わたくしのヒーローアカデミアですわ   作:レゾリューション

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今回は早めに投稿します。


雄英体育祭-③

騎馬戦が始まって少し経った頃時崎チームは1000万を守りながら様子を見ていた。そのとき、緑谷が声を上げた。

 

「時崎さん、アレ!」

 

緑谷の声に、時崎は視線を電子板に向ける。

 

「え!なんで!」

 

麗日も驚いてる。無理もない。

 

「A組のほとんどが得点を失っておりますわね」

 

そこに残っていたのは彼女と轟のチームだけだった。得点の多くはB組へと流れ、不敵に笑みを浮かべているのは、B組の物間寧人だった。

 

「どうやらB組が牙を剥き出しましたわね」

 

「うん……!」

 

物間は予選の段階から目立たない位置を取り、情報収集に徹していた。そして今、虎視眈々と溜め込んだ牙をA組に突き立てている。

 

「1000万ポイント……いただくよ!」

 

挑発を交えた物間の声と共に、彼の騎馬が猛然と迫ってくる。

 

「お生憎さま。わたくしも易々と差し上げるつもりはございませんの」

 

時崎は優雅に銃を構え、弾丸を放つ。しかし、物間の前にいたのは硬化した両腕。切島の個性をコピーし、爆豪チームから奪ったその力で銃撃を完全に防いだ。

 

「残念でしたぁ!君が人を傷つけないように威力を抑えている事だって知ってるんだよ!」

 

だが、時崎は微笑みを崩さなかった。

 

「……そう単純に終わると思いまして?」

 

物間がガードを解いた瞬間、時崎は短銃を物間に向かって投げた。

 

「なッ!?」

 

時喰みの城から顕現した分身体が空中で掴む。その手には【四の弾(ダレット)】を込めた銃が握られ銃口は物間を向いていた。

 

「人使いが荒いですわね、『わたくし』」

 

乾いた銃声が響き、物間の身体に命中した瞬間――彼のコピー能力が霧散した。

 

「コピーが消え……!」

 

追い討ちをかけるように、背後から爆音が轟く。

 

「オラァ!!どの口でイキってんだコラァ!!」

 

煽られ続けていた爆豪が怒りに燃え、瀬呂のテープと芦田の酸で加速させ騎馬ごと突撃してきた。

 

物間は慌てて自分の騎馬に触れようとするが、動きが一瞬遅い。爆豪の腕が閃き、彼のハチマキが乱暴に奪われる。

 

「クッ!!」

 

「調子に乗ってんじゃねえぞ、三下ァ!!」

 

観客席が大きく沸く。B組の牙は折られ、物間はハチマキを奪い返されたのだった。

 

一方で時崎は、ふふ、と喉を鳴らして微笑む。

 

「やはり、こうでなくては退屈いたしますわね」

 

 

再び時崎チームの周囲に数多の騎馬が殺到する。

 

「距離を取りましょう」そう時崎が声をかけ、再び宙へと逃れようとするが、今回はバーニアが作動しない。

 

「これは……!」

 

緑谷の目が細められる。彼の視線の先、麗日の足元についていたのは紫色の球体。

 

「峰田君の“もぎもぎ”!」

 

前から重い影が迫る。巨大な複製腕を広げて突進してくる障子だった。その腕で峰田をすっぽりと包み込み、ハチマキを守っている。さらに障子の隙間から伸びてきたのは――長い舌。

 

「ッ……!」

 

時崎は瞬時に身をひねり、紙一重で舌を避けた。

 

「流石ね、狂三ちゃん」

 

隙間から覗く蛙吹の顔。その隣には峰田がいた。

 

「なるほど……蛙吹さんの“蛙”の個性と、峰田さんの“もぎもぎ”。そして障子さんの複製腕……いい連携ですわね」

 

状況は不利に傾きかけていた。麗日が不安げに声を上げる。

 

「どうする⁉︎ このままだと……!」

 

時崎はすぐに答えた。

 

「では麗日さん、あなたの足裏についている“それ”をこの銃で撃ってくださいまし」

 

そう言って、彼女は自分の短銃を麗日に差し出す。

 

「え……えっ!? わ、私が!?」

 

戸惑いの色が濃い。しかし、時崎の瞳には一切の迷いがない。

 

「大丈夫。反動はほとんどありませんわ」

 

短い言葉に後押しされ、麗日は小さく息を呑むと決意を込めて引き金を引いた。

 

――バンッ!

