わたくしのヒーローアカデミアですわ   作:レゾリューション

30 / 45
林間合宿編は個人的に書くのか難しかったので所々飛ばしながら書いています。原作とだいぶ違うようなところがあると思いますがご了承下さい。


林間合宿-②

温泉から上がり、火照った身体を落ち着けるように時崎は浴衣姿のまま女子たちの部屋に足を踏み入れた。

 

部屋の中は既に和気あいあいとした雰囲気に包まれており、布団の上に車座になった面々が談笑している。

 

「女子会しよー!女子会!せっかくだし!」

 

声を張り上げたのは葉隠だった。

 

「いいねー!」

 

芦戸もすぐさま乗っかり、部屋の空気がさらに明るくなる。

 

「やっぱり女子会と言ったら恋バナ!ね、麗日!」

 

芦戸の視線が矢のように麗日に突き刺さる。

 

「わ、わたし!?」

 

突然の指名に、麗日は肩を跳ねさせた。

 

「だって緑谷といい感じじゃん!そこんとこどうなん?」

 

葉隠と芦戸、二人の追撃に麗日はたじたじになる。

 

「いや、別にデクくんとはそんな……」

 

声が裏返り、頬が赤らむ。言葉を選ぼうとしても舌が追いつかず、きょどりながら弁解する姿は、誰の目にも明らかに動揺していた。

 

(乙女ですわね……)

 

その様子を、時崎は涼やかな笑みを浮かべて眺めていた。扇子を持たぬその手を口元に添え、内心で小さくそう呟く。

 

だが次の瞬間、矛先はあっさりと彼女自身へと向けられる。

 

「じゃあ次は狂三ちゃんでしょ!」

 

「そうそう、気になる人いるんじゃない?」

 

期待に満ちた眼差しが一斉に集まった。狙われた獲物は、今や時崎であった。

 

 

「わたくしですか?」

 

時崎は、やわらかな微笑みを浮かべながら首を傾げた。

 

「そうそう、誰か気になる人いないの?」

 

芦戸が身を乗り出して問いかける。

 

「まだ、いませんわね」

 

穏やかに告げるその声は、からかいを受けても一歩引いた余裕を感じさせるものだった。

 

「えー、じゃあ爆豪とかは?」

 

芦戸がふと思いついたように口にすると、周囲の女子たちも「なるほど」と目を輝かせる。

 

確かに、爆豪と狂三の会話は比較的多い。だがそれは甘い響きのあるやりとりとは程遠かった。

 

彼が苛立ちを隠さず声を荒げ、彼女がさらに火に油を注ぐような言葉を返す、そんな応酬ばかりである。

 

恋というには程遠い。むしろ、時崎にとって爆豪は手間のかかる弟のような存在に映っていた。

 

苛立ちと衝突の奥に、ほんの少しだけ気安さがあるのも否定できないが、それを恋情と呼ぶには無理があるだろう。

 

「ふふ……あの方は、わたくしにとって“そういう対象”ではありませんわ」

 

にっこりと笑いながら答える時崎に、芦戸や葉隠は「なんだー」と残念そうに肩を落とした。

 

「でもお似合いっぽいのに!」

 

芦戸が楽しそうに声を上げると、葉隠も「そうそう!」と同意する。

 

「そうでしょうか?」

 

狂三は肩をすくめて、落ち着いた笑みを浮かべる。年長者の余裕を漂わせるその反応に、茶化していた二人も思わず言葉を失った。

 

「恋は焦ってするものではありませんわ。ご縁があれば自然と訪れるものですもの」

 

その大人びた物言いに、麗日や芦戸は顔を見合わせて「なんか説得力ある……」と小さく呟いた。

 

一気に場の空気が和らぎ、やがて女子たちの笑い声も収まっていく。布団に潜り込むと、温泉で温まった身体と心地よい疲れが重なり、瞼が自然と落ちていった。

 

こうして夜更けの女子会は、時崎の大人な一言で静かに幕を下ろし、部屋には穏やかな寝息だけが満ちていった。

 

