永遠亭の奥深く。
月の光が障子を淡く照らし、静寂が満ちていた。
八意永琳は、弓を構えて空を見上げてる。
その視線の先には、幻想郷の空に浮かぶ“本物の月”。
「あまねく地の上から遙か月まで、覆い隠せ!――秘術『天文密葬法』!」
放たれた矢は光の軌跡を描き、空へ吸い込まれる。
次の瞬間、幻想郷全体を包むように“見えない結界”が展開された。
月と地上を繋ぐ通路は密閉され、地上は“密室”となる。
「これで……」
永琳はそう言いかけて、ふらりと体を傾けた。
(少しだけ……休みましょう)
依姫たちの召喚から、幻想郷全体への結界の展開等――異変の準備を終えた永琳は深い疲労を覚えてベッドへと身を沈めた。
瞼が落ち、意識が沈む。
その瞬間――永琳の周囲の空気が、わずかに“揺れた”。
まるで誰かが、そっと彼女の意識に触れたように。
「……? ここは……」
ふと目を開けた永琳は、ゆっくりと周囲を見渡した。
潮風が髪を揺らし、足元に“硬い床”が広がっている。
空は暗く、視界は悪い。
しかし、永琳は目を凝らし、周囲の輪郭を捉えた。
「……船? いえ、これは……まさか……空母?」
長い年月を生きる彼女には、それが“旧式の軍艦”であるとすぐに分かった。
アングルド・デッキのない、古い空母。それはまるで……
(100年前に見た……あの戦争の時代の艦……?)
永琳は困惑する。何故自分はこんなところに居るのだろうと。
確か、幻想郷へ結界を張り、月をすり替え横になった筈。
それから……
「八意様……?」
その時、背後から声がした。
振り返ると、そこには綿月依姫が立っていた。
「依姫? あなたもここへ……?」
「はい。眠りについた後、気づけばこの場所に居ました。ここは、どこなのでしょうか?」
依姫もまた、状況を理解できずに戸惑っていた。
永琳は眉を寄せる。
(夢……? でも、依姫まで同じ夢を見ているのは不可解ね)
夢は本来、個人の意識の中で閉じるもの。
複数人が同じ夢を共有するなど、自然には起こり得ない。
まるで“誰かが意図して”自分たちをここへ連れてきたような――そんな違和感を覚えた。
(いえ……依姫と共有していると“錯覚”しているだけで、私が“都合良く”依姫を映した夢を見ているだけの可能性も……ん?)
ふと永琳は、マストに掲げられた旗に目を留める。
「……旭日旗……?」
よく目を凝らすと周囲には、複数の旧式軍艦が航行しているのが確認できた。
その艦にも同様に旭日旗が掲げられていたのである。
「これはまさか……日本海軍……?」
「八意様、知っているのですか?」
「ええ……昔ね。100年近く前に戦争に敗れて滅びたはずなんだけど」
永琳が言葉を続けようとした時――
「あら、ごきげんよう」
柔らかな声が、潮風の中に響いた。
永琳と依姫が振り返ると、そこには扇子を口元に当てた女性が立っていた。
「あなたは……!」
永琳の瞳が大きく見開かれる。
「妖怪の賢者――八雲紫!」
依姫は即座に剣に手をかけ、警戒する。
「お久しぶりね。月の剣士さん」
「ええ。月面戦争以来です」
空気が一瞬で張り詰める。
月の剣士と幻想郷の賢者――因縁深い二人が、ここで再び鉢合わせをした。
三人の間に、ピリピリとした空気が走る。
「どこよ、ここ……」
その時、暗闇からもう一人少女が姿を見せる。
「博霊の巫女……!」
「彼女が……」
(彼女までここに? これは偶然じゃない)
