副キャプテン 辰馬 作:匿名希望のぽっちゃり
一年の夏:全国大会決勝・対南葛中学
一年の夏、全国大会決勝戦。東邦学園中等部サッカー部は南葛中学と激突した。
日向小次郎はこの大会、得点王として注目を集めていた。強力なシュートで次々に得点を重ね、前半終了時点で東邦は2対1とリードを奪う。だが後半に入ると、日向の体力が徐々に落ちてきたことに気づいた北詰監督は、アシスト王としてチームを支えてきた友坂辰馬を一旦ベンチに下げる決断を下す。
「辰馬、良くやった。後は仲間に託せ!」
「はい、監督!」
この交代が試合の流れを変えた。南葛中学の大空翼はフォワードからミッドフィルダーにポジションを移し、ゲームメイクを開始。中盤の支配力が一気に増し、東邦は試合のペースを奪われ、最後は逆転されてしまう。
試合後、日向は悔しそうに肩を落とす。
「俺がNo.1になるはずだったんだ……!」
東邦学園は、悲願の全国制覇を一年目で達成することは叶わなかった。
二年の夏 全国大会決勝戦 ― 東邦学園 vs 南葛中学
一年の夏、南葛に敗れ涙をのんだ東邦学園。
その悔しさを胸に、彼らは鍛錬を重ね、二年目の夏を迎えていた。
準決勝ではふらの中学と死闘を演じる。
松山光の粘り強いプレイと、辰馬への厳しいマーク。
「軍師」対「北海の荒鷲」の激突は、大会の歴史に残る名勝負となった。
だがその代償として、辰馬は両足に深い疲労と痛みを抱えたまま決勝を迎えることとなる。
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決勝・南葛中学戦
南葛の主力は、かつての南葛FCメンバー。井沢、滝、来生、石崎――そしてゲームメーカーとして君臨する大空翼。
東邦も日向、辰馬、そして守護神・若島津、反町を加えた布陣で臨む。
前半、互いに一歩も譲らない攻防が繰り広げられる。
「行け日向!」
反町の声に応え、日向が力強く相手DFを押し込み、豪快なシュートで先制点を奪う。
「よっしゃあ!」
チームが湧き立つ中、翼が冷静に反撃。南葛は井沢と連携し、鋭い崩しから同点弾を叩き込む。
さらに前半終了間際、日向が再びゴールを奪い、東邦は2対1とリード。
しかし後半開始直後、翼のゲームメイクが冴え渡り、南葛が再び追いつく。
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友坂辰馬の一撃
後半20分、試合は膠着。
だがここで日向が力強いキープから相手DFを背負い、こぼれ球を辰馬に落とす。
「行け、辰馬!」
若島津の叫びに応えるように、辰馬が渾身の無回転シュートを放つ。
「うおおおおっ!」
ボールは揺れながらゴールネットを突き刺し、東邦が再び勝ち越す。
「辰馬さん、やった!」と若島津が拳を握り、反町も「さすがだ!」と叫ぶ。
しかし南葛も譲らない。翼がMFとして支配力を見せつけ、井沢と共に巧みに試合を組み立てる。
後半終了間際、南葛が同点弾を奪い、試合は3対3で延長戦へ突入した。
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延長戦 ― 失われゆく支配力
延長戦に入ると、辰馬の体に異変が表れる。
「……くっ、足が……」
松山との死闘で受けた両足のダメージ、そして翼と井沢に60分間挑み続けた疲労が限界を超えたのだ。
パスの精度がわずかに鈍り、プレッシャーをかけ続けることができなくなる。
「辰馬さん……!」若島津の叫びもむなしく、南葛が完全に中盤を支配。
そして――翼が魅せる。
空中で体をひねり、放たれたオーバーヘッドキック。
「決めるぞおおっ!」
ボールは美しい弧を描き、ゴールネットを揺らした。
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終焉の笛
延長終了。スコアは3対4。
南葛中学、二年連続の全国制覇。
ピッチに崩れ落ちた日向は、悔しさに声を震わせる。
「くそっ……またお前に……!」
辰馬はピッチに座り込み、両足を抱えながら唇を噛んだ。
「アシストでも……翼に届かなかったか……」
その横で、若島津が肩を震わせながら言う。
「辰馬さん……俺たち、また負けちまいましたね……」
観客席に掲げられるのは「南葛中学 2連覇」の文字。
