田んぼによくいるオバケエビ(ホウネンエビ)が古代の海っぽい異世界に転生して進化し続けた結果ヤベェことになる話   作:大豆島そうめん

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…って出来れば良いと思ってた。


自分だけ場にカードをセットして、それ以外は全てのカードは山札に戻す。

 竜の時代とでも後世に文面でもあれば呼ばれていそうな時代となった。

 巨大化と戦闘力特化した草食恐竜達は、遂に魔力を我が物として空を飛び、火を吹き始めた。

 考えてみれば草食恐竜が火を吹くというのが面白い。

 肉食恐竜は小人の様な姿のものが増えて来た。

 この後に哺乳類由来の人類が生まれるかどうかは別として、恐竜人間の方が歴史が古いというのも面白い。

 

 だが、面白いかどうかと見逃すかどうかは別であり、私は彼らを見付けると直ぐに『餌』がいるという電波を娘達に向けて発射した。

 

 考えてみれば子供に悪い事をしている。

 魔力を蓄えさせるのなら、小型の肉食恐竜よりも、竜と化した草食恐竜を与えるべきなのに。

 そんな事だから、姉妹の子供よりも私の子供の栄養状態が悪いのだ。

 既に大型イーリスが群れで小型イーリスの群れを食べる事は本能に組み込まれ、私以外の大型イーリスも実践している。

 小型イーリスと草食恐竜を食べる姉妹の巣と、小型イーリスと恐竜人間を食べる私の巣では、明確に効率が異なる。

 恐らく私は愚かな女王として競争に敗れ、次は姉妹の卵から生まれ替わるのだろう。

 

 ある日、私は恐竜人間が船を作って海を出て行くのを見た。

 私はそれを潰そうとしたのだが、突如海から飛び出した海龍により生命を終えた。

 

 

 

 姉妹の子として生まれ直した私は、大きさが未だ足りない事を悔やんでいた。

 しかし、それはとても難しい問題だ。

 地殻変動により更に地上が狭くなった今、海中にいる海龍を上回る大きさとなり、それを維持する為の食料は地上にはない。

 いや、あるにはある。

 私を産み落とした姉妹の様な大型イーリスだ。

 大型イーリスを喰らう程の超大型イーリスとなれば、何とかなるかもしれない。

 しかしそれは、より進化の袋小路へと飛び込む事と同じだ。

 

 イーリス同士で数を減らす上に、より食物連鎖の袋小路へと進む。

 それは極めて難しい判断だ。

 海中が生物が存在出来ない様な環境となれば助かるのだが、そうもいかない。

 そんな事があれば、我々も生きてはいない。

 

 …いや、可能かもしれない。

 我々には乾眠がある。

 それも本来は成体である私という個体は終わるだろうが、私には特定の身体という制約はない。

 

 海中にも及ぶ影響が出るくらいに、この星の環境を徹底的にブチ壊す何かが欲しい。

 大型魚類や海生爬虫類でさえも終わらせる程の何かが、欲しい。

 

 あの海龍を終わらせたい。

 あのキンギンポの子孫を終わらせたい。

 

 私は少しでも私に出来る何かをしたかった。

 そんな純粋な願いの下に、幾つかの火山脈を食い破った。

 火山が噴火する迄は私は熱では死なないし、噴火して呼吸困難として死んだら次に乗り替われば良い。

 私はひたすらそんな事を続けていた。

 地上で、海中で、火山を噴火させ続けた。

 海中では幾度となく、キンギンポの子孫である海龍に食われたが、それも段々収まってきた。

 奴等の数も何故か減りつつあった様にも感じた。

 

 再びの地殻変動だ。

 今度は以前とは逆に高山は幾つも崩壊して、低い平地が拡がり、気温は下がって、海は平原か浅瀬となった。

 浅瀬というのも烏滸がましい浅瀬が、広く拡く続いている。

 私が自滅に使い潰したせいか、それとも環境変化のせいか、イーリス…特に大型種は大きく数を減らしたが、海龍もまた多く数を減らしたのだろう。

 浅瀬には海龍の死体がそれなりに浮かんでいた。

 

