今日も神父は髪に祈る   作:髪のみそ汁

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第1話

 

生まれた時から神に祈った事が無かった。それでも異世界に転生して無理やりその存在を証明させられた。ああ、居るのは分かったよ。だが、これまで否定していた物に掌ひっくり返すのもアレだ。

 

だから、俺は祈る時は決まって何処でも無い俺の髪に祈る。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

この世界はファンタジーであるが、現実である。魔王がいるからまるでゲームみたいな世界だなと思うが、魔王を倒す勇者は残念ながら存在しない。そのせいで人類は滅びかけていた。勿論、力に自信がある者や才能に溢れる者が立ち向かったのは言わなくても当然だ。そして、結果もまた然りである。

 

そんな中、小さな村の教会の神父である俺に王都の王がわざわざやって来た。理由はただ一つ。

 

『魔王を倒してくれないか?』

 

「王よ。私は、しがない神父です。魔王など……」

 

『聞いたぞ。この村には魔王が来てもお主が全員やっつけてくれるからこの村の村人は一人も傷も負った事が無い。もし、あってもお主が治してくれるのだろう』

 

はぁ、参ったな。これは不味い流れだ。俺には確かに魔王討伐出来るほどの力があるのかもしれない。だが、だが。

 

「王よ、やはり」

 

『いやいや、お主以外に居ないんだ。各国の力のある者が戦いに向かったが、魔王には手が出せなかった。それどころか魔物を倒すのも一苦労だ。勇者だけが使える聖剣と同じ力を持っているお主しか魔王を倒せない。その"神をも否定する力"でしか魔王を倒せない』

 

「王よ、私の力は強過ぎるのです。無理です、絶対に」

 

『話してくれないか?その理由を。じゃなければ国民は納得してくれないのだ』

 

この力は確かに神を否定し、髪を肯定する。たった一つの代償で魔王を討伐する事も出来るだろう。だが、そのたった一つの代償は俺の毛根だ。髪の毛だ。一人につき、一本。癒すにしても殺すにしても変わらず同じ量を消費する。

 

きっと魔王を殺すまでに、何百や何千を超える魔物が俺の前に現れるだろう。だが、それでも仮に魔王を倒したとしよう。

 

魔王を倒した後に残るのはきっと、勇者と崇められて奉られるハゲのおっさんだ。惨めになる。ハゲたくない。何よりハゲを恐れる事がバレたく無い。今、ここで王に行ったらそれが全国民に伝わると言う事だ。行かなくて済むかもしれないが、生きづらくなる。なら、そうだ!ここは了承して、途中で失踪すれば良いんだ。よし、そうしよう。

 

「王、私は悩んでいました。私如きが魔王を倒せるのか、未だに自信はありませんが出来る限り頑張ろうと思います」

 

『い、行ってくれるのか?ありがとう!ありがとう!!』

 

さて、これで取り敢えず何とかなったな。

 

『良かった、実は仲間をと、思ってな。伝道師を呼んでおる。お主の旅での話を人々に伝える役割を担って貰う事となる』

 

は?

 

『何があればすぐ言ってくれ。どんな事でも力になろう』

 

え、ちょっと待って。

 

『明日の朝には来るだろう。そこから旅立って欲しい。どうか、宜しく頼む』

 

失踪出来そうに無いな、これ。

 

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