副キャプテン 辰馬 作:匿名希望のぽっちゃり
日本ボールで試合は再開された。
岬がセンターサークル付近でボールを受けると、すぐ前線へ走り込む日向へ鋭いパスを通す。
日向は胸でボールを収め、そのままゴールへ一直線に走り込む。
しかし、その進路を遮るようにディアスが滑り込んでくる。
日向「どけぇっ!!」
日向は身体ごとぶつかり、その圧力でディアスを押しのけ強引に突破するが、ボールがわずかに足から離れた。
その一瞬を逃さず、アルゼンチンDFの巨漢・ガルバンが身体をねじ込む形でボールをさらっていく。
ガルバン「フンッ!」
そのままアルゼンチンは中盤にボールを預け、全体の陣形を整えながら様子を伺う。
日本は戻りながらマークの整理に忙しい。
友坂(やはりディアス中心の構図……だがパスカルも自由にさせちゃいけない)
友坂は声を張り上げた。
「みんな、マーク確認!ディアスとパスカルの位置、絶対見失うな!」
松山が瞬時に反応する。
「聞いたな、みんな!落ち着いてライン整えるぞ!」
日本DF陣「おうっ!」
その頃にはアルゼンチンのボールはすでにディアスの足元へ。
翼が素早く寄せる。
翼「ディアスっ!」
しかしディアスは近づいてきた翼を横目に、落ち着いた声で告げた。
「お前もMFなら状況を見て動きな。今はお前と遊ぶ時間じゃないぜ。」
そして、まだ距離のある右サイドへ走り込むパスカルめがけてロングパス。
しかし——そのパスの軌道に、友坂辰馬が割り込んだ。
友坂「はい、そこまで!」
見事にパスカット。
その勢いのまま、ディアスに向けて挑発気味に叫ぶ。
「おい、ディアス!お前もMFなら状況見てから出せよ!」
ディアス「なにぃ!?てめぇ……!」
怒りを露わにするディアス。
だが友坂は一切取り合わず、すぐに岬へパス。
(挑発は成功、だが……翼はまだ南米スタイルへの対応が遅れてるな。自分がやるのと守るのじゃ違うか。——それでもお前はエースだ。負けられないぞ、翼)
岬はボールを持って前へ運んでいくが、日向にはすでに厳しいマークがついている。
その間に、新田が大きく動いてマークを外しにかかっていた。
新田(昨日、辰馬さんにもらったアドバイス……活かすぞ!)
友坂(そうだ、新田!考えて動くんじゃない。動きながら考えるんだ!)
岬が新田の動きを見逃さない。
「新田!」
速いタイミングのスルーパス。
そのパスを新田はノートラップで受け、そのまま“隼シュート”に持ち込む――が!
アルゼンチンDFが横からショルダータックルをかまし、新田の身体はバランスを大きく崩す。
放たれたシュートはわずかに枠を外れ、ゴール横へ大きく逸れていった。
新田「くそっ……!」
すかさず友坂が声をかける。
「いいぞ新田!それでいい!どんどん動け、どんどん撃て!」
他の仲間たちからも「ナイスシュート!」「惜しいぞ!」と声が飛ぶ。
新田は息を切らせながらも満面の笑み。
「はい!岬さん、次もお願いします!」
日向はその姿を見て腕を組みながらつぶやく。
(辰のやつ……新田に何か吹き込んだらしいが、見違える動きだな。来年はタケシたち、マジで苦労するぜ)
◆
そしてアルゼンチンのゴールキックから試合は再開。
友坂はパスカルにべったりつき、影のように動く。
パスカル(うっとうしい……こいつ、完全に俺を殺しに来てる)
友坂(実力はある。だが、ディアスほどじゃない。けど“ディアスの一番の相棒”だ。ここを封じればディアスの選択肢が減る)
ボールはやがてディアスの元へ渡る。
パスカルへ出そうと視線を送るが、その先には友坂がピッタリと寄せていて自由がない。
ディアス(チッ……なら俺が行く!)
翼がマークについた瞬間、ディアスは南米式ドリブルへ移行。
足首の角度、ステップのリズム、体重移動……すべてが欧州型の翼とは異質のリズム。
一瞬、翼のタイミングがズレる。
翼「くっ……!」
その隙にディアスは翼を抜き去り、ロングレンジから助走をとった。
友坂はその体勢に見覚えがあった。
(あの姿勢……まさか——!)
「若島津っ!!ドライブシュートだぁーー!!」
パスカル「ドライブ……だと!?」
若島津「えっ!?」
ディアスの足から放たれたボールは、鋭く上昇し、そこから不自然なほど落ちてくる“超”ドライブ回転。
翼のドライブシュートに匹敵する威力と精度。
若島津は反応するが、わずかに届かない。
ズドォォン!!
