三好in東方Project(仮)   作:フォークロア

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第八話 紅き胸の鼓動、新たな絆

春雪異変の宴が終わり、幻想郷に静かな余韻が流れていた頃。

将和は紅魔館を訪れていた。目的は、挨拶と――あるお願いだった。

 

紅魔館の門前。

紅美鈴はいつものように直立不動で立っていたが、将和の姿を見つけると、ほんの一瞬だけ表情が緩んだ。

 

「三好さん…いえ、将和さん。お疲れ様です。春雪異変、お見事でしたね」

 

将和は軽く手を挙げて笑った。

 

「ありがとな。霊夢たちがいたからこそ、乗り越えられたよ。…それで、今日はちょっと頼みがあって来たんだ」

 

美鈴は首を傾げる。

 

「頼み…ですか?」

 

将和は少しだけ真剣な顔になり、美鈴の目を見て言った。

 

「俺、幻想郷で弾幕勝負をする相手はたくさんいるんだが、近接戦闘で手合わせできる相手って、妖夢くらいしかいないんだ。だから…美鈴。時々でいい、模擬戦をお願いできないか?」

 

その言葉に、美鈴の胸がドクンと鳴った。

心臓が跳ねる。顔が少し熱くなる。

 

彼女は自分でも驚いていた。

将和の真剣な瞳、まっすぐな言葉――それが、心の奥に響いていた。

 

「もちろん…構いません。私も、近接戦闘の感覚を保ちたいと思っていたところですし」

 

将和は笑みを浮かべて頷いた。

 

「助かる。美鈴の拳は、幻想郷でも屈指のものだって聞いてる。俺の剣と、君の拳――きっと、いい稽古になる」

 

美鈴は頷きながらも、視線を少しだけ逸らした。

 

「…それに、あなたと手合わせできるなら…その、私も嬉しいです」

 

将和は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく笑った。

 

「じゃあ、次の稽古は、神社じゃなくてここでやろうか。紅魔館の門前で、拳と剣の稽古ってのも、絵になるだろ?」

 

美鈴は思わず笑ってしまった。

 

「ええ。門番としての誇りも、ちょっとだけくすぐられますね」

 

──その日、紅魔館の門前には、春の風が静かに吹いていた。

美鈴の胸の鼓動は、風に乗って少しだけ高鳴っていた。

 

 

 

 

紅魔館の応接間。

深紅の絨毯と、重厚なカーテンが陽光を遮る中、将和はレミリア・スカーレットと向かい合っていた。

咲夜が静かに紅茶を注ぎ、香りがふわりと広がる。

 

「ふふ、春雪異変の後も忙しそうね、将和」

 

レミリアはカップを持ち上げ、優雅に微笑んだ。

 

「まあな。異変が終わっても、幻想郷は動き続ける。今日は挨拶も兼ねて、模擬戦のお願いに来たんだ。美鈴にな」

 

咲夜が小さく頷きながら、将和のカップにも紅茶を注ぐ。

 

「美鈴なら、きっと喜びますわ。彼女、最近少し浮かれているようですし」

将和は苦笑した。

 

「そうか…俺、何かしたかな」

 

むしろ最初の手合わせで嫌われるようなことをしたので、あそこまで好意的に受けてくれとは思わなかったのである。

その時、扉が勢いよく開いた。

 

「お兄様ーっ!」

 

フランドール・スカーレットが勢いよく飛び込んできて、将和の腕に抱きついた。

 

「わっ…フラン、落ち着けって」

 

「だって、久しぶりなんだもん!また遊びに来てくれて嬉しい!」

 

レミリアは微笑みながら、ティーカップを傾ける。

 

「宴会の頃から、すっかり懐かれてるわね。妹が“お兄様”なんて呼ぶの、あなたくらいよ」

 

将和は照れくさそうに頭を掻いた。

 

「俺も、あの時のことは忘れられないよ。フランが心を開いてくれたのは、俺にとっても大きな出来事だった」

 

咲夜がフランドールに小さな焼き菓子を差し出す。

 

「フラン様、こちらをどうぞ。将和様の好みに合わせております」

 

「わーい!咲夜ありがとう!」

 

紅魔館の空気は、どこか柔らかく、穏やかだった。

将和が紅茶を一口飲んだその時、レミリアがふと口を開いた。

 

「そういえばあなた、パチェには会ったかしら?」

 

将和は首を傾げた。

 

「…パチェ?」

 

レミリアは少しだけ目を細めて笑った。

 

「パチュリー・ノーレッジ。紅魔館の地下図書館に住んでいる魔法使いよ。知識の塊みたいな奴だけど、あまり外に出ないから、知らないのも無理はないわね」

 

将和は興味深そうに眉を上げた。

 

「地下図書館…そんな場所があるのか。面白そうだな」

 

レミリアはティーカップを置き、咲夜に目配せする。

 

「咲夜、案内してあげて。パチェも、将和と話せば何か新しい刺激になるかもしれないわ」

 

咲夜は静かに一礼した。

 