 

乾いた銃声が響く。同時に、彼女の足裏に貼りついていた“もぎもぎ”が弾かれたように剥がれ落ちた。

 

「よし……!」

 

すぐさまバックパックが作動し、時崎チームの騎馬は宙へと浮かび上がる。蛙吹の舌も峰田の球体も届かない高さへと。

 

「そんなのありかよ!!」

 

峰田が悔しげに唸り、蛙吹も舌を引く。

 

上昇する中で、時崎は振り返り優雅に微笑んだ。

 

「悪くありませんわ。けれど、もう少し工夫が必要でしたわね」

 

彼女の声音は余裕そのものであり、その姿に仲間たちも再び士気を高めていった。

 

 

激戦の中、何とか距離を取って着地に成功した時崎チームだったが、1000万ポイントの存在は否応なく周囲の騎馬を引き寄せる。どのチームも虎視眈々と狙いを定め、じわじわと包囲網を縮めていた。

 

そして――正面から視線がぶつかる。

 

轟焦凍。彼の率いるチームは、八百万の創造によるローラースケート型の器具で地を滑るように高速移動している。轟が短く息を吐き、低く呟いた。

 

「……そろそろ取るぞ」

 

言葉と同時に、八百万が腕を振るい棒状の物体を創り出した。さらに八百万が巨大な布を造りだし、轟チームの騎馬をすっぽりと覆った。

 

「上鳴さん!お願いしますわ!」

 

「無差別放電――130万ボルトッ!!」

 

直後、時崎の銃口が閃いた。

 

「《刻々帝》――【二の弾(ベート)】」

 

弾丸が放たれ、上鳴の身体に命中。彼の動作が一瞬鈍り、放電のタイミングが遅れるがそれでも雷撃は解き放たれた。

 

轟チームの近くにいた多くの騎馬たちは悲鳴をあげて感電し、バランスを崩す。比較的遠くにいた時崎チームへも雷の余波が襲いかかった。

 

しかし、時崎は冷静だった。

 

一の弾(アレフ)】で身体の動きを加速させ、瞬時に銃を構える。

 

「あらあら、“無差別”というのなら、きちんと公平にしなきゃダメですわ」

 

紅い瞳が妖しく細められる。

 

放たれた弾丸は轟チームを覆う巨大な布へと吸い込まれた。命中した瞬間、八百万が創った絶縁体布に穴が開く。

 

「なっ……いけませんわ!」

 

八百万の瞳が驚愕に見開かれ上鳴に止めるよう声を上げる。

 

絶縁体として雷撃を遮断していた布に穴があき上鳴の電撃は轟チームにも流れ、布は燃え尽きた。

 

『布が崩れたぁぁ!!轟チームを守ってた絶縁シールドがまるで古布みてぇにボロッボロだァ!!』

 

バチバチと火花が散り、轟の仲間たちの身体に痺れが走った。上鳴が途中で放電を終わらせ最悪の事態を防いだが、轟達の計画は時崎によって狂わされた。

 

 

『轟チーム、思わぬ足止めぇぇ!!時崎の仕掛けた時間の罠がここで炸裂だァ!!』

 

時崎はその光景を優雅に見据え、唇をわずかに吊り上げた。

 

 

 

「……これで、少しは公平になりましたでしょう?」

 

 

 

轟チームは、時崎による思わぬ妨害を受けながらも即座に次の手を打っていた。

 

八百万が創り出した長い棒を軸に、轟はそこへ触れ――氷を一気に広げる。円形に展開された氷結は、他チームの足をまとめて封じ込めるためのものだった。

 

「……なるほど。邪魔をさせない気ですのね」

 

時崎が小さく呟く。

 

フィールドのはじで、時崎チームと轟チームの二つの大騎馬が睨み合う。

 

『残り1分を切ったァァ!!ラストスパートだァァァ!!』

 

プレゼントマイクの叫びが会場を震わせる。

1000万ポイントを抱える時崎チームにとっては、このまま守り抜けば確実に勝利だった。

だが、轟が黙ってそれを見逃すはずがない。

 

時崎は背中に背負った発目製バックパックで浮上を試みたが――

 

バキンッ!

