わたくしのヒーローアカデミアですわ   作:レゾリューション

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事情により早めに投稿します。

エンデヴァーによる、くるみんスパルタルートはーじーまるよー


職場体験-②

街へ繰り出す一行。エンデヴァーの存在感は圧倒的で、群衆の視線が自然と集まる。

だがその背後、黒と赤を基調とした狂三のドレス風コスチュームもまた、人々の目を引かずにはいられなかった。

 

「やっぱり見られるねぇ。ナイトメアちゃんもすごい注目浴びてるよ」

 

隣を歩くバーニンが笑い混じりに言う。

 

「……視線というのは慣れるものではありませんわね」

 

狂三は軽く口元を押さえて微笑んだ。堂々とした態度でありながら、その声音はどこか楽しげだ。

 

バーニンは真顔に戻り、声を落とす。

 

「いい? パトロールはただ歩けばいいんじゃない。視線を浴びるってことは、それだけ市民に“安心”と“期待”を与えるってこと。逆に、不安な素振りを見せたらそのまま街に伝わる。だから、常に堂々と」

 

「心得ておりますわ」

 

時崎は再び笑みを浮かべ、背筋を伸ばした。その表情はまさに舞台上の女優のようで、通りすがる人々の視線を自然と惹きつける。

 

群衆の中からは、こんな声が漏れた。

「エンデヴァーだ……!」「あの黒いドレスの子、もしかして雄英体育祭で優勝したあの子?」「ナイトメアって言ったよな……?」

 

人々のざわめきを背に、彼女の職場体験は、確かに始まっていた。

 

 

 

 

夜。パトロールを終えた時崎と轟は、再びエンデヴァー事務所に戻っていた。

 

事務所の高層ビルの一角、訓練専用の広いフロアに灯りがともる。そこへ、数人のサイドキックを従えたエンデヴァーが姿を現した。

 

「焦凍、時崎、今から個性の使い方というものを教えてやる」

 

低く響く声が、二人の耳にずしりと重く届く。エンデヴァーは二人を鋭く見据え、言葉を続けた。

 

「焦凍、お前の炎の使い方は雑だ。出力も制御も、ただ力任せに放っているだけだ。ヒーローに必要なのは“繊細さ”だと知れ」

 

轟は黙って視線を逸らさず、ただ父の言葉を受け止める。

 

エンデヴァーは次に狂三へと目を向けた。

 

 

「時崎、お前は良くも悪くも個性に頼りすぎている。時を操る力は確かに強力だが……それがなければどう戦う?市街戦では個性が封じられることもある。ヒーローは、どんな状況でも動ける存在でなければならん」

 

狂三はその指摘に微かに目を細める。

 

「……個性に頼りすぎ、ですか。言われてみれば、その通りですわね」

 

その声音には反論も言い訳もない。己の弱点を素直に受け入れる響きだった。

 

「だからお前には基礎体力を徹底的に鍛えさせる。銃や個性に逃げずとも、敵を制圧できる力を身につけろ」

 

そう告げるエンデヴァーの目は、烈火のように揺るぎなかった。

 

(個性の性質上、仕方がない……と割り切ることはできますわ。でも、それでは“ヒーロー”にはなれませんのね)

 

狂三は心の中でそう呟き、静かに覚悟を決める。

 

こうして轟は炎の制御訓練へ、狂三は体力強化と格闘術の基礎習得へと、それぞれの夜の修行を開始することとなった。

 

 

 

訓練フロアの中央で、轟と時崎はそれぞれの課題に臨んでいた。片方では轟が父であるエンデヴァーに炎の精密な操作を叩き込まれ、もう片方では狂三がサイドキックたちを相手に体力基礎を仕込まれている。

 

「焦凍、もっと炎を絞れ! その出力では周囲を巻き込む!」

 

轟の腕から迸る炎は床を焦がす。だが、エンデヴァーの炎と比べれば粗削りで、揺らぎが多い。轟は眉を寄せ、必死に温度を抑え込もうとした。

 

