副キャプテン 辰馬 作:匿名希望のぽっちゃり
東邦学園〜全国への道〜
二回戦 ― 東邦学園の圧勝
第一シードのため二回戦から登場した東邦学園は、序盤からその実力を遺憾なく発揮した。
沢田タケシが中盤でゲームを組み立て、反町がスペースを切り裂き、若島津が堅牢な守備で相手を寄せつけない。
主人公・友坂はピッチ全体を見渡しながら冷静に声を飛ばす。
『タケシ、もっと前に! 反町、抜けろ!』
掛け声と同時に鋭いパスが通り、反町のシュートがネットを揺らす。
気づけばスコアは大差。結局、危なげなく二回戦を突破した。
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偵察 ― 南葛中学の一回戦
その頃、日向と友坂はスタンドにいた。
彼らは自らの試合をチームに任せ、南葛中学の一回戦を偵察に訪れていたのだ。
「前半途中で四点か……」
友坂はスコアボードを見上げ、思わず息を呑む。
翼を中心とした南葛の布陣は隙がなく、井沢や滝の存在感も大きい。観客席のあちこちでざわめきが広がる。
『やっぱり翼だな』『南葛の完成度は桁違いだ』
だが、日向は不敵に笑った。
「フン、俺たちの方が上だ。今年のチーム力は東邦学園が勝ってる。サッカーは総合力だ。勝つのは俺たちだ!」
その言葉を聞いた友坂は、心の奥でつぶやいた。
(……昔のお前なら、そんなこと言わなかったろうに。チーム力だの総合力だの――お前はいつだって“俺が勝つ”と叫んでいた虎だったじゃないか、小次郎)
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遭遇 ― 浦辺と新田
観戦を終え、スタジアムを出ようとしたその時。
前方から二人の人物が歩いてくる。
一人は鋭い目つきの男、元南葛FCで大友中キャプテン・浦辺。
もう一人は俊足ストライカー、新田瞬だった。
新田が挑発的に口を開く。
「アンタら、最近一度も優勝してないだろ? 俺はアンタらの愛弟子、沢田タケシを倒して全国制覇するつもりだぜ」
浦辺も冷笑を浮かべる。
「こんなとこにいていいのか? 東邦学園も予選の真っ只中だろ」
日向は肩をすくめ、鼻で笑う。
「予選なんざ、タケシたちだけで十分だ」
浦辺と新田は挑発を残して去っていった。
だが、その背中を見送りながらも、友坂は心の奥にわずかな不安を覚える。
(南葛の翼は……やはり一段上だ。それでも小次郎の目には見えていない。いや、見ないようにしているのか……)
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東邦学園快勝、そして――決勝へ
その頃、東邦学園はタケシを中心にした大量得点で試合を制していた。
一年生ながら堂々たるゲームメイク。
北詰監督もベンチから静かに頷く。
「タケシ……よくやってるな。明和の血を継ぐ者だ」
そして迎える決勝の相手は――
《フィールドの貴公子》《ガラスのエース》三杉淳率いる武蔵中学。
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決勝当日 ― 試合前
決勝戦当日、日向は苛立ちを隠せずにいた。
原因は静岡予選を突破した翼のインタビューだった。
――一番戦いたい相手は岬太郎だ。
「なぜ俺の名前を出さねえ……二度勝っただけで格付けは終わりってことか」
握りしめた拳が震える。
友坂が声をかける。
「小次郎、今は目の前の決勝戦に集中だ」
「……わかってるよ、辰」
スタジアムに大歓声が響き渡る。
【2年間のリハビリを終え、天才・三杉淳ここに復活――!】
観客席には青葉弥生の姿もあった。担当医と並び、三杉の姿を真剣に見守っている。
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ロッカールーム ― 東邦の戦術
北詰監督が檄を飛ばす。
「いいか! 三杉は後半に出てくる。武蔵はそこに勝負をかけるはずだ。ならば――前半に勝負を決めろ! 三杉のいない時間に大量得点だ!」
「はいっ!!」
観客席には全国大会出場を決めた強豪校の選手たちも偵察に訪れていた。
その中には、明和FC時代の恩師・吉良監督の姿もあった。
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試合開始 ― 日向の爆発
試合は東邦学園のペースで始まった。
「キャプテン! 決めてくれ!」
反町のスルーパスに日向が走り込み、強烈なシュートを叩き込む。
ドゴォォン!
