Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強 作:マサヒロ (旧名デイブレイク)
書き直しました。
レッドカーペットが敷かれ、先には祭壇のような場所と豪奢な玉座が見える。
だが、そこには似つかわしくない多くの命が散った跡があった。
そして、そこで二人の男…ジクウドライバーを腰に巻いたハジメとネオディケイドライバーを着けた士が向かい合っていた。
「もうやめろハジメ!ここで全てを破壊するつもりか!?香織は、■■はどうするんだよ!?ここで全てを破壊する事よりも重要な事がお前にはあるだろ!!」
体中から血を流した士が叫ぶが、ハジメは腹部に大きな穴をあけ今にも失血死してしまうだろう。
だが、ハジメはそれを感じさせない淡々とした声で返す。
「ああ…アイツは俺の香織や■■を、俺の『大切』の全てを奪ったんだ。だからアイツを…アイツが造ったこの世界を破壊する…」
ハジメの瞳には絶望しか映っていない。
大切な者の死、そして裏切り。
ハジメはそれを一度に経験し過ぎてしまった。
「な、南雲!ここでお前を倒して世界を救う!エヒト様のためにも!」
そんな中ハジメの背後に怪人『アナザージオウⅡ』がハジメ目掛けて長短二振りの剣を振り下ろす。
だが、ハジメに当たる前に禍々しい赤い何かに当たり、半ばから消滅した。
「何っ!」
アナザージオウⅡが驚愕と共に後ろに跳び後退すると、ハジメのジクウドライバーが禍々しい金色のオーラが纏わりつき黄金のドライバーへと形が変わる。
そして、大理石の床からマグマが噴き出し、そのマグマで時計の『十時十分』を指し示した。
再びアナザージオウⅡが突っ込んでくるがハジメは臆することはなかった。
「変身」
ハジメが小さく呟き、黄金のドライバー、『オーマジオウドライバー』の右側の装飾『オーマクリエイザー』、左側の装飾『オーマデストリューザー』を押し込み、ドライバーが金色の輝きに包まれた。
【厄災の刻!】
【最低!最悪!最大!最恐王!オーマジオウ!!!】
おどろおどろしい音声が音声がベルトから鳴ると、ハジメを中心に天球技を模したリングが黒と黄金のアーマーをハジメに装着させる。
時計にあったマグマの『ライダー』の文字が宙に浮かび、複眼に禍々しい赤で文字が収まると凄まじい衝撃波が士とアナザージオウⅡとその奥に居る怪人を襲い、ハジメと士の大切な人達の死骸を吹き飛ばしていった。
士が目を開けるとハジメの変身した最低最悪の魔王『オーマジオウ』が立っていた。
オーマジオウの黒い靄を纏った拳は赤く染まり、オーマジオウに突っ込んでいったはずのアナザージオウⅡの頭は跡形もなく消えていた。
そして、オーマジオウの足元には煌びやかな白色と金色の鎧と、折れた剣と、頭だった肉塊だけが残っていた。
「こんのぉ!よくも光輝君を!」
そう叫びながら『アナザーゴースト』が突っ込んでくるがオーマジオウは黒い靄を纏った後ろ蹴りでアナザーゴーストを蹴りつける。
アナザーゴーストの上半身と下半身が血を噴き出しながら泣き別れになる。
強制的に変身解除をされた少女はそのまま動かなくなった。
「…この、馬鹿野郎!!」
【K-TOUCH!21!】
士がコートからケータッチ21を取り出すとディスプレイのライダーズクレストを押し始める。
【W OOO FOURZE WIZARD GAIM DRIVE GHOST EX-AID BUILD ZI-O ZERO-ONE!】
「変身!」
【FINAL KAMENRIDE DECADE】
士は平成二期すべてのライダーズクレストを放送順に押し、最後にFをタッチする。
ネオディケイドライバーのマゼンタのバックルを外し、ケータッチ21をベルトに装着した。
【COMPLETE 21!】
