副キャプテン 辰馬 作:匿名希望のぽっちゃり
大会2回戦:東邦学園 vs 小西中(茨城)
試合結果:東邦学園 6-0 小西中
ハイライト
• 前半7分:MF沢田が中盤で相手のパスカット。すかさず友坂にスルーパスを通す。友坂は華麗なドリブルでDFをかわし、正確な無回転シュートで先制。
• 前半12分:FW反町が左サイドを突破し、中央へ鋭いクロス。味方のFWが合わせて追加点。
• 前半20分:友坂が相手陣でボールを保持しつつ、巧みなフェイントからシュート。GKの反応をかいくぐり、2-0。
• 前半28分:反町が裏に抜ける動きで相手DFを引きつけ、沢田のパスを受けてゴール。
• 後半10分:若島津が相手の強烈なミドルシュートをスーパーセーブ。無失点を維持。
• 後半18分:友坂の正確なロングパスから反町がゴール前で合わせ、さらに追加点。
• 後半25分:沢田がドリブルで敵陣を切り裂き、味方の選手にパス。6-0で終了。
記者コメント:「東邦学園は中盤の制圧力が圧倒的。沢田のパスセンス、友坂の突破力、反町の決定力が際立つ。若島津の安定感も光った。日向不在でも圧勝。」
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大会3回戦:東邦学園 vs 明光中(岐阜)
試合結果:東邦学園 7-0 明光中
ハイライト
• 前半5分:沢田のフラッシュパスを友坂が受け、ドリブル突破から先制ゴール。
• 前半12分:反町がサイドを駆け上がり、中央へクロス。味方選手が頭で合わせ追加点。
• 前半18分:友坂が巧みなヒールリフトでゴール。GK若島津も落ち着いて無失点を守る。
• 前半22分:沢田の正確なパスから反町が決定的なシュートで3点目。
• 前半28分:友坂が中盤で巧みにボールを動かし、味方選手が追加点。
• 後半8分:反町と友坂が連携し、味方選手がゴール。
• 後半15分:沢田がドリブルで相手DFを翻弄し、味方選手へラストパス。追加点。
• 後半25分:反町が最後の一撃で7点目。試合終了。
識者コラム:「東邦学園は攻守ともに隙がない。友坂辰馬の中盤支配力と沢田のパス精度、反町の決定力が噛み合い、周りの味方選手も絶妙にゴールに絡む。若島津の安定感は無失点記録を支える大きな要素だ。」
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東邦学園・3回戦終了後のロッカールーム
圧勝の余韻に包まれる東邦学園の選手たち。その空気の中に、思わぬ知らせが飛び込んだ。
「なに?翼が怪我しただと?」
振り返った友坂辰馬の表情が一瞬で硬くなる。
報告を持ってきたのは下級生の部員だった。
「はい、相手は花輪中だったんですが…立花兄弟が新空中殺法・スカイラブハリケーンとやらで攻勢に出てたんですが、空中で立花政夫と競り合った大空翼が、体勢を崩した政夫を庇って肩から落ちたらしくて…」
隣にいた別の部員が口を挟む。
「詳しくはビデオで見ていただければと…」
友坂はしばし無言で考え込み、静かに答えた。
「…そうか、わかった。」
帰り支度を手伝い始めた部員に、ふと友坂が声をかける。
「なあ、ふらの中はどうだった?」
「ふらの中は問題なく快勝でした。」
「そうか、ありがとう。」
短く返事をしたが、その胸中では別の思いが去来していた。
(松山、勝っているんだな… 当たるとしたら決勝か。南葛に勝てないと、東邦とは当たらないんだぞ)
荷物を肩にかけ、スタジアムを後にしながら友坂は独りつぶやいた。
(次は同じ大宮サッカー場だったな…会えるかね)
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新聞記事抜粋
「大会の行方を揺るがす大空翼の負傷」
全国大会3回戦、南葛中の大空翼が花輪中戦で肩を負傷した。原因は、立花兄弟の新必殺・スカイラブハリケーンとの空中競り合いで体勢を崩した立花政夫を庇い、自ら地面に落下したことによるものだ。