前半半ばには日向が早くもハットトリック。スコアは3対0。
たまらず武蔵は動く。
前半20分、三杉を投入。
「これ以上はだめだ……監督、行かせてください。30分持てば十分です」
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未完成の戦術 ― フラッシュパス
(途中出場の三杉がチームにフィットする2、3分が勝負だ…よしアレをやる。)
「タケシ、戻せ!」
友坂が深い位置でボールを受け、右腕を高く掲げる。
それを見た仲間たちが即座に動き出す。
未完成ながら試行錯誤してきた“フラッシュパス”だ。
【これは凄い! 東邦学園、友坂くんから始まった高速ダイレクトパス! 武蔵中学は全くついていけません!】
「くそ、速すぎる!」
「これがパスだって!?」
三杉は冷静に指示を飛ばす。
「日向と反町を抑えろ! 必ずフィニッシュは彼らだ!」
だが――友坂はその予測をさらに上回る仕掛けが用意されていた。
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カウンターショット
前線にいた反町のパスを受けた日向がシュート態勢に入る。
「キャプテン!」
「もらった!」
三杉が素早くコースを塞ぐ。
「させない!」
完全に読まれたかに見えた瞬間――背後から声が飛ぶ。
『小次郎!後ろだ! 俺に撃て!!』
日向は驚きつつも信じて撃った。
振り向きざまの強烈な一撃を、友坂がさらにダイレクトで叩き返す。
【すごい! 友坂くん、日向くんのシュートをカウンターで撃ち返したぁー!】
ボールは凄まじい威力でゴールネットを突き破らんばかりに突き刺さった。
スタジアムがどよめきに包まれる。
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前半終了 ― 東邦リード
スコアは4対0。
だが直後、三杉の華麗な個人技から武蔵が1点を返す。
前半終了、4対1。東邦が3点リードで折り返す。
ベンチに戻る日向と友坂は、無言のまま見つめ合う。
(……俺じゃ三杉から点を奪えないってことか)
(日向、違う。確率の問題だ。あのまま撃てば塞がれていた。俺がいただけの話だ)
目で会話を交わす二人。
やがて自然と手を合わせ、ハイタッチを交わした。
東京予選決勝 ― 後半・最終局面
後半も中盤。スコアは東邦がリードしているが、まだ油断はできない。
若島津の豪快なロングスローをタケシが拾い、すぐさま前線で吠える日向へ縦パスを送る。
しかし――。
「上がれ!」
三杉の鋭い声が響く。武蔵イレブンが一斉にラインを押し上げる。
次の瞬間、笛が鳴った。
【オフサイド!ここで武蔵中学の見事なオフサイドトラップ!三杉くんの統率力は素晴らしいですね!】
日向「くそ〜っ!」
苛立ちを隠せず、拳を握りしめる。
実況が熱を帯びる。
【後半戦も中盤に差しかかってきましたが、東邦学園!若島津くんの好セーブ、そして友坂くんの冷静な指示で戦況を五分に戻しています!】
【いや〜普段は日向くんの陰に隠れがちですが、友坂くんも素晴らしい働きをしていますね!】
辰馬(時間がない……!5点目を奪えば流れは変わるはずだ!)
その矢先、三杉の足元から放たれたショートパスが一閃。本間へと届く。
本間は迷わずクロスをゴール前へ。
長身・真田が猛然と走り込み、跳躍!
「もらった!」
だが――若島津が鉄壁のパンチングで弾き返す!
ボールは高く宙へ舞う。
その落下地点に走り込む三杉。
沢田タケシも必死に追うが……。
(沢田が届く前に打つ!高い位置から、狙うなら……!)
「これしかない!」
三杉は身体を反転させ、空中でオーバーヘッドキックの体勢をとった。
【三杉くん、オーバーヘッドだーー!】
沢田は追いつけない。だが反対側から、黒いユニフォームが飛び込んできた。
――東邦の副キャプテン、友坂辰馬。
「させねぇよ!!」
彼もまた空中で身体をひねり、三杉のオーバーヘッドに真っ向からぶつかる!
【三杉くん!友坂くん!オーバーヘッド同士の衝突だーー!!】
衝撃と共にボールは弾かれ、再びこぼれ球となった。
「何!?」三杉が目を見開く。
「俺たちを舐めるな!」辰馬が叫ぶ。
次の瞬間、沢田がボールを拾いドリブルで突進。反町へつなぎ、反町がシュート!