ゴールネットが大きく揺れる。
スコア
日本 1 - 2 アルゼンチン
ディアスのドライブシュートによって、アルゼンチンがついに逆転した——。
ディアスの放ったドライブシュートがゴールネットを揺らした瞬間、アルゼンチンベンチが沸騰するように立ち上がった。
その中心で、ディアスはほんの一瞬だけ眉をひそめた。
(あの男…俺のドライブシュートに気づいたのか)
驚きと同時に、認めざるを得ない。やるな――と。
パスカルが駆け寄る。
「すまん、ディアス。あの野郎、俺のマークの位置どりが上手いぜ。完全にパスコース塞がれた」
息を整えつつ悔しげに言う。
ディアスも視線だけで日本の7番を追う。友坂辰馬。
「絶妙な距離だ。近すぎず、遠すぎず。俺の判断を一瞬遅らせる位置…それがわかってる奴の動きだな」
「しかも、あいつ――お前がドライブを撃つって気づいてたぞ」
パスカルの言葉に、ディアスはピクリと反応した。
パスカルは苦笑いする。
「なぁディアス。日本で一番厄介なのは10番じゃなくて…7番かもな」
「フン、どっちでもいいさ。」
ディアスの目が鋭く光る。
「勝つのは俺たちアルゼンチンだ。」
二人は力強く頷き合った。
◆ ◆ ◆
一方、日本ベンチ側。
ゴールを許した翼は顔を上げられず、拳を握りしめていた。
「すまない、みんな。俺が抜かれたせいだ…」
悔しさが声の震えに滲む。
翼の中に、南米スタイルへの焦りと、同年代の天才への遅れを取った痛みが渦巻いていた。
そんな翼の肩を叩いたのは、友坂辰馬だった。
「いや、初見で対応できるドリブルじゃないよ。イタリア戦でも、あそこまでのアクロバティックな動きは無かった。
次は“そういう動きもある”って頭に入れとく。それだけで違う。」
優しい言葉ではない。
だが、真実であり、翼が前に進むために必要な言葉だった。
次に俯いていた若島津に視線を向ける。
「俺もすいません、辰馬さんが“ドライブシュート”だって教えてくれたのに止められませんでした…」
若島津は珍しく弱気な声を出した。その額にはまだ汗が滲んでいる。
「仕方ないさ。翼のドライブシュートだって完全に止めるのは至難の技だ。
ディアスのは…あの翼に劣らなかった。むしろキレでは勝ってたくらいだ。」
友坂の分析は冷静だった。
そして、その冷静さが、チーム全体に“まだ戦える”という空気を呼び込んでいく。
「翼、攻撃時は遠慮するな。お前も攻め上がって点を取りにいけ。
その時のディアスのカバーは――俺が行く。」
友坂が言い切った。
翼は驚いて顔を上げる。
(辰馬くん…!あのディアス相手に正面から行く気か)
「パスカルはDF陣に頼む。いいな?」
松山が胸を叩く。
「わかった、誰がついても良いように声かけ合うぞ!」
石崎と次藤も同時に声を張り上げた。
再びフィールドへ戻ろうとする中、友坂は翼を呼び止める。
「翼、何度も言うが――ディアスに勝てるかどうかだぞ。」
翼は小さく、しかし強く頷いた。
「わかってる。次は負けない。」
友坂も頷く。
「ああ。ただ…お前一人が勝てばいいんじゃない。オレたちがいる。」
岬も軽やかな笑みを向ける。
「そうだよ、翼くん。辰馬の言う通り。僕たちが一緒に戦うんだ。」
二人の言葉に、翼はようやく心底から笑みを返すことができた。
その悔しさは消えたわけじゃない。だが――仲間の存在が、それを前へ向かわせる。
日本ボールで試合は再開された。
笛が鳴ると同時に、翼は迷いなく大地を蹴り、一人で前線へ駆け上がる。
「勝負だ、ディアス!」
翼の叫びが中盤に響く。
ディアスは挑発的に笑い、その体を翼へ向ける。
「きさまに、俺は抜けん!」
二人の天才が、中盤で激突した。
身体と身体、技と技、読みと読み。
互いの足先が、まるで火花を散らすかのように絡み合い、ボールが弾むたびに観客席からどよめきがあがる。
押し込む翼。
受け流し切れず倒れ込むディアス。
その瞬間――。
(いける!)
翼が抜けようと踏み込むが、倒れたままでも諦めない男がいた。
ディアスが滑らせた足が、ボールの芯だけを絶妙にはじいた。
ボールはこぼれる。
しかし、そこに走り込む影。
「翼くん!」
岬だ。
誰より早く状況を見て、仲間のために走る男。
岬が丁寧にボールを拾い、すぐに翼へ返す。
再び前を向いた翼の前に、パスカルが立ち塞がろうと突っ込んでくる。
(抜かせん――!)
