Re:ありふれた破壊者と魔王は世界最強 作:マサヒロ (旧名デイブレイク)
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ベヒモスモドキの突進で橋にひびが入り、橋を大きく揺らす。
クラスメイト達は隊列など無視して我先にと階段を目指して我武者羅に進んでいく。
騎士団員の一人であるアランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。
その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。
「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体の怪人がギザギザした刃の短剣を振りかぶる。
「あ」
そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて短剣が振り下ろされた。
死ぬ、女子生徒がそう感じた次の瞬間、三回ほど炸裂音が響く。
肩を撃たれた怪人はバランスを崩して、後ろに倒れ込む。
さらに、空色の光が迸り地面が隆起して怪人の足を固定する。
隆起した地面は数体の怪人を巻き込んで橋の端に向かって波打つように移動していき、遂に怪人を奈落へと落とすことに成功した。
「……ま、間に合った」
橋の縁から二メートルほど手前。
そこにはベレッタを構えた士と少し荒い息を吐きながらしゃがみこんでいるハジメの姿があった。
士がベレッタで狙撃し、ハジメが連続で地面を錬成して滑り台の要領で橋の外に落としたのだ。
士はハジメに何かをささやくと、直ぐにその場を離れて怪人の集団の方へ向かう。
「な、南雲…?」
「大丈夫、園部さん?」
魔力回復薬を飲みながら倒れたままの女子生徒――園部優花のもとへ駆け寄るハジメ。
錬成用の魔法陣が組み込まれた手袋越しに彼女の手を引っ張り立ち上がらせる。
唖然とした表情でなせるがまま立ち上がる優花にハジメは笑顔で話しかける。
「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな怪人どうってことないよ。うちのクラスは殆ど全員チート持ちなんだから!」
「海波斬!!」
自信満々で背中をバシッと叩くと、優花と同じ様に危機に陥った生徒を助けた士の元に向かって駆け出した。
その背中をマジマジと見つめていた優花は、周囲の喧騒で気を取り直すと呟きを漏らしながらダガーを構える。
「今なら香織の気持ちがわかるかも…」
地球に居た頃はあまり授業態度の良くないハジメを不快に思ったし、そんなハジメと付き合っている香織の事を不思議に思っていた。
だけど、香織も今の、本当のハジメを見たことがあるのだろう。
恐怖で手が震えていたのに、躊躇わずに助けてくれた。
一歩を踏み出す勇気を持ったハジメの姿を。
優花は友人の菅原妙子と宮崎奈々に呼びかけると、アランと共に連携を取りながら怪人達に立ち向かう。
それでも、殆どがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。
一人や二人正気に戻ったってどうにかなる状況じゃない。
そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。
ハジメは錬成を行使しながらどうにか士と背中合わせで合流する。
「そっちの状況はどう?…聞かなくてもヤバいよね!」
「ああ!そうだなぁ!クソッ!!何で異世界にジャマトが居るんだよ!!」
士はヤケクソ気味に応える。
そう、魔法陣から大量に出現してきてる怪人は『ポーンジャマト』
『仮面ライダーギーツ』に登場する怪人『ジャマト』の一種で、特徴的な頭部はチェスの駒であるポーンを思わせる形状をしている。
その時、士の脳裏に電流が走りベヒモスモドキの方に振り向く。
「ジャァァァァァァァアア!!!!」
ベヒモスモドキが咆哮を上げながら聖絶の守りを突破しようと蔦のような触手を振りかざし、その衝撃で聖絶の障壁にヒビが入る。
特徴的な咆哮と植物の力。
間違いない。
ジャマトがベヒモスに寄生していた。
「クソッ…ポーンジャマトだけでも厄介なのに、あんなジャマトが寄生したベヒモスまで…!」
