三好in東方Project(仮)   作:フォークロア

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第二十一話 夢の発動――勇将将和、再び

「…………」

 

永遠亭の奥深く。

静かなはずの夜は、今夜ばかりは緊張した空気に満ちていた。

八意永琳と綿月依姫、豊姫の三人が卓を囲み、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋の隅に控え、その光景を見つめていた。

その時間が鈴仙にとってはまるで胸の内をざわつかせる風のように感じられたのである。

 

「まず、異変の方針だけれど――迎撃の形を取るわ。こちらから攻め込むのではなく、永遠亭へ侵攻してくる勢力を迎え討つ形で進める」

 

永琳が地図を広げ、幻想郷の地形を指でなぞると、豊姫が扇子を軽く揺らしながら頷く。

 

「専守防衛ですね。全面戦争を避ける為ですか?」

「ええ。幻想郷の秩序まで壊してしまったら、後が面倒だもの。こちらの力を示し、幻想郷の勢力を撃退した後、交渉に持ち込む。――永遠亭の立場を確立するのが目的よ」

 

依姫は静かに腕を組み、永琳へ視線を向けた。

 

「つまり、力を見せつけて停戦に持ち込み、共存関係を築く……ということですね」

「そう。幻想郷の住人たちに“永遠亭は侮れない”と理解してもらう。その為にも貴女たちの力を借りたいの」

 

永琳の声は落ち着いていたが、その奥には強い決意があった。

鈴仙はその横顔を見つめながら、胸の奥がざわつく。

 

(お師匠様、依姫様たちには“真意”を隠すのですね)

 

本当の目的は――蓬莱山輝夜を守ること。

その為には、月の使者や戦士たちが幻想郷へ来て、輝夜を連れ戻そうとするのを阻止するための“予防線”を張る必要がある。

しかし永琳は、そのことを綿月姉妹には言わない。

何故なら彼女達もまた月の使者であるから。

月の都の命令があれば、輝夜を連れ戻す側に立つ可能性がある。

だから永琳は、依姫に“建前”だけを伝えていたのである。

永琳は依姫へ向き直る。

 

「依姫。あなたには――博霊神社の剣士、三好将和を迎え討って貰う」

 

依姫の瞳がわずかに鋭くなる。それは他の者は其方で相手取るということを意味していた。

 

「彼だけ、、に私をぶつけるのですね……?」

「ええ。“力”だけを見れば、幻想郷でも屈指。他の者を宛がえば実力の劣る者を欠いてしまう。だからこそ“精鋭には精鋭”を当てる。あなたの持てる力をすべて使い、博霊の剣士を戦闘不能に追い込んで貰いたい」

 

豊姫が扇子で口元を隠しながら、少しだけ楽しげに言う。

 

「依姫なら問題ないでしょう――この子、強いもの」

「お任せください。月の戦士として、全力で迎え討ちます」

 

依姫は迷いなく頷いた。

永琳は次に豊姫へ視線を向ける。

 

「豊姫。あなたには私と共に永遠亭を守ってほしい。幻想郷の人妖たちが押し寄せてくるでしょうから、迎撃をお願いするわ。もちろん“幻想郷を壊さない程度”にね」

「分かりました。あまり本気を出すと、この世界が消えてしまいますものね」

 

豊姫は扇子を閉じ、微笑んだ。

永琳は地図を畳み、三人へ向き直った。

 

「――以上が、異変の概要よ。終始邀撃的に戦い、撃退した後に交渉に及ぶことで永遠亭の立場を確立する。私たちの力を幻想郷中へと知らしめるわよ」

 

依姫は真剣に頷き、豊姫は穏やかに微笑む。

 

斯くしてどのように異変をはじめ、どのように終わらせるのかが明示されたのであった。

 

しかし――

 

(お師匠様……それでは詰めが甘いです)

 

それまでの会話を聞いていた鈴仙は、胸の奥に焦燥を抱え始めていた。

 

依姫は確かに強い。月の都でも屈指の戦士で、神霊を呼び出す能力を持つ。

しかし、幻想郷に来た依姫は、その能力を“封じられて”いた。

 

豊姫も同じだ。彼女の扇子は森を素粒子レベルで浄化するほどの力を持つが、全力を出すと幻想郷を破壊してしまうため、力を抑えて使うしかない。

 

つまり――

 

