「そう言えばハクさんは何であんな所にいたんです?」
ライジングライガーで軽快に走り続けながら事の顛末を聞く。
「実は、行方不明事件の調査依頼を受けたら、その犯人がなんとライガー君が倒してくれた魔族でね、逃げることもできないし、必死に戦っていたところにライガー君が来てくれたってわけ。ほんと助かったわ!」
なんかしれっとくん呼びされているけどまあいいか。
あと、魔族って僕の想像する悪逆の限りを尽くすタイプの魔族でいいのだろうか?
これもあとで聞いておかないと。
そんなことを喋っていると、ものの数分で町の近くに着いた。
「ライガー君、ここまででいいわ。あとはあの小さい姿になって付いてきて」
「わかりました、ハクさん」
ハクさんを降ろし、素早くジークに変身する。
そうして、ハクさんと一緒に町の入り口に向かう。
「そうそう、私のことはハクさんじゃなくてハクと呼んでちょうだい。私も君のことをライガーって呼ぶから」
まあハクさん……じゃなかった、ハクがそう言うならそう呼ぼう。
「それと、今更だけど私の従魔になるってことで大丈夫? プライドに傷が付いたりしない?」
「僕は大丈夫ですよ。……中身が本物だったらそうはいきませんが」
さっきまでのライオン種は総じて気高く、プライドもそれ相応に高いからね。
そんなこんなで町の入り口に着いた。
低めながらも頑丈そうな石造りの壁が印象的な外観の町だった。
「おや、ハクさんじゃないか。後ろのは従魔か?」
「ええ、この子は知性があって話せる子なの。なついたからこれから従魔登録する気よ」
「こんにちは」
僕がそう挨拶をすると、町の衛兵さんは感心しながらも僕の従魔登録をしてくれた。
そして従魔登録完了と同時に何やら銀色に輝く腕輪のようなものがハクさんに渡された。
「それは従魔の腕輪だ。従魔のサイズに適した大きさになるから、もし従魔が急成長しても苦しくならない代物だ。高いから無くしたり壊したりしたら金貨一枚だぞ」
「ええ、分かったわ。はい、着けるわよライガー」
ジークの体に腕輪がつけられる。
これで町の中にはいれるらしい。
「さあ、まずは依頼の完了報告をしに冒険者ギルドに行くわよ、ライガー」
へぇ、冒険者ギルドがあるのか、どんな感じなんだろうか?
ハクさんと一緒にレンガ造りの冒険者ギルドに入る。
中は少ない人数の冒険者がちらほらいるくらいだ。
ハクさんはまっすぐ受付に向かい、淡々と正確に報告する。
「え……魔族が現れたんですか!? 少々お待ちください、上に確認してきます!」
ハクさんが魔族が現れたことを報告すると受付の女性は慌てて奥の部屋へと走っていった。
そして、しばらくすると冒険者ギルドのお偉いさんらしき人がやってきた。
「ハクか、まあお前さんが嘘をつくとは思わんが一応聞いておこう、証拠はあるか?」
「ないわね、彼が私を助けた時に木っ端みじんにしちゃったから」
そうして二人の目線が僕に向く。
え、なに、なんか言わないといけない感じ?
「ふむ、この従魔が魔族を倒したのか。見ただけでわかる、中々強そうな従魔じゃないか。魔族を倒せるのも納得だ」
まあジークの状態でも整備不良のセイバータイガーは倒せるからね。
この世界でもかなり強い部類に入るとは思うよ。
「こんにちは、ライガーです。その魔族とやらがいると何か不味いんですか?」
「……! これは驚いた、喋れるのか。そうだ、魔族がいたという事は誘拐した人間を使って何か非合法な儀式をしていた可能性が高い。警戒する必要が――」
「ギルド長、大変です! 先ほど帰還してきた冒険者パーティーが召喚陣から召喚されたベヒーモスに遭遇したとのことです!」
ベヒーモス? なんかデカそうな生き物だな。
そんなことを呑気に考えているが、どうやら周りの反応を見る限り、状況はものすごく悪いらしい。
「馬鹿な! ベヒーモスだと!? すぐに冒険者を集めろ、衛兵と連携して住民を逃がす時間だけでも稼ぐぞ! ハク、話はあとだ。すぐに戦う準備をしてくれ。怪我はこのポーションを使って治せよ!」
そう言ってギルド長はポーションを渡すとあわただしくこの場から去っていった。
ハクがポーションを飲み終わった後にベヒーモスについて聞く。
「……ハク、ベヒーモスって強いんですか?」
「強いわ、Aランクだから町一つは壊滅するでしょうね。……ライガー、お願いなのだけれど、私と一緒に戦ってくれないかしら……?」
個人的にはこの話の乗ってもいいと思うけど、一つ懸念点がある。
「ハク、一つ言っておかなければいけないことがあるんです。僕が参戦すればベヒーモスは倒せるかもしれません。でも大きすぎる力は総じて厄介事も呼び込みます。僕は人間じゃないので人間の事情なんて知ったこっちゃないと言えますが、ハクさんは人間です。あなたの従魔として戦うと、きっとよからぬ輩があなたに寄ってくるでしょう。それでも僕に戦って欲しいですか?」
「構わないわ。私はこの町の人たちを、日常を守りたいの。何かあったらあなたは逃げて、私に構う必要はないわ」
……そんな、逃げてだなんて悲しいこと言わないでよ、何かあったら助けに向かうから。
そう思いながらベヒーモス討伐に向かうのだった。