田んぼによくいるオバケエビ(ホウネンエビ)が古代の海っぽい異世界に転生して進化し続けた結果ヤベェことになる話   作:大豆島そうめん

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古代パートはようやく平和?になってきます。


自分の周りを振り返る余裕を持てるのは、その場にいない敵を軽んじる油断のある時だけである

 翼にススキが二本刺さったような鳥を見ていると、その鳥が翼をはためかせたのに僅かに遅れて、周囲の草が刈られていた。

 恐らくそこで巣を作るのだろう。

 私は起こった現象を魔法の一つだと理解した。

 

 何時からか分からないが、私は魔力というものを何となく自覚していた。

 精神としては数億年生きているにも関わらず、ファンタジー的な魔法を使いこなせてもいない。

 元の世界には魔力など無かったし、今の世界でもそれを使えるように出来てもいない。

 

 主に私の魔力は、飛行の補助と肉体の強化に無意識のうちに使われていた。

 きっとそのハズだ。

 空を飛ぶにしては、余りにも重厚になり過ぎたがそれでも飛べているのも、これ程までに殻が鋭利なのに、割れにくいのも、きっとある種の魔法なのだろう。

 もしかすると、角が光っている事も魔法なのかもしれないし、肉体が滅びても子孫に乗り替わるのも魔法なのかもしれない。

 

 一つ言える事は、私は花を咲かせたり箒に乗ったりフクロウと会話出来る類の魔法使いとは異なり、勇者御一行の行く手を阻む怪物の立ち位置だということだ。

 

 正直なところ、自分のステータスくらいは見られる魔法は欲しかった。

 意識が肉体に依存しない事から、実質死にステータスとなっている私の知能だが、私の子供達にとっては異なる。

 私という種族がどれだけの賢さを持っているのかは、どちらかといえば子供達に影響する話だ。

 

 魔法で知能を強化するなどといった事がない限りは、人間は当然ながら馬程の知能もないとは思っている。

 だが、同じ大きさの爬虫類の半分程は欲しい。

 知能は視力と深い関係がある。

 そもそも生物が賢くなる過程には、視覚情報の処理が関係する。

 眼が三対あり、そして幅広い色と画素数、高速域での距離感の正確さを処理している時点で、それなりの脳があるはずだ。

 そしてそもそも身体自体が大きい。

 寿命近くまで成長した個体は、全長が十メートルを優に超えている。

 

 憶えたり考えたりする為の脳ではないかも知れないが、それでもアースロプレウラよりは余程賢いはずだ。

 

 だがこうも思う。

 賢さというのは必要なのか、と。

 賢さというのは、要するに本能として事前にインプット出来なかった部分を高度の柔軟性を維持しつつ(場当たり的に)臨機応変に対処する(何とかする)ものでしかなく、そもそも考える為の頭脳とは、視覚や嗅覚を格納する為に作る脳みそ(キノコ体)という箱を大きく作り過ぎた事による、過剰の産物ともいえる。

 必要な視覚や嗅覚の処理と本能でピッタリになる脳を作れば、弱点も小さくなるし軽量化も出来る。

 1ギガで足りるソフトを使うのに、64ギガの容量のハードを使うようなものだ。

 その為に大型化したハードに場所は占拠され、それを購入するのに無駄に資産を支払う事になっている。

 

 つまり、賢さとはある種の愚かさの結果出来た次善に過ぎない。

 言い換えれば、賢さとは肉体の設計ミスの露呈に他ならない。

 

 

 

 そう思いながら、同種達の動きを観察していた。

 皆、私と同じ様に煌めく体表をしている。

 同種達の観察など何時ぶりだろうか。

 もしかすれば、いや、もしかしなくても一億年はやらなかった。

 それどころか、これが初めてかも知れなかった。

 

 私はキンギンポと出遭ってから、それ以外の事を考えて来なかった。

 考える余裕は無かった。

 思考も記憶もあのキンギンポの一族の事だけを考えていた。

 

 

 

 数百年単位で子供や兄弟達を見ていると気がつけた事がある。

 環境が固定されている場所においては、賢さというのは見られなかった。

 寧ろ多くの事を本能として刻んでいた為に、常に反射的、固定的な行動をしていた。

 だが、環境の変化や周囲の生態が複雑な場所では、考慮すべき変数が多い事からか、僅かながら知能らしきものは確認出来た。

 だが、それだけだ。

 

