不思議ダウナー?おねえさんと少年だった俺 作:タイガーアイアン
「やぁ少年。今日も1人かい?」
友人と言える程多くは知らないが知り合いというには多く関わりすぎた、そんな感じの人がみんなは居るだろうか、
まぁ結構いると思う。
俺にとってそんな存在なのがお姉さんだ。
「今日もってのは余計ですよ。」
出会ったのは小学生高学年の頃だったろうか、引っ越してすぐで友達も出来ず、1人でザリガニ釣りに興じていた所、この不審者にこんな風に声をかけられた。
「でも事実そうじゃ無いか、同級生の友達は出来ないのかい?」
「...余計なお世話です。」
それ以降名前も知らない“おねえさん”との付き合いはズルズルと続き今に至る。
「おねえさんこそ、友人とか居ないんですか?いつも俺に話しかけてません?」
「ふふ、少年よ、その言葉は私に効く。」
あ、倒れた。
倒れたおねえさんを抱えて木陰のベンチに置く、不思議な事にこの人は全く顔と服装が変わらない。顔は童顔だとしても、冬はともかく夏までトレンチコートを着込んでいる。
倒れてうだうだしているのも軽い熱中症だろう、本当になんでこの人このクソ暑い中トレンチコート着てるんだろ。
「...うぅん、少年かい?」
「どっちかというともう青年ですけど、そうですよ。」
唸りながらゆるゆると手を伸ばし、目に入る木漏れ日を手で遮り話しかけて来る、顔を覗き込むがやはりこの人は全く顔が変わらない、昔と変わらぬパッチリ二重の切れ長目、海外の血が入っているのか高い鼻筋に整えられた茶髪は地毛なんだろうか。
「そうか、少年はもう青年なのか...時の流れは早いねぇ。」
「おねえさんが遅いんですよ、それに、昔の夏は大丈夫だったかもしれないですけど、今年の夏はその格好死にますよ。」
「死んじゃうかい?」
「今にも死にそうじゃ無いですか、というかそのコート以外の服持ってないんですか?」
「...無いね。」
「無いんですか!?」
思わず声を荒げる、コート一本でずっと生活していたというのか、というかそもそも働いているのか?よく死んで無かったなとさまざまな思考が脳をよぎる。
「なんでですか?」
「ざっくり聞いてくるねぇ、なんでコートしか持ってないのかと言う問いならば答えは簡単だよ。」
「...なんですか」
「流行りとか分からないからだよっ」
「にしてもなんでトレンチコート何ですか...」
「それはほら、お父さんの見ていた古いドラマで観てね、カッコいいから着ているのさ。」
...呆れた、自分の命とこの暑さをなんだと思っているんだろうか。
「一緒に行きます?」
「うん?」
「いやだから...その、服屋に。俺も流行とか知らないですけど、マネキン買いとかあるでしょうし。」
言ってしまった、うわすっごい目を輝かせてる。
この前海釣りに誘った時も無駄にハイテンションですっごい疲れたのにまた誘ってしまった。
「それはデートのお誘いかな少年!」
ガバッと起き上がり俺の肩を掴む、握力なんて無いようなもので赤子に肩を掴まれた気分だった。
「違います、おねえさんの生命維持を危惧しても提案です。」
「そうかそうか、いやぁ嬉しいなぁ。まさか少年からデートに誘われるとは、このスケベっ」
さっきまであんなだるそうにしてたのに、この人はテンションだけで生きてるんだろうか
「はいはい、好きに言ってください、と言うかもう歩けるんですか?」
「ふふ、とりあえず水分を買ってから行こうか。」
「スポドリ買ってくるんでもう少し休んでから行きましょう。」
「うん。」
もう少し自分の体調と向き合ってほしい、しみじみ思った。
おまけ
おねえさんと少年の出会い
「やぁ少年、1人でザリガニ釣りかい?」
「ふ...」
「ふ?」
「不審者だ...」
「不審者じゃないよっ!?」