「かしこまりました。将和様、こちらへどうぞ」

 

フランドールは名残惜しそうに将和の袖を引いた。

 

「また遊んでくれる?」

 

将和は優しく笑って、彼女の頭を撫でた。

 

「もちろん。次は、君の好きな本を一緒に読もうな」

 

──そして、将和は図書館へと向かう。

 

 

 

 

紅魔館の地下へと続く螺旋階段を、将和は咲夜に導かれて降りていた。

空気はひんやりと静まり返り、灯りは魔導の光で淡く照らされている。

 

「ここが…図書館か」

 

扉が開かれると、そこには果てしなく続く書架の森。

魔導書、古文書、幻想郷の記録――知識が静かに眠る空間だった。

咲夜が一礼する。

 

「パチュリー様は、奥の読書席にいらっしゃいます。私はここで失礼いたします」

 

将和は頷き、静かに歩を進めた。

書架の間を抜けると、紫の髪の少女が分厚い書物を開いていた。

その隣には、控えめに微笑む小悪魔の姿。

将和は一歩踏み出し、姿勢を正す。

 

「初めまして。パチュリー・ノーレッジさん。三好将和と申します。異変や宴会で、顔合わせしていなかったので、改めてご挨拶に伺いました」

 

パチュリーは本から目を離し、ちらりと将和を見た。

 

「…あなたが、霊夢と共に異変を解決した剣士ね。魔理沙から話は聞いてるわ」

 

小悪魔もにこやかに頭を下げる。

 

「ようこそ、紅魔館図書館へ。パチュリー様は体調の都合で宴会には出られなかったんです。こうしてお会いできて嬉しいです」

 

将和は軽く頭を下げたまま、少しだけ表情を緩める。

 

「…ありがとうございます。静かな場所ですね。落ち着きます」

 

パチュリーは本を閉じ、ふっと息を吐いた。

 

「そんなに堅くならなくていいわよ。タメ口で構わないわ」

 

将和は一瞬驚いたが、すぐに口元を緩めた。

 

「そっか。じゃあ、遠慮なく話すよ。…なんか、こういう空間って好きなんだ。知識が詰まってる感じがして」

 

「ふふ、気が合うかもね」

 

会話が落ち着いた頃、図書館の扉が勢いよく開いた。

 

「よっ、パチェー!魔道書借りに来たぜ!」

 

霧雨魔理沙が元気な声と共に現れた。

その後ろには、金髪の少女――アリス・マーガトロイドが静かに立っていた。

 

「魔理沙、騒がないで。図書館よ」

 

「へいへい。あ、将和、紹介するぜ。こっちはアリス。人形使いで裁縫も得意なんだ」

 

将和は立ち上がり、アリスに向かって軽く頭を下げる。

 

「初めまして。三好将和だ。博麗神社で霊夢と暮らしてる」

 

アリスは少し驚いたように目を見開き、そして静かに微笑んだ。

 

「あなたが…異変を剣で切り開いた人ね。初めまして。アリス・マーガトロイドよ。そんなに堅くしなくていいわ。私も、気楽に話す方が好きなの」

 

将和は少し照れたように笑った。

 

「じゃあ、遠慮なく。…アリスって裁縫得意なんだな? どこか良い服屋さんって知らないか?」

 

「服屋さん?」

 

「ああ。幻想郷で服売ってる店って、あんまり見かけなくてさ。神社暮らしだと、食と住は満たされてるけど、服が少なくて困ってて」

 

魔理沙が肩をすくめて笑う。

 

「だったら、アリスに作ってもらったらどうだ? 自分好みの服を仕立ててくれるぜ!」

 

将和は少し悩んだ。

今日初めて会った相手に服の制作を頼むのは、さすがに、、、、気が引ける。

それなら――彼は静かに魔法収容袋を開いた。

 

「…これ、俺の世界の回復アイテム。『赤いクスリ』『青いクスリ』『紫のクスリ』だ。幻想郷じゃ見かけないだろ? これで引き受けてくれないかな」

 

アリスは目を見開き、興味を示した。

 

「…見たことのない魔力構成。これは…面白いわ。いいわ、引き受ける。私服と戦闘服、両方ね!」

 

パチュリーも、会話を聞いていて目を輝かせた。

 

「そのクスリ、私にも譲ってくれない?魔力の研究に使えるかもしれない」

 

将和は頷き、数本を手渡した。

 

「いいぞ。消耗アイテムだから、必要な分は出せる」

 

パチュリーは満足げに頷き、棚から一冊の魔道書を取り出した。

 

「これは、あなたの剣術に応用できる魔力制御の書。対価として、受け取って」

 

将和はその書を受け取り、目を細めた。

 

「…ありがとな。これで、また一歩強くなれる気がする」

 

図書館の空気は、知と技が交差する静かな熱を帯びていた。

 

将和は、パチュリーとアリス――幻想郷の知性と技術の担い手たちとの絆を、確かに深めていた。

 

知識と魔法の空間で、彼の歩みは新たな絆へと繋がっていく。




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