士は舌打ちしながら背後に迫るポーンジャマトを蹴り倒し、眉間を撃ち抜く。
「ハジメ!あのデカブツを何とかしないと橋が持たないぞ!」
「わかってる!だけど、このままだとこっちの戦線が崩壊する!!」
ハジメは汗を拭いながら応え、士は舌打ちしながら海波斬の剣圧でポーンジャマトを複数体吹き飛ばす。
しかし、士の焦りが伝わるかのようにポーンジャマトの数が倍増していく。
魔法陣からは次々と湧き出すように出現し、既に数えるのも嫌になるほどの数が出現している。
「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……」
その条件に当てはまるのはただ一人、彼だ。
「天之河君!」
「待てハジメ!あぁもう!」
士達は走り出した。
天之河達のいるベヒモスの方へ向かって。
ベヒモスモドキ――――ベヒモスジャマトは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。
衝突の度に壮絶な衝撃波が撒き散らされ、頑丈な筈の石造りの橋が悲鳴を上げて亀裂が深くなる。
障壁も既に全体に亀裂が広がっており、砕けるのは時間の問題だろう。
メルド団長も障壁の展開に加わっているが、焼け石に水だった。
「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」
「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」
「くっ、こんな時に我儘を…」
メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。
この限定された空間ではベヒモスジャマトの突進を回避するのは難しい。
それ故に逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。
しかし、その微妙な匙加減は戦闘のベテランだからこそ出来るもの。
素人の天之河には難しい注文だ。
その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしい。
目の輝きが攻撃色を放っていて、明らかに自分の力を過信している。
その時、天之河の前に一人の男子が飛び込んでくる。
「天之河くん!」
「「なっ、南雲!?」」
「ハジメ君!?」
驚く一同にハジメは必死の形相で捲し立てる。
「今すぐ撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」
「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲hヘブゥ!!」
ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした天之河の後頭部に衝撃が走る。
「状況に酔ってんじゃねぇよ!この馬鹿野郎!!」
士の拳が天之河の後頭部を捉え、その衝撃で天之河は前方によろめいた。
「な…何をするんだ!」
「何をするんだじゃない!!あれが見えないの!? 皆パニックになってる! リーダーがいないからだ!」
ハジメが天之河の胸ぐらをつかみ上げ、今までにないほど乱暴な口調で怒鳴り返して指を指す。
余りの剣幕に硬直している天之河は呆然とハジメの指差す方を見る。
その方向には、ポーンジャマトの群れに右往左往するクラスメイト達がいた。
優花と宮崎奈々は背中合わせで何とか耐え忍んでいるが、彼女達の表情は恐怖と疲労で歪んでいて、その他のクラスメイトは訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。
効率的に倒せていないからポーンジャマトの増援により未だ突破できないでいた。
スペックの高さが命を守っているが、それも時間の問題だろう。
「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」
混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイト達。
