どうしても、私をモンスター扱いしたいのですね。裸でも見ますか?――人間だと勘違いしているユニークモンスター、その可愛さにバズってしまう―― 作:なーん!
「どなたですか?」
血の臭いを押しわけるように現れた三人の騎士。彼らは全員、同じ紋章の鎧をまとっていた。
その口調は騎士というにはほど遠く、どちらかといえば冒険者に近いかもしれない。
騎士としての気品や威厳はなく、肩に輝く紋章が虚しく光っている。
三人の視線は周囲のトカゲに向けられ、私の存在に気づいていない。
焼け焦げた鱗と砕けた牙、裂けた喉から血が流れて、それが死んでいることを教えてくれる。
その翼は根元から千切れており、お世辞にも綺麗とは言えない。
「えっ、桃華ちゃん!?」
その失礼な言葉で、私は彼らが何者であるかを察しました。
最近、私は弟子である兵頭を通じて、様々な情報交換を行っていました。
そのおかげで、この世界には『ぷれいやー』と呼ばれる人種がおり、その存在が特異であることを知ったのです。
死んでも生き返ることができる人種。その成長速度は恐ろしく早く、衰えることのない体を持つ。
個人的には、モンスターと変わらない気もしますが、剣に生きるものとしては、理想的な存在といっていいでしょう。
見た目は私たちと変わりませんが、その言動を見ればすぐに判別できます。
「おい、早く配信始めろ! これで、俺たちも有名人の仲間入りだ!」
「ゲスいですよ、リーダー」
兵頭とタイプですね。むしろ、彼よりも
『ぷれいやー』とは、全員このような性格なのでしょうか。よくわからない言葉を喋り、喜んだかと思えば慌てている。
正直、あまり近づきたくない人種です。肩の紋章が泣いているというか、せめてわかる言葉で話してほしい。
「どうして私の名前を知っているのか、いろいろと聞きたいことはあります。ただ、初対面の人を呼び捨てとは感心しませんね」
刃先を持ちあげて、鯉口を切る――私だって彼らが何者かは理解しています。
彼らは『ぷれいやー』であって騎士ではない。そして、『ぷれいやー』はそのほとんどが冒険者であると聞きました。
つまり、あまり信じたくはありませんが、目の前の彼らが
自分でも驚くほど冷たい声がでました。私が鯉口を切るたび、月明かりに照らさた刃が光を放つ。
そこまで怒ってはいませんが、彼らの方は焦っているようでした。
「ご、ごめんなさい! 呼び捨てにして!」
「申し訳ございません、侮辱の意図はありません!」
「へっ……へるぷみー!」
そして、次の瞬間には土下座していました。あまりに突然のことに、思わず固まったのはいうまでもありません。
着ている鎧が岩肌に擦れて、鈍い音が聞こえてくる。
膝の隙間から滝のように汗が滴る様子は、むしろ微笑ましくもありました。
潔いというか……なんというか、その必死な姿が面白くて、思わず悪戯しようかと考えてしまう――だって、刀で月明かりを反射すると、その光に合わせて彼らは動くんです。
「許してください! これからは、必ず『様』をつけせていただきます!」
「殺すなら、リーダーだけにしてください。
私は、ここで
「あっ、おい! てめぇ、俺を売るんじゃねぇよ!」
悪い人ではないのでしょう。そんなことは、話を聞いた時から知っています。
そして『ぷれいやー』がこういう人種であることも、事前に兵頭から聞かされていました。
確か、私と出会ったときの『配信?』とやらが凄くて
全く理解できませんね。彼らの言葉が難しすぎるのか、それとも私が世間知らずなのか――
ただ、少なくとも私を探している人?が多くいるようで、『ぷれいやー』に気をつけてほしいといわれました。
弟子のくせに生意気ではありますが、嫌な気持ちはしないので困ります。
「もういいです、顔をあげてください。あなたたち『ぷれいやー』については、知り合いからある程度聞いています。
