゃんと雨風防げるよ~、多分」
…そこまで言うなら行ってみるか…。
「…それじゃあ、とりあえず案内してくれ」
「いいよぉ…Zzz…」
「…大丈夫かなあ、これから…」
そういうわけで、俺のオラリオ生活がやっと始まったのであった。
ちなみにヒダルガミ様の家は案の定廃墟街の廃墟の一つでしたとさ。