呆然としていた天之河はぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。
「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」
「下がれぇぇぇ!」
「すいません、先に撤退します」そう言おうとしてメルド団長を振り返る――
その瞬間、団長の悲鳴と同時に遂に障壁が砕け散る。
暴風のように荒れ狂う衝撃波が士達に襲いかかる。
咄嗟に、ハジメが前に出て錬成により石壁を作り出すが数秒も立たずに砕かれ、吹き飛ばされる。
それでもかなりの威力を殺せたようだが…
「ジャァァァァァァァアア!!!!」
舞い上がる埃がベヒモスジャマトの咆哮で吹き払われた。
士が雫と龍太郎を抱えて、ハジメが香織と天之河を抱えて後方に跳ぶ。
だが、メルド団長と三人の騎士は倒れ伏し呻き声を上げている。
「メルド団長!!」
天之河が叫ぶが、メルド団長は応えられない。
三人の騎士も同様に倒れ込み、もはや立ち上がる気配もない。
「ジャァァァアアア!!」
ベヒモスジャマトの咆哮が再び轟き、その巨体が猛然と突進を始めた。
触手が蛇のようにうねりながら、倒れた騎士達に迫る。
そして、触手が騎士達めがけて振り下ろされた。
「さ、せるかよぉ!!」
その声の主は士だった。
士は自らの体とアニールブレードを盾に、倒れた騎士たちの前に飛び込み、ベヒモスジャマトの触手を受け止める。
「ぐっ…あっ…!」
士の身体が大きく揺らいだ。
腕に走る激痛が全身を駆け巡る。
それでも士は膝をつくことなく立ちはだかり続けた。
ベヒモスジャマトの触手の圧力は想像以上だった。
士の腕は完全に折れ曲がり、アニールブレードは折れずに済んだものの、その重さに耐えるのが精一杯だ。
「くっ……そ…!」
「士君!!」
士の足が地面に沈み込み、触手が彼の身体を押しつぶそうとする。
騎士たちは彼の足元で気を失ったままだった。
このままでは士自身も触手に押し潰されてしまう。
その時、ハジメが錬成でベヒモスジャマトと士の間に石壁を創り出す。
しかし、ベヒモスジャマトが触手を横なぎに振り払った。
瓦礫と共に士の身体が宙に舞う。
橋の中央付近まで吹き飛ばされ、石床に背中を打ち付けられた。
「がっ、はっ…!」
肺の中の空気が一気に押し出され、呼吸が困難になる。
それでもなんとか起き上がろうとするが吹き飛ばされた影響で身体が転がり立ち上がれない。
そして、橋から転がり落ちた。
石の橋から転がり落ちた士の身体が奈落に吸い込まれていく。
少しずつ小さくなる光が、背後に感じる深い闇が、心臓を氷のように冷たく締め付けた。
誰かの悲痛な叫び声が暗闇の中でも鮮明に聞こえた。
(ああ、ここまでか……)
だが、それもすぐに遠ざかり士の意識は急速に薄れていく。
暗闇の中、誰かが強く腕を引く。
意識が一瞬で覚醒し、奈落から引き戻される。
「大丈夫ですか?士殿?」
柔らかな声が耳に届く。
視界がぼんやりと晴れていくと、そこにいたのは――ウォズだった。
「ウォズ…?何で此処に……?」
士の腕をしっかり掴んでいたのはウォズのしっかりとした、だが女性らしい小さな手だった。
彼女の手からは白菫色の光が放出されていて、その光が士の傷ついた体を包んでいる。
「“絶象”……!」
ウォズが静かに、だが力強く詠唱すると光が強くなる。
折れた腕と肋骨が時間を巻き戻すかのように一瞬で修復され、身体を駆け巡っていた激痛が消え去る。
そのまま重力を反転させたかのようにあっさりと引っ張り上げられ士は橋の上に降り立つ。
だが、降り立つと同時に同時に膝をついた。
折れた腕と肋骨が完治したとは言え、全身に受けた衝撃は容易に消えない。
「くっ……!」
呻きながらも立ち上がろうとする士。
「…随分と勇ましい事だ。どうしてそこまでして戦う?」
「……そんなの、決まってるだろ」
士は肩で息をしながら立ち上がる。
完治しているはずの全身の打撲が精神的な痛みとなって士を襲う。
「大切な友達が…
士の目に燃えるような決意が宿る。
その瞳はウォズを射抜くようでいて、遥か遠くを見据えているかのようだった。
「大切な人を守りたい、か…」
ウォズの微笑が僅かに揺れる。
彼女の目には懐かしさとも哀しみともつかない光が宿っていた。
