わたくしのヒーローアカデミアですわ   作:レゾリューション

35 / 45
今日でこの小説を投稿して1ヶ月。みなさまのおかげでお気に入り登録1000を超え、UAが7万を超えました。ありがとうございます。


部屋披露大会

夏の暑気がまだ残る昼、雄英の新しい寮「ハイツアライアンス」の前に、1年A組の面々が集まっていた。

 

「とりあえず、1年A組、無事にまた集まれて何よりだ」

 

相澤の短い言葉に、生徒たちの表情が少し和らぐ。

 

「皆、許可が下りたんだな」

 

誰かが安堵の声をあげると、数名が苦笑交じりに頷いた。

 

「私は……少し苦戦した」

 

葉隠が溜息を漏らすと、耳郎が同情するように肩を竦めた。

 

「フツーそうだよね……」

 

「無事に集まれたのは先生のおかげでもあるのよ」

 

「会見を見たときはいなくなっちゃうのかと思って、すごく悲しかったんだから」

 

「うん」

 

誰ともなく同意が広がる。あの会見で雄英は強い批判を浴びた。

 

「……俺もびっくりしたさ。まぁ……色々あんだろうよ」

 

相澤は小さく息を吐き、次の言葉で空気を引き締める。

 

「さて……これから寮について軽く説明するが、その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」

 

「そういや……あったな、そんな話!」

 

上鳴が思い出したように叫ぶ。

 

「色々起きすぎて、すっかり頭から抜けてましたわ」

 

時崎も内心で苦笑した。

 

だが相澤の声音が低くなった瞬間、場の空気が一変する。

 

「大事な話だ。いいか、時崎、轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この六人はあの晩、あの場所へ爆豪救出に赴いた」

 

「「「「「えっ……」」」」」

 

クラス全体に驚愕の声が走る。

 

「その様子だと、行く素振りは皆も把握していたわけだな」

 

相澤先生の目が鋭く光る。

 

「色々棚上げした上で言わせてもらう。オールマイトの引退がなけりゃ、俺は爆豪以外、全員除籍処分にしていた」

 

痛烈な言葉に、誰も声を発せなくなる。説教はなお続いた。

 

「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。以上だ」

 

最後に言葉を切り上げ、わざとらしく声を張った。 

 

「さあ、中に入るぞ。……元気に行こう」

 

重い空気の中で「元気に」という言葉は浮いていた。

 

(流石に元気には行けませんわね……)

 

時崎は小さくため息をつきながら、クラスの沈んだ雰囲気を肌で感じていた。

 

そんな折、爆豪が唐突に上鳴の腕を掴み、木陰へ引きずり込む。次の瞬間、上鳴が放電し、情けない顔を晒した。

 

「……あの顔、響香のツボに入ってるみたい」

 

女子の何人かが忍び笑いを漏らす。

 

爆豪は何も言わず、切島の前に現金を突き出した。暗視スコープ代だという。

 

切島は一瞬驚く。

 

(……爆豪さんらしいですわね)

 

時崎はその様子を見て、ふっと口元を緩めた。重苦しい空気がわずかに和らぎ、A組は新たな生活への一歩を踏み出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

寮の一角は、夜になってもやけに賑やかだったが芦田の提案で「部屋披露大会」が始まった。それは最初こそ軽い余興のはずだったが、次第に奇妙な熱気を帯びていく。

 

最初に選ばれた犠牲者は緑谷。ドアが開いた瞬間、壁も机も棚も、あらゆる場所を埋め尽くすオールマイトグッズが目に飛び込んだ。ポスター、フィギュア、雑誌の切り抜き。まさに信仰の殿堂。

 

「オタク部屋だ!」

 

女子たちの評価は、案外辛辣だった。

 

次に常闇の部屋。黒一色のカーテン、蝋燭のような照明、壁際に立つ本棚には分厚い本が並んでいる。

 

「黒!!怖!!」

 

「貴様ら...」

 

その一言で片付けられた。常闇は肩を揺らした。

 

尾白の部屋は整然として清潔感があったが、逆に「普通」と評されてしまう。言葉が突き刺さるたびに、尻尾がしゅんと下がっていく。

 

青山の部屋は、まばゆいほどに輝いていた。鏡張りの壁に中世の鎧、星の装飾――。

 

「眩しい!」

 

「ノンノン、眩しいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!!」

 

「思ってた通りだ」

 

「想定の範疇を出ない」

 

その一言で済ます芦田。

 

そして峰田。部屋の扉を開けると同時に、誰もが本能的に危険を察知した。

 

「……次行きましょう」

 

「そうだね」

 

全員が無視した。

 

