Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強   作:マサヒロ (旧名デイブレイク)

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四話 最弱と訓練と時の王者

 

 

士達が異世界召喚されて早二週間がたった。

士は王都の喧騒をを背景に訓練施設に向かいながらステータスプレートを眺めた。

 

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犬飼士  17歳   男   レベル1

 

天職 戦士 ■■■

 

筋力:100

 

体力:170

 

耐性:110

 

俊敏:180

 

魔力:30

 

魔耐:110 

 

技能:全属性耐性・物理耐性・剣術・精密射撃・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・言語理解

 

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二週間前からまったくの変化がなかった。

 

「おかしいな…」

 

いくら訓練してもステータスが上がらないのだ。

士は毎日訓練にまじめに参加し、夜遅くまでハジメやメルド団長と共に自主訓練を行っているのにもかかわらずにもだ。

ただ、ステータスに反映されない剣技は磨き上げられ、その技術はメルド団長にも劣るものではない。

しかし、数字しか見ない国や教会からは無能の烙印を押されてしまった。

士が訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。

どうやら案外早く着いたようである。

 

「自主練してでも待つか…」

 

士はそう呟き、背中の鞘から西洋風の剣――『アニールブレード』を引き抜く。

このアニールブレードはハジメに錬成の訓練の一環として作ってもらった一振りで、支給された西洋剣よりも扱いやすく、切れ味もいい。

士が人形の前で腰を落とし、アニールブレードを片手で構えた時、

 

「ぐぁっ!?」

 

苦しそうなハジメの声が聞こえてきた。

 

 

 

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ハジメside

 

 

僕が自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から二週間が経った。

 

 

 

今、僕はウォルペンさんの工房から王城に戻っている最中だ。

ウォルペンさんはハイリヒ王国直属の筆頭錬成師で、メルド団長の紹介で訓練が始まった次の日から通っている。

ウォルペンさん達錬成師の人達からは「筋が良い。直ぐにこの国、いや世界最高の錬成師になれる」と、太鼓判を押された。

だけどクラスメイト達からは「ステータスが低いくせに訓練に参加せず城下町で遊び歩いてる」と言う認識で僕への風当たりは益々強くなってる。

その認識の食い違いに溜息を吐き出し、僕はおもむろにステータスプレートを取り出し、前に進みながら眺める。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:10

 

天職:錬成師 ■の■■

 

筋力:45

 

体力:100

 

耐性:20

 

敏捷:20

 

魔力:30

 

魔耐:20

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・言語理解

 

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これが、二週間士君とメルド団長、三人合同でみっちり訓練した僕の成果である。

「刻み過ぎだろ!」と、内心ツッコミをいれたのは言うまでもない。

何故か体力だけが異常に成長してるのは正直言って察してほしいな……

そして士君からは作ってほしいもの兼課題として『アニールブレード』制作ともう一つ武器の制作をお願いされた。

アニールブレードの名前に聞き覚えは無かったけど士君直々に紙にデザインを書いてくれてそれと同じ物を渡すことができた。

そのアニールブレードともう一つの武器を作ろうと模索した中で六つの派生技能に目覚められただけでも良しとしよう。

因みに天之河君のステータスは

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:10

 

天職:勇者

 

筋力:200

 

体力:200

 

耐性:200

 

敏捷:200

 

魔力:200

 

魔耐:200

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

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僕よりもはるかに高い成長率だった。

また僕には、魔法の才能もないらしくそれがさらに僕のため息を増やした。

いっそ、旅にでも出てしまおうかと、青空をボーと眺めながら思う。

僕は行くならどこに行こうかと、ここ二週間誰よりも頑張った座学知識を頭の中に展開しながら物思いに耽ふけり始めた。

だが、時刻を知らせる鐘が鳴り響く。

 

「ってヤバイ、もうすぐ訓練の時間だ!」

 

現実逃避は許されず訓練の時間になってしまった。

 

 

王城に着いた僕は荷物を自分の部屋に置いて荷物を自作した金庫に入れてから訓練施設に急ぐ。

訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。

どうやら案外早く着いたようだ。

僕は、腰からGNロングブレイドを模した剣を取り出す。

その時、唐突に後ろから衝撃を受けて僕はたたらを踏んだ。

なんとか転倒は免れたものの抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。

顔をしかめながら背後を振り返った僕は予想通りの面子に心底うんざりした。

檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の四人。

地球にいた頃から毎日飽きもせず日課のように士君がいない時を見計らって僕に絡んでいた四人組だ。

僕達はこの四人のことを小悪党四人組と呼んでいる。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで今回の訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。