すると、『KAMENRIDE』の文字と共にディケイドのクレストが発生して無数のカードが出現。
一度散らばったカード群はディケイドの元へと集積して0と1のエフェクトを浮かべながら姿を変えていき、胸部中央のグランドジオウを起点に全身のカードの絵柄が浮かび上がる。
ディケイドコンプリートフォーム21に変身した士とオーマジオウに変身したハジメ。
そこには嘗ての共に笑いあい、共に戦った親友の『絆』は無かった。
「ハジメ、これ以上お前が壊れる前にお前を止める!」
「敵は殺す…それが今の俺の在り方だ。たとえそれが士だろうと!」
オーマジオウの右手に黒と金のオーラが纏われ、ディケイドコンプリートフォーム21の右手にも金とマゼンタのオーラが宿る。
「「……はあぁぁぁああああ!!!!」」
互いに叫びながら振り抜かれるディケイドコンプリートフォーム21とオーマジオウの拳。
それがぶつかった瞬間、周辺が見えないほどの強い光が走る。
そして……
雲が金色に輝き、沈みゆく太陽の光が差し込む王城の一室。
士の意識が朦朧としながらも覚醒していく。
「うぅ…」
呻き声と共に士は薄く目を開けた。
天井がぼんやりと見える。
そこは明らかに迷宮の内部ではなく、どこか見慣れない豪華なつくりの一室だった。
体中に痛みを感じながら、上半身を持ち上げると額から濡れた布がずり落ちる。
そこで初めて自分がベッドに寝かされていることに気づいた。
「何だったんだ…今の…」
士の頭の中にはまだあの衝撃的な光景の余韻が残っていた。
オーマジオウに変身したハジメと、ディケイドコンプリートフォーム21で立ち向かった士。
壊れてしまったハジメの姿と積み重なった死体の山。
夢なのか現実なのか判別できないほどのリアリティを持った光景だった。
士は額に手を当て、あの衝撃的な光景を必死に否定しようとする。
「あれは…ただの、夢だ…」
自分に言い聞かせるが、心臓の鼓動はまだ早く打っていた。
「士…!よかった…!体はどう?違和感はない?」
その声に反応して視線を横に向けると、椅子に腰かけて眠っていた雫が安堵の表情で士を見つめていた。
「……雫、か…」
士は弱々しく雫の名前を呼ぶ。
士は雫の姿をぼんやりと見つめながら、喉の渇きを覚えた。
「……どれくらい…経った?」
「三日よ」
雫は涙を拭いながら答えた。
彼女の目の下には濃い隈ができており、どれだけ不安な日々を過ごしたかが窺えた。
「……ハジメは?」
掠れた声で尋ねる士に、雫は一瞬言葉に詰まる。
彼女自身がまだ完全に受け止めきれていない現実があるのだ。
しかし、嘘を言っても仕方がない。
「……南雲くんと香織はここには居ないわ…迷宮で……貴方が気絶した、直後に橋から落ちた……」
雫の声が震える。
言葉にすることで改めて事態の深刻さが胸に刺さってくる。
雫の顔色が蒼白になっているのを察し、士はそれ以上は聞かなかった。
代わりに別の質問をする。
「俺たちは…どうやって生き延びたんだ?」
「そうね…」
雫が事の顛末を説明する。
ベヒモスジャマトとの壮絶な戦いの後、クラスメイトたちが歓喜に沸き立ち油断していたところに謎の襲撃者が現れ士とハジメに攻撃したこと。
そしてハジメと香織が橋から転落したこと。
その後ウォズが『仮面ライダーウォズ』に変身して襲撃者を迎撃したこと。
襲撃者が魔人族の刺客だったこと。
天之河の横やりで魔人族に逃げられてしまったこと。
ウォズはそこで消えるかのようにどこかへ行ってしまったこと。
そしてメルド団長の指示でなんとか脱出したことを聞いた。
「そうか…じゃああいつのお陰なんだな…」
士は深く息を吐く。
その時、士に奇妙なイメージが浮かぶ。
なぜ、ハジメは奈落に叩き落として、自分は気絶させられただけで済んだ?
いやそもそも何故あのタイミングで襲撃を受けた?
襲撃者の狙いが何だったのか?
