Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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一話 召喚

 

スマホのアラームが鳴り響き、彼は寝ぼけ眼でアラームを止める。

それからベッドの魔力と格闘し、モゾモゾと起き上がった。

 

「んぁ……なんか懐かしい夢を見たな……」

 

彼はそんな余韻を感じながら畳んであったジャージに着替え、リストウエイトとレッグウエイトを付けると部屋を出た。

一階に降りてもまだ誰も起きていない。

昨日の夜に沸かしてあったお茶をコップに注ぎ、喉を潤す。

そしてスニーカーを履き、玄関のドアを開けた。

空は僅かに明るくなりつつあるが、人通りはほとんどない。

 

「今日は5Kmでいくか」

 

スマホのマップとストップウォッチを起動し、ジャージのポケットに突っ込む

朝靄が立ち込める住宅街の路地を、彼はリズミカルな呼吸と共に走っていた。

湿ったアスファルトの匂いと遠くで新聞配達のバイクが唸る音が、新しい日の始まりを感じさせる。

 

 

 

 

 

 

重りが腕と脚の筋肉を適度に刺激し、汗が首筋を伝う。

それを慣れた手つきでジャージの裾で拭う。

ジャージのポケットでスマホが震える。

目標地点まであと300メートルの通知だ。

 

「そろそろか……」

 

彼は僅かにペースを上げ角を曲がり、噴水公園の外周コースに入った。

10年以上走っている5㎞コースはすでに身体に染みついている。

また、スマホが震える。

5㎞を走り切った合図だ。

彼がスマホを取りだし、ストップウォッチを止めるとそのタイムは18分30秒とある。

フゥーと公園のベンチで一息つき、酷使した肺を休ませ明るくなりつつある空を見上げる。

近頃は晴れ続きで有難い…と考えながら彼――犬飼士は腰の水のペットボトルのキャップを開けて、軽くのどを潤す。

士が転生して17年、もう前世の半分以上の年数をこの世界で過ごした事になる。

その事実にどこか感慨深い気持ちになる。

息が整い、士は周りに誰も人が居ないのを確認するとベンチから立ち上がり歩き出し、意識を集中させる。

すると目の前にオーロラカーテンが現れ、士は躊躇いなく足を踏み入れた。

オーロラカーテンを抜けた先は自分の家で、士が家の中に戻るとまだ誰も起きていなかった。

ペットボトルをシューズインクローゼットのペットボトル入れに投げ入れ、汗を流すために手早くジャージを脱ぎ捨てて、少しぬるめのお湯を頭からかぶる。

そのまま軽く頭を洗って浴室を出ると今世の母親――犬飼小夜がキッチンで朝食の準備をしていた。

 

「おはよう母さん」

 

「おはよう士、いつもよりも早起きなんじゃない?」

 

士は壁掛けの時計を見る。

特段いつもより早い時間ではない。

 

「いやぁ…?気のせいじゃね?」

 

「そう?取り敢えず制服に着替えてらっしゃい」

 

「うぉい」

 

士は小夜に従い、二階の自室に戻る。

自室に戻った士は綺麗にハンガーに吊るされた高校の制服を手に取り、袖を通す。

未だになれないネクタイを鏡を見ながら結び、スクールバックに筆箱や教科書、そして机の上に置かれたネオディケイドライバーを入れる。

ネオディケイドライバーはあの天使の話通り、12歳の誕生日にマシンディケイダーと共に送られてきた。

『君の恩人より☆彡』と書かれたメッセージカードは親に見られてとんでもない目にあった。

正直許せん。

制服をきっちり着込んだ士はリビングへ。

テーブルには焼きたてのトーストとスクランブルエッグ、飲むヨーグルトが並んでいて、妹の犬飼夏海がパジャマ姿の寝ぼけ眼でトーストをかじっていた。

 

「おはよぉ、お兄ちゃん」

 

夏海が眠そうに目を擦りながら言う。

毎朝の事、と言うわけでは無いがこの3分の1覚醒状態は呆れる。

 

「おはよう夏海、てかまだ目が半開きだぞ。ちゃんと食えよ」

 

「むにゃ…だってぇ、さっきお母さんに起こされたばっかなんだもん…」

 

士はため息をついて呆れながら席に着く。

 

「いただきます」

 

士はそう言ってスクランブルエッグをトーストに乗せ疑似ラピュタパンにしてかじる。

朝ご飯を先に食べ終えた夏海がテレビの朝の占いをつける。

士のてんびん座は最下位だった。

「周りに巻き込まれて災難にあう」とのことらしい。

 

「お兄ちゃーん。気を付けなよ?」

 

