副キャプテン 辰馬   作:匿名希望のぽっちゃり

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決勝戦・延長前半

延長前半 ――燃え尽きぬ闘志

 

 ハーフタイムが終わり、延長戦に突入する両チーム。

 ピッチの脇では、家族や仲間が選手たちを支えていた。

 日向の母が差し入れたレモンの砂糖漬けを口に放り込み、辰馬は酸味の刺激と砂糖の甘さに思わず目を閉じる。胃の奥から小さな炎が再び灯るのを感じた。日向の弟や妹も応援している。

チームの家族や地域の人たちの応援か彼らの力になる。

 

 南葛も同じだ。ロベルト本郷が翼の肩を揉み、三上監督が冷たいタオルを配る。岬の父は息子にストレッチを施しながら「最後まで諦めるな、太郎」と声をかけた。石崎は顔の腫れを冷やされながら「俺はまだやれる!」と叫び、井沢や来生、滝も静かに闘志を高めている。

 

 ――両軍、死力を尽くす延長戦が始まった。

 

 

5分間の攻防(延長前半・序盤)

 

 笛が鳴り響くと同時に、日向はボールを追った。

 頭の中を支配していたのはただ一つ。

 

 「若林から、ペナルティエリア外からゴールを奪う」

 

 かつて数々のストライカーが挑み、誰一人として破れなかった伝説。日向は己の全存在を懸けて、その伝説を打ち砕こうとしていた。

 

 「小次郎、焦るな!」

 辰馬の声が響く。だが日向の瞳は、野獣のようにぎらついていた。

 

 南葛もその意図を察していた。井沢が中央を締め、来生が素早く下がってカバーに入る。滝は俊敏な足でコースを消す。修哲トリオの結束は鉄壁だった。

 

 「簡単には撃たせないぞ、日向くん!」

 井沢が叫び、タックルに入る。

 

 しかし、日向はそれを力で弾き飛ばす。なおもペナルティエリア外で強引にシュート体勢に入った。

 

 ドガァン!

 右足から放たれた弾丸シュート。

 しかし若林は一歩も動じない。身体を張って正面でキャッチすると、すぐさま前線へのカウンターを狙った。

 

 

南葛の反撃

 

 翼にボールが渡る。高速ドリブル。

 辰馬は叫ぶ。「全員戻れ!特攻スライディング部隊、止めろ!」

 

 明和の選手たちが次々と翼の進路にスライディングで飛び込む。土煙が舞い上がり、スパイクが芝をえぐる。それでも翼はボールを失わない。

 

 「岬くん!」

 翼から岬へと鋭いパス。

 

 しかしそこに立ちはだかるのは、空手仕込みの反射神経を誇るキーパー、若島津健。

 岬のシュートを横っ飛びで弾き飛ばす。

 

 「ナイスだ、若島津!」

 辰馬が拳を握る。だがボールはまだ生きていた。

 

 

運命の空中戦

 

 弾かれたボールに最初に反応したのは岬。

 すぐさまヘディングを狙うが、その正面に辰馬が飛び込む。

 

 「太郎、譲らねえ!」

 「辰馬くん、負けない!」

 

 両者の額がぶつかり合う勢いで競り合う。ボールはさらに高く舞い上がった。

 

 そこへ突っ込んでくる影――翼と日向。

 

 オーバーヘッドキック!

 両者のシュートが激突し、ボールはさらに天へと弾き返される。

 

 観客席からどよめきが起こった。

 「まだ上がるのか!?」

 「信じられない跳躍力だ!」

 

 最後に残ったのは辰馬と翼だった。

 

 辰馬はすぐに二度目のジャンプを繰り出す。自らの身体がこれほど速く、高く舞い上がることに自分でも驚いた。

 「まだ跳べるのか、俺は……!」

 

 しかし、翼も同じだった。ゴールへの執念が翼をさらに押し上げていた。

 

 ――二人の身体が宙で交錯する。

 

 オーバーヘッドキック!

 

 翼の足がボールを捉えた。

 鋭い弾道がゴールネットを突き破るように突き刺さる。

 

 「ゴォォォォォル!!」

 南葛、ついに勝ち越し。スタジアム全体が大歓声に包まれた。

 

 

日向の後悔と辰馬の決意

 

 日向はピッチに拳を叩きつけた。

 「くそっ……俺が、若林にこだわって……!」

 

 彼は理解していた。己の執着がチームのバランスを崩し、カウンターを許したのだと。

 

 一方で辰馬は、翼の執念に背筋を震わせていた。

 「あれほどまでにゴールを欲する心……勝ちたいという思いが身体をあそこまで動かすのか……」

 

 だが、恐怖と同時に、強烈な闘志が胸を焦がす。

 ここで折れてはならない。仲間のために、自分のために。

 

 辰馬は立ち上がり、チームメイトを振り返った。

 「……負けれない、だよな小次郎!」

 

 日向が顔を上げる。辰馬はさらに声を張り上げた。

 

 「勝つのは明和FCだ!!」

 

 声はスタジアム全体に響き渡り、疲れ果てた仲間たちの心を揺さぶった。

 日向の瞳に再び炎が宿る。

 若島津が拳を握り、タケシが叫び、控えのメンバーたちも立ち上がる。

 

 ――延長前半は、南葛の勝ち越しで終わった。

 だが、明和の魂はまだ折れていない。

 

 辰馬と日向の叫びが、ピッチにこだました。

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