副キャプテン 辰馬   作:匿名希望のぽっちゃり

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日本Jrユース代表選抜合宿 ③

 

 

【スポーツタイムズ特集】

 

― 全日本Jr.ユース、連日の完勝劇! 高校生相手に示した“未来の代表”の実力 ―

 

 静岡で行われている全日本Jr.ユース代表候補合宿は、終盤に差しかかった6日目。

 この日行われた練習試合2試合は、国内でも名門と名高い強豪校との真剣勝負だった。

 結果は――対三原中央高校、4-0。

 対帝和高校、6-0。

 高校生相手に二連勝という快挙である。

 

 試合前、見上監督は「相手は格上。試合の中で何を掴めるかが大事」と語っていたが、蓋を開ければ内容もスコアも圧倒的。特に注目を集めたのはストライカー・日向小次郎の爆発力だ。

 強靭なフィジカルと破壊的なタイガーショットは高校生の壁をも粉砕し、2試合で計5得点。試合を通して存在感を示した。

 また、攻守の要として評価を高めたのが、松山光と友坂辰馬のふたりだ。

 

 

◆「攻の松山・守の友坂」

 

 松山は中盤でのキープ力、そしてボールを失わない粘り強さでチームを支えた。

 不利な局面でも冷静にパスコースを見出し、時に果敢なミドルシュートで攻撃を牽引。三原中央戦ではそのプレーが直接得点にもつながり、チームに勢いを与えた。

 一方の友坂は、まさにチームの“影の司令塔”である。

 ボランチ、さらには後半から最終ラインにも下がり、ラインの統制とカバーリングを完璧にこなした。

 守備に回っても味方への声掛けを欠かさず、的確な判断でオフサイドトラップを成立させたほか、後方からのロングパスで再三チャンスを演出。高校生相手でも一歩も引かない“支配力”を見せつけた。

 

 「攻撃のリズムが生まれたのは友坂の判断力があったから。彼の視野は本当に広い。」

 と三杉淳は語る。かつてチームを牽引した名プレイヤーがそう評するほど、友坂の存在感は大きかった。

 

 

◆“翼不在”でも進化を止めない

 

 世代No. 1と呼ばれる南葛中の大空翼は、全国中学生サッカー大会での怪我により今回の合宿には参加していない。

 しかし、選手たちはその空席を補うように互いに声を掛け合い、連携を深めている。

 「翼がいなくても、自分たちは強くなれる。その意識がチームを一つにしている。」(見上監督)

 

 合宿当初は中盤のコンバートやポジション調整により、ぎこちない動きも見られた。

 だが今では互いの特徴を理解し合い、プレーは格段にスムーズに。

 ボールが渡るたびに、ピッチ上に新しい形が生まれている。

 

 

◆最終日の相手は未定――「未知」との対戦へ

 

 本誌の発売日である本日、行われる最終日では、まだ対戦相手が発表されていない。

 

 選手たちは練習の合間にも、「次はどことやるんだ?」と興奮気味に話しているという。

 日向は「どんな相手でもやるだけだ。俺たちは世界に行くチームなんだからな」と力強く語り、

 友坂は静かに笑って言った。「どんな相手でも、全員で勝つだけですよ。」

 

 静岡の青空の下、彼らの戦いはまだ終わらない。

 未来の日本代表たちは、今日も汗を流し、次なる挑戦を待っている。

 

 

《スポーツタイムズ編集部/文責:北川俊明》

 

 

 

 

 

 夏の陽射しが静岡の練習場を包み込む。

 高校生を相手に二連勝を飾った翌朝のグラウンドは、これまでとは違う熱気に包まれていた。

 選手たちの表情には、自信と手応えが滲んでいる。

 日向はボールを蹴る音にも力がこもり、松山は静かに周囲の動きを観察しながら声を出す。

 友坂は、その両者の姿を見ながら短く息を吐いた。

 (あとは最後の相手が誰になるか…)

 