実は、私の方があなたたちを探していました。とりあえず、ここは汚いので場所を移しましょう」
私の言葉に彼らは額をつけたまま、安心したように肩をおろしました。
乗っていたトカゲから飛び降り、軽やかな足取りで歩いていく。
取り敢えず、ここで話すのはやめておきましょう。いろいろと散らかっていますし、なにより長居するのは気がひけます。
私の言葉に、彼らもようやく顔をあげました。背後から聞こえてくる声に、やりすぎてしまったと反省します。
ただ、ぎこちなく立ちあがる姿に、これからどうしようかと思った瞬間、洞窟の奥から咆哮が聞こえたのです。
「おや、まだいましたか」
視界の端で暗闇がわずかに揺れました。岩陰が膨らむように見えたかと思えば、次の瞬間には巨大な影がゆっくりと姿を現す。
その翼は洞窟の天井を押し上げるほど大きく、鋭い爪が岩に食い込んでいました。
周囲の死体を踏みつぶして、体を赤く染めながら『そのトカゲ』は現れたのです。
「本当に、数だけは一人前のようですね」
呼吸するたびに炎がこぼれ、それと同時に煙が周囲を満たす。
赤く光る瞳がこちらを射抜き、洞窟の奥から近づいてくるその存在は、言葉にできない威圧感を放っていました。
「リーダー、さすがにやばくないですか?」
「ああ、さきに謝っとくわ」
一回り大きくなったそれを一瞥する。トカゲのせいで煽られた髪に、視界を遮られることが不快でした。
私は刀を握り直すと同時に、鯉口を切る手に力をこめました。
おそらく、先ほど殺した個体とは別物でしょう。その大きさや威圧感も含めて、明らかに違う強さを感じます。
ですが、どれだけ大きくて威圧感があろうと、あの森にいたそれとはレベルが違う。
そもそも、トカゲとしての種類が違うのでしょう。私たち人間と同じように、同じ種族であっても肌の色や体つきが異なるのです。
「さて、お邪魔であれば出ていきますが……どうします? せっかくですし、一緒に戦いますか?」
それはただの気まぐれでした。あの時と同じ、兵頭を弟子に誘った時と同じ感情です。
彼らだけで大丈夫ならよし、手助けが必要ならそれもいい。
せっかくなので、「ぷれいやー」の戦う姿が見たいとも思いました。
洞窟内の砂利や小石が舞いあがり、血だまりがその臭いを一層強くする。
この程度で焦ってもしょうがありません、今にも破裂しそうな気配に背を向けて、私は両手を広げて問いかけます。
私の髪が風に煽られるたび、背後から可愛い声が聞こえてきました。
「あなたたちは、麓の村で女の子から依頼されたはずです。
このトカゲを討伐してほしいと……ですから、選ばせてあげましょう」
絶対に死なせません。彼らを連れて帰ること、それが私の受けた依頼だからです。
ただ、だからといって私が戦うのも違う。トカゲの討伐を請け負ったのは私ではなく、あくまで冒険者である彼らです。
ここで刀を抜けば、その首を落とすのは簡単でしょう。ですが、それでは意味がない……そう、全く意味がないのです。
だから私は問いかけます。彼らだけで戦うか、それとも私と一緒に戦うのか。
最低限の補助はしましょう。死にそうになれば、この刀で助けてあげましょう。とどめを刺すのが難しいなら、私がその代わりを務めてあげます。
しかし、あくまで戦うのは彼らであり、私はその指示に従うだけです。
「さあ、どうしますか? 答えを聞かせてください」
【クラン名・幼女騎士団様】
・ユニークモンスター『桃華』よりパーティ申請がありました。
選択内容によって、『報酬なき竜宴』及び『桜花の剣鬼・流浪の剣聖』シナリオが進行します。
選択権はクランリーダーである『パンツ・クンカクンカ様』にありますので、5分以内に回答いただければと思います。
※選択肢によって、ワールドシナリオ『亡国の姫と堕ちた剣鬼』が部分的に解放されます。
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