永琳は、霊夢の姿を見て警戒を強めた。
依姫は初めて見る“幻想郷の巫女”に目を細める。
――まさに一色触発
霊夢はこの状況を理解できず、紫へと問いかける。
「紫。ここは何処で、今どういう状況なのか説明してくれない」
紫は、困ったように微笑む。
「少し待って。こっちも想定外なのよ。どうやら“誰か”に呼ばれたようだけれど――そちら様も少し落ち着いて話し合いましょう」
「問答は無用よ」
永琳は、静かに弓を構えた。
その瞳には、迷いも慈悲もなかった。
「私たちを見つけてしまった以上、あなたたちには死んでもらう他ありません……!」
永琳が弓を引き絞る。
その瞬間、空気が震えた。
「神符『天人の系譜』!」
光の矢が放たれ、甲板を白く照らす。
矢は分裂し、無数のレーザー弾幕となって霊夢と紫へ襲いかかった。
「「……っ!?」」
紫と霊夢は瞬時に跳躍し、攻撃を回避する。
「話し合う気はなさそうですわね」
紫は扇子を閉じ、静かに宣言する。
「結界『光と闇の網目』」
光と闇の境界が編まれ、網目状のレーザーが永琳の弾幕へ交差する。
甲板の上で、二人のレーザー弾幕がぶつかり合い、火花のような光が散った。
昭和17年6月4日(仮)。日本時間・午後10時30分。
第一航空艦隊はミッドウェー島北西250海里の洋上へと到達していた。
旗艦・空母『加賀』の艦橋では、翌日の作戦開始を控え、張り詰めた空気に包まれている。
格納庫では整備員達が艦攻・艦爆へと“対艦兵装”を施し、各艦載機の最終チェックを始める。
誰もが緊張し、誰もが静かに、しかし確実に“戦いの朝”へ向けて準備を進めていた。
「長官」
草鹿龍之介少将が電文を手に、将和へと歩み寄る。
「GFより入電です。ミッドウェー島付近で敵空母と思われる呼び出し符号を傍受したとの事です」
「やはりか。堀長官の念の入れようには感謝だな……!」
将和は顔をほころばせる。
第一航空艦隊の後方およそ100kmを堀悌吉聯合艦隊司令長官率いる戦艦大和を旗艦とする主隊が航行している。
その大和では“史実同様”米空母の呼び出し符号を傍受したことを受け、堀長官は“反対する参謀の声を無視して”加賀へと情報を発信してきたのである。
この時点で堀の将和に対する親交の厚さが窺える。この二大海将の“決断”がその後の対米戦争を行く末を決めることに繋がっていくのであった。
「黒島大佐は反対していたでしょうな。無線封鎖を破るべきではないと」
「違いない」
草鹿の報告に将和はククク、と笑いながら呟く。
その横で、甲航空参謀・源田実が不敵な笑みを浮かべる。
「まあこれで敵空母が待ち伏せているのが分かった訳です。良かったではありませんか」
「良いのか悪いのか……あんまり深くは言えないな」
源田の言葉に草鹿は溜め息を吐く。
ミッドウェー基地の航空機と米空母の艦載機――両方を相手取る必要が出てきたのだから。
機動部隊の負担が大きいのは変わらない。どう“要領よく”乗り切るか――それが艦隊を預かる司令部の課題だった。
その時だった。
「……っ! 伏せろォッ!!」
将和は窓の外に“異質な光”を見た瞬間、反射的に叫ぶと草鹿と源田の頭を押さえ、床へ伏せさせる。
次の瞬間――
「うわあぁッ!!」
「ぎゃッ……!」
「ぐわぁッ……!」
艦橋へと何かが飛び込んで来て、複数の参謀が直撃を受け、床へ倒れ込む。
(今のは“弾幕”か……!)