「…バカバカしい、たかが占いだろ」

 

士は占い結果とそれを真に受ける夏海を鼻で笑い、飲むヨーグルトで疑似ラピュタパンを流し込む。

 

「占い信じすぎなんだよ。それより夏海、ちゃんと遅刻しないようにな」

 

士は空になった皿とコップを持って立ち上がり、片付ける。

そして、棚から門矢士の物と同じトイカメラを取り出して首から下げる。

 

「行ってきます」

 

「お兄ちゃ~ん、気をつけてね~」

 

夏海がまだ眠そうな声で言いながらテレビをぼんやり眺めている。

士は呆れつつ玄関で通学用のローファーを履き、外に出た。

ガレージのシャッターを開けるとそこには光を受け輝くマシンディケイダーが静かに佇んでいる。

士の相棒はいつでもエンジンをかけるだけで颯爽と走り出す準備ができていた。

シートに跨りハンドルに架けていたヘルメットを被るとキーを回す。

低いうなり声がガレージ内に響き渡り、体の片隅に残った眠気を吹き飛ばす。

アクセルをゆっくりと開けてマークⅡの横を流れるように抜けて公道に出る。

士がひと月前にバイクの免許を取ってからはこうしてバイクで登校している。

風を切る感触はまさに自由そのものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通学路には登校中の他の生徒もちらほら見える。

自転車や徒歩での登校がほとんどな中で士だけ、いや士ともう一組だけが堂々とバイク通学だ。

当然注目される。

そんな注目を丸っと無視して安全第一で校門を通り抜ける。

マシンディケイダーを駐車スペースに停めてエンジンを停止させて、深呼吸をする。

バイクから降りてヘルメットを脱いだ時、もう一組のバイク通学者がマシンディケイダーの横にバイクを止める。

二人のバイク通学者はヘルメットを脱いで笑顔で声を掛けた。

 

「「おはよう士君」」

 

士は二人にトイカメラを向け、シャッターを落とした。

 

「おはようさん。ハジメに香織、『バカップル、朝の一幕』ってところか」

 

バイクを運転してたのは士の親友の南雲ハジメ。

士と一緒にオタトークができる親友の一人だ。

ハジメの後ろに乗ってたのが白崎香織。

ハジメの彼女で士とは幼馴染である。

 

「っていうか、バカップルって言うのはやめて!スッゴイ恥ずかしいから!!」

 

香織がヘルメットを固定しながら、顔を真っ赤にして怒る。

これもいつも通りの日常だ。

 

「悪かったよ。でも香織をからかうのは面白いからな」

 

士は苦笑しながらカメラのレンズにカバーを掛けながらそう言った。

香織は頬を膨らませたまま、

 

「もう…からかわないでよね!外が暑くて顔が赤くなっただけだから!!」

 

手で顔を扇ぎながらそう弁明する。

そこに、

 

「僕は顔が真っ赤な香織も大好きだけどね」

 

ハジメの何気ない一言に、香織は耳まで真っ赤になりながらも

 

「ハジメくん…///」

 

と弱々しく呟いた。

このまま放置していたらキスしだすんじゃないんか、というくらい甘~い空気に耐え切れなくなった士がわざとらしく咳払いをする。

 

「あのなぁ…ここでイチャつかれても困るんだよ。見てるこっちが」

 

士が疲れ切った顔で呆れた。

 

「あっ、ごめん! つい…」

 

香織は照れくさそうに髪をいじりながら視線を逸らす。

その仕草がまた愛らしくてハジメの目尻が下がる。

 

「まあいいけどな」

 

士が吐息を漏らし、生徒玄関に向かう。

ハジメと香織もそれに続くように教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメが教室のドアを開けたとき、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら、睨みやらを頂戴する。

女子生徒も友好的な表情をする者はいない。

無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。

その理由はハジメが『オタク』であり、学校内で『二大女神』として崇められるほどのを容姿を持つ香織と付き合っているからだ。

そんな視線をハジメ達はさっぱり無視して、自分達の席に座ろうとする。

ハジメと香織が教室に入ったその時、二人の間に入ろうとする無粋な奴が現れた。

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

 

そういって二人に割り込むのは、天之河光輝

成績優秀、スポーツ万能、おまけにイケメンというどこぞの勇者かよ!と思うような完璧超人スーパー高校生で士の幼馴染。

だが、士は天之河を嫌悪している。

天之河は人を悪だと思うと、とことん糾弾し、自分を正義だと疑わないご都合主義者で、そのご都合主義の被害を士は受けている。

天之河は爽やかな笑みを浮かべていたが、その背後には鋭い威圧感が漂っていた。教室内の空気が一変する。

天之河は大げさに両手を広げた。

 