 やった。

 素晴らしい。

 せっかく安寧の支配を貪っていた私を脅かすからこうなるのだ。

 一度安心させられた私が再び怯えさせられた時、どれだけ悍ましかったか奴らには分かるまい。

 悍ましさの余り、恐ろしさが麻痺していた。

 戦いが終わって、ようやく恐怖を理解した。

 

 キンギンポの子孫である奴らは、私を脅かすのではなく滅びなければならない。

 私はそう信じている。

 それは願いであり、事実であるかどうかとは別である事を理解するだけの理性は、未だ自認しているが。

 

 

 彼等が海に浮かぶ死骸となった実際の理由。

 余りにも浅過ぎて対応出来なかったのか、最近の寒冷化によるものなのかは分からない。

 しかし、私には理由などどうでも良い事だ。

 私がやった事が環境変化に繋がったかどうかは分からない。

 しかし、私は大型イーリスの残機を減らしてでも、浅瀬の火山を掘り当てては、無理矢理噴火を促す事をやめなかった。

 これで更なる寒冷化または温暖化により、地上の食べ物が無くなっていったとしても、その時は卵を残せば良い。

 卵が無事ならば、星を幾らかき乱した所で、私には問題がないのだから。

 

 火山よ噴火せよ。ガスを放出せよ。落雷を降らせ。大気をかき混ぜよ。磁場をかき乱せ。隕石(ほし)よ降れ。

 私にそれらを引き起こす魔法は使えない。

 だから闇雲にマグマの脈を食い破り続ける。

 それが効果が有るのか無いのかも分からない。

 ただの星の気候変動や、流星群の到来なだけである可能性の方が高い。

 それでも、それでも。

 この世界は、────もっと壊れる位で丁度良い。

 私の卵を残して、グレートリセットだ(全て始まりに染まれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *現代の見識*

 

 カンサイクレ=マ期は、凄まじい環境変化が巻き起こった。

 海という海は浅瀬となり、極一部の深海にそれまでの生命が逃げ込んだ。

 また、地上は上空の寒冷化と地上の火山活動の気温差で暴風が吹き荒んだ。

 地上には原因不明の火山活動の異常発生により、地上の植物は燃焼後に直ぐに回復する草本植物が繁栄し、それまでの木本植物のシェアを大きく奪った。

 現在、焼畑に強い植物が多いのはこの時の影響であり、嘗ては焼畑を行えば今ほど簡単に植生は回復しなかった事は間違いない。

 

 飛竜の悉くは恒温動物化して、暴風を使い滑空していた。

 飛竜の繁栄の時代は此処に始まる。

 

 だが、気温は急に上がったり下がったりを繰り返して、余りにも多くの生命が失われた。

 しかし人類にとって運が良かった事は、アルテマモンスターを含む多くの巨大生物がこの時代に絶滅した事だ。

 レヴィーアタンは未だに深海で生き延びているという噂もあるが、少なくとも一般的には絶滅したとされている。

 

 

 この時代に突如現れたパーフェクトパラドックス(PP)である恐鳥類は、PPの中でも屈指の完成された生物であったが、当初地上で餌を探していた結果ドラゴンとの競争に敗れ、何処までも続く浅瀬を使って餌を狩る海怪鳥類へと進化した。

 海で生活するには不釣り合いにさえ見える大量の長い羽毛は、泳ぐ事には適しておらず、あくまで足下の魚類を狩るのに特化した生物である。

 海に潜る小型海棲鳥類もまた、彼らにとっては餌に過ぎない。

 近年、骨が砕かれて圧死した死骸が見付かっており、一部の古生物マニアの間では、レヴィーアタンが生きていて襲われたと噂されている。

 そしてアルテマモンスターも何処かで生きているという噂があり、日夜偽物のアルテマモンスターの卵はマニアに高値で取引されている。

 

 〜環境学者オオトリ・ヘブンバーンの手記より抜粋〜




この世に絶対の悪があるとすれば、それは敗北だ。
口論も裁判も戦争も負けた時点で悪となる。
敗北こそが悪であり、悪の原因は敗北である。
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