Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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白河上皇さん誤字報告ありがとうございます!
それではどうぞ



二話 Gの御膝下/歴史の始まり

 

右手に持った鞄と左腕で顔を庇っていた士は、ザワザワと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開けた。

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。

縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。

そして、その人物の腰には似つかわしくないような紫色の懐中時計が下げられている。

美しいはずの絵画に士はうすら寒さを感じ、無意識に目をそらした。

周りを見渡すと、すぐ横にハジメが香織を庇うように抱きかかえていてその近くには天之河も居た。

どうやら、あの時教室にした全員が此処にいて、士達を含めたクラスメイト全員が訳が分からず混乱している。

そして士達は大聖堂のような巨大な空間に居ることが分かった。

その時、

 

ガッシャァァン!

 

と言う途轍もない衝突音と衝撃が発生し、士達を襲った。

恐る恐る、音と衝撃をした方向を見るとそこには

 

「「「マシンディケイダー!?!?」」」

 

此処にあるはずのない士のマシンディケイダーが倒れていた。

士たちが倒れたマシンディケイダーを呆然と見つめる中、さらに異常な出来事が重なる。

士達以外にも三十人近い人々が、士達の乗っている台座の前にいたのだ。

まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

その異様な一団から一人の老人が進み出てきた。

豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている。

顔には深い皺が刻まれていたが、その眼光は鋼のように鋭い。

 

「ようこそ、『トータス』へ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

「ここは一体どこなんだ!?」

 

「説明しろ!」

 

クラスメイト達が口々に叫ぶ中、士は冷静さを保とうと努めた。

左手でネックレスのように下げていたトイカメラを握りしめる。

 

「まずは落ち着きなされ。一から説明させて頂きますのでな、こちらへどうぞ」

 

イシュタルと名乗る教皇に促され、天之河達は歩き始めた。

士は倒れていたマシンディケイダーを起こし、押しながら最後尾で付いて行く。

クラスメイトたちの間には動揺と困惑が広がっていたが、天之河が「みんな落ち着け!まずは話を聞こう!」と声を張り上げると、少しずつ騒ぎが収束していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く歩いた士達は10メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に案内された。

上座に近い方に畑山愛子先生と光輝達三人組と取り巻き達が上座の近い方に、士達は最後方に座った。

香織がハジメの横に座ったのを物凄い目でハジメを一瞬睨むが、直ぐにイシュタルの方に向き直る。

全員が席に着席すると絶妙なタイミングでカートを押しながらメイド達が入ってきた。

不自然なほど美女、美少女でそろっている。

士は出来るだけメイドと目を合わせないようにして飲み物を受け取る。

全員に飲み物が行き渡った確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「それでは、説明させていただきます」

 

そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。

要約するとこうだ。

この世界はトータスと呼ばれており、人間族、魔人族、亜人族の三つの種族が暮らしていて、人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きている。

そして、人間族、魔人族が何百年と戦争を続けているそうだ。

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。

つまり人間の『数』VS魔人の『質』

戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしかったが、最近になってその拮抗が崩れ始めたらしい。

それは、魔人族による魔物の大量使役だ。

魔物とは通常の野生動物が魔力を取り込み変異した怪物のことらしい。

今まで魔物を使役できる者はほとんど居なかった。

使役できても、せいぜい一、二匹程度。

つまりは、魔人族の『質』に魔物の『数』が加わったことで人間族の物量を超えた戦力が手に入り、今人間族は滅亡のピンチを迎えているとのことだ。

 

「あなた方を召喚したのは『エヒト様』です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という『救い』を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、『エヒト様』の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルは恍惚とした規制が必要そうな表情を浮かべている。

おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

だが、士がこれを聞いて思った事は『胡散臭っ』ということだけだ。

 

「わざわざ異世界から人を大人数を引っ張てこれる力があるなら自分達で何とかしろよ。次元の壁開くより、この世界の人たちに強力な魔法やら、武器やらを作って渡す方が労力的には低いと思うんですがねぇ?」

 

士がそんなことを考えていると

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

愛子先生が叫んだ。

この先生は本当に先生の鏡というべき人だが、彼女の幼い容姿と相まって、生徒から『愛ちゃん先生』と親しまれている…というかその幼い容姿で実年齢より低く見られ、一生懸命なのに空回ることが多い。

ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし…あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

その言葉に、士を除く全員が凍り付いた。

 

