Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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九話 スゴイ!ジダイ!ミライ!

 

 

 

ジオウとディケイドを襲った襲撃者がディケイドの身体を吹き飛ばす。

ディケイドが変身解除されたのを確認すると襲撃者は即座に標的をジオウへと変え、右手の大剣でジカンギレードを弾き飛ばす。

守るものを失ったジオウは銀色の魔力光を纏った二メートル近い大剣の連撃を叩き付けられる。

その衝撃でジオウは強制的に変身解除され、ハジメの体が橋の上から弾き飛ばされた。

そして、クラスメイト達の静止を振り切りその後を追うように香織が飛び降りる。

ハジメは香織を放さないようにしっかりと抱き寄せて、二人奈落に落ちていった。

クラスメイト達は、それを呆然と眺めることしかできなかった。

世界は色褪せ、時は止まり、全てが小さく、かつスローモーションに見えるような錯覚に陥る。

 

「嘘、だろ…」

 

「カオリン……南雲君……!」

 

それは天之河達も同様だった。

彼らは目の前の光景に釘付けになり、動けなくなった。

特に雫は、あまりのショックに膝から崩れ落ちてしまう。

 

「雫君、落ち着くんだ」

 

直ぐ側にいたウォズが雫と同じ目線まで屈み、物凄く優しい声色で話しかける。

その仕草が、今ここには居ない誰かの影を幻視させる。

 

「雑談とは…随分と余裕ですねイレギュラー」

 

二人の直ぐ側で機械的でいて冷たい声が響く。

思考の淵から回復した雫が降り向くと、ハジメを奈落に突き落としたフードの人物の姿があった。

声質からして女だろう。

銀色の魔力光を纏わせた双大剣を、重さを感じさせずに振り下ろす。

 

「余裕だからね」

 

だが、双大剣はウォズを両断する寸前に白菫色の不可視の障壁に阻まれて動きを止める。

己の双大剣を止められたフードの女は僅かに目を細める。

だが、その障壁が少しずつ消滅しつつあることに気付くと、更に魔力を注ぎ込み押し込んでいく。

フードの女から噴き出した銀色の魔力が周囲の空間を軋ませる。

フードの女が発する膨大な魔力が暴風を起こし、フードの女の素顔が露になった。

その姿は、一卵性双子のように顔や、髪色がウォズとそっくりだ。

ただ、ウォズが琥珀色の生気のみなぎる瞳をしているのに対し、女の方は生気がまるでない人形のような蒼い瞳をしていた。

 

「足元にご注意を――禍天!」

 

すると、石橋の上に黒色の球体が出現し、宙に浮いていた女の身体が引き寄せられるように石橋に叩き付けられる。

女は重い腕を振り上げるように黒い球体を切り裂くとすぐに立ち上がる。

ただ、ウォズにとってはそれで十分。

女が一瞬球体に意識を向けた瞬間、ウォズが虚空からドライバーを取り出す。

黒と緑のカラーリングをしていて、中央にディスプレイと三つのボタンを搭載したドライバーを。

 

【ビヨンドライバー!】

 

ドライバーが装着者であるウォズの腰をスキャン。

格納されていたベルトが展開されて、自動的に最適な締め具合でドライバーが腰に装着される。

雫は仮面ライダーについて細かくは知らない。

だが、仮面ライダージオウは中学時代に香織と共に一緒に見た経験はある。

だから知っていた。

 

「ビヨンドライバー……?貴女はいったい何者なの?」

 

雫の質問に答えることなく、ウォズは懐からライドウォッチの一種『ウォズミライドウォッチ』を取り出す。

 

【ウォズ!】

 

ウォズはミライドウォッチをドライバーのマッピングスロットにセットする。

その流れでウォズはスターターを押し、ライドウォッチを起動させていた。

そして、ミライドウォッチの能力()を制限していたゲートが解放される。

 

【アクション!】

 

ウォズの背後に展開されるスクリーンでは歯車が回転を繰り返し、その横ではリューズが回っている。

まるで、それ自体がスマートウォッチを思わせる形だ。

ウォズを取り囲む緑の光が点となり、線となりウォズの体を包んでいく

右腕を大きく一周させ、戻した右手でクランクインハンドルを倒した。

 

「変身!」

 

【投影!】

 

ミライドウォッチの内蔵するデータをミライドスコープに投影。

同時に、ウォズの周囲の緑の光がどこかジオウの変身シークエンスを思わせる球体を形作り、完全にウォズの姿を覆い隠した。

 

