三好in東方Project(仮)   作:フォークロア

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第七話 春の宴と縁側の語らい

春雪異変が静かに収束し、幻想郷にはようやく本物の春が訪れていた。

博麗神社の境内には、満開の桜が風に揺れ、鳥のさえずりが穏やかに響いている。

 

「…ようやく、落ち着いたわね」

 

霊夢は縁側に腰を下ろし、湯呑を傾けながら呟いた。

将和はその隣で、薪をくべながら火を起こしていた。

 

「異変続きだったからな。たまには、騒がしくない夜もいい」

「でも、今日は騒がしくなるわよ。宴会、開くって言ったでしょ?」

 

将和は目を丸くした。

 

「…本気だったのか」

 

霊夢はにやりと笑う。

 

「異変を乗り越えた仲間たちに、感謝を込めて。幻想郷流の“ねぎらい”よ」

 

夕方になると、神社の境内に次々と人妖たちが姿を現し始めた。

最初に現れたのは、紅魔館の面々だった。

レミリア・スカーレットは優雅にドレスを揺らしながら歩き、咲夜は手に紅茶とワインの瓶を抱えていた。

 

「博麗の巫女、そして剣士殿。今宵は楽しませてもらうわ」

「紅魔館特製のワインを持参しました。少々強いですが…ご覚悟を」

 

美鈴は門番らしく、酒樽を肩に担いで登場した。

 

「門番の力、見せてあげますよ!…って、飲み比べじゃないですよね?」

 

フランドールはぬいぐるみを抱えながら、将和の隣にちょこんと座った。

 

「お兄ちゃん、今日は壊さないようにするね」

 

次に現れたのは、白玉楼の剣士――魂魄妖夢。

彼女は少し緊張した面持ちで、桜餅の包みを手にしていた。

 

「…あの、これ…幽々子様が作ってくださったんです。皆さんでどうぞ」

 

将和は受け取りながら、微笑んだ。

 

「ありがとう。君の剣も、桜餅も、どちらも見事だ」

 

妖夢は少しだけ頬を赤らめ、半霊がふわりと揺れた。

続いて現れたのは、氷の妖精チルノと大妖精。

チルノは元気いっぱいに叫ぶ。

 

「宴会って聞いたから、あたいが来たよー!最強の乾杯、見せてやる!」

 

大妖精は笑いながら、果物の盛り合わせを差し出した。

 

「皆さんで召し上がってください。春の果物、たくさん集めてきました」

 

そして、空間がふわりと歪んだ瞬間――

紫色の傘が開き、八雲紫が境界を越えて現れた。

 

「ふふ…賑やかね。博麗の巫女、今宵は私も混ぜてもらうわ」

 

その後ろには、狐耳の式神・八雲藍と、猫耳の少女・橙が控えていた。

 

「紫様の式神、八雲藍です。今宵はよろしくお願いします」

「橙です!…えっと、宴会って、踊ってもいいんですか?」

 

霊夢は笑いながら、皆を境内へと招き入れた。

 

「踊っても、歌っても、飲んでもいいわよ。今日は、異変を乗り越えた者たちの宴なんだから」

 

将和は火を整え、酒と料理を並べながら、ふと空を見上げた。

幻想郷の空は、穏やかに晴れていた。

その下で、人と妖が肩を並べ、笑い合い、杯を交わす――そんな夜が、今まさに始まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が更けるにつれ、博麗神社の境内は笑い声と杯の音で満ちていった。

焚き火の炎が揺れ、桜の花びらが舞い落ちる中、人妖たちは思い思いに語り合っていた。

将和は、妖夢と剣術談義に花を咲かせていた。

 

「魂魄流の型、あれは実に理にかなっている。だが、君自身の工夫も随所に見える」

 

妖夢は少し照れながらも、真剣な眼差しで答える。

 

「…ありがとうございます。でも、まだまだ未熟です。もっと、強くなりたい」

 

その言葉に、将和は静かに頷いた。

 

「強さとは、守りたいもののためにある。君の剣は、すでにその本質に触れている」

 

一方、霊夢はレミリアと咲夜と共に、紅魔館のワインを味わっていた。

 

「このワイン、香りが深いわね。…異変の時は、あんなに騒がしかったのに」

 

