三好in東方Project(仮)   作:フォークロア

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第十一話 月下の呼び声、二つの“時”が重なる刻

博麗神社・午後の縁側にて――

将和が神社の鳥居をくぐると、霊夢が掃除の手を止めて振り返った。

 

「…あら、なんか今日は雰囲気違う。その服、いいじゃない」

 

将和は少し照れたように肩をすくめた。

 

「アリスが仕立ててくれたんだ。“時の勇者服”っていうらしい。なんか、昔の記憶を引っ張られたみたいでさ」

 

霊夢は箒を脇に置き、将和の服をじっと見つめる。

 

「緑が似合うのね。なんだか…“使命感”みたいなものが滲んでる気がする」

「使命感って…俺、ただの居候だぞ」

「ふふ、そういうところが“勇者”っぽいのよ。自覚ないくせに、異変が起きたら真っ先に飛び込むでしょ?」

 

将和は苦笑しながら縁側に腰を下ろす。

 

「まあ、放っとけない性分だからな。…それに、ここの空気が好きなんだよ。静かで、でも退屈じゃない」

 

霊夢も隣に座り、風鈴の音に耳を傾ける。

 

「今日はお茶でも淹れようかと思ってたの。ちょっとだけ、いい茶葉が手に入ったのよ」

「お、珍しいな。霊夢が“ちょっとだけ”って言うと、だいたいすごいのが出てくるからな」

「期待しすぎないで。…でも、あなたがその服を着てると、なんだか“特別な午後”って感じがするのよね」

 

将和は空を見上げた。雲がゆっくり流れ、蝉の声が遠くで響いていた。

 

「霊夢。俺、ここに来てから、少しずつ“居場所”ってやつが分かってきた気がする」

 

霊夢は静かに頷いた。

 

「幻想郷は、そういう場所よ。誰かの“居場所”になるために、形を変えていく。…あなたの服も、きっとその一部なのね」

 

将和は微笑みながら、そっと服の袖を撫でた。

 

「じゃあ、次の異変が来たら…この服で、ちゃんと立ってみせるよ」

 

霊夢は立ち上がり、台所へ向かいながら振り返った。

 

「その前に、お茶よ。勇者も、まずは一服しなきゃね」

 

午後はゆったりと霊夢と過ごした。

そして――この日の夜は、静かだった。

風鈴の音も止み、霊夢はすでに眠りについた頃。

将和は縁側に腰を下ろし、夜空を見上げていた。

 

「英雄でも名将でもなく勇者…か。子どもの頃はよく憧れたもんだ」

 

将和は自身が着ている“時の勇者服”を撫でる。

この服は、アリスが自身の記憶と魂を縫い上げて作ったもの。

それはただの衣ではなく、彼の歩んできた“時”そのものだった。

 

「まあ、自分で選んだ道だからな。それにしても…静かだな」

 

その言葉が空に溶けた瞬間――空気が震え、月の光が揺らいだ。

将和は立ち上がる。

 

「…来たか」

 

鳥居の向こうに、二つの影が現れる。

一人は、幻想郷へ彼を導いた“神様”。

もう一人は、境界を操る妖怪・八雲紫。

神様の姿は、龍の鱗を思わせる衣に包まれ、瞳は星のように輝いていた。

その気配は、幻想郷の空気そのものを揺らすほどに深く、静かだった。

 

「久しいな、将和。勇者服を纏った姿、なかなか様になっている」

 

将和は一歩踏み出し、静かに問いかける。

 

「俺をここに呼んだ神か。あんた……何者なんだ? 疎覚えとは言え“俺の知る限り”東方projectには居ない神だった筈だ?」

「私は龍神。幻想郷の根幹を司る存在だ。お前の魂に“可能性”を見たからこそ、ここへ導いた」

 

龍神が答えると、背後の紫が扇子を開きながら微笑む。

 

「そして今夜は、少し面白い提案があるの。“リンク”に会ってみない?」

 

将和の瞳が揺れる。

 

「リンク…“時の勇者”の?」

 

龍神は頷く。

 

「お前の服が“時の勇者服”であること。偶然ではない。魂の波長が、彼と共鳴しているのだ」

「でも、そんなこと…できるのか?」

 

紫は扇子を閉じ、スキマを開く。

 

「私の能力は“境界を操る程度の能力”。夢と現の境界も、時間と空間の境界も、裂くことができる。物語の人物であれ、呼ぶことは可能よ」

 

龍神が手をかざすと、空間が揺れた。

紫のスキマが開き、そこに映し出されたのは――荒れ果てたハイラルの城跡。

ガノンドロフとの死闘を終え、マスターソードを背負ったリンクが、静かに時の扉へ向かっていた。

 

「…あれが、リンク」

 

将和は息を呑んだ。ゲームではない本物。

こうして、彼と同じ立ち位置に立ってはじめて分かる。

その背中は、静かで、強く、孤独だった。

だが、そこには確かな“意志”が宿っていた。

紫が指を鳴らすと、スキマが広がり、リンクの足元が揺れる。

 

「時の扉に入った“狭間”にいる今なら、引き出せる。――準備はいい?」

 

将和は服の袖を握り、深く頷いた。

 

「…ああ。会ってみたい。あの背中に、俺が何を感じるか――確かめたい」

 

スキマが開ききった瞬間、リンクの姿が幻想郷の夜に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンクは、ガノンドロフとの死闘を終え、ゼルダ姫との約束を胸に別れを告げると、マスターソードを背に時の扉へと入っていた。

 

(これで…俺の役目は終わった。ハイラル王国を救った今、あとは元の時代に帰って、悲劇を未然に防ぐだけだ)

 