上鳴の部屋はポスターに派手な家具、手当たり次第の「チャラい」空間だった。

 

ここまで見てきた男子たちは、女子からの容赦ない言葉に少しずつ心を削られていた。そして気がつけば、廊下の一角で自然と顔を見合わせていた。

 

「なんかよ、釈然としねぇ」

 

「……奇遇だね。俺もしないんだ、釈然」

 

「そうだな」

 

「僕も」

 

上鳴、尾白、常闇、青山の順で静かに頷き合う。

 

(ある意味……自分の尊厳を壊されたようなものですからね)

 

時崎は心の中でそう思った。

 

そこへ、堪えきれなくなったように峰田が声を上げる。

 

「男子だけが言われっぱなしってのは、変だよなァ?『お部屋披露大会』って言ったよな?なら当然!!女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのか!?」

 

その言葉に、男子たちの胸に再び火がつく。女子の容赦ない評価が、彼らの競争心を逆に焚きつけてしまったのだ。

 

 

「誰がクラス一のインテリアセンスか……全員で決めるべきなんじゃねえのかあ!?」

 

峰田の提案に、すぐさま「いいじゃん!」と賛同の声が上がる。場の空気は一気に盛り上がり、自然と「部屋王を決める」という流れになっていった。

 

最初に披露されたのは切島の部屋だった。壁際には筋トレ器具が並び、ポスターや雑誌までもが熱血そのもの。クラスメイトからは「暑苦しい!」と総ツッコミが飛ぶ。

 

次に障子の部屋が公開されると、そこには本当に必要最低限の家具しかなく、無駄を削ぎ落した空間が広がっていた。

 

(シンプルですわね)

 

次に瀬呂の部屋が公開される。そこは落ち着いたアジアンテイストでまとめられており、クラスメイトからも「意外とセンスあるな」との声が漏れる。

 

続いて轟の部屋が披露されるが、そこは不思議なことに完全な和室に変わっていた。

 

実は、暇を持て余していた時崎が、轟本人の希望を受けて分身たちと共にリフォームを手伝ったのだ。畳敷きの床に障子、低い座卓と座布団。そんな空間に立つ轟は、妙に馴染んで見えるのだった。

 

次に公開されたのは砂糖の部屋だった。しかし、直前に轟の和室という強烈なインパクトを見せられた後では、どうしても印象が薄く映ってしまう。家具や内装は清潔感があり、決して悪くはないのだが――やはり「普通」という言葉が先に浮かぶ。

 

だが、砂糖がそのままでは終わらせなかった。テーブルの上には自作のシフォンケーキが用意されていた、個性の為に作っていたのである。ふわりと甘い香りが漂い、試しに口へ運んだ芦田たちは一様に目を見開いた。

 

「うまっ!」

 

一口、また一口とスプーンが止まらず、瞬く間に胃袋を掴んでしまった。

 

(……部屋より食べ物ですわね)

 

ケーキを口に運びながら、時崎は心の中でそう評した。因みにそのケーキは、疑いようもなく美味だった。

 

 

次はついに女子の部屋になる。最初は耳朗で楽器などがある彼女らしい部屋だった。次に葉隠の部屋中を見せた後、峰田が葉隠の部屋の香りを嗅ごうとする一幕があった。しかしその瞬間、時崎が冷ややかに口を開いた。

 

「鼻の穴を三つに増やしますわよ」

 

静かながら鋭い警告に、峰田は青ざめる。結局、瀬呂がテープでぐるぐる巻きにして事態は収束した。

 

耳郎、芦戸、八百万と次々に部屋が披露され、遂に最後の一室。時崎狂三の番となった。蛙吹は体調不良で欠席とのことで、クラスメイトたちの視線は一斉に時崎へと注がれる。

 

「クラス屈指の実力者であり策略家である時崎さんの部屋……」

 

八百万が小さく呟いた声は、皆の緊張を代弁するようだった。

 

「では、どうぞ」

 

時崎が静かに扉を開ける。

 

『おおー……!』

 

感嘆の声が一斉に上がった。

そこに広がっていたのは、学生寮とは思えぬほど落ち着きと上質さを備えた空間だった。深い色合いの木製家具に、窓を覆う漆黒のカーテン。壁際には間接照明が控えめに輝き、部屋全体を柔らかな陰影で包み込んでいる。その光は決して眩しすぎず、紅茶の香りや読書の時間を静かに引き立て、大人びた雰囲気を漂わせていた。

 

「すげー!大人っぽい!」

 

誰かがそう声をあげる。

 

だが、その中でひときわ目を引くものがあった。ベッドの枕元にちょこんと座る、黒猫のぬいぐるみである。

 