東邦学園が夢見た「中等部・高等部・大学の完全制覇」への道は、またしても遠のいた。
だがこの敗北は、彼らの心に新たな決意を刻むことになる。
「必ず取り返す。次こそ――」
三年目の春 ― 東邦学園入学前
時は三年目の春。桜の花が満開を迎え、街には新しい季節の息吹が満ちていた。東邦学園のグランドには新入生たちの足音が響き渡り、既存の選手たちも朝練や自主練で身体を動かしていた。
東邦学園に入学することになった日向小次郎、友坂辰馬、若島津健、そして反町は、新しい生活への期待と、昨年までの悔しさを胸に抱えていた。特に東邦学園では、全国大会決勝での苦杯を忘れぬよう、己の技術や戦術をさらに高める必要があると考えていた。
ある日の朝練後、桜の花びらが舞う校庭の隅で、北詰監督は日向、辰馬、若島津、反町を呼び止めた。
「お前たち、今年は新しい仲間も加わる。彼らが来る前に、しっかり準備しておけ。」
練習を終えた四人が部室前に戻ると、そこには松本スカウトの姿があった。彼女は笑顔で一人の少年を連れてきていた。
「皆さん、紹介します。新入生です。」
少年は深々と頭を下げた。東邦学園の制服に身を包み、真新しいスパイクを履いている。彼の名は沢田タケシ。昨年まで明和FCを率い、全国大会で日本一に輝いた元キャプテンである。
日向と辰馬、若島津は目を見開く。
「タケシ…!」日向は思わず声をあげた。
「お久しぶりです、先輩方!」タケシも笑顔で返す。
松本スカウトはにこやかに説明する。
「タケシ君は東邦学園への推薦入学が決定しました。これから皆と一緒にプレイします。」
タケシは、かつて共に汗を流した日向や辰馬と再びチームメイトとしてプレイできることに胸を躍らせていた。日向も辰馬も、馴染みある後輩が入ってきてくれた喜びで笑顔を浮かべる。
「これから一緒に、もっと強くなるぞ!」日向が拳を握ると、辰馬も肩を叩く。
若島津も「辰馬さん、タケシが来ることでチームの連携も良くなりますね」とうなずく。
反町も「明和FCで日本一になった実力見せてもらうぜ。」
タケシは先輩たちの熱意を受け、さらに気合を入れる。
「はい!先輩方に負けないよう、精一杯やります!」
その日の練習では、タケシはさっそくボールタッチや連携プレイでチームに溶け込んでいった。日向や辰馬も彼の動きを確認しつつ、新たな戦術を試す好機と感じていた。
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新学期・新チームの雰囲気
入学式を数日前に控えたある日の午後、東邦学園のグランドで四人は自主練を行っていた。桜の花びらが舞うなか、日向と辰馬は体力を測るように短距離ダッシュを繰り返す。若島津はセービングの確認をしながら、反町は攻撃のポジション取りをチェックする。
練習後、部室に戻るとタケシも到着していた。
「先輩方、今日も良い練習でした!」タケシは礼儀正しく頭を下げる。
「おお、タケシ、頼もしくなったな。」辰馬が目を細める。
友坂辰馬は、日向の表情を見てふと考えた。かつてのハングリーさが和らぎ、虎のような獰猛がなくなった事に気づく。
「このままじゃ全国制覇は簡単じゃないな…」心の中で思いながら、彼は新たな戦術と必殺技の完成を意識していた。
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練習試合への布石
春休みも終わりに近づき、東邦学園では新入生を交えたチーム編成が進んでいた。タケシは後輩として、周囲に敬語を使いつつもプレイで存在感を示していた。
「タケシ、そこはもっと前を見てパスだ!」日向の声に応えるようにタケシが動く。
「はい、日向先輩!」
辰馬もプレイを観察し、ポストプレイや戦術を意識したパスを送る。若島津もGKとして守るだけでなく、積極的に攻撃参加し、反町は攻守の切り替えを確認する。
「やはりタケシはすぐに馴染むな。」辰馬がつぶやくと、日向も「頼もしい後輩だ」と微笑む。
北詰監督はその様子を遠くから眺め、うなずいた。
「新チームの布陣は悪くない。あとは各自が成長し、連携を磨くことだ。」
そして、入学直後ながらもチームは自然にまとまり、タケシも日向や辰馬のフォローを受けながら、東邦学園での新たな挑戦に胸を躍らせるのだった。