【フューチャータイム! スゴイ!ジダイ!ミライ!】

 

ビヨンドフューチャーライザーが実体化した投影データが各種装備となって球体の表面に投影され、ウォズの体へと装着されていく。

 

【仮面ライダーウォズ! ウォズ!】

 

シルバーとブラック、ライトグリーンで構成された近未来的なボディーアーマー。

回転する歯車に代わり表示された、水色の『ライダー』の文字が複眼に収まり、変身シークエンスが完了した。

 

「祝え!過去と未来を読み解き、新たなる歴史を記す預言者――その名も仮面ライダーウォズ!未来の創造者である!」

 

「未来を創造するのは我が主のみです、イレギュラー。貴女は此処で確実に排除します」

 

「笑わせてくれる、ただ餌を食い荒らすことしか能のない害虫如きが私に敵うとでも?」

 

【ジカンデスピア!ヤリスギ!】

 

ビヨンドライバーから放たれるエメラルドグリーンの光が同色の刃を持つ槍『ジカンデスピア』を仮面ライダーウォズが掴み取る。

その次の瞬間、女の双大剣が障壁を切り裂いて突破した。

その双大剣をウォズがジカンデスピアで受け止める。

女は双大剣とジカンデスピアが火花を飛ばして競り合っている状況に僅かに目を細めた。

 

「……何故分解されない」

 

「なに、君達の『分解』は見飽きたからね。当然対策済みだ」

 

女が手に持つ長さ二メートル幅三十センチの双大剣はそこに存在しているだけで凄まじい威圧感を放っている。

それがその大剣の恐ろしさの本質ではない。

それは先ほど、ウォズが女を橋に叩き付けた時の黒い球体と橋が証拠だ。

通常魔法と言うものは核があり、それを針の穴に糸を通すよりもはるかに正確に斬るなりしなければ魔法は消滅しない。

だが、女が大剣を振り上げた時、球体はまるで其処に存在しなかったかのように消滅していた。

その秘密が、ウォズも言っていた『分解』だ。

この固有魔法は文字通り触れるだけであらゆるものを分解すると言う事。

つまり、勇者なんて余裕で霞み、仮面ライダーでもかなりヤバい状況になりえるチートだ。

ただ、ウォズは未来で何度も分解を持つ敵と戦ってきたのだろう。

その対策は怠っておらず、エメラルドグリーンの光を纏ったジカンデスピアが分解の光を双大剣を跳ね除ける。

 

「――震天!」

 

ウォズからその言葉が発せられた瞬間、女の本能が警鐘を鳴らす。

反射的に飛びのこうとするが、それすらも許さずに圧縮された空間そのものが爆発を引き起こす。

 

「……ッ!!」

 

空間そのものが爆発した影響で凄まじい衝撃波が発生して、石橋の表面が空気中の塵となり、細かく舞い上がる

しかし煙が晴れると、その衝撃波を真っ向から受けながらも女は銀色の光を纏って生き残っていた。

内臓を少しやられたのか口の端から血を流して膝をついているが、空間そのものが砕け散ったかのような衝撃の中にいたにしては軽すぎるダメージだ。

ただ、女の身体を隠していたフード付きのぼろローブは消し飛び、その下に隠れていた白をベースとしたドレス甲冑のような戦装束が露になる。

ノースリーブの膝下まであるワンピースドレスに、腕と脚、そして頭部に金属製の防具を身に付け、腰の両サイドには同じく金属製のプレートを吊るしている。

 

「……本来なら跡形もなく消し飛ばす威力があるのだが、やはり、私は未熟者と言う事か。アーティファクトの補助があっても彼女達には遠く及ばないらしい」

 

その光景を見てウォズがどこか悔しそうな、それでいて悲しそうな様子で呟く。

 

「これで未熟者ですか…やはり、貴女は強すぎる。主の駒として相応しくない」

 

「それは嬉しいね。引きこもりを拗らした挙句、思い通りにならないと駄々をこねる迷惑ヤロウには相応しくないとは、最高の誉め言葉だよ」

 

「……私を怒らせるなら無駄です。私に感情はありません」

 

「何を言ってるんだ?まごうことなき本心だよ」

 

女はスッ…っと目を細め、腰を落として双大剣をクロスして構えた。

はたして本当に感情が無く、仕切り直ししただけなのだろうか。

ウォズの目には怒りを抱いているように感じたが、その考えを切り捨てた。

どうせ、直ぐに殺す相手だ。

 