 交尾と縄張り争い以外の同種間コミュニケーションを行うには、余りにも個として強過ぎた。

 個としての戦闘能力が突出し過ぎていた。

 

 私がキンギンポに異常に怯えていただけであり、私が頂点捕食者である事に拘り続け、それ以外は弱者と見做していただけで、弱者として集団で強者に立ち向かう程には弱くは無かった。

 

 ミツバチのように集団で生活する為には、スズメバチのような外敵が必要だ。

 私という個体こそそれを理解しているが、他の同種ではそれは疑わしい。

 そして次に私達の生命サイクルにおいては、比較的初期の段階で無性生殖が可能というのも問題であった。

 女王個体を作って、産卵をその個体に依存するという選択肢は出てこない。

 

 …もし、スズメバチの巣の在り方を再現する為には、女王個体以外の生殖を制限する必要がある。

 つまり、私以外の同種の産卵を制限する物質を私が発するか、特定の物質を摂取しなければ産卵出来ないようにする必要がある。

 

 …………あまりにも失うものが大きい。

 成長は早く、寿命に比して早いサイクルでの無性生殖で、産卵機能が無くなるよりは早い寿命、そして卵は休眠による保存が出来るというメリットを失う程のものではない。

 

 他の生物との意思疎通などは同種には求めていない。

 それは私達に何のメリットも齎さない。

 

 私達は作成者(ビルダー)でも調整者(コーディネーター)でもない。

 破壊者(ブレイカー)だ。

 

 

 

 もし、知能が必要になるとすれば、肉体のスペックだけでは足りず、現在は角内を発光させる為の電流や、四対の肺の内一対を満たしている多くのものを溶かす胃液のようなものを、より正確に使う場合くらいだろうか。

 それさえも、本能に刻む方が効果的かも知れないが。

 親から学習しなければ使えないなどとは、余りにも非効率だ。

 

 

 

 

 

 ふと、私は思った。

 私以外が齎せない魔法で強化された子供達を産卵出来るのならば、それは私に産卵させるための社会を作らせる事を強制する事にならないか、と。

 そう考えると、これまで数億年も興味が無かった魔法が途端に欲しくなった。

 

 出来なかったら出来なかったで構わない。 

 天敵はもはや天敵ではない。

 試行錯誤する時間は幾らでもとは言わないが十分にあるのだから。

 次の一億年程では目処が付けば良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖歴1919年11月4日8時10分 ユニバーサル士官学校中央校

 

 キセノンが満ちた角からの光線と放電、立方晶ジルコニアによる燃えぬダイヤの如き殻、無水硫酸と硫酸化ジルコニアの粒子によるブレス。

 捕食者として理想的であったティラノサウルスが群れと化して抵抗する為の知能を獲得した原因。

 ある意味でのドラゴンと竜人族の生みの親。

 余りにも美しく、余りにも高価値で、そして余りにも手が付けられない生命であった高魔力の多翅類。

 

 ティラノサウルスがティラノサウルスのままでいられなくなった元凶。

 

 

 一度聞こえなくなったブレードスラップ音に似た高周波が再び聞こえてくる。

 それは先程の閃光により地に落ちた状態から、飛行状態に復帰した事を意味している。

 

 本当に生まれたてなのなら、それ程の大きさではない。

 そもそも生まれたばかりで飛行出来る生物などいたら異常だ。

 勿論、異常生物である故にそれが可能ではありそうだったが、そんな事よりもアルテマリス モンストルム モンストルム(アルテマモンスター)は無性生殖可能になるまでは再度疑似卵の中で休眠が可能な事だ。

 つまり、孵ったばかりだが、産卵の直ぐ手前である可能性があった。

 そうなれば、大量のアルテマモンスターが孵化する事になる。

 

 

 アルテマモンスターには毒や熱や寒さや斬撃や衝撃まで通り難い。

 最も効果的な対処法は、折り曲げて潰す事だ。

 幾ら殻が強固であろうと、中身を折り曲げる程の圧力で捻ればじきに絶命する。

 

 それが出来る人間がどれだけいるか、という疑問は消せないが。

 

 

 

 ゴールドローンもアーマルドも、圧力魔法を実現する為の魔法は無いわけではない。

 先程飛び込んだ時に魔力アンプルが幾つか割れたが、それでもだ。

 