「こんなオタクに付き合わなくても、もっと有意義な時間が過ごせるはずだ」

 

そう言い切った天之河に香織は一瞬困惑した表情を見せるもすぐに険しい顔を見せる。

 

「何言ってるの?私はハジメ君が好きで付き合ってるんだよ?」

 

苛立ちを隠さずに言い切った香織に天之河は眉をひそめる。

後ろで静止する生徒二人を気にも留めず続けた。

 

「南雲や士達みたいなオタク文化に耽溺してる連中は社会不適合者予備軍だ。将来が心配になるばかりだよ」

 

ハジメは苦笑いになりながら肩をすくめた。

 

「心配ありがとう、天之河くん。でも僕たちには僕たちの生き方があるんだ」

 

「生き方?それは選択肢と呼ぶべきじゃないだろう」

 

天之河は嘲笑混じりに言い切った。

その時、

 

「何してるの光輝!ごめんなさい香織。士に南雲君も」

 

そう言って場に割って入ってきた生徒が居た。

士、香織、天之河三人の幼馴染で香織の親友の黒髪ポニーテールの美少女『八重樫雫』

小学校から剣道を始め、これまでの剣道の大会では負けなしの不敗神話を持つサムライガールだ。

また、かなりのかわいいもの好きでもある。

 

「わりいな、朝から嫌な目に合わせちまって」

 

申し訳なさそうに言ってきたのは坂上龍太郎。

かなりの脳筋で、努力とか、根性とかそういうのを好むやつで、一応士の幼馴染。

脳筋ではあるが、仁義を重んじる奴で仲間思いのいい奴でもある。

 

「ほら、席に戻るぞ光輝」

 

「待ってくれ龍太郎!まだ話が…!」

 

天之河はまだ話をしたそうだったが龍太郎に引きずられていき、雫が深く頭を下げた。

 

「光輝のせいで不快な目にあわせて本当にごめんなさい」

 

それをハジメは穏やかな笑みを浮かべて首を横に振った。

 

「気にしないで八重樫さん。もとはと言えば天之河のせいだから」

 

士も肩を竦めて補足する。

 

「天之河は相変わらずだな。別に俺らの好きを押し付けるつもりはないんだけどな」

 

雫はもう一度「本当にごめんなさい」と詫びて、龍太郎とともに自分の席へ戻っていく。

天之河は席につく前にもう一度こちらを鋭い視線で睨みつけたが、龍太郎に促されて渋々自分の席へと向かった。

激動の朝を乗り越え、士達も席へと着くと担任が入ってきてホームルームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業中に子猫が乱入してきて二大女神がデレっとなるとかのイベントが起こったがおおむね平和に四限目が終わり、昼休みのチャイムが鳴ると同時に教室全体が騒がしくなった。

生徒たちは席を立ち、教壇に居た畑山愛子先生に質問に行ったり、購買や食堂へ向かう者たちが廊下を駆けていく。

士が購買から帰ってくると、隣の席のハジメが弁当の包みを広げていた。

 

「それ、香織の愛妻弁当か?」

 

「うん」

 

ハジメが照れ臭そうに箸を持ち上げる。

今日のメニューは特性ハンバーグらしい。

士が購買で買った500円の幕の内弁当を開けて、割り箸を袋から出したとき

 

「ハジメ君と士君、一緒にお弁当食べよう!」

 

香織が可愛らしい包みに入った弁当を持ってやってきた。

 

「うん!一緒に食べよう!」

 

とハジメは返したが、それが気に食わない輩が居た。

 

「香織、こっちで一緒に食べよう。南雲は士と一緒に食べてるみたいだしさ」

 

爽やかな笑顔を浮かべつつもその顔には青筋が立っていた。

ハジメは箸を一旦止め、目を細めて天之河を見つめる。

香織は小さく唇を噛んで俯いた。

 

「おい、天之河!いい加減n…」

 

士が勢いよく立ち上がり割り込むように言ったとき、教室に異変が走った。

士達の目の前、天之河の足元から幾何学的な模様が浮かび上がったのだ。

士が周りを見渡した時、驚愕した。

幾何学的な模様――魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大していった。

未だに教室にいた愛子先生が咄嗟に

 

「皆! 教室から出て!」

 

と叫んだのと、士が咄嗟にバックを掴んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

光が収まった後、その教室から人はいなくなっていた。

 

 

 

この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話…らしい。




筆が乗った勢いで書いたらすごいことになっちゃった…(´・ω・`)
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