(依姫様たちは“全盛期の力を発揮できない”。枷を嵌められた状態であの男を止められるかどうか。幻想郷全体を相手取らないといけない以上、厳しい戦いになることに変わりない……)

 

脳裏に浮かぶのは、一人の男の姿――三好将和。

鈴仙は将和の強さを知っている。だからこそ、不安が消えない。

応援として喚んだ依姫たちが能力を全力で使えない――これは鈴仙にとっては誤算であった。

永琳はそれを分かった上で、異変を起こすと決めた。

永遠亭の廊下を歩きながら、鈴仙は奥歯を噛みしめる。

望む展開は依姫が三好将和を“要領良く降し、此方の応援に回ってくれること”である。

 

(何か手を打たないと……依姫様が制限を課す以上、向こうにもハンデを抱えて貰わないと……そうだ、これならッ!)

 

三好将和という“未知”への畏怖。

その焦燥が、彼女をある“行動”へと駆り立てた。

それはある意味“禁じ手”であった。

そしてこれがまさか“望外な事態”へと繋がっていくことになるのを、鈴仙自身もこの時は予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議から数時間後――

 

 

(地上から見る月の姿は感慨深いわね……)

 

綿月豊姫は、湯上がりの髪を拭きながら、窓の外に広がる月を眺めていた。

普段暮らしている月をこうして遠くから眺めることは滅多にない。

ある意味、地上へ降りたことによる恩恵と言えたであろう。

 

そこへ、控えめなノックの音が響く。

 

「豊姫様。鈴仙です。少し、お時間を頂けますか?」

 

「どうぞ」

 

入ってきた鈴仙の顔には、張り詰めた緊張が浮かんでいた。

豊姫はそれを見て、くつろいだ表情のまま問い掛ける。

 

「どうしたの、鈴仙。そんな怖い顔して……何か、気になることでも?」

「はい。豊姫様に、お願いがあって参りました」

 

鈴仙は一度深呼吸すると、真っ直ぐに豊姫を見つめた。

 

「豊姫様の“山と海を繋ぐ能力”を使い、夢の世界へ渡りをつけて頂けませんか?」

 

豊姫は目を瞬かせる。豊姫の能力は、本来は地上と月を繋ぐための応用技術だが、彼女の実力ならば、幻想郷と夢の世界の境界を“そっと撫でる”ことも容易である。

 

「夢の……世界? どうして?」

「最近、眠りが良くなくて……夢の世界の支配者様に“良い夢”を見せてもらえるようお願いしたいんです」

 

鈴仙は一瞬、言葉を選ぶように視線を泳がせ――そして、用意してきた“表向きの理由”を口にした。

豊姫は鈴仙の表情をじっと見つめた。

その瞳は、まるで心の奥底まで見透かすようだった。

 

「……まあ、そういうことなら」

 

豊姫は頷いた。しかし、その声にはわずかな疑念が混じっていた。

 

(嘘ではないのでしょうけれど――それだけではないわね、鈴仙)

 

声色、視線、肩の強張り。長い年月を生きてきた豊姫には、それが“何かを隠している者の仕草”だと分かっていた。それでも、彼女は首を縦に振る。鈴仙を信じていたから。

 

「…分かったわ。準備するから、少し待ってて」

 

豊姫は能力を発動すると、永遠亭の一室は、静かに“夢の世界”へと続く“道”が開かれる。

開かれたゲートの向こう側は、静かに、しかし確実に異質な気配を放っていた。

 

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

「ありがとうございます……!」

 

手を振る豊姫へと鈴仙は頭を下げ、光の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが……夢の世界……」

 

鈴仙が一歩、足を踏み入れると、そこは柔らかな闇と、淡い光が混じり合う不思議な空間だった。

重力が曖昧で、空気は柔らかく、どこか甘い香りが漂う。

現実とは違う、しかしどこか懐かしさを感じる世界であった。

 

「……おや? 生身の人間がここに来るなんて、珍しいですね」

 

瞬間、空気が波打つ。その声は柔らかいのに、どこか底が見えない。

 視線を向けた先には、青い髪を揺らす妖怪が立っていた。

彼女は、目の前の兎をじっと見つめる。

 その瞳は、夢の深層を覗き込むような静けさを湛えていた。

 

「あなた、月の兎でしょう? ここは、普通は“意識だけ”が来る場所なのですよ」

「あなたは……?」

「私の名前はドレミー・スイート。夢の支配者です」

 

