味方だと思っていた治安警察に逮捕された。
素っ裸にされ、手足を椅子に縛りつけられ、取調室でひとりきりになる。
突然ドアが開き、女がひとり入ってきた。
……俺は、何がなんだかわからなかった。思考回路が激しくバグった。
星の東西を問わず女性士官自体は珍しくないが、いくらなんでも、こんな場所で再会するとは。
女「お元気そうね。息子さんも。……フ」
男「あ……俺のこと、覚えているのか?」
女「ヘルメット越しの眼しか見えなかったわ。ひどく脅えていたわよね。
でも手懸りをのこしすぎよ、スドー・コータロー。
イクラ出身、アニメ乗り。余罪も数えきれないほど、あるわよね」
男「その……俺は今日、なぜ連行されたのか、わからないんだが。君の差し金か?」
女「まあ、そういうことね。
私にとっては覚醒して最初にインプリンティングした人間だから、あなたは特別な存在なの」
男「そうか。初めての男ってわけだ。
ところで、服を着せてもらえないか。危害を加えないことは約束する」
女「あらあら。
あなたは純真無垢な私の裸をじっくりと眺め回したのよ。それだけでも重罪だわ。
そんなゲス野郎の約束を信じろだなんて、ずいぶん見くびられたものね」
女、男の後頭部に回し蹴り。
男、椅子ごと横転する。
女、ブーツで男の耳を踏みつける。ぐりぐり。
男、恐怖で顔をひきつらせる。
女「まあ、興奮しているようね。さっきよりもビクンビクンしているわ。こんなプレイがお好きなの?」
男「……ひへ。ほへんははい。はほ、ふるひへ……」
女、足を上げる。倒れた男をそのままに、別の椅子へ腰掛ける。
男が見上げたその表情には、憤怒と軽蔑が色濃く刻まれていた。
女「あっさり殺してもらえるなんて期待しないことね。むしろチャンスを与えるから感謝しなさい。
たった今より、あなたの上官は私、ただ一人です。
行動を指示されたら、速やかに従うこと。パニャートナ?」
男「パ、パニャートナ」
女、ひと息ついて立ち上がり、部屋を出ていく。
ほっとしたスドー、つい、失禁してしまう。
怖くて、なさけなくて、わけがわからなくて、涙があふれた。
嗚咽を漏らしていると、武装警察官が2名入ってきて、舌打ちしながら粗相の始末をする。スドーは手足の縛めを解かれ、留置所へと連れて行かれた。
娑婆へは帰してもらえないようだ。
それから数日、臭い飯を、他の受刑者たちと一緒に味わって過ごす。
不定期に連れ出され、健康診断や体力測定を受けた。いろいろ注射され、ドッグタグのようなものを後背部へ埋めこまれたりもする。
俺は肉牛と同じ扱いなのか。
そんな現実を、ひしひしと思い知る。
なぜだ。どうしてこうなった。
ある日、別棟まで連れて行かれて、その部屋でパイロットスーツへ着換えさせられた。
いよいよ出征か。
未練も郷愁も無い。とっとと楽になりたいぜ。
同じ姿の男たち十数名と合流し、整列して兵員輸送車へ乗りこむ。
半日くらい走ったか。道中、よもやま話に花が咲く。
皆、様々な事情を抱えて、ここまで流れ着いてきたんだな。
誰ひとり、明日まで生きていられるなんて希望など抱いちゃいない。だから気が楽だった。なんでもぶちまけ、大いに笑った。これが戦場なんだ。メソメソ、グチグチ語るのは、かっこつけたいやつらばかりさ。ニセモノだ。
雑兵は笑う。ただ笑う。そして死ぬ。
最高じゃねえか、クソッタレ。
俺はアニメをあてがわれた。
軽く動かし、模擬戦もしてみる。
整備士、いい仕事してやがるな。
事前の適性検査で配属はもう決められていた。計算能力の高いやつは観測手やオペレーターに回されていたし、医学の心得があれば救護班だ。こいつらに背中を守ってもらえる安心感パネえ。
あの女が指揮官なのかな。統率力が尋常じゃねえぞ。
楽な仕事であるわけもないが、むざむざ死んでくるこたないな。
そんなことを考えているうちに、総員戦闘配置のアナウンスが聞こえた。急ぎ足でデッキへと向かう。
あの女がいた。パイロットスーツを着ている。
全体ブリーフィングは無し。各自が所属チームのテーブル前に集まり、リーダーから作戦指示を伝えられる。余計な言葉は発せられない。
その手順通りに、リフトオフ!