一方、時崎の周囲には汗の匂いが満ちていた。

 

「ナイトメア!体が浮いてる!足腰を沈めろ!」

 

「はぁっ……はぁ……!」

 

サイドキックと共に身体を鍛える。銃を握る時と違い、肉体そのものが武器となる戦いは、彼女にとって未知の領域だった。

 

「構えが甘い!次は本気で行くぞ!」

 

「ふふ……お優しいですわね」

 

言葉とは裏腹に、狂三は息を切らしながら必死に動きを追う。倒されても倒されても立ち上がる――その姿は、これまで“個性”に頼っていた少女が、初めて素の自分を武器にしようと足掻いている証だった。

 

そして視線を横に向ければ、轟も同じように汗を滴らせている。

 

「……っ!」

 

炎の量を抑え、的確に一点を狙う訓練。力ではなく繊細さを求められるそれは、彼にとっても容易なことではない。

 

互いに別の課題に挑みながらも、二人の姿はどこか重なって見えた。

 

圧倒的な力を持ちながら“制御”を求められる者。

 

強力な個性を持ちながら“生身”を鍛えられる者。

 

その対比は奇妙に釣り合い、同じ空間で研鑽し合う雰囲気を作り出していた。

 

「よし……いいぞ、焦凍!その感覚を忘れるな!」

 

「もう一度立って、時崎!まだ終わりじゃないわ!」

 

エンデヴァーの声と、サイドキックの叱咤が重なり、轟と狂三は再び動き出す。夜の事務所に、炎の轟音と靴音の衝突音が交互に響き渡っていた。

 

 

 

訓練は深夜に差し掛かろうとしていた。汗が額を伝い、息が荒くなる。轟は掌に小さな炎を灯したまま膝に手を置き、時崎は床に手を突きながら荒い呼吸を整えていた。

 

「……やるな」

 

不意に、轟が隣で倒れ込む狂三へ声をかけた。

 

「まぁ……? 焦凍さんが褒めてくださるなんて、珍しいですわね」

 

時崎は苦笑を浮かべながらも、乱れた髪を指で払う。

 

「俺は……ずっと力を押し付けられてきた。だが今日は初めてだ、制御する方が難しいって思った」

 

そう言って、轟は掌の炎を小さく弾ませた。それはいつもの荒々しい熱気ではなく、静かに揺れる焔だった。

 

時崎はそれを見つめ、薄く笑みを浮かべる。

 

「わたくしも似たようなものですわ。個性ばかりに頼ってきましたの。ですが――こうして殴られて転がされて、ようやくわかってきました」

 

「何をだ」

 

「力は奪うものではなく、積み重ねて磨くもの……でしょうか?」

 

そう呟いた時崎の横顔は、どこか静かで、それでいて確かな芯を持っていた。

 

轟は一瞬だけ視線を向け、ふっと鼻を鳴らす。

 

「……なら、互いに積み重ねていくしかないな」

 

「ええ。お互い、“悪夢”のような訓練ですけれど」

 

時崎が冗談めかして微笑むと、轟の口元もわずかに緩んだ。

 

再び掛け声が飛ぶ。

 

「休むな! 立て!」

「集中を切らすな、焦凍!」

 

二人は互いに頷き合い、再び戦いへと身を投じた。夜のエンデヴァー事務所には、炎の明滅と靴音の連打がいつまでも響き続く、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、近接格闘の訓練になり、赤い炎に照らされた空間で、時崎は薄い汗を額に浮かべながら立っていた。

 

「時崎、お前の戦い方は洗練されている。火力不足を頭脳で補う戦い方は認める。だが——」

 

エンデヴァーの炎が轟々と燃え上がり、空気を焦がす。

 

「個性に寄りかかりすぎだ。個性を奪われたらどうする?手を撃たれて銃を持てなくなったらどうする?」

 

