魔道具屋店主は異世界で道楽を極めたい   作:かてぃーな

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3 採取クエストは道楽

 俺は一応、魔道具屋を開いた今でも、冒険者だ。

 というか、ぶっちゃけ魔道具屋の稼ぎはほぼゼロといってもいいので、普段の稼ぎは冒険者として稼ぐことになる。

 もしくは、シェレナからの依頼のような、鑑定を使った依頼。

 後者のほうが圧倒的に稼げるのだが、知名度を稼ぎたくない俺はあまり積極的に鑑定依頼は受けない。

 冒険者としての勘を鈍らせたくないのもあって、もっぱら稼ぐのは冒険者としてだ。

 ただまぁそれも最近は、何か別の目的を達成するついででしかないのだが。

 

「――おはようファシム、ちょっと受けたい依頼があるんだが」

「あ、おはようございますルイトさん。珍しく冒険者活動ですか? どんな依頼をご所望でしょう」

 

 その日、俺は朝早くから冒険者ギルドにやってきていた。

 基本的に冒険者は遅くまで酒盛りをしていることが多いため朝に弱く、今の時間帯は人が居ない。

 閑散とした時間を狙って、スムーズに依頼を受けに来たのが今の俺だ。

 依頼だけ受けて、ギルドの食堂かどこかで朝食を食べて一旦店に戻る腹づもりである。

 そんな俺が声をかけたのはファシム、元後輩冒険者で、今はギルドの職員をしている若者だ。

 元気がいいのが取り柄で、割とモテるらしい。

 明るい茶髪といい、俺とは正反対の人種だな。

 んで、そんなファシムに俺は――

 

「採取依頼を受けたいんだ」

 

 と、告げる。

 

「採取依頼ですか? またルイトさんは変わってますね。新人でもないと受けないでしょ、採取依頼なんて」

「よく言われるが、採取依頼はもののついでだよ」

 

 不思議そうな視線を俺に向けながらも、ファシムは依頼を用意してくれた。

 採取依頼は街の外にある大きな森の中で、薬草とかの素材を集めてくる依頼だ。

 この街にはダンジョンがあって、ダンジョンを潜る方が圧倒的に実入りがいいため、普通採取依頼を受ける冒険者はあまりいない。

 ダンジョンに潜るのが不安な新人冒険者が、練習として受けるための依頼である。

 だからこそ、何だって俺が依頼を受けるかと言えば――

 

「キノコ狩り、ってやつだ」

 

 ――この森で取れるキノコが、美味いからなんだよ。

 

 

 ◯

 

 

「鑑定」

 

 キノコには毒キノコが混じってるわけだが、それを見分けるのにも鑑定は役に立つ。

 正直全く見分けのつかないキノコの中から、無毒であると鑑定できたキノコだけを採取していく。

 中には特殊な処理を施したり、解毒魔術で毒抜きができるキノコもあるだが、それはスルーだ。

 わざわざそういう処理をしてまでキノコを漁るのは、面倒だからな。

 逆に、気が向いたらそういうキノコを積極的に漁ったりもする。

 道楽ってのはそういうもんだ。

 んで、そんな俺の側で――

 

「ルイト先輩、これって食べられますかー?」

「ん、見せてみろ。……それはダメだな、こっちのキノコに似てるけど、別物だ」

「あ、ホントだ傘の裏がちょっと違う……」

 

 ――新人冒険者達もまた、キノコを集めていた。

 その数、総勢十名。

 多くない?

 実際多い。

 というのも、俺はなんだか新人冒険者に人気があるのだ。

 採取依頼に俺がやってくると、わらわらとドコからともなく集まってきて、周囲で俺と同じものを採取し始める。

 目的は、俺の鑑定スキルと――

 

「ルイト先輩、ゴブリンってどうやって倒すのがいいんですか? 私、人型の魔物ってなかなか苦手で……」

「基本的には面の広い場所……まぁ、胴体何かを狙うと良い。君は魔術師だろ? だったら土属性の魔術を使うのはどうだ? 火で焼いたり風で切ったりしたときの死体が苦手なんだろう?」

「あー土魔術かぁ、地味だから覚えてなかったんですけど、そういう考えもありかぁ」

 

 ――先輩としてのアドバイスを求められているのだ。

 俺がキノコやら山菜を取るついでに採取依頼を請負始めた頃、新人冒険者からは奇異の目で見られていた。

 まぁ、それ自体は当然っちゃ当然なんだが、それで変な噂が立っても困る。

 こういう時、相手を懐柔するには利益を見せるのが一番だ。

 取った山菜を分けつつ、鑑定スキルで相手のステータスを見てアドバイスを送る。

 そんなことを繰り返していたら、いつの間にか馴染んでいた。

 変わりにこうして、新人が俺のもとに集まってくるようになったわけだ。

 

「ルイト先輩! 採取依頼が終わったら、俺と模擬戦してくれないっすか!?」

「あ、ずるいぞ。僕だってルイト先輩と模擬戦したいんだから!」

「あー、模擬戦なぁ。……よし、いいぞ。今日は全員と一回ずつな」

「よっしゃあ!」

 