 

 

 

林間合宿二日目、まだ朝靄の残る森に、雄英A組の面々はすでに体操着姿で整列していた。時刻は午前5時半。

 

眠そうな者もいれば、気合いに燃える者もいる。しかし、全員に共通しているのは「これから何かとんでもないことが始まる」という予感だった。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める」

 

相澤先生の低い声が、空気を引き締める。

 

「今合宿の目的は全員の強化、及びそれによる仮免の取得だ。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備……心して臨むように。というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」

 

そう言って相澤が手渡したのは、入学直後の体力テストで使用したソフトボールだった。実は最初、時崎にやらせようとしたが、前回同様「測定不能」という結果に終わったため、順当に爆豪へ回されたのだ。

 

「前回の記録は705.2メートルだな」

 

「おお!成長具合を見んのか!」

 

「この三カ月色々濃かったからな!一キロとかいくんじゃねえの!?」 

 

「いったれバクゴー!」

 

仲間たちが期待にざわつく中、時崎は静かに思考を巡らせていた。

 

(……確かに、わたくしたちは強くなりましたわ。でもそれは精神面や技術面が主。肝心の“個性そのもの”は)

 

 

「よっこら……くたばれ!」

 

 

爆豪は豪快に悪態をつきながらソフトボールを全力で投げ放った。轟音と共に弾道は伸び、電子表示に結果が出る。

 

「709.6メートル」

 

「……あれ?」

 

「思ったより……」

 

「え、四メートルしか伸びてねぇの!?」

 

予想外に地味な記録に、一同の顔が引きつった。

 

「約三カ月間、様々な経験を経て君らは確かに成長している。だが、それはあくまで精神面や技術面。あとは体力的な部分だ。今見た通り、個性そのものは大して成長していない」

 

相澤先生の言葉に、時崎は小さく息を吐いた。嫌な予感が、的中したのだ。

 

「だから、今日から君らには、個性を伸ばしてもらう」

 

その瞬間、彼の口元が僅かに吊り上がる。

 

「死ぬほどきついが……くれぐれも」

 

 

 

「死なないように」

 

 

 

誰もが「悪い笑顔だ!」と納得せざるを得ない表情だった。

 

「発動上限のある発動型は上限の底上げ。異形型、複合型は個性に由来する部位を徹底的に鍛える。順番に方法を伝えるから順次取り掛かれ」

 

「先生が全員まとめて見るんですか?」と誰かが尋ねる。確かに二十人以上の訓練を一人で管理するのは不可能に思えた。

 

「だから彼女たちだ」

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「猫の手手助けやって来る!」

 

「どこからともなくやって来る……」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

派手なポーズと共に現れたのは、昨日も登場したワイルド・ワイルド・プッシーキャッツだった。

 

「……五人でどうやって面倒を見るのでしょう?」

 

時崎は眉を寄せる。

 

「この目で見た相手の情報は百人まで丸わかり!弱点も居場所もサーチ!」

 

「私の土流で各々に合った鍛錬場を形成!」

 

「私はテレパス!複数人に同時にアドバイス可能!」

 

「そこを我が、殴る蹴るの暴行で叩き直す!」

 

次々と能力を披露するプッシーキャッツ。なるほど、と一同は納得しかける。だが最後の一言にだけ、全員が固まった。

 

(……殴る蹴るの暴行は、できれば勘弁願いたいですわね)

 

時崎は心の中でそっと呟いた。

 

 

 

 

 

合宿初日、山奥に設けられた特設の修練場は、昼を迎える前からすでに阿鼻叫喚の声で満ちていた。

 

爆豪は湯泉に腕を浸かり、汗腺を広げ、両腕から容赦なく爆炎を撒き散らし、湯泉に腕を浸かる。これを繰り返す。

 

轟はお湯に浸かりながら氷と炎を交互に操りながら、両極端な力を均等に制御しようと汗を流す。

 

飯田は脚のエンジンを酷使し、延々と全力疾走を続ける。

 