しかし、翼は迷わない。岬も迷わない。
二人はほぼ視線だけで意思を通わせた。
「岬くん!」
「はい!」
ワンツー。
それは、もはや芸術。
パスカルが一歩反応を誤った瞬間、二人の背中はもう前方に抜けていた。
右サイドから石崎が全力で駆け上がってくる。
翼はタイミングを計り、そこへパスを通した。
(センタリングだ!)
アルゼンチンDFが一斉にゴール前へ殺到する。
しかし――。
「と見せかけてっと!」
石崎は足裏でブレーキをかけ、ゴールではなく翼へ折り返した。
観客席から再び大歓声。
翼は振り抜くような体勢を見せる。
あの構え――アルゼンチンは知っている。
「ドライブシュートが来るぞ!」
ディアスが叫ぶ。
「GK!バルカン!作戦通りだ!」
GKとバルカンが左右のポストに寄り、翼が狙う“上”を封じる布陣をつくる。
ディアスの狙いはこうだ。
(翼は右上か左上のどちらかを狙う。
力勝負になってもポスト側で待っていれば弾き返せる!)
完璧な布陣。
完璧な読み。
だが――翼の目は、強気そのものだった。
「よし…いけぇ!!」
翼が放ったのは――
ドライブシュートではない。
空気を切り裂くようなドライブ回転を帯びた“パス”。
速度も軌道も、完全にゴールを狙う弾道そのもの。
パスの行き先はただ一人。
いや、一人しかいない。
日本の猛虎――
日向小次郎。
その身にまとった気迫は、すでに観客席にまで伝わっていた。
「来いよ…翼!」
日向はノートラップ。
胸も使わず、足元に置かず。
高速で迫るドライブ回転のボールを、
そのままタイガーショットのフォームで合わせる。
猛虎の右脚が振り抜かれ――
中学サッカー界を二分する二人の天才の、
史上初の“合体技”が炸裂した。
「タイガー…ショットォ!!」
衝撃は地鳴りのようだった。
ボールはGKとバルカンの間、
読みによる偏った布陣の“死角”へ飛び込み、
ゴールネットを揺らした。
ど真ん中――
一直線。
スタジアムが爆発する。
スコア
日本 2-2 アルゼンチン
前半15分。
互角。完全なる互角の戦い。
◆ ◆ ◆
その後も激戦は止まらなかった。
新田瞬も躍動した。
昨日、友坂辰馬から受け取ったアドバイス――
“動きながら考えろ”
それを体現するように、裏へ抜けるタイミングは冴えに冴えていた。
新田が抜ける!
岬から通る!
ノートラップの隼ボレー!
しかし――無情にもバーを叩いた。
歯を食いしばる新田。
だが、
「いいぞ、新田!その調子だ!!」
友坂の声が、新田の胸を再び熱くさせる。
(まだ…いける! 俺は、もっと上に…!)
◆ ◆ ◆
前半の終わり際。
日本はさらに攻勢を強めた。
友坂が声を張る。
「立花兄弟!次藤!――練習してたアレ、行けるかぁ!?」
驚きつつも、三人は笑った。
「ああ、行けるぜ!」
「もちろんタイ!」
翼・岬・友坂のパス回しから一気にラインを押し上げ、
ゴール前で立花兄弟と次藤が叫ぶ。
「いいぞ翼!上げてくれ!」
翼が高く、高くボールを上げた。
だが、日本の選手はそこにいない。
観客がざわつく。
次の瞬間――
次藤が“発射台”になった。
立花兄弟がその背中から同時に跳ね上がる。
空高く舞い、二人同時にボールを撃ち抜く。
「ツインシュートォ!!」
ブレる。
揺れる。
ねじれる。
異様な回転を帯びたボールは、
GKの手を弾き飛ばし、ゴールへ突き刺さった。
しかし――。
立花兄弟は着地に失敗し、
勢いのまま両脇のゴールポストに激突して倒れ込む。
その痛みにも負けぬ歓声が、会場を揺らした。
同時に笛。
前半終了。
スコア
日本 3-2 アルゼンチン
日本、1点リードで後半へ――。
みなさまお疲れ様です
誤字が多くご迷惑をおかけしています。
途中から変更したこともあるのですが、
当初…辰馬は岬を太郎と呼んでましたが、岬の方が呼びやすいか、やっぱりと思ってしまい岬と呼ぶ様にしてます。
日向に対しては小次郎で行きたいと思います。今後、ゆっくりと変えていきたいと思います。
いつも誤字報告している方々ありがとうございます。みなさまのおかげで作品が仕上がってきてくれていると思います。
まぁ私の方でちゃんと見ろって話しなんですが…ごめんなさい