「「はぁっ――!」」

 

右之大剣による唐竹の斬撃をジカンデスピアで受け流したウォズに、絶妙なタイミングで左之大剣が胴を狙って横薙ぎに振るわれる。

 

【ジカンデスピア!カマシスギ!】

 

その一撃を即座にジカンデスピアをカマモードに変形させながら右之大剣ごと左にずらし、右之大剣と左之大剣を纏めて上に弾き飛ばす。

女の両腕が上に弾かれたその隙に、ウォズは新たに投影したジカンデスピアで斬りかかる。

ジカンデスピアが緑色の軌跡を描く刃を、女はエビぞりの要領で身体を捻って回避してその勢いのまま後ろに回転し、下から右之大剣を振り上げる。

 

「ふっ!」

 

ウォズは足裏に白菫色の魔力を纏わせ、右之大剣の刀身に足を乗せる。

大剣の勢いに逆らわず、その勢いを利用して空中に跳び上がり何回か回転した後石橋に着地した。

踏み込んできた女に対してウォズもまた一歩を踏み込む。

女の右之大剣が石橋を削り、土煙が上がる。

その煙の中から再び女の姿が現れ、今度は左之大剣を突き刺すような突撃でウォズを襲う。

女の凄まじい突きを、ウォズは僅かに身をよじって回避する。

間髪入れずにカマモードのジカンデスピアを横なぎに振るうが、右之大剣で防がれた。

互いに至近距離で相手の武器を躱し、逸し、弾き、超接近戦を繰り広げる。

 

 

 

「………メルドさん、魔人族ってあんなに強いんですか?」

 

「…いや、確かに魔人族は俺達人間族を超える強大な力を持っているが、あそこまでの実力者は見たことがない。恐らくはお前達を殺すために派遣された最上位の実力者なのだろう」

 

天之河達は実際に魔人族を見たことがない。

だが、イシュタル達教会関係者から叩き込まれた座学において、魔人族の特徴は天之河達も周知している。

浅黒い肌と僅かにとがった耳。

女は白磁のように白い肌と一般的な丸みを帯びた耳を持っているのにもかかわらず、天之河に魔人族として認識され、魔人族と何度も交戦経験のあるメルド団長も否定しなかった。

仮面ライダーウォズのデータ収集装置である『クロックブレードS』は二人の会話を正確に捉え、変身者の耳へと届ける。

ヤリモードのジカンデスピアと双大剣がぶつかり合い火花を散らす。

仮面の下でウォズは嘲笑を浮かべた。

 

「なるほど。『魅了』を応用して自分の姿を魔人族に見せているのか。自分の本当の姿を隠して、勇者のヘイトが魔人族に向くように仕組んだわけだ」

 

ウォズが女の耳元で囁くように呟く。

その言葉に女は僅かに目を細め、ヤリモードのジカンデスピアを叩き落とそうとするが、即座にカマモードのジカンデスピアが振るわれ妨害される。

 

「……だったら何だというのです」

 

女はウォズの追撃を逃れるため、バックステップで後方に跳ぶ。

ウォズも追撃はしない、だがいつでも攻撃できるようジカンデスピアを軽く構える。

 

「随分とチャチな真似をする事だと思っただけだよ。…いや、君の主はただのヒキニートでしかないチャチな存在なのだから仕方がないか」

 

「――よほど死にたいらしいですね。我が主を愚弄した罪、その身で贖いなさい」

 

女は背中から銀色に輝く一対の翼を広げる。

バサァッ…と音を立てて広がった翼は、銀の魔力だけでできた、魔法の翼のようだ。

女が右之大剣を前に突き出すと銀翼から羽が分離しておびただしい数の銀羽が掃射され、銀の砲撃が乱れ放たれる。

ウォズは、それらを風に吹かれる木の葉のようにゆらりゆらりと揺れながらかわし、交差する一瞬で振り抜かれた双大剣をジカンデスピアで受け流す。

そうして生まれた僅かな剣撃の隙間を側宙するように通りぬけた。

殆ど無傷で銀羽の掃射を乗り切ったウォズを見た女は双大剣を前に突き出した。

女は双大剣を中心に、銀翼を螺旋状に絡ませる。

分解能力を秘めた銀色の魔力が燦然と輝き、空間が神秘的な輝きで満たされる。

 

「それが切札かい? なら、受けて立とう」

 

【ビヨンド・ザ・タイム!】

 