彼女こそが、夢の世界の支配者にして、眠りと夢を司る妖怪であると認識した鈴仙は深く頭を下げた。

 

「突然の訪問、失礼します。私は鈴仙・優曇華院・イナバ。お願いがあって参りました」

「お願い?」

 

ドレミーは首を傾げる。

 その仕草は柔らかいが、警戒の色が微かに滲んでいた。

鈴仙は一度息を整え、真剣な表情で口を開いた。

 

「三好将和って奴に、この上ない“悪夢”を見せてやって欲しいんです」

「……ッ!?」

 

その名を聞いた瞬間、ドレミーの表情がわずかに揺らぐ。

 驚き――そして、すぐにそれを押し隠すように、彼女は目を細めた。

 

「悪夢とは、具体的にどのような?」

「えーと……大切な人や物が亡くなったり、壊れたりするみたいな。兎に角、現実にも影響を与えるほどのショッキングな悪夢を見させてくれれば良いんです」

 

鈴仙の言葉に、ドレミーは静かに首を横に振った。

 

「お断ります」

 

その返答は、迷いのないものだった。

 

「私は“夢を見せる”存在だけれど、基本的には他者の眠りをより良いものにするために心を砕いています。誰かが夢を悪用しないように監視するのも、私の役目。そんな私が特定の人物に対する“報復”のために、悪夢を見せるなんてことすると思いますか?」

 

鈴仙は唇を噛む。

夢の世界の支配者の力を借りれば、三好将和を“弱らせる”ことができるかもしれない。――その魂胆はドレミーにはお見通しだった。

 

(……やっぱり簡単にはいかない)

 

鈴仙は静かに拳を握ると、一歩踏み込む。

 

「事情を話します。三好将和という男は、現実で多くの“女性達”に剣を振るい、“現実として悪夢を見せている”悪い奴なんです」

 

ドレミーの眉がわずかに動く。

 

「だから、“懲らしめる”程度で構いませんから、協力してくれませんか? 貴女も“同じ女”なら、そんな男に虐められる女の気持ちが分かるでしょう?」

「…………」

 

ドレミーは、じっと鈴仙を見つめた。

 

(嘘は言っていないですよ、嘘は……)

 

鈴仙は内心で冷や汗を流していた。

 

真実は――“悪い妖怪(主に女性)”を懲らしめている、幻想郷の治安を守る博霊の禰宜であるのだが、鈴仙はそれを都合の良い形に“ねじ曲げて”伝えているに過ぎない。

 

鈴仙は胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。

 

やがて――ドレミーは長い溜息をひとつ吐いた。

 

「……まあ、考えてみましょう」

「本当ですか!?」

 

ドレミーは何も言わず頷くと、鈴仙はぱっと顔を明るくする。

 

「ありがとうございます!」

 

 了承の言葉だと受け取った彼女は、嬉々として現実世界へと帰っていったのであった。

 

「…………」

 

残されたドレミーは、しばらくその場に立ち尽くすと静かに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……といった感じなんですが、どうしましょう」

 

静謐な水面と星々の光が重なる神域へと訪れたドレミーは、そこに佇む存在へと事情を説明した。

 

「フム……」

 

龍神であった。

幻想郷の根幹に関わる“何か”を司る、古き神。

彼は、ドレミーの話を黙って聞き終えると、顎に手を当てて考え込んだ。

 

「良い機会ですし、この際彼には“思い出して”貰いますか?」

 

ドレミーからの“意味深な発言”に、龍神は静かに目を閉じると、しばしの沈黙の後、ゆっくりと口を開く。

 

「いや、今はまだその時ではなかろう。代わりといってはなんだが……」

 

そこで、龍神はある“提案”を口にした。

 ドレミーは、その内容に目を瞬かせ――やがて、静かに頷く。

 

「……分かりました。では、その線で」

 

彼女は了承すると、その場をあとに姿を消し、龍神だけが残る。

 

「矢は放った。あとは運命がどこへ導くか……見届けるとしよう」

 

龍神は夜空の月を見上げ、静かに呟いた。

 

(将和よ。“残してきた記憶”を受け止めるのは、お前にも“彼女たち”にも今しばらく時間が必要であろうな)

 

その言葉が何を意味しているのかは、龍神にしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博霊神社の夜は、静かだった。