艶やかな毛並みを再現したそれは、決して子供っぽさを感じさせない。むしろクラシックな空気に自然と溶け込み、冷ややかな印象を与える空間に、どこか柔らかな温もりを添えていた。

 

まるで「主人を待つ猫」がそこに佇んでいるかのようだった。そのすぐそばには読みかけの本と香り立つ紅茶のカップ、そして上品な金色の懐中時計が置かれている。

 

優雅さと可愛らしさが奇妙に調和したその光景に、訪れたクラスメイトたちは言葉を失い、不思議な居心地の良さを胸に抱いたのだった。

 

 

 

全員の部屋紹介が終わり、賑やかな談話スペースにクラスメイトたちが集まった。蛙吹は体調不良で、爆豪は最初から不参加。残るメンバーで「部屋王」を決める投票が行われた。

 

机の上には箱が置かれ、各々が書いた紙を入れ終える。芦戸が司会役を買って出て、明るい声を響かせた。

 

「えー、皆さん、投票はお済みでしょうか!?自分への投票はナシですよ!?それでは!爆豪と梅雨ちゃんを除いた……第一回部屋王!暫定一位の発表です!!」

 

緊張感と笑いが入り混じる中、芦戸が箱に手を突っ込み、一枚の紙を取り出す。

 

「得票数は……脅威の六票!!まさかの同立!その部屋は――!!!」

 

一呼吸おいて、芦戸が高らかに叫んだ。

 

「砂糖力道、そして時崎狂三!!」

 

「俺!?」

 

驚きの声を上げた砂糖が思わず立ち上がる。

 

「まぁ」

 

一方、時崎は涼しい顔で微笑みを浮かべるだけだった。

 

砂糖の得票は、その大半が女子からだった。理由は至極単純――部屋で振る舞われたシフォンケーキが絶品だったからだ。胃袋を掴んだ彼に、自然と票が集まったのである。因みに時崎は瀬呂に入れた。砂糖のお菓子は美味だったが今回からはあくまで部屋なのでギャップのある彼にしたのだ。

 

対する時崎は、部屋の落ち着いた大人びた雰囲気が高く評価された。深い色合いの家具や間接照明が生む上品さに加え、ベッド脇に置かれた黒猫のぬいぐるみが不思議と心を和ませ、多くの者の印象に強く残ったのだ。

 

「お菓子の力ってすげぇな……」

 

「いや、時崎さんの部屋は反則でしょ、大人の部屋だよ」

 

談話スペースは感嘆と笑いに包まれ、こうして「第一回・部屋王決定戦」は思わぬ二人の同時受賞で幕を閉じたのだった。

 

 

部屋王の発表で談話スペースがざわつき、やっと落ち着いたかと思われたその瞬間だった。

麗日が大きく手を振りながら駆け寄ってきた。

 

「あっ、轟くん、ちょ待って!デクくんも飯田くんも……それに切島くん、八百万さん、時崎、ちょっといいかな」

 

その呼びかけに、時崎は穏やかな微笑を浮かべつつも、ある程度の事情を察していた。

 

外に出ると、冷たい風の中にひときわ小さな背中があった。蛙吹だった。

 

「私、思ったことは何でも言っちゃうの……」

 

その声は震えていた。涙を堪えようとしているのが、傍目にも分かる。時崎たちはすぐに彼女の隣に駆け寄った。

 

蛙吹は、彼らの勝手な行動や予想外の作戦で、自分を悲しませてしまった思いを語り始める。小さな肩が震え、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

 

「梅雨ちゃん……すまねえ!話してくれてありがとう!」

 

切島が優しく声をかける。

 

「申し訳ありませんでした、蛙吹さん」

 

時崎も丁寧に頭を下げる。

 

「蛙吹さん!」

 

八百万も声を張った。

 

「蛙吹、すまねえ」

 

轟も素直に謝罪する。

 

「梅雨ちゃん君!」

 

飯田が涙を拭いながら、声を震わせる。

 

「あす……ゆちゃん!」

 

緑谷もまた、言葉にならない思いを胸に、静かに彼女を見守った。

 

小さな空間に、互いの思いが言葉となって行き交う。時崎は、そんな光景を静かに見つめた。

 

 




突然ですが、みなさんはガンダムWをリアタイで見ていましたか?私は小学生の頃レンタルで見ていました。今年で30周年と聞いたのでまた見ていますが、やっぱり、ヒイロ君なかなかおもしれーやつですね。

さて、次回からついに仮免試験編!くるみんは必殺技を編み出し、自身の弱点を補う為にあるものを...
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。