クランクインハンドルを開き、再度前に倒すことでビヨンドライバーを必殺待機状態へ移行させる。

銀色の魔力を双大剣の先端に束ねる女の背後に緑色の立方体を出現した。

 

「跡形もなく消し飛びなさい!イレギュラー!!」

 

【タイムエクスプロージョン!】

 

自らの身体を弾丸のようにして、空間そのものを抉りながらウォズに迫る。

ウォズはそれを『キック』の文字を回転させながら迎え撃つ。

 

「「はああぁぁぁ!」」

 

必殺と必殺が激突する。

銀の魔力と白菫色の魔力がぶつかり合い、太陽コロナのようなものを巻き起こす。

だが、その均衡も直ぐに傾く。

女が突き出す双大剣に大きく亀裂が入り、エメラルドグリーンの輝きが銀の螺旋を侵食していく。

焦燥の色を浮かべた銀髪の女が大剣にさらなる魔力を注ぎ込もうとするが

ビキッ!

ビキビキッ!

そんな音を立てて双大剣は完全に砕け散った。

攻撃と防御、二つの要を失った女に逃れる方法は無く女はその豊満な胸部に蹴りを叩きこまれ、背後のキューブに押し込まれる。

 

「あぁあああああああっ!!!」

 

銀髪の女を拘束していたキューブに表示された時計の針が高速で回転し、十二時を指した所で時限爆弾のように爆発を起こした。

 

 

 

 

「……ッ、イ…レギュ…ラー……」

 

「おや、まだ息の根があるとは。ならば…」

 

確実にとどめを刺したと思っていたウォズだったがまだ女に息があることに気付くと、僅かに驚いたような声を上げる。

ならば、とジカンデスピアを片手にカツンカツンと女に歩み寄り、ジカンデスピアを振り上げ、女に振り下ろす。

 

「待て!待つんだ!彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

 

ジカンデスピアが女の首の薄皮一枚切り裂いた瞬間、天之河が大声で制止をかける。

ウォズはジカンデスピアが首を切り裂く体勢のまま、「何言ってんだ、アイツ?」と訝しそうな雰囲気で肩越しに振り返る。

 

「―ッ!!」

 

その瞬間、腹部に強打を受けたウォズは仰け反る。

見れば、地に伏していたはずの女がフラフラしながらも立ち上がっていた。

 

「私の名は『ノイント』と申します。イレギュラー、この借りは必ず返します!」

 

そう捨て台詞を吐きながら、女は自身が通ってきた空間の裂け目に飛び込む。

その様子を見届けて、ウォズは苦々しい表情を浮かべながら変身を解除した。

とはいえ、一匹を逃した所でそう変わるわけでもない。

あの銀髪の女は害虫だけでなく、黒光りするGのような性質も持っている。

即ち――1匹見たら100匹いると思え!

たかが1匹を潰したところで、敵側には何の痛手も与えられない。

 

「さて、君にはこれを渡しておこう」

 

ウォズは気を取り直すと、ブランクライドウォッチを取り出す。

そのブランクライドウォッチを雫と龍太郎に手渡した。

 

ウォズがブランクライドウォッチを差し出した手から、二人の手に冷たい感触が伝わる。

雫は眉をひそめた。

 

「これは……?」

 

「選択肢さ、戦うか、戦わないかの」

 

ウォズは淡々と短い説明をすると、首元からマフラーを引き抜く。

すると、蛇のように動き出したマフラーはウォズの体を覆い隠し、一瞬にしてその場から姿を掻き消してしまった。

 

 

 

その後、未だ気絶している士を担いで残った全員でホアルドに戻り団長は例のトラップとハジメと香織の死亡報告をしに出掛けて行った。

そして、その次の日には王城へと帰還した。

 

 

 








夜が更けた、ホアルドの町の何処かで。

「ヒ、ヒヒヒ。ざまぁないぜ。雑魚のくせに調子に乗るから……て、天罰だ。ヒ、ヒヒ」

「…素晴らしい憎悪です。貴方はいい駒になりそうですね」

「ッ!?だ、誰だ!」

「はじめまして、檜山大介。貴方をスカウトに来ました」

「す、スカウト?」

「ねぇ、その話、僕も一枚かませてくれないかな?」

「…それが、お前の本性なのか?」

「本性?そんな大層なものじゃないよ。誰だって猫の一匹や二匹被っているのが普通だよ。ただ僕は少しだけ人より猫を被るのが上手いだけさ」

「……なるほど。では、アナタの力も借りましょう。確かにあのイレギュラーを排除するのに役立つかもしれません」




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