これにより南葛の攻撃力は大幅に減退する可能性が高い。エースが負傷したチームが勝ち上がれるか、大会の趨勢は大きく変わることになるだろう。
識者コメント
• 全国紙サッカー担当記者
「翼負傷の南葛は、攻撃の軸を失うと思われるが南葛には井沢や滝、来生など攻撃を担当するタレントは多い。翼の負傷は東邦学園やふらの中にとっては千載一遇の好機だ。」
•現ジュニアユース代表監督・見上
「南葛はチームワークの良さも武器だ。翼負傷の現状でも、周囲が結束すれば踏ん張れる可能性はじゅうぶんにある。むしろ大空翼が庇って負傷したという事実が、仲間を奮い立たせるかもしれん。」
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埼玉・日向家
玄関先で弟の尊が無邪気に声をあげた。
「兄ちゃん!」
その隣には三杉と弥生がいて、日向の弟妹たちと遊んでいる。
「やあ」
「こんにちは」
ふたりの姿を見た途端、日向の表情には苛立ちが浮かんだ。
「……なんの用だお前ら。つーか、なんでウチを知ってる?」
弥生が軽く笑みを浮かべる。
「尚美ちゃんに会って、一緒に来たのよ」
「……宗像だと!?」
ちょうどその名を呼ばれたかのように、奥から宗像が姿を現す。
「ああ日向くん。辰馬のお義母さんに頼まれてね、友坂家で作った野菜を持ってきたのよ」
日向の母が笑顔で受け取った。
「まあまあ、ありがとうね。本当に。友坂さんは羨ましいわ、こんなきれいなお嫁さんがいて」
宗像は少し頬を赤らめ、肩をすくめた。
「いやですわ、おばさま。お嫁さんだなんて……お義母さんが聞いたら気を悪くしますわ」
その声音には、まんざらでもない響きがあった。
日向は鼻を鳴らす。
(……宗像。“お義母さん”ってか。辰、外堀がどんどん埋められてやがる。本望だろうがな)
今、ここにいない相棒を思う日向
弥生が続けた。
「尚美ちゃんがね、日向くんちに友坂くん家の野菜を持ってくるのを手伝ったんだよ」
「……わざわざ手間をかけたな。はぁ……」
日向の投げやりな声にかまわず、三杉が一歩前へ。
「今日も試合に出てなかったね。おばさんから聞いたよ――退学するかもしれないって」
「要件を早く言え」
「要件は一つだ。君たちは俺たちに勝った東京代表。日向欠場で、名もなき相手に負けるなんて許さない!」
母が慌てて割って入る。
「小次郎!みなさんを中に入れて、お茶でも飲んでもらいなさい」
「……言うこと言ったなら、もう帰れ」
「小次郎!」
三杉は一瞬だけ日向を見据え、ふっと口元を緩めた。
「怪我じゃないと分かって安心したよ」
「俺がいなくても辰がいりゃ負けねえ」
「分かってるさ。彼の力は認めてる。だが――南葛に勝つには、君の力必要だ……それは友坂が一番よく分かっているはずだ…」
言い残し、三杉たちは玄関を後にする。
その背中を見送りながら、日向は唇を噛みしめた。
「……全く、うるせえ奴らだ」
独り残された家の静けさの中、日向は心の奥底で押し殺してきた想いを噛みしめる。
翼。松山。三杉。
数多のライバルたちの言葉が脳裏を過ぎる。
(……俺のサッカーは、まだ終わっちゃいねえ)
ーーーーー
翌日・大会会場
大宮サッカー場の正面ゲート前。
友坂が到着すると、壁にもたれかかって待っている影があった。
「監督、今日からまたベンチ入りします。」
日向小次郎だった。
鬼のような表情で言い切ると、東邦監督・三村は片眉を吊り上げた。
「ふっ、相変わらず身勝手な奴だな。……まあ大会前に選手登録はしてある。ベンチ入りは構わん」
言葉を切り、鋭い視線を向ける。
「だが試合には使わん! お前、ベンチ入りってのは試合に顔出すだけで済むと思ってるのか!?」
日向は食い下がる。
「優勝したいなら、俺を使うべきです!」
横でやりとりを見ていた友坂は、内心で肩をすくめる。
(……いや、試合に出されなくてもベンチにはいろよ。監督が怒るのも当然だろ!?)