「ふ、不可能って…ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

愛子先生が叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな…」

 

愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。

周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで…」

 

パニックになる生徒達。

誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

ただその眼には侮蔑の表情が込められていた。

大方「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのだろう。

未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッ!と叩いた。

その音にビクッとなり注目するクラスメイト達。

光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。…俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。…イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

握り拳を作って宣言する天之河。

その歯は無駄にキラリと光っていた。

天之河の言っていることは立派だし、元々カリスマがある奴だから妙な説得力があるが肝心なことが理解できてなかった。

ただ、絶望に染まったクラスメイト達には大きな希望になったのか、ほとんどが天之河にキラキラと輝いた眼で見ていて、女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。…俺もやるぜ?」

 

「龍太郎…」

 

「今のところ、それしかないわよね。…気に食わないけど…私もやるわ」

 

「雫…」

 

龍太郎と雫も天之河に賛同している。

それにつられたクラスメイトが次々に参戦の意見が広がっていく。

先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが天之河の作った流れの前では無力だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

結局全員で戦争に参加することになり、士達は召喚された聖教教会本山がある【神山】の麓にある【ハイヒリ王国】に受け入られることになった。

王城に入城すると、最初に王族との謁見をすることになった。

士達が玉座の間に王族達が立ってイシュタル達を待っていて、イシュタルが国王の隣へと進む。

そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。

どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。

これで、国を動かすのが『神』であることが確定だな、と士とハジメは内心で溜息を吐く。

そこからはただの自己紹介だ。

国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

その後に、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がされ、謁見は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

その後、ビュッフェ形式の晩さん会が開かれ異世界料理を堪能した。

晩さん会にはこの国の有力貴族や、訓練における教官達の紹介もなされた。

教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。

いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

出てきた料理の見た目だが、地球の洋食とほとんど変わらなかった。

たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物があったりしたが見た目に反して美味だった。

ランデル殿下がしきりに香織に話しかけに行くも、ハジメという超えることはできない壁にヤキモチしながら話しかける場面も見えた。

その光景に眉間にしわを寄せるも、貴族達に囲まれ行くことすらできない天之河の姿もあった。

 

「俺達これからどうなるんだろうな…」

 

「幸利…」

 

士やハジメの友人で、士とは小学生時代からの付き合いの清水幸利がそう呟いた。

 

「…『帰れる』なんて言ったってそんな保証はない。いや、アイツ等の手で帰してくれないって考えるのが正しいのかもな…」

 

士のその言葉が幸利や、直ぐ近くに居た遠藤浩介におもくのしかかる。

 

「!??!?!?」

 

「浩介ぇ!?!?そこに居たのかよ!?」

 

「最初っから居たよ!何なら召喚された時から声を掛け続けてただろ!」

 

影が極端に薄い浩介にとって士達の反応はいつも通りだが、それでも涙目になる。

そんな小学生時代と同じ様なやり取りで幸利の沈んだ心は少し軽くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハジメside

 

 

王国の用意した晩さん会の後、僕達はそれぞれに与えられた個室に案内された。

香織や、士君達と同じ部屋じゃないのは仕方ないと割り切ろう。

僕たちの部屋のベッドには天蓋が付いていてびっくりしたのは、きっと僕だけじゃないはずだ。

豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とした。

 

 

…はずだった

 

「初めまして、我が魔王」

 

「へっ?…うわぁぁぁぁ!あ、あなた誰ですか?!」

 

「我が名はウォズ、我が魔王の忠実な部下でございます」

 

突然、僕の前にウォズと名乗る女性が現れた。

彼女の見た目は首のあたりで綺麗に切り揃えられた美しい銀髪で、その体は神の産物というべき造形をしており、服装はそのまんま女性版ウォズというべき恰好をしていた。

そして、その手には分厚い本――『逢魔降臨暦』を握っていた。

 

「どうしてあなたがその恰好をしているんですか?」

 

僕がそう聞くと

 

「なに、君のご想像通りさ そして、おめでとう。もうすぐ君にとって特別な一日が訪れる。ただし、小悪党四人組…いえ、檜山大介には気を付けたほうがいい」

 

「えっ?」

 

そういうと僕の手の上に黒色の懐中時計――『ブランクライドウォッチ』を置いて、いつ開けたのか空いている窓に足をかけると

 

「それでは、また会おう我が魔王」

 

そういって消えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメside end

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コメントくれると嬉しいなぁ…(´・ω・`)
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