え!?恩返しが結婚!?エルフの掟では普通なんですか!? 作:hapihapi
「!!」
小さな呻めき声が聞こえたと同時にふるりとエルフの長い睫毛が揺れ、ゆっくりと瞼が開かれた。そして宝石の様な緑の瞳が私を捉えたかと思うと、大きく目が見開かれて
「……っ!!?」
エルフは声にならない声を上げてベッドから跳ね起きた。そして私から距離を置こうと一歩後ずさった所で、ガンッ!と勢い余ってベッドから転げ落ち、床に体をぶつける音が響く。
「~~っ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
落ちたエルフに私は慌てて声を掛けるが、心配する私をエルフはキッと睨み付けて
「イーシャ!!」
「え?」
「イーシャ!クゥル!」
「あの……?」
「クゥル!」
そう言い、エルフは私に向かって聞き慣れない言語で激しく何かを捲し立てる。しかし、私には何を言っているのかさっぱり分からなかった。多分、エルフ達の言葉なんだろうが……
(ど、どうしよう……怒っているのはわかるけど何を言っているのか分からないわ……)
エルフが何を言っているのか全然分からず、しかし聞き慣れない言語で捲し立てられる状況に私が困惑していた……その時。不意に「ぐぅ~」という間の抜けた音が部屋に響き渡った。
(え、この音って……)
まさかと思い、恐る恐るエルフを見ればエルフは苦虫を噛み潰したような顔をして私から視線を逸らす。……どうやら、今の音はエルフのお腹の虫が鳴いたらしかった。
「……あの、もしかしてお腹空いて……?」
「……」
私の言葉にエルフは眉間に皺を寄せて何も答えなかった。が、この沈黙が何よりの答えだろう。と、すれば……
「……えっと、ちょっと待っていて下さい」
私はエルフにそう声を掛けると、エルフの側から離れて同じ部屋の中にある台所に向かう。そして台所に置いてあった鍋から今朝作ったばかりのスープの残りを皿に取り分けた。そうして取り分けたスープを持ってエルフの元に戻った私は、遠慮がちに訝しげな顔をするエルフにスープを差し出した。
「あの……もし良かったら食べませんか?」
「……」
「その……お肉は入っていませんけどお母さん直伝の野菜スープで……」
「……」
「えっと、毒とか入ってませんから……ほら」
私は安心させるようにそう言うと手にしたスプーンで一口掬い、それを自分が食べてみせた。
「!?」
すると、スープを毒味した私にエルフは何故かかなり驚いた様子を見せたものの、やがて深い溜め息を吐いて渋々といった態度で私からスプーンを受け取った。そして恐る恐るとスープを一口飲み、何も言わず二口三口……と次々とスープを口へと運んでいく。そんなエルフの姿に私はホッと安堵すると共に、
(ふう……「人間が作ったものなんか食えるか!」って言われるんじゃないかと思ったけど飲んでくれて良かった……でも、こうやってスープを食べている姿を見ていると人間と変わりないのね……ふふ、エルフって怖い種族だってずっと思っていたけど私が思っていたより怖い種族じゃないのかも……?)
などと、今までのエルフに対する恐怖心はどこへやら。目の前で黙々とスープを食べるエルフを見つめながら頬を緩ませる。そうして、思ったより早くスープを食べ切ったエルフはかちゃりとスープンを置き、じっと私の顔を見つめて口を開いた。