⸻
準々決勝・第一試合。
地元の明和東が、全力の戦いを制して勝ち上がった。
「沢木、成田……みんな頑張ったんだな」
試合後のピッチを見つめ、友坂は拳を握りしめる。
「次は俺たち東邦学園だ。小次郎は出ないが――俺が全力で相手になる」
隣にいた日向も、目を細めてつぶやいた。
「あいつら、勝ったな」
「ああ。明日は俺が全力で相手になるよ」
「……すまない」
日向の声には、悔しさが滲んでいた。
(本当は――おれもあいつらと全力でぶつかり合いたかった)
「つーかよ、小次郎。試合に出なくても来いよ。監督が怒るのも当然だぞ」
「……うっ、悪い。実家に顔を出したりしてな」
不意に日向が口元をゆがめる。
「そうそう、宗像に会ったぞ。お前のこと、だいぶ心配してた。第一試合も見に来てたらしい」
「ああ、見に来ていたのは知ってたけど……」
「おいおい。宗像はお前が気づかなかったって言ってたぞ。手くらい振ってやれよ」
「……そうだよな。振ってやればよかった。そん時はそこまで気が回らなくてな」
日向は笑うように、しかしどこか真顔で告げる。
「俺からも宗像には詫びといた。今度デートするように言っとけってさ」
「そうか……わかった。大会が終わったら誘うよ」
そのとき、グラウンドから声が飛んだ。
「辰馬さん! 日向さん! もうすぐ試合始まりますよ!」
駆けてきたのはタケシだった。
友坂は軽くうなずき、立ち上がる。
「おう! 今行く」
「わかった」
ふたりは並んで歩き出し、試合の舞台へと向かうのだった。
試合直前、ウォーミングアップの時間。
東邦学園の選手たちがボールを回し、グラウンドの感触を確かめている。その中に、これまで姿を見せなかった日向小次郎の姿があった。
南葛メンバーの一人が驚きの声を上げる。
「おい!あれは……」
「日向だ! 日向小次郎だ!」
ふらのの松山も目を見開いた。
「やっと出るのか、日向……!?」
観客席もざわつく。
「三回戦まで圧勝だった東邦に、さらに日向まで出てきたらどうなるんだ!?」
タケシが声を張り上げる。
「はいっ、日向さん!」
パスを受けた日向は、迷わずゴールへシュートを放った。
――ドンッ!
「軽く」蹴ったはずのボールは、凄まじい威力でゴールネットを大きく揺らした。
翼は息を呑む。
(やっぱり……怪我なんかじゃない。あのシュート……日向くんは確実に去年より進化している!)
友坂も同じように胸を高鳴らせていた。
(小次郎……すげえシュートだ。あの壁を越えたんだな。決勝に照準を合わせ、最高の状態を作り上げてやがる……)
日向は内心で誓う。
(俺は決勝まで力を温存する。だから――辰、みんな……必ず決勝まで行ってくれ!)