だがその瞬間、空間が揺れた。 風が逆巻き、光が歪み、足元の石畳が裂ける。

リンクは反射的に剣に手を伸ばすが、次の瞬間――視界が白く染まった。

気づけば、見知らぬ空の下。 満月が浮かび、桜が舞う静かな夜。そこは、ハイラルではなかった。

 

「ここは…どこだ?」

 

そして、目の前に立つ一人の男。

 

「はじめまして、時の勇者リンク」

「君は…?」

「俺の名前は三好将和。幻想郷って世界で、異変を解決してる剣士だ。突然呼び出して悪かったな」

 

リンクは警戒を解きながら、将和の服を見つめる。

緑の勇者服を纏い、剣を背負ったその姿は――まるで、自分自身を見ているようだった。

 

「その服…俺と同じような格好をしてる。なぜ?」

 

将和は少し照れたように笑った。

 

「俺が君のファンだからだよ」

 

リンクは目を見開き、思わず口元が緩む。

 

「ええ!? それは…なんというか、照れるな。なんでまた?」

 

将和は夜空を見上げながら、静かに言葉を紡ぐ。

 

「……そうだな。強いて言うなら、君が俺と似ているから。惹かれるものを感じたんだ」

「似ている?」

「俺も君と同じように、時を超えて、一つの国を滅びる運命から救った。戦争の時代を越えて、未来を変えた。だから、君の背中に共鳴したんだ」

 

リンクは静かに将和を見据える。

その瞳に、将和の言葉が深く染み込んでいるようであった。

 

「そうか……君も“時の勇者”なんだな」

 

将和は肩をすくめて笑う。

 

「まあ、この姿に関しては訳あって、俺の方が真似ただけだ。モノホンは君で、今は君の姿を借りて幻想郷に居る。――こうして呼んだのは他でもない。時の勇者リンク、手合わせを願いたい」

 

リンクはマスターソードの柄に手を添え、静かに構える。

 

「…分かった。俺も、君の“時”を見てみたい」

 

その言葉に、将和の心が震えた。

それは、憧れの背中に認められた瞬間だった。

 

──風が止まる。

──桜が舞う。

──月が見守る。

 

二人の勇者が、剣を抜いた。

 

「行くぞ、リンク!」

「来い、三好将和!」

 

剣が月光を反射し、夜空に閃く。

その瞬間、幻想郷の静寂が破られた。

 

将和が踏み込み、横薙ぎの一閃。

リンクはそれを受け止め、反撃の突きを繰り出す。

剣と剣がぶつかり、火花が散る。

 

「重い…だが、迷いがない!」

「君の剣筋、まるで風のようだ…!」

 

互いの剣筋を読み合い、跳ね返し、受け止め、打ち返す。

将和の剣は重く、だがその動きは異常なほど速い。

リンクはその“速さ”に目を見張る。

 

「速い…! まるで、時間を飛び越えているみたいだ」

 

将和は笑う。

 

「それが俺の“時”だ。幻想郷で得た力――君の剣に届くか、試してみたい!」

 

リンクは頷き、構えを変える。

 

「なら、俺も本気で応える。君の“時”を、俺の剣で受け止める!」

 

ここで将和は幻想郷の技、弾幕を解き放つ。

桜の弾幕が夜空に広がり、光の軌跡がリンクを包む。

リンクは瞬時に反応し、回避と斬撃を織り交ぜながら弾幕を弾いていく。

その動きは、まるで時を操るかのような精密さ。

将和は思わず笑った。

 

「ははっ、やっぱ弾幕を弾くよな!」

「幻想郷の技…面白い!」

「ハイラルの剣技…見事だ!」

 

将和は地を蹴って空中からの急降下斬りを仕掛けると、リンクはそれを見切り、地面を滑るように回避。

そして、互いに距離を詰め、剣を振るう。 一撃、一撃が、魂の叫びのように響く。

 

──剣戟の応酬は続いた。

 

将和の超高速戦闘と、リンクの精密な剣技。

弾幕と回転斬り、空中斬撃と地上の迎撃――

互いの技はぶつかり合い、火花を散らしながら、どちらも一歩も引かない。

 

──そして、静寂が訪れる。

 

二人は距離を取り、呼吸を整える。

月が二人を照らし、桜が舞う中、最後の一撃が訪れることを、互いに理解していた。

 

「…次で決めるぞ、リンク」

「ああ。君の“時”を、俺の剣で受け止める」

 

将和が地を蹴る。

超速の踏み込み――時間を裂くような一閃。

リンクは迎え撃つ。

マスターソードを振り抜き、魂を込めた一撃。

 

──カンッ!

 

剣が交差する。

衝撃が走り、二人の体が弾かれる。

将和は膝をつき、リンクも肩で息をしていた。

だが、どちらも倒れていない。

剣が、互いの体を傷つけることなく止まっていた。

マスターソードが淡く光る。

 

『この者に、悪しき心はない』

 

剣が語ったのは、勝敗ではなく“認め合い”だった。

将和は剣を納め、深く一礼する。

 

「ありがとう、リンク。これほど、心が躍ったのは初めてだ」

 

リンクは静かに手を差し出す。

将和はその手を握り返す。

 

──その瞬間、スキマが現れる。

 

別れの時が訪れる。

 

「さよなら、時の勇者」

「…君も“真の”時の勇者だ。また会おう、三好将和」

 

スキマが開き、リンクの姿がゆっくりと消えていく。

その背中は、再び“時”の狭間へと戻っていった。

 

──幻想郷の夜は、静かに包み込まれる。

 

将和は認められた。

ハイラルの勇者に、幻想郷の剣士として。

その名は、“時の勇者・三好将和”。




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