レミリアはグラスを傾けながら、微笑む。

 

「騒がしさも、幻想郷の魅力よ。異変があるからこそ、こうして語り合える」

 

咲夜は時計を見ながら、ふと呟いた。

 

「…時間が止まればいいのに、と思う夜もありますね」

 

紫は焚き火のそばに座り、将和と霊夢の間に静かに言葉を落とした。

 

「幻想郷は“境界”の中にある。人と妖、現実と幻想、過去と未来――その狭間に生きる者たちの物語」

 

将和は紫の言葉に耳を傾けながら、問いかけた。

 

「境界とは、分けるものか。それとも、繋ぐものか」

 

紫は目を細め、橙の頭を撫でながら答えた。

 

「どちらでもあり、どちらでもない。境界は“可能性”よ。あなたが異変を越えてきたように、境界を越える者は、世界を変える」

 

藍はその言葉に静かに頷き、将和に向かって言った。

 

「紫様は、時に厳しく、時に優しい。ですが、境界の向こうにあるものを見せてくださる方です」

 

橙は焚き火の前で踊りながら、皆の笑顔を見てはしゃいでいた。

 

「宴会って、楽しいね!みんなが笑ってる!」

 

その姿に、霊夢はふと目を細めた。

 

「…異変の後に、こうして笑えるのは、奇跡みたいなものよね」

 

将和は杯を持ち上げ、皆に向かって声を上げた。

 

「紅霧異変、春雪異変――そのすべてを越えて、今ここにいる。人も妖も、互いを知り、認め合い、共に笑える夜に、乾杯を」

 

『乾杯!』

 

境内に響く声と、杯の音。

その瞬間、幻想郷は一つになった。

宴の終わりが近づく頃、霊夢は将和と並んで縁側に座っていた。

 

「…また、異変が起きるかもしれない。でも、こうして集まれるなら、悪くないわ」

 

将和は静かに答えた。

 

「異変があるからこそ、絆が生まれるか。幻想郷は、そういう場所なんだろうな」

 

桜の花びらが、二人の肩に舞い降りる。

その夜、幻想郷は静かに、そして確かに――春を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴も終盤に差し掛かり、境内の喧騒は少しずつ落ち着きを見せ始めていた。

焚き火の炎は穏やかに揺れ、空には満天の星が広がっている。

チルノは果物を頬張りながら、フランと笑い合い、橙は藍の膝の上でうとうとと眠りかけていた。

咲夜は片付けを始め、レミリアは月を眺めながら静かにグラスを傾けている。

妖夢は将和の剣を借りて、境内の隅で素振りをしていた。

その姿は真剣で、どこか楽しげでもあった。

 

「…あの子、すっかり懐いたわね」

 

霊夢が縁側で湯呑を傾けながら、将和に声をかける。

 

「剣士同士、通じるものがあるんだろう。俺も、あの集中力には感心してる」

 

将和は隣に腰を下ろし、静かに夜空を見上げた。

 

「…幻想郷って、不思議な場所だな。異変があって、戦いがあって、それでもこうして笑い合える」

 

霊夢は少しだけ目を細めて、将和の横顔を見つめる。

 

「それは、あなたが“異質”だからよ。幻想郷にとって、あなたは境界の外から来た風。だから、みんな惹かれるの」

 

将和は苦笑しながら、湯呑を傾けた。

 

「惹かれるっていうより、面白がられてるだけかもな」

「それでも、あなたがいたから異変を乗り越えられた。…私も、少しだけ変われた気がする」

 

霊夢の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。

焚き火の火がパチパチと音を立て、桜の花びらが二人の肩に舞い降りる。

 

「…将和。これからも、異変が起きるかもしれない。幻想郷は、そういう場所だから」

「分かってる。でも、俺はここにいる。一緒に…乗り越えていけばいいさ」

 

霊夢は静かに頷き、そして――将和の肩にそっと頭を預けた。

 

「…じゃあ、もう少しだけ、こうしていてもいい?」

 

将和は何も言わず、ただその肩に手を添え、自分の方へと優しく引き寄せた。

夜空には、星が瞬いていた。

宴の余韻が、幻想郷の空に静かに溶けていく。




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