 「おーい!」

 どこか懐かしい声がグラウンドに響いた。振り向いた瞬間、仲間たちの顔が一斉に綻ぶ。

 「翼ぁ!」

 大空翼が、南葛中の仲間たちを連れてグラウンドに現れたのだ。

 笑顔と歓声が飛び交う。束の間の再会に談笑する選手たち。

 しかし、その穏やかな空気はすぐにエンジン音で掻き消された。

 振り返った友坂の視線の先――そこには、見覚えのあるバスがゆっくりと入ってくる。

 側面には、堂々と書かれた校名。

 『東邦学園高等部』。

 

 「まさか……」

 反町が思わずつぶやく。

 沢田タケシの顔からも笑みが消えた。

 「高等部と、試合……?」

 バスから降りてくる選手たちは、高校日本一の風格をまとっている。

 落ち着きと自信、そして勝者の余裕。

 日向も、友坂も、その空気を肌で感じていた。

 

 (やっぱり最後は、日本一か……)

 友坂の胸の奥に静かな闘志が灯る。

 

 

■試合開始

 

 ホイッスルが鳴った瞬間、空気が変わる。

 「攻めろ!」「いけぇ!」

 東邦学園高等部の猛攻が始まる。

 ドリブルで突破を図る高等部選手が勢いよくボールを運ぶ――その前に立ちはだかる影。

 

 「今度こそシュートまで持ち込むぞ!」

 その声にかぶさるように、友坂が現れた。

 「先輩、そんなに急がず少しお話ししましょうよ。」

 冷静な笑みを浮かべ、スライディングで一閃。ボールは友坂の足元に吸い込まれる。

 

 「なっ…またお前か、友坂!」

 「ボールの奪い合いがサッカーでしょ?」

 立ち上がりざまに、友坂は素早く味方へパス。

 

 ベンチから見上監督が頷く。

 「友坂の支配力が増しているな。」

 住友コーチも唸るように言葉を継ぐ。

 「ああ、中盤の深い位置からゴール前まで、すべてを支配している…。」

 

 

 友坂はすぐに松山へ声を上げる。

 「松山ぁ!」

 トップ下の松山へパス。松山は強烈なチャージを受けてもボールを離さない。

 「ここぉ!」

 友坂が手を上げ、タイミングを示す。松山は笑みを浮かべ、スルーパス。

 

 受け取った友坂がドリブルで一気に前線へ。

 「日向、後ろにつけ!」

 稲妻コンビ復活。日向が友坂の後ろに影のように走る。

 「来たぞ、明和コンビ!」

 「今日は友坂が先頭だ!」

 

 鋭いマルセイユルーレット、からのクライフターン。

 高校生DFが反応する暇もなく抜き去られていく。

 「なんだこいつ!?」

 「テクニックが別次元だ!」

 

 GK前――友坂の前に立ちはだかるのは、かつての先輩。

 (身体を開いた…右に出す気だ!)

 先輩が右へ寄る瞬間、友坂は左足のヒールで流す。

 日向が左サイドへ飛び出し――渾身のタイガーショット!

 爆音のような一撃がゴールネットを突き刺した。

 

 「やったー!」

 「先制だ!」

 ベンチもスタンドも大歓声に包まれる。

 

 

 「やられたぜ友坂…」

 失点したセンターバックが息を切らせて言う。

 「最後ヒールで流したの、瞬時の判断か?」

 友坂は少し首を傾げて笑う。

 「いや、先輩が右に寄ると思ってたんで。…まぁ、前から?」

 「ま、前から…?」

 戦慄が走る。自分の動きを読まれていた――中学生に。

 

 

 試合は完全にJr.ユースの流れ。

 友坂は両サイドに目をやり、早田と石崎にサインを送る。

 「行け!」

 早田が右から上がると、石崎が反対サイドに走る。

 早田がハーフラインまで運び、逆サイドへロングボール。

 石崎がコーナー付近でボールを受け、ヒールで後方へ。

 そこに現れたのは――友坂!

 

 「想像よりも攻め上がれたな、石崎。」

 「想像よりってなんだよ!」

 「悪い悪い、でも…ちょうど良いタイミングだ。」

 

 友坂のクロスが高く上がる。

 ゴール前に走り込む立花兄弟――スカイラブハリケーン!