僕は士君を探したけどまだいなかった。

それに皆は気がついただけど見て見ぬふりをする。

 

「いや、一人でするから大丈夫だって。僕のことは放っておいてくれていいからさ」

 

一応僕は、やんわりと断ってみる。

 

「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

そう言って檜山は僕の脇腹を殴った。

僕は「ぐっ」と痛みに顔を顰めながら呻き声を漏らす。

段々、檜山達は暴力にためらいがなくなっていった。

思春期男子が突然大きな力を得れば、それに溺れてしまうのは仕方ない事だとは思う。

だけど、その矛先を向けられた方は堪ったものじゃない。

かと言って、反抗できるだけの力もない。

僕は、歯を食いしばるしかなかった。

そういえば、ウォズさんが「檜山には気を付けろ」って言っていたっけ。

そんなことを考えているうちに訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来ると、檜山は僕を突き飛ばした。

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

四人が僕を取り囲む。

僕は悔しさに唇を噛み締めながら立ち上がった。

 

「ぐぁっ!?」

 

ハジメside end

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

士が声のした方向に急ぐと小悪党組がハジメを取り囲みリンチしていた。

それを見て大体わかった士は小悪党組を止めようと走り始める。

しかし、士がハジメの元にたどり着くよりも早く

 

「下郎!貴様等如きが我が魔王を傷付けるなど、烏滸がましいにも程がある。平伏(ひれふ)せ!」

 

と、女性の声が響きその言葉通りに小悪党共はドォン!という音と共にに地に平伏した。

士は突如現れた女性に唖然とするも、直ぐにハジメの元に駆け寄る。

 

「ハジメ!大丈夫か!?」

 

士はハジメのもとに駆け寄り、地面に崩れ落ちた彼の肩を支えた。

 

「僕は大丈夫だよ士君。…ただ背中が少し痛いけどね」

 

「そうか…良かった」

 

ハジメの言葉に安堵しながらも、士とハジメは立ち上がる。

そして士は鋭い眼差しで周囲を見回した。

一方、地面に押し付けらえれた小悪党組は完全に恐怖に支配されていた。

 

「ぐぁ…苦しい…なんだよこれ…」

 

謎の女性の首のあたりで綺麗に切りそろえれた銀髪が僅かに揺れ、小悪党組を冷たい琥珀色の瞳で睥睨する。

檜山が必死にもがくが、白菫色の光に押さえつけられているようで全く起き上がれない。

他の三人も同様に苦しんでいる。

 

「なぁハジメ。あの女誰か知ってるのか?」

 

「あの人はウォズさん。詳しいことはよくわかんないんだけど僕にこれを渡してくれたんだ」

 

そういってハジメは、懐から黒い懐中時計のようなものを取り出した。

それを見た士は驚愕した。

この世界には存在しないはずの物――ブランクライドウォッチだったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

ウォズがモスグリーンのロングコートを翻しながらゆっくりとハジメに近づく。

その優雅な動きとは裏腹に、檜山達を押さえつける白菫色の光は依然として彼らを地面に縛り付けている。

 

「ご無事ですか?我が魔王」

 

そしてウォズがハジメに無事を確認するとハジメはオドオドしながらも頷いた。

 

「なぁ…魔王ってハジメの事か?」

 

士が僅かに細めた目でウォズに質問する。

 

「…えぇ、彼こそ最高最善の魔王そして、時の王者となる御方でございます。…ところで貴方は何者ですか?」

 

ウォズはそう言い、士を物凄い威圧感を発しながら鋭い目で睨みつける。

この女性は明らかに異質だ。

まるで別の次元から来たかのような存在感を放っている。

ただ、自己紹介はしてないのは確かなので士は威圧感による恐怖を無理矢理心の隅に蹴り飛ばし、口を開いた。

 

「俺の名前は犬飼士、ハジメの親友だ」

 

ウォズがその言葉を聞いた瞬間、ウォズが発していた威圧感は消滅しウォズが士に向かって恭しく頭を下げる。

 

「なるほど、それは失礼いたしました士殿。…まさかハジ………友がいるなんて…………もしかしたら………

 

士に謝ったウォズは何かを考えこむかのように顎に指を当てる。

その時、この状況下で一番来てほしくない人物の声が聞こえてきた。

 

「何をしているんだ!」

 

声をした方に視線を転じるとそこには純白に金の差し色が入った鎧を身にまとい、純白の剣を抜いた天之河が居た。

その後ろには香織と雫、龍太郎も居る。

 

