咲夜と美鈴との戦いが終わり、紅魔館の門前には静寂が戻っていた。
霊夢は札をしまい、将和はマスターソードを背に納める。
美鈴は衣服を整えながら、まだ頬を赤らめていた。
「…まったく、あんな斬り方するなんて…」
「すまん。剣が勝手に選んだんだ」
「言い訳になってないわよ」
霊夢はじと目を向けながらも、どこか楽しげだった。
その時、紅魔館の扉がゆっくりと開いた。
中から現れたのは、深紅のドレスに身を包んだ少女――レミリア・スカーレットであった。
「ようこそ、博麗の巫女。そして…異邦の剣士」
彼女の声は、どこか気品と威圧を併せ持っていた。
その瞳は、夜の闇よりも深く、紅霧の源を宿しているようだった。
「紅霧を撒いたのは、私よ。でも、理由は単純。昼間に活動したかっただけ」
霊夢が一歩前に出る。
「幻想郷の空を覆うほどの霧を撒いておいて、ただのわがままってわけ?」
「わがままこそ、吸血鬼の特権よ」
将和は剣を抜き、静かに構える。
「なら、幻想郷の秩序を守る者として、止めさせてもらう」
レミリアは微笑み、手を広げる。
「ならば、スペルカードで語り合いましょう。夜の舞踏を、始めましょうか」
空が再び紅に染まり、弾幕が咲き乱れる。
霊夢は夢符『封魔陣』を展開し、将和は剣で弾幕を打ち返す。
「っ!?」
思わずレミリアは右、左へと体を移動させることで跳ね返ってきた弾幕を躱した。
「おもしろい……!」
このような方法で弾幕を防いでくるとは思わなかったレミリアだが、直ぐに対処法をうつ。
獄符「千本の針の山」を発動すると、大量のナイフ弾を放った。
この攻撃は通常弾幕より威力が下がる分、速度がはやいので将和も打ち返さずに躱す対応をした。
その隙にレミリアはスペルカード『紅色の幻想郷』を発動し、空間が歪む。
紅霧が渦を巻き、弾幕が花のように咲き誇る。
「美しい…だが、容赦はしない!」
将和は剣を振るい、ビームを発生させると霧を裂く。
霊夢は札を操り、弾幕の隙間を縫うように進む。
二人の連携は、もはや言葉すら不要だった。
剣と札、勇気と信仰――それらが交差し、紅魔館の空に新たな風を吹かせる。
霊夢は空を舞い、札を操る。
将和もまた、霊夢と同じく、風を纏って空中を自在に駆ける。
二人は紅霧を裂きながら、レミリアの弾幕に立ち向かっていた。
だが――その瞬間、空間が軋むような音を立てて歪んだ。
「フラン……来ちゃったのね」
レミリアが小さく呟いた直後、紅魔館の塔を突き破るようにして現れたのは、金髪の少女――フランドール・スカーレット。
その瞳は狂気に染まり、手には七色に輝くクリスタルの羽根が揺れていた。
「お姉様ばっかり楽しそう…ずるいよ」
彼女の手が、ゆっくりとスペルカードを掲げる。
「禁忌『フォーオブアカインド』」
瞬間、空間が四つに裂け、フランドールの分身が四方に現れた。
それぞれが異なる軌道で弾幕を放ち、将和と霊夢を包囲する。
「分身…!? しかも本体と同じ火力…!」
「まさにファンネルだな…!」
霊夢は札で応戦するが、分身たちは予測不能な動きで迫ってくる。
将和も剣で弾幕を打ち返すが、相手が縦横無尽に飛び回っていては当たらない。
将和と霊夢は空中戦の乱れにより連携が崩れ始めていた。
「このままじゃ、押し切られる…!」
将和は一瞬、霊夢と目を合わせる。
そして、腰のポーチから一枚の風符を取り出した。
「風よ、我が刃となれ――疾風のブーメラン!」
彼が放ったのは、風を纏った回転刃。
それは空中を縦横無尽に駆け、分身たちの間をすり抜けながら軌道を変えていく。
「なっ…!」
次々に疾風の軌道が分身を貫き消えていく。
最後の一体が消えた瞬間、ブーメランは将和の手元に戻った。
「残るは…本体だけだ」
将和はマスターソードの切っ先をフランドールへ向ける。
フランドールは一瞬、怯えたような表情を見せる。
だが、すぐに狂気の笑みを浮かべ、禁忌「レーヴァテイン」を発動させると、真っ直ぐ突っ込んで来る。
「壊れちゃえ、全部!」
将和はマスターソードでフランドールの炎の剣をいなすと、距離を詰めてつばぜり合いに持ち込む。
「くっ…!」
「君は強い。だが、一人で戦おうとしたことが敗因だったな」
フランドールが気付いた時には遅かった。
つばぜり合いで動きが止まっていた間に霊夢は将和の背を借りて跳躍し、スペルカードを発動する構えとなっていた。
すかさず将和は切っ先を引いて押し返すと、フランドールと距離を取る。
「あっ!??」
「今だ、霊夢!」
「夢符――『夢想封印』!!」
霊夢が放った大量の大きな光弾はフランドールめがけて飛んでいき、当たると同時に炸裂した。
空が震え、紅霧が一瞬で晴れ渡った。
フランドールは空中で静かに倒れ、レミリアの腕の中に収まる。
「…ごめんなさい、お姉様…」
レミリアはそっと彼女を抱きしめ、静かに目を閉じると、静かに降り立った。
「…負けたわ。でも、楽しかった。こんなに心が躍ったのは久しぶり」
霊夢は札をしまい、将和は剣を納める。
「異変は、これで終わりね」
レミリアは微笑みながら、空を見上げる。
「昼間の空も、悪くないかもね」
紅霧が晴れ、幻想郷に再び光が差し込む。
その光の中で、霊夢と将和は並んで立っていた。
「…ありがとう、将和。あなたがいてくれて、助かった」
「礼なら、肩でも貸そうか?」
将和は霊夢の肩に手を添え、そっと自分の方へ引き寄せた。
霊夢は少し驚いたように目を見開き、そして――微笑んだ。
「…まったく、調子に乗らないでよね」
こうして紅霧異変は解決した。
因みに本文に記載しませんでしたが、パチュリー・小悪魔ペアのところへは別口から侵入してきた魔理沙と交戦になって、敗退していました。
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