峰田はと言えば、血が滲んでもなお「もぎもぎ」を引き千切り続ける姿があった。

 

他の生徒たちもそれぞれの課題に取り組んでいた。緑谷は腕を守りつつ出力を高め、芦戸は酸を出し続ける練習をしている。

 

耳を澄ませば、誰の声も呻きと悲鳴に満ちていた。この光景を前にして、「地獄」という以外の言葉はなかった。

 

 

 

そして、時崎

 

 

 

彼女に課された修行は、多岐にわたった。基礎体力の底上げ、【時喰みの城】の長時間維持と広範囲に拡大。

 

分身体の同時展開数を倍へと増やす訓練。銃の複数顕現。そして銃の射程をこれまでより伸ばし、精度を損なわぬまま遠距離射撃を可能とすること。

 

「お前は、ある程度仕上がっている。だからこそ、さらに長所を伸ばせ」

 

そう相澤は冷静に告げたのだ。

 

時崎は汗で額を濡らしながら、何度目かの分身体の顕現を繰り返す。指先は僅かに震えていたが、その紅い瞳は揺らぐことなく、前を見据えていた。

 

(……疲れますわね)

 

内心でそう呟く彼女の声音は、どこか微笑を帯びていた。

 

苦行の只中にありながら、時崎は確かに自らの力が磨かれていくのを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして林間合宿三日目の夜。昼間の鍛錬で疲労困憊になった生徒たちは、ひとときの余興として予定されていた「肝試し」に胸を高鳴らせていた。

 

焚き火の前に集合したA組の面々に、相澤が無表情で口を開く。

 

「……その前に大変心苦しいが、補習連中は、これから俺と補習授業だ」

 

一瞬の沈黙。直後に、複数の悲鳴が夜の森に響いた。

 

「「「「ウソだろ!!」」」」

 

芦戸、上鳴、切島、砂藤、瀬呂が揃って天を仰ぐ。さらに追い打ちをかけるように相澤先生の視線が鋭く動いた。

 

「ついでに峰田。お前もいろいろやらかしてるから、一緒にこい」

 

「なんでだよォォォォー!!」

 

抗議も虚しく、六人はずるずると相澤に引きずられて行った。残された十五名の生徒たちは顔を見合わせ、苦笑と安堵が入り混じる空気を漂わせる。

 

今回の肝試しはB組が「脅かす側」、そしてA組が二人一組で森のルートを回る形式だった。くじ引きで決められたペアの中、時崎は尾白と組むことになる。

 

「よ、よろしく」

 

「ええ、ふふ。頼りにしてますわ」

 

無口で控えめな尾白に、時崎は妖艶な微笑を返した。その表情が暗闇に映えるたび、周囲の誰もが不気味な緊張感を覚える。

 

だが、人数の計算が合わないことに誰かが気づいた。

 

「……あれ、六人連れてかれて、残り十五人ってことは……」

 

 

 

 

「一人余る!?」

 

 

 

 

振り返ると、緑谷が孤独に立ち尽くしていた。くじ運の悪さにか、ただ不運にか。彼の顔には微妙な汗が浮かぶ。

 

「え、僕、一人……?」

 

ざわつくクラスメイトたち。だがルール上、余りが出た以上は仕方がない。教師たちも「まあいいだろう」と取り合わず、緑谷は一人で夜の森へと向かうことになった。

 

月明かりが薄暗い木々を照らす。虫の声が響き、風が枝を揺らすたびに影が伸び縮みする。ペアで行く生徒たちが不安げに背を合わせる中、ただ一人で進む緑谷の背中は、妙に頼りなく映っていた。

 

 

 

 




みなさん、林間合宿の襲撃時、唯一リボルバーを使ってたヴィランがいるのを覚えていますでしょうか?そう、アイツです。マスタードガスが由来のヴィランです。

何故こんな事を書いたか、みなさんもうお分かりですね...ある程度小説ストックが出来たので今日は2つ投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。