「両チーム、練習を終了してください!」
アナウンスが響き、いよいよ試合前の緊張が高まる。
円陣を組んだ東邦学園。
監督が短く告げた。
「スターティングメンバーは昨日と同じ布陣でいく。」
「監督、日向さんは……」とタケシが問うと、監督は険しい表情を見せかけたが――
日向が割って入る。
「大丈夫だ。昨日の南葛の試合を少し見たが……お前たちで十分勝てる。心配するな。」
さらに、にやりと笑って言った。
「万一の時は俺がグラウンドに飛び出してやる!」
「日向さん……!」
選手たちの胸が熱くなる。
しかし友坂は一歩前に出て、きっぱり言い放った。
「安心しろ。小次郎、お前の出番はない。俺たちで決める。」
日向と友坂――互いに言葉はいらない。アイコンタクトで全てを交わす。
「いいな、お前たち!」
友坂が仲間を鼓舞する。
「小次郎に“必要ない”と思わせるくらい、出だしから飛ばしていくぞ!」
「はいっ!!!」
全員の声が、スタンドを震わせるほどに響き渡った。
実況の声がグラウンドに響いた。
「試合終了――! 東邦学園、中部中をまったく寄せつけない 6-0! ベスト4進出です! そして東邦の守護神・若島津くん、今日も無失点! 東邦学園、無失点記録をさらに更新しました!」
観客席が大きく沸く中、ベンチで腕を組んでいた日向は静かに目を細めた。
(決勝戦まで……あと一つだな)
その様子をスタンドからじっと見つめていた影があった。
――明和東中。かつて明和FCに在籍していたOBで構成されたチームだ。
「やっぱりだ……。なぜか分からないが、日向は試合に出ていない。」
「だが油断はできん。友坂、タケシ、そして若島津……あの3人は厄介だ。」
沢木が仲間に向けて言い切る。
「心配はいらない。俺たちはかつてのチームメイト。3人の性格も得意なプレーも、そして弱点も熟知している。」
仲間が頷き、拳を握る。
「友坂とタケシを抑え、若島津から点を奪う。確かに友坂は手強いが……日向小次郎が出ない東邦なら、勝算はある!」
その声は徐々に熱を帯び、やがて全員の叫びへと変わった。
「見てろよ! 明日は俺たち明和東が――必ず東邦学園を倒す!」
⸻
着替えを終えた東邦学園の選手たちは、観客席に腰を下ろして偵察を始めた。
目の前で行われているのは――ふらの中対南宇和中。
友坂が腕を組んで試合を眺める。
「ふっ……松山がどれほどになったか、楽しみだな」
隣のタケシがくすりと笑った。
「辰馬さん、なんか嬉しそうですね」
「おう、タケシ。松山とは去年の全中でバチバチにやり合ったからな。アイツが強くなっていれば、なんか俺も嬉しいんだよ」
――昨年の全国大会準決勝。
東邦とふらのの戦いは壮絶だった。特に中盤では、友坂と松山が支配権をかけて削り合い、互いにプライドをぶつけ合った。
以来、二人は互いを“強敵”と認めている。
試合は前半、ふらのが1点を奪われて折り返した。
友坂は息をのむ。
(松山……このまま終わりじゃないだろ)
隣で日向も険しい眼差しを送る。
(なにをもたついてんだ……松山。お前はこんなもんじゃねぇだろ)
灼熱のピッチ。気温は36度。
汗だくになりながらも、松山の瞳はぎらぎらと燃えていた。
(南葛も、東邦も……友坂も見ているんだ。必ず勝つぞ!)
日向が口の中で低く呟く。
(どうした松山……俺と辰に借りを返すんだろ)
友坂も心中で叫ぶ。
(この時間の2点目は絶対にダメだぞ!)
その声が届いたかのように、松山が吠える。
(2点目を許したらお終いだ! それは俺たちが一番よく分かってる!)
後半、キャプテンの気迫に突き動かされたふらの中が一気に息を吹き返す。
雪国仕込みの鍛え抜かれた足腰から放たれた松山のロングシュート――。
地を這うような弾道でゴールネットを揺らし、逆転に成功した。
観客席。
友坂は思わず口角を上げた。
「松山のやつ……いいシュートを撃つじゃないか」
日向も同じように笑う。
「ああ、そうだな」
だが隣の若島津は涼しい顔のまま、胸を張る。
「ですが――俺には通じないですよ」
タケシはほっとしたように頷いた。
「若島津さん……」
⸻
ベスト4を決める最後の試合――南葛対平良戸の激戦が幕を開けた。
開始早々、南葛は押し込まれる。前半10分。
平良戸の佐野、そして巨漢DF次藤に立て続けに得点を許し、スコアは0-2。
観客席の空気がざわめく。
「南葛が……」松山が驚きを隠せずに呟く。
「翼……」日向の声も低く沈む。
友坂は険しい表情で目を細めた。
「……平良戸は強いぞ」
三杉も冷静に分析する。
「大きいぞ、この2点差は……」
友坂の脳裏に浮かぶのは、翼がひたむきに取り組んでいた姿。
(翼……ビデオで前の試合を見た。ドライブシュートを狙っていたな……この試合で決めなきゃ、勝てないぞ!)