将和は瞬時に飛んできたものの正体を見破る。
「全員無事かッ!?」
将和は顔を上げると複数人の参謀が倒れ込んでいた。
「なにが起こったというのだ……」
「敵襲か!」
草鹿と源田は無事だった。
二人は訳が分からず、呆然とする。
将和は倒れた参謀の一人へ駆け寄った。
「ぐっ……長官……」
「しっかりしろ!! 衛生兵ッ!!」
将和が叫び、衛生兵が駆け込む。
倒れた参謀たちは重傷だが、致命傷ではないようだった。
しかし――弾幕が、旧日本海軍の艦橋に飛び込んできた。
それは、将和の記憶にも、歴史にも存在しない“異常事態”だった。
(そういうことなら、俺も使えるな)
将和は状況を察すると、ある詠唱を唱える。
「生命を司る精霊よ、失われゆく魂に、今一度命を与えたまえ――アレイズ!」
将和が唱えた瞬間、光が参謀たちを包む。
倒れていた者たちはゆっくりと目を開け、立ち上がり、怪我が治っていることに困惑した。
草鹿と源田も、その光景を見て目を白黒させる。
「長官、今のは……!?」
「説明はあとだ。ちょっと甲板に出てくる。艦隊の指揮は任せるぞ」
将和は艦橋を飛び出そうとしたが、通信兵が駆け寄る。
「長官、山口少将から緊急電です!」
受話器を受け取ると、二航戦司令官――山口多聞少将の声が響いた。
〈何ごとか!? 加賀で閃光が上がっていますぞ、長官。まさか“花火”でもしている訳ではありますまい!?〉
山口は飛龍の艦橋から加賀の甲板上で弾幕が飛び交っている光景を目撃し、敵の攻撃か人的ミスによる誘爆事故か何かと勘違いし、急いで連絡を入れてきたのであった。
「どうやら“身内”の不祥事らしい。こっちで解決するから、そっちは予定どおり早朝の出撃に向けて準備に専念しててくれ」
将和はそう言い残し、甲板へ向かった。
一方甲板では――永琳、紫、依姫、霊夢の四者による激しい攻防が展開されていた。
永琳は依姫へ叫ぶ。
「依姫、油断しないで! 彼女たちは強い!」
「心得ています!」
依姫は、剣を構えると霊夢へと斬りかかる。
霊夢は依姫の剣をお祓い棒で受け止めながら叫ぶ。
「なんでいきなり攻撃してくるのよ!」
「あなたが八意様にとって脅威だからです!」
霊夢は空へ跳び上がり、御札を広げる。
「夢符『封魔陣』!」
霊夢の周囲に巨大な魔法陣が展開され、無数の御札が依姫へ向かって飛ぶ。
しかし依姫は――その全てを“剣で斬った”。
甲板に足をつけたまま、依姫は剣を振るい、霊夢の弾幕を斬り裂く。
斬られた御札は光の粒となって消えた。
「弾幕を斬った!? 剣の腕は将や妖夢並ってわけ……!」
霊夢が驚く間もなく、依姫は静かに宣言する。
「――八意様。身技をお借ります。覚神『神代の記憶』!」
永琳のスペルカードが依姫の手で発動される。
依姫の周囲に古代神の光が集まり、弾幕の密度が一気に増した。
霊夢は空中で躱し続けるが――依姫の弾幕は“斬撃”と“光弾”が混ざり、軌道が読めない。
(弾幕を剣で操ってる……!)
霊夢は依姫の攻撃を躱しながら、弾幕を撃ち続ける。
一方、八雲紫は八意永琳と対峙していた。
お互いに避ける隙間もないほどの濃密な弾幕の応酬。
紫はスキマを開き、永琳の弾幕を次々と吸収し、無力化する。
一方の永琳は結界を展開し、紫の弾幕を弾く。
「あなた、なかなか精密な戦い方をするのね」
「あなたの能力は厄介ね」
互いに淡々と会話しながら、甲板上空で“光の網目”が交差し続ける。
二人の攻防の煽りを食らっていたのが霊夢である。
霊夢は飛び交う弾幕を空中で躱し続けるが――永琳のレーザー弾幕、依姫の斬撃弾幕、紫の境界弾幕が交差し、空中の“安全地帯”がどんどん狭くなっていた。
(このままじゃ避けきれない……!)
霊夢はついに甲板へ降りた。
その瞬間――依姫は静かに宣言する。
「――操神『オモイカネディバイス』!」
スペルカードが発動し、依姫の周囲に“思考加速の光”が展開される。
「っ……!」
霊夢は走りながら弾幕を放つが、依姫はその全てを剣で斬り捨てると距離を縮めてくる。
(……来る!)