士が思考の迷路に入りかけたところで雫が水差しを手にする。
「まずは少しでも良いから水分取って。三日も眠ってたんだから」
士は言われるがまま水を一口飲む。
冷たい水が喉を潤し思考をクリアにしていく。
雫が静かに続ける。
「貴方は本当に良くやったわ。みんな無事に帰れた…貴方のお陰でね。それに、愛ちゃんもすごく心配してたのよ。何度も様子を見に来てたわ」
その言葉に士は思わず苦笑する。
「だろうな…あの人は過保護すぎるんだ」
二人の間になんとも言えない沈黙が落ちる。
士は再び天井を見上げる。
頭の中ではあの悪夢の映像がフラッシュバックしていた。
オーマジオウに変貌したハジメ、血に染まる広間、そして最後の死闘…
これは単なる悪い夢なのか、それとも未来の現実なのか。
それは今の士には分からない。
二人の少し気まずい静寂を破るように雫がポツリと震える声で零す。
「……士、南雲君は、香織は…生きてると思う…?」
士はその名前に僅かに肩を震わせる。
何回か口をパクパクと開けるが、何かを振り払うように首を振る。
それを見た雫は、俯いて涙を一筋零す。
士は右手で雫の顎を引いて、左手で雫の涙をぬぐい取った。
「大丈夫だ、あの二人は生きてる。確実にな」
「……えっ?」
雫の瞳に疑問符が浮かぶ。
「……どうしてそう言い切れるの?」
雫の問いに士はゆっくりと目を閉じる。
脳裏に焼き付いたあの悪夢のような光景──崩れ落ちた玉座の間、絶望に染まったハジメの顔、そして瓦礫に埋もれたクラスメイト達の姿。
あの結末だけは絶対に避けなければならないという焦燥感が胸を灼く。
士は低く唸るように、そして雫の瞳を真っすぐ見て答えた。
「夢を見たんだ。嫌な夢だったが、それでも……あれが『正解』じゃないって確信してる」
「……夢?」
雫の目尻が不安げに歪む。
士は答えずに続けた。
「ウォズがあの時…俺を助けたのに、二人は助けなかった。あれが意味するのは一つだ。ハジメと香織は……自分たちの力で這い上がってくる。そういう運命だと『知っていた』だから、あいつは介入しなかった」
「でも……! いくらなんでも、あの高さから落ちて…」
雫の声が震える。
「信じろ」
士は決然とした声で言った。
雫の困惑した表情を見ても構わず続ける。
「あの二人は強い。それに…自分の親友の事を信じてやれ」
雫の唇がわずかに震えた。
士の言葉を反芻するように、ゆっくりと瞬きをする。
「自分の親友を…信じる?」
その言葉は、まるで長い間忘れていた大事なものを見つけたかのように雫の中で響いた。
幼い頃から誰よりも香織の傍にいたはずなのに、今はその香織の生死さえ確かでないことに怯えてばかりだった自分。
雫の瞳に徐々に光が戻っていく。
「ああ」
士は頷きながら、左手でシーツをぎゅっと握りしめた。
指の関節が白く浮き上がるほど強く。
その時、不意に部屋の扉が開けられる。
「「八重樫さん、士はめざ……め…?」」
「おう、士はどう……だ…?」
そこに居たのは幸利と浩介、龍太郎で、三人とも言葉が途中で止まる。
士の様子を見に来たのだろう、三人とも訓練着のまま来たようで、あちこち薄汚れている。
そして、三人の視線が一箇所に集中した。
士の右手が雫の頬を包み、雫が士の腕にすがりついている。
その距離感は明らかにただの『仲間』を超えたものに見えてしまう。
しかも雫の目元には涙の跡が光っている。
「「……お邪魔しました?」」
扉から覗き込んだ幸利と浩介が同時に同じ言葉を呟き、扉をそっと閉めようとする。
その瞬間、士が幸利と浩介に枕を投げつけ、その枕を龍太郎がキャッチする。
今の状況を飲み込んだ雫が顔を真っ赤にして士から離れる。
そして二人で声を張り上げた。
「「何を勘違いしてるんだ(のよ)!!この大馬鹿者共!!」