再度言われた時崎の弱点。

 

「まぁ……その時はわたくしの個性で回復を...」

 

「違う!」

 

エンデヴァーの拳が地面を砕くように振り下ろされ、衝撃が時崎の体を揺らす。

 

「ヒーローは常に立ち続けねばならん!敵も、社会も、甘くはない!」

 

狂三の笑みがわずかに薄れ、静かに銃を下ろした。

 

「……つまり、銃も影も使わずに、戦えと?」

 

「そうだ」

 

エンデヴァーは燃え盛る腕を振り上げ、構えを取る。

 

「かかってこい。基礎体術を叩き込んでやる」

 

次の瞬間、巨体が風を切って突進してきた。時崎は分身を展開しようとしたが、エンデヴァーの声が鋭く飛ぶ。

 

「使うな!」

 

歯を食いしばり、狂三は影を抑え込み、自分の脚で地を蹴った。炎の腕を紙一重でかわし、回し蹴りを繰り出す。だが、次の瞬間には手首を掴まれ、床に叩きつけられていた。

 

「ぐっ……!」

 

エンデヴァーの声が響く。

 

「力が足りん!姿勢が甘い!次だ、立て!」

 

時崎はよろめきながらも立ち上がる。口元には痛みを紛らわすような微笑。

 

「……意外と、スパルタですのね」

 

「ヒーローを名乗るなら当然だ!」

 

その後も何度も投げられ、叩きつけられ、膝をつくたびに「立て」と叱咤される。銃を握らぬ両手は震え、息は荒い。だが、狂三は不思議と笑みを消さなかった。

 

(個性を封じても……まだ、戦える余地がある……?)

 

炎に包まれた巨躯の前で、狂三はゆっくりと拳を握り直す。エンデヴァーの指導は厳しい。しかしその奥に、彼女を「一人前の戦士」として認めている意志が確かに感じられた。

 

「……よろしいですわ。“悪夢”らしく、しぶとく参りましょう」

 

再び向かっていく狂三の瞳は、紅い炎に照らされてなお、確かな光を帯びていた。

 

 

 

基礎訓練を終え、エンデヴァーの視線がわずかに鋭さを和らげた。

 

「……最低限の型は身についたな、時崎」

 

その言葉に、時崎は無意識に背筋を伸ばす。褒め言葉ではない。ただの事実確認。しかし、彼が認めたという一点は揺るぎなく胸に響いた。

 

「次は――お前の“個性”を混ぜろ」

 

その低い声が響いた瞬間、空気が変わる。

 

時崎は頷き、片手を振る。分身が左右に広がる。ひとりは前方へ突進し、もうひとりは背後から回り込む。だがエンデヴァーは微動だにせず、迫った分身を一撃の炎拳で霧散させた。

 

「数に頼るな!“どこに重みを置くか”を決めろ!」

 

炎が唸り、もう一体の分身も容赦なく焼き払われる。

 

本体の時崎は歯を食いしばり、素早く接近。分身を生み出しつつ死角を取る――はずだったが、火炎の奔流が軌道を塞いだ。

 

「近接は“間合い”だ!個性に逃げるな、個性で間合いを作れ!」

 

エンデヴァーの拳が目の前に迫る。反射的に、時崎は分身を盾にし、自分は低く滑り込むように回避。そこから拳を突き上げた。

 

炎と拳がぶつかり、衝撃が弾ける。

 

 

一瞬だけ、エンデヴァーの表情が動いた。

 

「……今のは悪くない」

 

その声は低く、だが確かに認める響きを帯びていた。

 

肩で息をする時崎は、拳を下ろしながら心の中で苦笑した。

 

(流石に疲れますわね....)

 

しかしその目は、炎を映して揺らぎなく前を見据えていた。

 

 




職場体験であってインターンではないですが、エンデヴァーが本気なのでインターン並みに厳しいだけなんです。
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