だが、状況はさらに悪化する。
南葛はもう1点を奪われ、0-3。
後半を残しながらも、王者が3点のビハインドを背負う。
しかも次藤の強烈なショルダータックルを受けた翼はピッチに倒れ込み、顔を歪めていた。
日向が拳を握る。
(翼だけじゃねぇ……滝、来生のFWも負傷している……)
若島津が低く呟いた。
「これは……あるぞ」
反町も目を見開く。
「南葛が負けるのか……?」
松山は首を振り、思わず声を張り上げる。
「あるのか……そんなことが?」
三杉が冷静に答える。
「翼くんなら3点差を埋められるはずだ。ただ……怪我の具合が心配だ」
友坂は平良戸の選手たちに目を向ける。
(次藤に佐野……こいつらとも、この先長い付き合いになるかもしれんな)
そう心の中で呟くと、立ち上がり軽く手を挙げた。
「ちょいとトイレ行ってくるわ」
⸻
友坂は観客席を抜けてトイレへ向かった。
前半終了した時間はお手洗いに行く人が多く混み合っていたが
長くならないうちに順番が周り小便器を使ったあと手を洗っていると隣に知ってる男がいた――ふらの中の松山光だった。
「おう松山。ベスト4進出おめでとう。……ギリギリだったな」
少し挑発めいた笑みを浮かべ、友坂が声をかける。
辰馬に気づいた松山も負けじと不敵に返す。
「ふっ、ありがとよ。東邦もベスト4おめでとう。……日向はどうした?怪我か?」
二人して話しながらトイレから出ると、二人の姿に気づいた周りの観客たちがざわめいた。
「おい!東邦の友坂辰馬と、ふらのの松山光だ!」
「あの二人って、話すんだな……」
「え?誰それ、有名なの?」
「何言ってんだよ!去年の準決勝、東邦対ふらのを忘れたのか?友坂と松山の競り合いは伝説だぜ!」
「そうそう!友坂くんはあの時、足を怪我したから東邦学園は決勝で南葛に負けたって言われてるんだから!」
「なんでそんなに詳しいんだよ……」
周囲の声が自然と耳に入る。
松山が静かに問う。
「足の怪我は……もういいのか?」
友坂は鼻で笑った。
「はん、とっくに治ってるよ」
一瞬の沈黙ののち、松山の目が鋭くなる。
「……友坂。南葛は勝てると思うか?」
その問いには、わずかな不安がにじんでいた。
友坂はわずかに目を細め、低く言い放つ。
「このままで終わる南葛でも……翼でもないってことは、お前も知ってるだろ」
「友坂……」
「後半をよく見ておけよ松山。――翼はドライブシュートを決めるだろう」
松山は思わず聞き返した。
「ドライブシュート……だと?」
「南葛が勝てば、次はふらのだ。……お前たちに止められるのか?」
挑発の色を含んだ視線に、松山も即座に応える。
「止めるさ。そして勝つ!――決勝戦で、お前と日向にまとめて借りを返す!」
「……待ってるぞ」
友坂はクールに言い残し、歩き出した。
二人が別れたその瞬間、試合会場に戻るブザーが鳴る。
席に戻ると、ちょうど後半が始まるところだった。
「辰馬さーん!後半始まりますよー!」
タケシが大きく手を振る。
「おう」友坂は手を挙げて返事した。
日向が横目で見ながら呟く。
「遅かったな。……何かあったのか?」
「なに、松山と会ってな。……あいつ、決勝戦で俺とお前に借りを返すってさ。お前が昔、全小前の合宿で殴ったことをまだ恨んでるらしいぜ」
日向が言葉を詰まらせる。
「……」
友坂は小さく笑った。
「俺と松山は勝負の問題だけどな。お前が殴ったのは……あの時のお前が危なかったからだ」
「……っ」
日向は苦い表情を浮かべ、吐き出すように言った。
「まあ……試合で借りを返すって言うなら、相手になるだけさ」
⸻
後半開始早々、大空翼はゴールから遠く離れた位置で立ち止まり、鋭く目を細めた。
そして――足を振り抜く。
――ズドォン!!