だがこれも武蔵のGKに阻まれる。
――渾身のオーバーヘッドが不発に終わった。
その衝撃か、あるいは時間の経過によるものか。三杉は胸に手を当て、苦悶の表情を浮かべる。
ベンチが慌ただしくなる。
「もう無理だ!交代だ!」
「待ってください、監督……!」三杉は肩で息をしながらも必死に抗う。
「僕にも意地があります。あと……あとワンチャンスだけ!」
監督は眉をひそめつつも頷いた。
【予定の30分を超えている!それでも三杉くんはピッチに残るようです!】
スタンドの医師が声を荒げる。
「なぜ交代させないんだ!」
しかし、その隣で弥生が強く訴えた。
「先生!お願いします!キャプテンを……三杉くんをこのままプレーさせてください!この大会のために、彼は2年間を犠牲にしたんです!」
――グラウンドでは、なおも死闘が続く。
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日向が再び火を噴いた。
「うおおおおお!」
強引なドリブルで敵を次々と抜き去っていく。
「ここで奪う!」
三杉が必死に前へ出る。
(こい、日向!お前からボールを奪い、カウンターだ!)
(よし!この一対一こそ俺の望む形だ!)
友坂が後方から声を飛ばす。
「小次郎!いけーー!!」
二人は真正面から激しく激突した。
【ダメ押しを狙う日向くん!そしてここで奪って速攻につなげたい三杉くん!】
「ぬ、ぬくぞ!」
「と、止める!」
だが次の瞬間――。
三杉の表情が一変した。
心臓に負担がかかりすぎ、限界が訪れたのだ。
「はぁっ……!」
身体が崩れ落ちる。
日向は驚き、思わず手を伸ばす。
「三杉!」
倒れかかる彼を抱きとめた瞬間、日向の視線はボールから逸れてしまう。
武蔵はその隙を逃さなかった。
「キャプテンのために!一点を取るぞ!」
「これが三杉さんの掴んだチャンスだ!」
仲間たちの叫びがグラウンドに響く。
辰馬(すげぇ執念だ……!だが勝つのは俺たちだ!)
「東邦!絶対に止めるぞ!俺たちは東京王者だ!!」
「おおおおお!!!」
【ここで友坂くんの檄に応え、東邦ディフェンスが食らいつきます!】
吉良監督が静かに呟く。
(……やはりな。戦術だけではない。サッカーは格闘技。最後は精神力だ。辰馬はそれを理解している。だが小次郎は……)
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残り時間5分。会場の熱気は最高潮に達していた。
「ダメ押しだ!」辰馬が叫ぶ。
「おう!!」東邦の仲間たちが声を合わせる。
そして――友坂が敵陣を切り裂いた。
武蔵は警戒する。フラッシュパスが来ると思い込んでいた。
だが辰馬は単独突破。華麗なルーレット、鋭いシザースを連発し、ゴール前に到達。
GKとの一対一――彼はシュートではなく、ヒールリフトを選んだ。無回転シュートと共にヒールリフトは友坂辰馬の代名詞であった。
ボールはふわりと浮き、GKの頭上を越え、そのままゴールネットを揺らす。
【決まったーーーー!!友坂くんダメ押しの5点目!!本試合、個人としては2点目!】
スタンドが揺れるような歓声。
東邦イレブンは抱き合い、武蔵イレブンは意気消沈した。
だが辰馬はすぐに三杉の元へ走った。
介抱している日向の隣に膝をつく。
「三杉!」
「……負けたよ。東邦にじゃなく、君にね」
涙ぐむ武蔵の選手たちが彼を取り囲む。
「キャプテン……すみません!」
「まだだ」三杉はかすれた声で言う。
「最後まで戦え。武蔵中の誇りのために」
その背中を、辰馬は目に焼き付けた。
――これが、本物のキャプテンの姿。
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ホイッスルが鳴った。
試合終了。
スコアは5対1。東京王者・東邦学園の勝利だった。
北詰監督は高らかに宣言した。
「目標は全国制覇だ!」
そして――支度を終えた東邦イレブンがロッカールームを出ると、そこに懐かしい影が待っていた。
「……久しいな、小次郎。そして、辰馬」
明和FC時代の恩師。吉良耕三が立っていた。
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