依姫の動きが霊夢の目では追えないほど速くなる。
次の瞬間――甲板の上で、二人の足音が交差する。
依姫の剣が霊夢の肩をかすめ、霊夢のお祓い棒が依姫の頬をかすめる。
「驚きました。接近戦もこなせるのですね」
「将に比べたら、アンタの攻撃はよみやすいわ」
霊夢はお祓い棒を伸縮させ自身へと迫る依姫を迎撃する。
一進一退。
互いに一歩も譲らない。
幾度の攻防の末、霊夢は依姫の剣を受け止める。
「あんた……強いわね……!」
「あなたも強いですが――間合いに入った以上、私には勝てません」
依姫は永琳の弾幕を背に、霊夢へ詰めかかる。
接近戦では依姫の方に一日の長があった。
霊夢はお祓い棒で受け止めるが、依姫の剣は重く、受ける度に腕に痺れを感じた。
「くっ……!」
依姫は下から剣を振り上げると、霊夢のお祓い棒を弾き飛ばし、そのまま海へと落とし込む。
「しまっ――」
霊夢の体勢が崩れると、霊夢の目の前に、依姫は剣を突きつけた。
「これで終わりです」
依姫が剣を振り下ろそうとした――その瞬間。
「ここは“俺の領域”だ。好き勝手に暴れるのは慎んで貰おうか」
甲板に降り立った将和が、マスターソードで依姫の剣を受け止めた。
「……っ!」
「将ッ!?」
依姫は驚愕し、霊夢は息を呑む。
将和は、いつも見慣れている服装と違い旧日本海軍の白い軍服を纏い、歴戦の将軍のような気迫を放っていた。
「あなたが……」
依姫は驚愕し、距離を取る。
依姫の剣が押し返された隙に、霊夢は後退する。
戦場の空気が、一瞬で変わった。
「将……なんか雰囲気変わったわね」
霊夢は目を白黒させる。
「正直に老けてるって言っていいぞ。実際“老兵”だからな」
その姿は、確かにイケオジの軍人――しかし、纏うオーラは“鬼神の将軍”だった。
(将って……年取ったらこんな感じなんだ。ちょっといいかも……///)
霊夢は頬を赤らめる。味の出た大人の雰囲気は霊夢には違う意味で受けが良かったらしい。
(不覚でした。まさか懐に入ってくるまで気付かなかったとは……)
一方依姫は冷や汗を流していた。
「霊夢、これを着ててくれ」
「これは?」
「“マジックマント”だ。これを被っている限り、霊力が尽きない限りは攻撃は素通りする」
霊夢は驚きながらも受け取り、肩にかけるとその姿が立ち消える。
依姫はそれを気にせず剣先を将和へ向け構える。
「あなたが三好将和。八意様が警戒するほどの剣士……私の剣で、確かめさせてもらいます」
将和は、永琳たちの方を一瞥すると依姫の挑戦を一刀両断する。
「――だが断る」
「えっ」
依姫は一瞬、言葉を失った。
将和の瞳には、怒りが宿っていた。
「俺の仲間を傷つけた時点で、“剣の勝負”なんて生ぬるい話は終わりだ」
将和はマスターソードを構えると、ゆっくりと魔法のメダルへ手を添えた。
霊力の奔流に甲板の空気が一瞬で凍りつく。
「悪い、紫。上手く避けろ。たぶん手加減できない」
将和の声が低く響く。
「人様の庭を土足で踏み荒らす輩は懲らしめる――『エーテル』!!」
瞬間――甲板全体が“白い光”に包まれた。
永琳のレーザー弾幕も、依姫の斬撃弾幕も、紫の境界弾幕も、すべてが凍りつき、空中で停止する。
そして――光が爆ぜた。
「っっ!!?」
『エーテル』の攻撃を諸に受けた依姫は全身を凍結され、動かなくなった。
「っ……!!」
紫はスキマに逃げ込み、辛うじて回避。
「なっ……!!」
永琳は障壁を張るが、半身が凍りつき、甲板へ転落する。
「将、こんな隠し技を持ってたのね!」
霊夢が姿を見せる。
彼女はマジックマントを着てたおかげで無傷だった。※
「ああ。攻撃範囲が広いから、味方が近くに居たら発動できないという欠点があるがな」
将和は剣を納めず、永琳を見据える。