友坂辰馬(んっ、こんな距離から…ドライブシュートか!?)
松山「翼、血迷ったのか!!」
若島津「焦ってるのか翼!」
日向「そんな所から撃っても意味はねえぞ!!」
観客席もどよめいた。
記者たちが一斉にカメラを構える。
片桐「うつのか…!? まだ未完成のドライブシュートを!!」
ボールは轟音を立て、遥か高く舞い上がる。
次藤「キーパー、慌てんでよか! あんなもん枠に届かんタイ!」
しかし――。
ボールは急激な回転に引きずり込まれるように、真っ逆さまに落ちてきた。
――ズバァンッ!!
ゴールネットが揺れる。
観客が総立ちになり、実況が声を枯らす。
松山「これが…友坂が言っていたドライブシュート…!」
若島津「すごい回転だ…あんなに落ちるなんて…」
三杉「落ちるなんてもんじゃない! 急降下だ! 頭上から叩きつけられたんだ!」
日向「翼…!」
友坂(やはり撃ったか、翼。)
翼は勢いそのままに再びドライブシュートを放ち、ゴール!
キーパーは一歩も動けない。もはや偶然ではなかった。
点差は一気に一点差まで縮まる。
日向(嬉しいぜ翼…お前がそこまで完成させていたとはな!)
友坂(恐ろしい威力だ。高く上げたボールをドライブ回転で急降下させる…下手に止めようとすればブロックした選手が大怪我しかねない。若島津一人に任せたら…危ないな。)
平良戸は佐野、次藤が必死に体を張って止めにかかる。
だが最後は次藤の巨体ごとゴールへ押し込まれ、ネットが揺れた。
友坂(あの巨漢の次藤が、ボコボコにやられているだと…!?)
翼はドライブシュートでハットトリックを決め、ついに同点。
だがその直後、力尽きるようにピッチに倒れ込む。
南葛イレブンが慌てて駆け寄った。
一方の平良戸も諦めず、勝ち越しを狙って猛攻を仕掛ける。
佐野に競りかかる井沢の姿に――。
友坂「井沢か…あいつは粘っこいからな。佐野も楽じゃねえぞ。」
日向「南葛はタレントが豊富だしな。」
タケシ「東邦だって負けてませんよ!」
友坂「ああ…勝つのは東邦だ。」
試合終盤、平良戸の総攻撃を耐え抜いた南葛は、カウンターに転じる。
翼は再びドライブシュートを試みるも、不発。
最後は滝と来生――修哲コンビの鮮やかな連携から、来生の一撃が決まった。
逆転のゴール。
試合終了の笛が鳴る。
友坂(滝、来生の修哲コンビか…いや、井沢に高杉もいる。修哲カルテット…恐ろしいチームだな。)
⸻
全国中学生サッカー大会 ベスト4出揃う!
南葛中学(静岡)
ドライブシュートを完成させた大空翼を中心に、全国大会3連覇を狙う前回覇者。王者の本領を発揮できるか。
ふらの中学(北海道)
結束力なら全国随一。キャプテン松山光の「地を這うロングシュート」を武器に、堅守速攻で悲願の頂点を目指す。
明和東中学(埼玉)
地元代表が快進撃。準決勝では“元・明和FC”の選手同士が激突する注目の一戦となる。
東邦学園(東京)
エース日向小次郎を欠くも、軍師・友坂辰馬の采配で死角なし。守護神・若島津健は本大会ここまで無失点を誇る。
――大会は準決勝へ。王者・南葛の牙城を崩すのはどのチームか。熱戦必至である。