え!?恩返しが結婚!?エルフの掟では普通なんですか!? 作:hapihapi
途端、口に広がった味に私は目を見開く。
「お、美味しい!このお粥美味しいです!なんというか野菜の濃厚な旨味と麦本来の素朴で優しい味を絶妙な塩加減が引き立てていて……とにかくめちゃくちゃ美味しいです!」
「フン、当然だ。この我がわざわざ貴様の為に屋敷の料理人に教えを乞いながら作ったお粥だからな。不味いはずがなかろう」
「ん?あれ?エルフさんさっき屋敷の料理人作ったお粥とか言っていませんでした……?」
「……」
「あの、エルフさん?」
「……そんなことより人間。貴様名前は何と言う?」
「え?な、名前?」
「ああ、そうだ。確かに貴様は人間だが、いつまでも自分の伴侶の事を種族名で呼ぶわけにはいかぬだろう?」
「は、はあ……」
「……何だその顔は。まさか、我に名前を教えたくないというのか?フン、別に教えたくないなら構わん。魔法でお前の名を無理やり聞き出すだけだからな……」
「え!?いやいや別に教えたくないわけじゃなくて、エルフさんの話題の逸らし方が露骨だなあって思っただけで……!ええっと……私の名前はアンナって言います……!」
「……フン、アンナか。人間らしいありきたりな名前だが……まあいい。我の名はディルだ。」
「ディル……さん?」
「……さんは不要だ。まあ尤も本来なら人間ごときが高貴な我の名を敬称を付けずに呼ぶなど許さぬが……お前には我が主、ソフィア姫を救ってくれたというーー…………いや、何でもない。それより早く食べぬか。粥が冷めてしまうだろう」
「え?ええ……」
(今何かを言い掛けたような気がするけど……気のせいかな?)
少し不可解に思ったがそれ以上追及はせずエルフ……否、ディルさんに給餌されるまま美味しいお粥をもぐもぐと食べ続けたのであった。
それからーー……
「ふう……今日も美味しかった~」
幾つかの朝と夜が過ぎ、今日も今日とてディルさん手作りの料理を堪能した私はゴロリとベッドの上に横になる。ここに連れて来られてまあまあな日数が経ったが、初日に言っていた言葉通り、ディルさんは毎日欠かさずこの部屋にやってきて食事の介助は勿論のこと、着替えや入浴……果てには睡眠の補助などまるで自分がどこかの令嬢になったかと錯覚しそうになるくらい甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。最初の方こそ誰かにお世話される……それもディルさんのような美形にお世話される状況に慣れなくて『いやいや私一人で出来ますから!』『そこまでやらなくて大丈夫ですよ!』と言って度々断ろうとしていたが、その度に『人間如きが我の奉仕を断るなど許さぬ』『煩い。黙って我に洗われろ』と強引にお世話されていくうちにだんだんと羞恥心とか恥ずかしさとか諸々が薄れていき、そして慣れてしまえば、働かなくてご飯が出てきて一日中ゴロゴロしていても誰にも咎められることもない……まるで夢のような生活にすっかりハマってしまっていたのだ。