 問題は、人間の使う圧力魔法がアルテマモンスターに通用するかどうか、ということだけだ。

 

「なあ、ゴールドローン、良いことを考えたんだが」

 

「奇遇だな、俺もだ」

 

 二人の教授は同じ答えに行き着いていた。

 

「確かこのアイビー棟は地下六階だったよな」

 

「いや、地下七階だ。まあ、そういう事だな。

アーマルド、お前が地下にアルテマモンスター(あの化け物)を誘き寄せる。そして俺がアイビー棟ごと瓦礫にして埋める。どうだ?」

 

 アーマルドはふざけんなと言い返す。

 

「いーや、お前が誘導で俺が起爆」

 

「そんな事したら俺が死ぬじゃねーか」

 

 そう言いながらも、背後から怪物に追いつかれる可能性を少しでも避ける為に、途中にある消火器全てを暴発させながら通路を塞ぐ。

 視界も角にある電磁波センサーもこれで妨害出来る。

 知能がある生物なら、これで怯むハズだ。

 

 

「嫌な予感がする、伏せろ」

 

 アーマルドがゴールドローンの頭を抑え付けて伏せると、直ぐ目の前の突き当たりの壁に、アルテマモンスターは激突していた。

 勿論、向き直った怪物には目立った外傷は見当たらない。

 

 

 突如、アーマルドの妻から念話(テレパシー)が届く。

 

《院生も他の教授も建物から離脱させたわ。後は貴方達二人だけ》

 

《そうかい。で、知らないうちに殿にさせられた俺達はこの後どうすれば良い?》

 

 アーマルドも念話で妻に返答した。

 まさか、化け物が疲れるまで鬼ごっこなんて言わないよなと巫山戯た言葉は抑えながら続きを促す。

 

《たった今、建物内にガソリンを送り込み始めたし、近くの回収魔力精製所と直結して爆炎反射魔法をアイビー棟一階の地表にセットしたから化け物も…多分死ぬわ。きっとね》

 

《おいキャメロン、俺たちも殺す気かよ》

 

 アーマルドは何て言ってるんだと聞くゴールドローンを無視してキャメロンからの続きを聞く。

 

《殺しても死なないでしょう? パパもそう言ってたわ》

 

《Mr.不死身(ダイハード)に言われるとは光栄だね》

 

 世界最高の自動自己再生魔法の確立者である義父の顔を思い浮かべ、アーマルドは虚空に中指を立てた。

 

 とはいえ、爆炎を反射する魔法を爆炎唯一の逃げ道である地上に面で張ったならば、逃げられない圧力は凄まじいものになる。

 瓦礫の圧力だけよりも期待出来る。

 

「なあゴールドローン、知ってるか? 魔導エレベーターのパスワード」

「ええと、確か1145だったか?」

 

 目の前のエレベーターにパスワードを入力するがエラーが出た。

 

「いや、何でだよ。秘匿地区であるここに来るのにパスワードってのなら分かるが、どうしてこっちから出るのもパスワードがいるんだよ!!」

 

 アーマルドは壁を叩いてブチ切れるが、ゴールドローンは首をひねった後、ポンッと手を叩いた。

 

「あー、先週から五桁になるからパスワード変更って、ケービィンが言ってたわ」

 

 14810と打ち込むと、扉が開き二人を乗せた魔導エレベーターは扉を閉じて上に上がる。

 その直後、下で何かが激突する音がした。

 

「何の音だろうな」

 

「考えない方が良いぞ」

 

 聞こえてくるのは、激突音だけではない。

 

「下から空気を裂くような音が聞こえないか?」

 

「良いから考えるな!!」

 

 

 魔導エレベーターが地上一階で開くと同時に二人は飛び出した。

 それと同時に地下から爆音と衝撃が響く。

 

 

 建物が崩れて砂煙があがる。

 

 

 

 所々怪我した二人をアーマルドの妻と二人の同僚が迎えた。

 

「エレベーターが着いた瞬間に爆破させる奴がいるか」

 

「次からは二秒数えて爆破するわ」

 

 妻のあんまりな発言に周りを見ると、同僚の男二人は手のひらと視線を空に向けていた。

 

「いーや、三秒にしてくれ」

 

 アーマルドはそういって煙草に火を着けた。




イメージは怪獣が出て来る洋画です。
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