Fate/True Hope   作:tetu1006

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1話 冬木の地へ

ドイツの森の奥地に有る城の一室から少年は雪が降り積もる外の様子を眺めていた。

少年の名はレイフィス·フォン·アインツベルン。彼は普通の少年とは違うところがある。

一つは、魔術師のそれも外部との接触を絶ち純血を保ってきた名門、アインツベルンの家系の者であること。

そしてもう一つは、前世の記憶を持つ転生者であることである。

彼が前世の記憶を思いだしたのは今から3年前の5歳の頃である。その記憶から彼は自分の立場からこの世界が型月のそれもFate/Zeroの頃だと理解し、さらに自分の両親、切嗣とアイリスフィール、アイリの最後を知り来るべき時に備え誰にも気付かれることなく魔術の修練を行ったのである。

「それでも僕は結局何も出来ない···。」

ふと彼の口から悔しさがこぼれる。彼は七人のマスターが揃う前に令呪を宿せなかったのである。

切嗣は昨日、アイリも明日冬木へと旅立つ。レイフィスはここで二度と両親に会うことが出来ない。何故なら二人とも帰ってくることなく死ぬからである。何も出来ない自分の不甲斐なさを呪っていると、

「そんなところで何しているのレイフィス?」

あどけない少女の声がしたために振り返り。

「何でもないよ“姉さん”。」

そう声の主、レイフィスの双子の姉に当たるイリヤスフィール、イリヤに答える。

双子と言ったがこの二人は肉体の成長の早さが明らかに違う。レイフィスは年相応だがイリヤはまだどう見ても4歳か5歳ぐらいにしか見えない。それは二人の体に決定的な違いがあるからだ。イリヤはアイリと同じ聖杯としての機能を受け継いでいる。対して、レイフィスは完全に普通の人と変わらない体で生まれてきた。その違いが二人の成長の差を生んでいるのである。

「何もしてないならこっちでいっしょに遊びましょ。」

小さな姉は無邪気にそう言ってくる。

「わかったよ。」

そうしてイリヤといっしょに遊ぶがレイフィスは聖杯戦争の事が諦められずにいた。

そして、その思いは届いた。

「あれ?レイフィス、その左手どうしたの?」

「え?」

言われて左手を見れば三画で描かれた模様の様な真っ赤な痣があった。

―――令呪!?

確かにその左手には令呪が刻まれていた。

しかし、この時期まで来れば既にキャスターのサーヴァントも現界していて七人のマスターがそれっているはずである。確かに少年の考えは正しく、少年は本来あり得ない八人目のマスターとして選ばれたのである。

「私お母様を呼んで来る!」

「待って!姉さん!」

母を呼ぼうとするイリヤをレイフィスは止める。

聖杯戦争に深く関わっているアイリに令呪を見せるのは色々とまずいからだ。

「これはなんでもないんだ。だから母さんには言わないで。」

「でも···。」

「大事な仕事の前の母さんを心配させたくない。」

「···分かった。」

渋々ながら納得してくれたイリヤにレイフィスはホッとした。

 

 

その翌朝、アイリは出発の準備をしていた。

「これでよしと、それじゃあ行きましょうかセイバー。」

一通り荷仕度がすむとアイリは近くにいたスーツ姿の金髪の少女に問いかける。

「はい、アイリスフィール。」

その答えを聞き部屋を出ようとしたアイリの元に一人のメイドが駆けつけた。

「大変ですアイリスフィール様!!」

「どうしたの?」

そう問いかけたアイリの耳に予想にもしていない知らせが入った。

「レイフィス様の···レイフィス様の姿が城中の何処にも見当たりません!」

「何ですって!?」

確かにレイフィスの姿が何処にもない。アイリの心配を他所にアハト翁は予定が遅れるのを危惧しアイリにレイフィスの事は自分達に任せるように言う。それを聞いたアイリは仕方なくセイバーと共に城を後にした。

 

一方、レイフィスは日本行きの飛行機に乗っていた。それは昨日の晩まで遡る。

レイフィスは昨日の晩に誰にも気付かれずに城の宝物庫に忍び込んだ。目的はサーヴァント召喚の為の聖遺物を求めてだ。アインツベルンは聖杯の完成を強く望んでいるため、呼び出す英霊の選択肢を広げる為にたくさんの聖遺物を集めていると思っていたからである。

その読みは当たり、宝物庫にはいくつもの聖遺物があった。レイフィスはその中からあまり荷物が重ばらないものとして古い布切れを選び、更に当面の資金として幾つかの宝石を持ち出し、前々から用意していた荷物を持ち城を抜け出した。

あまりにも上手くいきすぎたことにレイフィスは見逃されたと思った。実際アインツベルンの悲願の達成には聖杯として機能するイリヤさえ居れば事足りる。聖杯として機能しない失敗作、ましてや外部の者の血が混ざっているレイフィスはアインツベルンにとってどうでもいいのだ。

しかし、事が上手くいくならそれに越した事はない。レイフィスはそれ以上気に止めなかった。そうして城を出て森を抜けたレイフィスは近くの街で適当なタクシーに乗り空港に向かった。

この時、タクシーの運転手に何でこんな子供がと不信に思われ何か聞かれそうになったが、こんな時の為に修得しておいた暗示の魔術で不信感を取り払った事で事なきを得た。

空港についた後もレイフィスは不信に思った大人達に暗示をかけることで面倒事を回避した。

そうして何とか日本行きの飛行機に乗り今に至ると言うことだ。

「きっと、結末を変えて見せる。」

レイフィスは決意を胸に日本に···冬木に向かった。




どうもプロローグの次の一話を投稿しました。
主人公を切嗣とアイリの息子でイリヤの双子の弟という設定にしました。
プロローグの時点でアインツベルンの関係者と予想していた人も居るでしょうが、この設定に不快感を感じる人はここで読むのをやめて下さい。これでもいいという人はこれからもよろしくお願いします。

ところで、アインツベルンの本家がある場所をとある国と表記しましたが、正確な国が分かる人はぜひ教えてください。

追伸
kanpanさんのおかげでドイツと分かったので書き直しました。
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