 境内を渡る風は涼しく、虫の声が遠くで響いていた。

 

「おやすみ、霊夢、美鈴」

「おやすみ、将」

「おやすみなさい、将和さん」

 

将和は二人に軽く手を振り、布団へゆっくりと横になった。

灯りが落ち、三人の呼吸が静かに重なる。

目を閉じると、すぐに深い眠りが訪れた。

 

その瞬間――

 夢の世界の深層で、ドレミー・スイートがそっと指を鳴らした。

 

「さあ……あなたの記憶の扉、、、、を、少しだけ開けさせてもらいますよ。三好将和……」

 

世界が、ゆっくりと沈んでいく。

 まるで深い海へ落ちていくように、将和の意識は暗闇へと吸い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「微速前進」

 

「微速前進ヨォーソロォー」

 

(……ん?)

 

聞き覚えのある声が、遠くから響いてくる。

 将和はゆっくりと目を開けた。

 

そこは――

 見覚えのある光景だった。

 

鉄の匂い。

 油の香り。

 機械の唸り。

 そして、見慣れた“艦橋の窓”。

 

「………………っ!?」

 

周囲には、旧日本海軍の将校服を着た男たちが立ち、真剣な表情で操艦を行っていた。

その光景は、将和の胸を強く揺さぶった。

 

(……ここは……まさか……)

 

男たちが将和の異変に気づき、視線を向ける。

その中で、ひときわ見覚えのある顔が将和へ駆け寄った。

 

「長官、大丈夫ですかッ!?」

「ん……草鹿!?」

 

そこに立っていたのは――

 かつて第一航空艦隊参謀長として、将和を支え続けた男・草鹿龍之介少将であった。

 

その姿は、将和が記憶しているよりも若い50代前半ぐらいの姿をしていた。

 将和は驚愕し、草鹿もまた困惑した表情を浮かべる。

 

「長官……? どうされました? 急に仰け反られて……」

「草鹿……お前、若返ったな?」

「何を言っているのですか長官? 私はもうよわい49で、今年の11月には50になりますよ!」

 

草鹿は困惑しながらも、どこか嬉しそうに笑った。

そのやり取りに、別の男が笑いながら口を挟む。

 

「長官から見たら、我々はまだまだ若輩者ということでしょう、参謀長」

「源田……」

 

将和が声のした方へ視線を向けると、そこに立っていたのは、源田実であった。

 彼もまた、40代前半頃の若々しい姿で“甲航空参謀として”その場に居たのである。

 

将和は、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。

 戦前から共に歩み、戦後に老衰で見送った仲間たち。

 その二人が“戦中の頃の姿”で、目の前に居たのである。

 

(……懐かしいな……あの草鹿と源田が、目の前に)

 

これが“夢”だと分かっていても、将和には感傷に浸れるものであった。

だが、感傷に浸ってばかりはいられなかった。

 

「草鹿、変な質問をするが……俺は誰だ?」

「誰だって御冗談を……貴方は第一航空艦隊司令長官・三好将和大将ではありませんか」

「……済まないが鏡を……」

 

将和は草鹿が差し出した鏡を覗く。

 

そこには――

 第二種軍装の海軍制服を纏った“年取った自分”の姿が映っていた。

 

(……マジで? 過去に戻った? いや、これは夢だろう)

 

将和は周囲を確認する。

計器の音、潮の匂い、艦の振動。

間違いない。ここは旧日本海軍の空母『加賀』の艦橋。

第一航空艦隊司令長官として、嘗て立っていた“あの場所”だった。

将和は深く息を吐いた。よりにもよって“あの戦争を再現した夢”を見るとは思わなかった。

 

(これが“機動部隊司令官”だった時の現し身だというなら――その役目を全うしようじゃないか)

 

そう悟ると、将和は表情を引き締める。

彼の中に眠る軍人としての本能が、静かに目を覚ました。

 

「本当に大丈夫ですか長官?」

「……済まない草鹿。どうやら少し記憶が混乱しているようだ。今は何年何月だ?」

「今は昭和17年の5月27日です」

「もしかしてMI作戦……AF攻略か?」

「はい。6月5日にミッドウェー島を叩き“占領した後”に、奪還に来る米機動部隊と雌雄を決する作戦予定ですが……」

 

歯切れ悪く言う草鹿に、源田が口を挟む。

 

