シラをきりとおす自信がなかったので、隊長に報告した。
ただし自分が発見者であると、そこは全員の前で、はっきりと印象づけた。
先輩たちの何人かが、無言ですぐに向かう。
この作戦、最初からアレが目当てだったと思われる。
俺は充分な説明をしてもらえなかったが、勝てるわけもないので権利を放棄した。
むしろ聞き分けのよい、立場をわきまえた新人というイメージをつくっておくことで今後の昇進に繋げよう。そもそも俺の手には余るお宝だったと思うからな。
ミッションを終え、隊は解散となり、俺はウドの街へ落ち着いた。
これは破格の待遇だ。
解説しよう。
そもそもアニメ乗りは正規兵ではない。外人部隊の中でも汚れ仕事を押しつけられる役回りだ。
シリアルナンバー付きのアニメは俺の星で製造・出庫されるが、赤い星ではコピーも魔改造も幅広く行われている。
機械に比べると人間の価値は低く、とくに俺の星出身者は使い物にならないと評判で、キリコのようにすぐ殺処分される。彼のアニメにはすぐ、待機していた赤い星のパイロットが乗った。
俺のアニメだってミッション終了と同時に手放させられたのだ。次にお呼びがかかった時、どれに乗れるやらも知れたものではない。
赤い星には無数の民間軍事企業が乱立し、アニメを専門とする会社も多い。大小さまざま、離合集散も激しいので、名前はいちいち挙げない。
整備工場や運搬機材も必要なので、アニメ本体は各会社が保有する。パイロットはこれにぶらさがるが、よほどのベテランか、コネでもないと会社付きにはなれない。
雇う側も慎重に集めるので、野良のアニメ乗りを急募しているビラを見たら要注意だ。そんな根無し草にキーなんて預けるわけがない。じゃあ何をやらせるつもりだろうかって?さあねえ。興味があるなら飛びこんでみなよ。
ウドは猥雑な都市で、やさぐれた男と女がひしめきあい、子供の姿は見かけない。
反面、アニメ会社が仕事を受注してパイロットを掻き集める時、ウドでなら即座に腕利きを揃えられる。
俺は最初のチームから、ここの格安アパートを斡旋され、常に連絡をとっておけと情報屋まで紹介された。どれだけ信用されたものかと驚くだろう。
次にすべきは、今後に活かせるネタを毎日集めて情報屋へ伝えていくことだ。
とくに先輩たちのライバル組織に関する噂話なんかは有難がられるはずである。
こうしてコネを太くしてゆくことで、いずれ大きな成功へと繋げてみせる。最終的な目標はまだ思いつけないが、とにかく生き延びることだ。俺をこんな戦場へ送りこみやがった、故郷のクソどもへ復讐をしてやるためにもな。
日銭稼ぎに、麻薬の密売を始めた。
たちまち治安警察のマッポやデカとお近付きになる。
やつらほどかわいそうな家畜はいまい。あらゆる自由を奪われており、エアコンの効いたオフィスから出てこない上司や官僚たちに小突き回されながら、市民の前では虚勢を張っていなくちゃならないのだ。
売人にとって一番の顧客はかれらであり、小袋一つサービスしてやるだけで何でも言うことをきいてくれる。おかげで数週間も経つと俺はかなりの事情通になれた。
もちろん、ひけらかしたりはしない。情報の価値は広めた瞬間に暴落するからだ。
ただ、あの日見た謎の女。
あいつの噂はさっぱり聞こえてこない。
気になってたまらない。
俺はコールガールを抱けなくなってしまった。萎えるのだ、化粧臭い女に迫ってこられると。
ああ、あいつの手懸りが欲しい。あの部隊から、もう一度お呼びがかからないかな。
チャンスは案外、早く巡ってきた。
ミッションの合間に、俺は先輩たちへ探りを入れる。慎重に。
それにしても驚くべき機密だった。
あれは人型兵器だったのだ。
秘匿名称はイ・エス。イディアルニー・ソルダトの略。完璧なる兵士。
適性者から闘争本能以外の総てを削ぎ落としてつくる。その試作第1号だったという。