「あ…天之河ぁ…この女がこんな事を……」

 

檜山は怯えた表情でウォズを指差し訴える。

それを聞いた天之河は鋭い眼光で状況を見回した。

そして、

 

「よくも檜山を…まさか、お前は魔人族のスパイか!?」

 

とご都合主義全開で解釈した。

その解釈にハジメとウォズは唖然とした表情になり、士は呆れて頭を抱える。

 

「そうだと言ったらどうする?…あぁそれと白崎香織、我が魔王に治療を。怪我をしてる可能性がある」

 

それを聞いた香織が血相を変えてハジメに駆け寄り、治療を始める。

そして、天之河に対してはわざとらしく邪悪な表情を浮かべるウォズ。

正義感を爆発させた光輝は、純白のバスタードソードを構えた。

 

「斬る! 魔人族なんかに屈する俺達じゃない! 俺達を警戒して暗殺しに来たようだが、一人でやってくるなんて愚かだったな! 多勢に無勢だ。投降しろ!」

 

そういうが構えを取ったのは天之河のみで、ほかの二人は直感で勝てないと察したのかむしろ天之河を止めようとした。

ウォズはやれやれというに肩を竦めると、チョイチョイと指を曲げ挑発した。

 

「そうかい。そう思うのならかかってくるといい」

 

天之河はそれを聞くと真っ直ぐに純白の剣――『聖剣』を構えて突進した。

聖剣は光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。

天之河は聖剣の弱体化を受けた状態なら攻撃が届くと思ったのか、純白の光を纏う聖剣を振り下ろした。

 

「なにっ!」

 

「なかなかにいい太刀筋だ。だが君の構えを見ていればその攻撃は指二本で防げる」

 

天之河の振り下ろした聖剣をウォズは人差し指と中指でいとも簡単に防いでいた。

俺達はそれに驚愕しているとウォズは子供からおもちゃを取り上げるかのように天之河から聖剣を取り上げ、士達を更に驚かせた。

 

「返せ!それはこの世界の人々を守るための力だ!お前みたいな薄汚い悪の魔人族が持ってていいものじゃない!」

 

人差し指と中指に挟まれた聖剣の纏う純白の光がウォズのシミ一つない白い肌に反射する。

 

「…やれやれ。武器と天職のおかげなのもわからないのか」

 

ウォズはそう言いながら、遠くの方へと聖剣を放り投げる。

聖剣は深く壁に突き刺さり、そう簡単には抜けない状態にされてしまう。

武器を奪われてしまい、無手となった天之河は、

 

「舐めるなぁ!」

 

ウォズへと殴りかかる。

しかし、天之河の拳がウォズにたどり着くよりも早く、ウォズの拳が天之河の鳩尾を拳で打ち付けた。

強烈な一撃を食らった天之河は、口から血を吐き出し気を失う。

そして気絶した天之河を適当に放り投げると、ウォズの視線は雫と龍太郎の二人に向けられた。

 

 

「君達は、かかってこないのかい?」

 

「俺は遠慮する。アンタは俺よりはるかに強いしな」

 

「戦う気のない相手と戦うつもりはないわ」

 

「流石は八重樫雫、賢明な判断だ。そして坂上龍太郎、君の判断は少し以外だね。君の場合は、真っ先に突っ込んで来ると思ったが」

 

剣士である八重樫からすれば、ウォズに天之河達を殺す気がないことは明白だった。

 

「私達の名前を知っているなんて…あなた何者?」

 

雫の質問に答えることなく、ウォズは意味深な笑顔を浮かべる。

ウォズは首元からマフラーを引き抜くと、まるで生き物のように動き出したマフラーにその姿を覆い尽くされ、次の瞬間にはマフラーごと彼女の姿は消えていた。

 

 

 

それから士達は、馬鹿五人衆を香織が最低限の治療をして放置した後に訓練に参加した。

そして、訓練が終了した後メルド団長が言った。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

このクラス全員が初めて経験する『実戦』に士は気合を入れなおした。

 

 

 

 




薄暗い地下牢に一筋の光が差し込む。
西洋剣は月光を反射し、命が終わる刻を知り、怯えた囚人の顔を映し出す。
囚人には口枷が装着され、怯えた声も謝罪の声も出すことはできない。
西洋剣が振りかぶられ、囚人の身体は斜めに切り裂かれた。
囚人の身体からは噴水のように血があふれ出る。
その返り血を、手に、頬に浴びた士は西洋剣を石畳の上に落とし、その場にしゃがみ込む。
その一部始終をメルド団長は眼を放すことなく見ていた。
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