 

機構が悲鳴を上げ、無惨にも破損。地面に落ちてしまう。

 

「バックパックがイカれた!?」

 

「うわぁぁん!!私のベイビーがぁぁぁ!!」

 

緑谷が驚き発目が泣き叫ぶのも束の間、状況は緊迫の度を増していく。

 

「みなさん……とにかく、飯田さんの向きに注意してくださいまし」

 

時崎の声音は落ち着いていた。だが、その視線は鋭い。

 

(……残り時間はわずか。ですが、あのチームは必ず仕掛けてきますわね)

 

一方、轟チームは動きたくとも動けなかった。

下手に動けば、再び時崎の時間操作に飲まれる。そして、頭に銃を構えた彼女を見て確信する。

 

(あれは……おそらく高速移動の弾……)

 

轟はそう感じる。USJで共闘した経験のある八百屋と上鳴が、轟に時崎の強さを改めて警告した。時崎はただの射撃手ではない。

 

狡猾で、無駄のない一手を放つ。下手に踏み込めば、確実にカウンターを食らう。そう確信していた。

 

しかし、轟を支える飯田が静かに息を吐く。

 

「……みんな、しっかり捕まっていろ!」

 

「飯田さん!?」

 

八百万が驚くが、彼は構わず叫ぶ。

 

「奪れよ、轟君!!」

 

そして足のエンジンが轟音を立てる。

 

「トルクオーバーレシプロバーストォォ!!!」

 

爆発的な推進力が轟チームを包み込み、常識を逸した速度で駆け抜ける。目にも留まらぬその加速――

 

『な、なんだコレはァァァ!?まるでミサイルだ!!飯田ァ!お前足にブースターでも積んでんのかァァ!?!?』

 

プレゼントマイクが絶叫する。

 

轟チームは一瞬で時崎チームの目前に迫り、ハチマキに手を伸ばした――

 

その瞬間。

 

「《刻々帝》....」

 

時崎の唇が何かを囁き銃を撃つ。刹那、轟チーム全員が奇妙な感覚に襲われる。視界が揺らぎ、意識が飛んだような虚脱感。

 

だが轟の手は確かにハチマキを掴んでいた。

 

「やったか……?」

 

轟が確認する。

 

しかし、その手に握られていたのは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1000万ポイントではなかった。

 

「……70ポイント!?」

 

八百万が目を見開く。

 

『な、何ィィィィ!?轟チーム!!まさかの取り違えェェ!!1000万じゃなくて70ポイントのハチマキだァァ!!!』

 

プレゼントマイクの実況が響き渡り、会場は大歓声に包まれた。

 

轟は驚愕し、飯田は顔を引き攣らせる。

 

チーム全体に動揺が走る中、時崎は銃を軽く回しながら微笑む。

 

「ふふ……残念でしたわね」

 

 

 

 

轟チームの猛攻を凌ぎきった時崎チーム。轟の手にあったのは70ポイントのハチマキだった。その誤算が致命傷となり、残りわずかな時間は動揺と焦りに費やされてしまう。

 

『残り10秒ォォォォ!!!』

 

プレゼントマイクの声が会場全体に轟き渡る。

 

轟はまだ諦めていなかった。冷気を広げ、最後の一撃に賭けようとする。

だが、チームの足は止まっていた。

 

「……これ以上は、無理ですわね?」

 

時崎の声が轟チームを射抜く。

 

彼女は既に銃を構えていた。その笑みは挑発的でもあり、同時に余裕に満ちている。

 

これ以上踏み込めば確実に反撃を食らう。轟はその事実を悟り、歯噛みしながらも氷の手を下ろすしかなかった。

 

『3!2!1!!』

 

ブザーが鳴り響く。

 

『タイムアーップ!!決まったァァ!!この激闘を生き残ったのはァ――1000万ポイントを守り抜いた、時崎チームだァァァァ!!』

 

観客席が揺れるほどの歓声に包まれる。

 

緑谷は大量の涙の勢いで競技場の床を足で壊した。麗日は胸を押さえて安堵の息を吐き、発目は破壊されたバックパックの残骸を抱えて泣き笑いしていた。

 

そして騎手である時崎は、

 

「ふふ……楽しい時間でしたわ」

 

その声音は先ほどまで勝負をしていたとは思えない程優雅であった。

 

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