「これ以上争ってもお互い無益だ。まだ暴れ足りないなら、来い。相手になるぞ」
「依姫……!」
甲板に身体を預けた永琳は、凍りついた依姫へ手を伸ばすが、自分の体も凍結しているため動けなかった。
(まさか……たった一撃で……私たちを戦闘不能に追い込むなんて……)
永琳は、静かに悟った。
「……降参します……」
その声は震えていた。
紫はスキマから姿を見せ、冷や汗を流す。
(あの攻撃……諸に受けていたら危なかったですわね)
将和は剣を納めると依姫の前へ歩み寄り、静かに手をかざした。
「天駆ける風、力の根源へと我を導き、そを与えたまえ――エスナ」
瞬間――依姫の凍結が解け、温かい光が彼女の体を包み込む。
力が入らず倒れ込もうとした彼女を将和は支える。
「大丈夫か?」
「これはいったい……」
依姫は驚愕するも彼女を座らせると、永琳にも歩み寄り、同じように手をかざし『エスナ』を発動した。
永琳の凍結も解け、呼吸が楽になる。
「これは……」
永琳は、未知の魔法に目を見開いた。
(……この魔法は……何? 医療の理を超えている……)
「あなた……いったい……」
永琳が、震える声で尋ねようとすると、別の声に掻き消される。
「うわあぁぁー!!? なんてことだーー!!」
「加賀の甲板が!? 米機動部隊の決戦を前に……」
源田と草鹿であった。
彼等は表に出ると、甲板の惨状を見て絶叫し、悲嘆にくれる。
「お――」
将和が加賀の甲板を確認すると、もはや平らな所がないのではないかと言うぐらい弾幕の直撃により蛸壺陣地と化していた。
「……紫」
将和は紫へ視線を向ける。
『境界を操ればなんとかできるだろ?』
そう目で訴えた。
「仕方ありませんわね」
此方の落ち度であることを認めた紫はため息を吐くと、右手を伸ばして掌を握り込む。
すると、境界が揺れ――甲板の穴が、たちどころに塞がっていった。
「まあ、こんなところかしら」
「流石だな」
将和が満足そうに頷く。
紫の能力は物体や時間、空間、果ては宇宙と万物に存在するモノとモノの間にある境目をいじり、世界そのものを作り変えることができるので“加賀の甲板まわりの境界をいじり、穴を塞いで修復した”のである。
当然そんなことを知らない草鹿と源田はまたも目を白黒させ唖然とした。
「甲板の穴が塞がった……?」
「奇跡だ! 長官、彼女はいったい……」
草鹿が紫について、将和に問い掛ける。
将和は眉を寄せる。
帝国軍人に幻想郷の妖怪や神様等の存在をどう説明したら良いか、分かりかねたからだ。
「彼女はえーと…………大妖怪だ」
「なんと! 貴女はまさか『ぬらりひょん』なのですか!」
「ほぉー」
合点のいった草鹿と腕を組んだ源田は、紫へ感心の視線を向ける。
当の紫は微妙な表情を浮かべた。
「……まあ、当たらずとも遠からず…と言っておきましょう」
草鹿と源田は顔を見合わせた。
「ぬらりひょんって……あんなに綺麗だったのか?」
「妖怪の世界も奥が深いな……長官はいつからぬらりひょんさんと知り合っていたのですか?」
「過去に色々あって交流を持ってな。俺が特殊な力を使えるのも、この人のおかげだ。さっきはちょっと“仲間割れ”を起こしてたから仲裁に入ったんだ。妖怪の世界から我が軍の戦いを観戦するために来艦されてな。丁重におもてなしをするんだぞ」
将和はそのまま“都合良く”経緯を説明し、参謀達を納得させた。
もはや存在を『ぬらりひょん』で通された紫は肩をすくめる。
「もう……好きに解釈してちょうだい」
かくして一つの戦闘が終わり、ここから――“誤解の解消”と“心の交流”が始まることとなった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m