「長官は米空母が待ち構えていると踏んでいるのでしょう」

 

将和は頷いた。

 

「黒島は“米空母はいない”と息巻いているが、我々はいると判断して動く。ミッドウェー島爆撃は二航戦と七航戦の半数で実施。残りは対艦兵装で待機させておく」

「はっ」

「そして、索敵には全彩雲を出す」

「全力投入ですね。14機の彩雲の索敵線は如何されますか?」

「1番から5番までとする」

「東北方向に全機投入ですか?」

「あぁ、俺が米軍の指揮官ならそこで待ち構える」

「分かりました、そのようにしましょう」

 

参謀たちは頷き、草鹿は彩雲の運用について再確認する。

将和は静かに息を吐いた。

 

(……ここが夢だろうと関係ない。俺は“司令官”として動く)

 

将和は臨機応変に現状へと適応した。

そんな彼の腰には、軍刀代わりにマスターソードが添えられていたのである。

 

将和が預かる第一航空艦隊の陣容は以下のとおりであった。

 

 

 第一航空艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 草鹿龍之介少将

 甲航空参謀 源田実大佐

 旗艦『加賀』

 

 第一航空戦隊

 司令官 三好将和大将(兼務)

 空母『加賀』『天城』『赤城』

 第二航空戦隊

 空母『蒼龍』『飛龍』

 第七航空戦隊

 空母『阿蘇』『生駒』

 第三戦隊

 戦艦『河内』『因幡』『岩代』『薩摩』

 第七戦隊第二小隊

 重巡『鈴谷』『熊野』

 第八戦隊

 重巡『利根』『筑摩』

 第一護衛戦隊

 軽巡『五十鈴』『名取』

 第一水雷戦隊

 軽巡『阿武隈』

 第四駆逐隊

 駆逐艦『嵐』『萩風』『野分』『舞風』

 第一七駆逐隊

 駆逐艦『谷風』『浦風』『浜風』『磯風』

 第十駆逐隊

 駆逐艦『秋雲』『風雲』『巻雲』『夕雲』

 第三十一駆逐隊

 駆逐艦『長波』『巻波』『高波』『清波』

 第六十一駆逐隊

 防空艦『秋月』『照月』『涼月』『初月』

 第六十二駆逐隊

 防空艦『新月』『若月』『霜月』『冬月』

 

 

 

 

戦艦4、空母7、重巡4、軽巡3、駆逐艦24。

 総勢42隻の大艦隊が、柱島から出撃し、輪形陣を組むと一路ミッドウェー海域へ向けて航行を開始したのである。

 

 

 

「霧が濃いですね」

 

ミッドウェー島へ向かう途中、第一航空艦隊は低気圧に直撃し、各艦の姿を見失っていた。

 

(えらく再現された夢だな……確かにミッドウェーでは低気圧に対応はしたが……)

 

参謀たちが次々と指示を確認し、動き始める姿に、その中心に立つ将和はふと別のことが頭をよぎってしまった。

しかし――この夢は、ただの追体験では終わらない。

 

「探照灯を使って交信していますが、部隊間の連絡に支障が出ております」

「無線を使用し、各艦の安全確保に努めるべきだ!」

「いや。敵に傍受され位置を把握される。電探があるからお互いに位置は把握してるだろう。使うべきではない」

「電探を搭載してない艦はどうなる!?」

「既に動きが読まれているのは明白です。ここは艦隊の安全航行に努めるべきです!」

 

司令部では参謀達があれやこれやと意見を交わすが、意見が纏まらない。

 

「ならば長波の無線を使用し、艦隊進路を定めよう。近距離用の無線なら傍受されにくいだろう」

 

この将和の決断により、艦隊は駆逐艦『長波』を基点として針路を定めたことにより、事なきを得たのであった。

その光景をドレミー・スイートは夢の世界の深層から静かに見つめていたのである。

 

(流石ですね。現実をつぶさに把握し、臨機応変に動く現実主義観。“元”軍人ながら、ブランクを感じさせない適応力とは恐れ入りました)

 

ドレミーは感心する。

この世界は“将和が動かなければ進むことがない”。

だからこそ、彼が順応して動いてくれたことで“次のステップ”を踏めることになった。

 

(舞台は整えました。後は――)

 

ドレミーは、静かに指を鳴らした。

運命は、すでに動き始めていた。

 




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