 政夫のヘディングが地面を叩き、ボールはゴールに突き刺さる!

 

 「ナイスだ立花兄弟!」

 「へへっ、友坂の合図で走ったぜ!」

 

 前半終了。スコアは2-0。

 見上監督は満足げに笑みを浮かべた。

 

 

■後半戦

 

 友坂は控え選手たちに声をかける。

 「反町、タケシ、佐野――どんどん触って、どんどんアピールしろ。」

 「はい!」

 新田の肩を叩き、真剣な目で言う。

 「腐るなよ、新田。交代後の態度も見られてる。」

 「…はい!」

 

 翼と三杉が観客席で話す。

 翼「すごいな、友坂くんは…」

 三杉「彼は今のメンバーの中心だよ。技術もだけど、何より“心”が強い。」

 

 

 後半が始まる。

 高等部の猛攻を、友坂と松山の冷静な守備で凌ぐ。

 そしてカウンター。

 若島津が前線を見て、ボールを投げ出す。

 沢田、友坂、日向――東邦トライアングルの連携。

 細かいパスが繋がり、石崎が左サイドでクロスを上げる。

 日向がマークを外し、ボレーで叩き込んだ。

 

 3-0。

 「よっしゃあ!」

 「日向、最高だ!」

 石崎の背中を叩く友坂。

 「石崎、完璧だ!」

 「へへっ、当たり前だろ!」

 

 

 残り時間わずか。

 友坂は松山に近づく。

 「松山、最後の一点はお前だ。任せる。」

 「俺でいいのか?」

 「俺たちがマークされる。だから、お前が決めろ。」

 短い会話に、信頼の全てが詰まっていた。

 

 若島津のスローから松山へ。

 早田、佐野、沢田がフォローに走る。

 全員が一体となって攻め上がり――最後は逆サイドの友坂へ。

 友坂がゴール前にクロス。

 日向がヘディングで落とす。

 松山が全身で踏み込み――イーグルショット!

 ゴールネットが揺れた瞬間、全員が拳を突き上げた。

 

 

 試合終了。

 スコア――4-0。

 高校日本一、東邦学園高等部を完封。

 

 記者が呆然とつぶやく。

 「勝っちまった……中学生が、高校No.1を……」

 

 東邦の選手たちは肩を落としながらも、清々しい表情で口にする。

 「すげぇな…あいつら。」

 「でも来年、日向や友坂たちが同じチームに入るんだ。レギュラーの座が心配だな。」

 

 

 試合後。

 見上監督と翼たちが迎える。

 翼「おめでとう、みんな!」

 見上「よくやった。」

 翼は日向と友坂を見て微笑む。

 「すごかったよ。二人とも。」

 日向「…ああ。」

 友坂「ありがとよ。」

 

 その時、三杉が静かに歩み出る。

 「翼、これを。」

 差し出されたのは背番号10のユニフォーム。

 「背番号10は、お前にこそ相応しい。」

 翼の瞳が潤む。

 「ありがとう……!」

 仲間たちの声援が響く。

 「翼が10番だ!」

 

 翼は空を見上げ、拳を握る。

 「俺も……ヨーロッパ遠征に行きたくなっちゃった!」

 友坂は静かにその背中を見つめる。

 (日本Jr.ユースの力を100%引き出すには、翼の力が必要だ…)

 

 

■選抜発表

 

 夜のミーティング。

 見上監督の口から、遠征メンバーの名が読み上げられる。

 

 「東邦学園から――日向小次郎、友坂辰馬、反町一樹、沢田タケシ、若島津健。」

 会場にどよめきが走る。

 そして――

 「キャプテン、日向小次郎。副キャプテン、松山光、友坂辰馬。」

 

 拍手が湧き起こる。

 友坂は、チーム全員の顔を見渡してから静かに頷いた。

 

 二日後――彼らは西ドイツへと旅立つ。

 大空翼を日本に残して。

 

 空港の朝焼けの中、友坂は一人、搭乗ゲートで立ち止まり、呟いた。

 「行ってくるよ、翼。今度は、世界で会おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

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