その時、純白の砲撃がポーンジャマトの群れを消し飛ばす。
「どうやら、時間はないらしい」
ウォズが厳しい目つきになり、詠唱を始める。
詠唱が終わった時、その場所には士とウォズの姿はなかった。
ハジメは香織と二人でベヒモスジャマトと対峙していた。
士が吹き飛ばされてから、安否を心配する暇も無くベヒモスジャマトの攻撃をしのぐために石壁を作り続けていた。
全員を確実に撤退させるために。
腰のポーチから魔力回復薬を取り出し、一気に服用する。
「我が魔王!」
「ハジメ!」
その次の瞬間、ハジメの傍に吹き飛ばされたはずの士とここにはいないはずのウォズが立っていた。
「「士君?!?!無事だったんだ!」」
ハジメと香織は士の無事に歓喜の涙を流す。
しかし、香織はウォズへ警戒の表情を浮かべている。
そんな中、ウォズがハジメに話しかけた。
「我が魔王、これを――」
ウォズが白菫色に紅色のラインが入った光を発しながら、虚空から金色の刺繍が施された赤色のクッションを取り出した。
クッションの上には巨大な腕時計のようなドライバーが置かれている。
ウォズはそれをハジメに差し出すように跪き、頭を垂れる。
「使い方はご存じのはず」
「ジクウドライバー……」
「そんな玩具で――えっ?なんでこの世界の貴女が仮面ライダーの玩具を?」
こんな危機的状況で玩具を取り出したウォズに怒りを抱く香織だったが、直ぐにその異常性に気付いた。
なぜ、異世界であるトータスの人間であるウォズが地球の特撮ヒーローの玩具を持っているのか。
驚愕と困惑の眼差しを浮かべる香織に、ウォズは嬉しげな表情を浮かべた。
「流石は我が魔王を慕う者の一人……ですが、詳しく説明している時間はありません」
ハジメはクッションの上のジクウドライバーを手に取る。
「……ねぇ、ウォズさん。皆の事、香織の事、貴女に任せていいですか?」
「我が魔王の頼みとあらば――それに我が魔王の誕生を祝うのならオーディエンスは多い方が良い」
そう言うと、ウォズは後方に魔法での援護を始めた。
「お膳立ては整いました――では、我が魔王。存分に戦われよ!」
「……わかった!」
「行くぞ、ハジメ!」
士は懐からネオディケイドライバーを取り出し、ハジメに声を掛ける。
掛け声にハジメは力強く頷いた。
香織が気付いた時には、二人は戦場に向けて駆け出していた。
ベヒモスジャマトの前に立ちふさがるように、ハジメと士は進み出る。
ハジメの足はビクビクと震えているが、絶対に逃げようとはしない。
二人共しっかりと前を向き、ベヒモスを見据えていた。
「まさか、俺達が異世界で仮面ライダーになるなんてな」
「だね、だけどこの力で香織を、皆を、守れるのなら!」
【ジクウドライバー!】
ハジメはそういうと、ジクウドライバーを、士はネオディケイドライバーを腰に当てる。
形成されたベルトが射出されて、それぞれのドライバーは二人の腰に固定された。
そして、ハジメはもう一つポーチから取り出したブランクライドウォッチを掲げる。
「「俺(僕)はこの力を使う!」」
力を求める魔王の意志に応えるように、ライドウォッチが輝き顔が浮かび上がる。
上のパネルには「カメン」の称号、下のパネルには「2018」の年代。
誕生したライドウォッチ前面のウェイクベゼルを回転させ、起動待機状態へ移行。
上部のライドオンスターターを押し、ライドウォッチを起動する。
士もネオディケイドライバーのサイドハンドルを引き、腰のライドブッカーからディケイドのライダーカードを取り出し正面に掲げた。
【ジオウ!】
仮面ライダーの歴史を描く時計盤。レジェンダリーフェイスが真の姿を現す。
起動したライドウォッチをジクウドライバー左部のD`9スロットに装填。
これでジクウドライバーは変身待機状態。
待機音が繰り返し、空間に響き渡る。
ジクウドライバー上部のライドオンリューザ―を掌で押し込み、ドライバーのメーンユニットのロックを解除。
ジクウマトリクス上でジクウサーキュラーが回転するために傾いた。
ハジメの動作に合わせて、彼の背後に巨大な銀時計が出現する。
その中央に大きく“ライダー”の文字が浮かんだ異様な時計。
ずっしりと腰を下ろし、左腕を右肩の上まで上げ、最後に士達はその言葉を叫ぶ。
「「変身!」」