 基本的に、俺はそんな新人たちを邪険にはしない。

 ただ、自分の気分に合わせて教えることややることは制限したりする。

 今回みたいな模擬戦も、受けるかどうかは俺の気分次第だ。

 そこら辺で、都合が良すぎない感じで行くのも、大事だと思う。

 なんて思っていると――

 

「……ん、ちょっと待て」

「どうしたんですか? ルイト先輩」

「――魔物だ」

 

 不意に、俺の鑑定スキルに反応があった。

 視界の端に、意識していないのに発生するモンスターのステータス表示。

 本来鑑定はスキルをアクティブにしたうえで俺が「みたい」と思うものしか鑑定できない。

 しかし、魔物がやってきた時に自動的に「みる」と設定しておくことで、実質的な探知スキルとして利用できるのだ。

 直接魔物を視界に捉える必要はない、一定の距離に向こうが到達すると、勝手にステータスが表示される。

 そこにいたのは――

 

「……グレイウルフか。新人には少し荷が重いな」

「え、グレイウルフって森の奥にいる魔物だったよな。なんでここにいるんだ?」

「群れから追われたみたいだな。たまにこういうことがあるから、どれだけ森の中が新人向けで安全でも、パーティは組んで挑むんだぞ」

 

 はーい、と新人達から返事が返ってくる。

 さて、せっかくなので今回は軽く手本を見せることに使用。

 この後模擬戦をするから、新人たちに経験を積ませるためグレイウルフを利用する必要はない。

 なので今回は、俺が倒すことにした。

 

「よしじゃあ、俺が倒すから、後ろで見ててくれ」

「ルイト先輩の戦闘が見れるの!?」

 

 何やら、女性陣から若干黄色い悲鳴があがった。

 いや、俺の戦闘はそんな嬉しそうに反応するものでもないぞ?

 俺は腰に身に着けた魔道バッグから、一つの魔道具を取り出す。

 魔道バッグは、バッグの中身が拡張されているこの世界におけるアイテムボックスのような魔道具。

 冒険者なら、まずこれを手に入れるのが最初の目標になる、と言われるくらい便利な代物だ。

 俺の店でも、適正価格で販売中(宣伝)。

 さて、それは置いといて。

 

『ぐるるるあああ!』

 

 グレイウルフ――名前通りの灰色狼――が襲いかかってくる。

 俊敏な動きで、一番前方にいる俺の喉元を食いちぎろうとしてくるが――

 

「光弾」

 

 俺がそう口にすると、周囲にいくつか光の玉が浮かび上がる。

 それは魔術で生み出したそれと同等の効果を持ち、ぶつかると相手を激しくふっとばす。

 それを、牽制のために何個か放つ。

 わざわざ魔道具で光弾を生み出す利点は、自分自身の魔力を消費しないことにある。

 そこに加えて俺の手に在る一本の棒は――光の剣を先端から生み出した。

 さながらライトなセーバーみたいな見た目になったそれこそ、光弾を生み出す効果を持った魔道具。

 更には自分自身を剣にできるという、非常に便利な効果を持つ。

 くわえて――

 

「そら!」

 

 俺は()()でグレイウルフとの距離を詰めた。

 これもまた、手にした魔道具の効果。

 身体を光のように早くする――流石にガチで光速に達しているわけではないが――身体強化である。

 光弾による遠距離攻撃、光の剣による近接、そして身体強化。

 これらを体内の魔力を使わず、周囲の魔力を吸引することで使用できるのがこの棒――光来杖(こうらいじょう)

 杖? という見た目をしているが、出力を絞れば光の剣を杖代わりにすることは可能だ。

 ともあれ。

 

『ぐうっ!?』

 

 一瞬不意を疲れたグレイウルフは驚いたようにして、隙を晒す。

 そこを逃すことなく剣をふるい、俺はグレイウルフの頸を切り落とした。

 

 

 ◯

 

 

 ――その後、俺は新人達と共に採取を続ける。

 グレイウルフの素材は、忘れず回収しておいた。

 この世界は魔物を倒すと、完全に消滅してドロップ素材だけを残すのが便利だな。

 

「にしても、さっきのルイト先輩の動きすごかったなぁ。目で追えたか?」

「ぎ、ギリギリなんとか」

 

 なんて会話が、新人達から聞こえてきた。

 

「それにしても、何だな」

「どうしたんですか?」

 

 俺がキノコを鑑定しながらぽつりとこぼすと、周囲の新人がどうしたのかと問いかけてくる。

 いやこれは、他人に聞かせる内容でもないと思うんだが。

 

「よくもまぁ、俺にここまで人が集まるもんだよな」

「……それ、本気で言ってます?」

「ん、どうしたか?」

「いや、だって――」

 

 そうして、新人は俺の方を見上げて――

 

「新人の面倒を見てくれるAランク冒険者なんて、他にいませんよ」

 

 まぁそれは――そうなんだけど。

 冒険者のランクは、スキルのそれと同一だ。

 EからAまで、その上にS。

 スキルとの一番の違いは、Sランクがあまりにも伝説的な冒険者がなるもの、という点にある。

 要するに、かなり稀で少なくともこの街にAランクはいてもSランクはいない。

 そういうものだ。

 だからAランクの俺が、採取依頼を受けるのは変なんてものじゃないのだけど。

 好きに依頼を受けて、気ままに活動できる今のスタイルの方が、俺には間違いなく性に合っているのだった。

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