わたくしのヒーローアカデミアですわ   作:レゾリューション

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(`・ω⊂)

色褪せない熱い想い


仮免試験に向けて

互いの部屋を覗き合うという騒がしくも新鮮なひとときを過ごした翌日。

 

A組の面々は久々に教室にそろい、全員がそろった状態で新たな一日を迎えていた。

 

「昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」

 

黒板の前に立つ相澤の言葉に、クラス全員が一斉に返事を合わせる。

 

「「「「「はい!」」」」」

 

声は揃っているが、緊張がにじむ。

 

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる、責任重大な資格だ。当然、取得のための試験は厳しい。仮免といえど、合格率は例年五割を切る」

 

「か、仮免でそんなにキツイのかよ……」

 

峰田が椅子に沈み込み、早速弱音を吐いた。クラスのあちこちで「マジかよ」と小さなざわめきが広がる。

 

(五割……確かに厳しい数字ですわね)

 

時崎は静かに胸の内で呟いた。敗北した者が即「落ちこぼれ」の烙印を押されるのではないか、そんな冷たい現実を一瞬想像する。

 

「そこで今日から君らには、一人最低でも二つ、必殺技を作ってもらう!」

 

相澤の言葉に、教室の空気が一変した。

 

「「「「「学校っぽくて、それでいてヒーローっぽいのキタァァァァ!」」」」」

 

ざわめきは一気に歓声へと変わり、教室の空気が熱を帯びる。そこへタイミングよく扉が開き、エクトプラズム、セメントス、そしてミッドナイトが現れる。

 

「必殺!コレ即チ必勝ノ型、技ノ異名!」

 

エクトプラズムが声を張る。

 

「その身に染みつかせた技・型は、他の追随を許さない。戦闘とは、己の得意を押しつけることだ」

 

セメントスが低く唸るように続ける。

 

「技は己の象徴!今日日、必殺技を持たぬプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

ミッドナイトが艶めいた声で決めると、生徒たちは再びどよめいた。

 

詳しい話は実演を交えて説明するということで、一行は体育館γへ移動する。

 

「ここはトレーニングの台所ランド、略してTDL!俺考案の施設で、生徒一人ひとりに合わせた地形や障害物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

誇らしげに胸を張るセメントス。しかし、

 

(東京……ではなく千葉にある有名テーマパークから訴えられないのでしょうか?)

 

狂三は心中でひとり突っ込みを入れていた。

 

「質問をお許しください!」

 

飯田が手を上げ、大声で切り込む。

 

「なぜ仮免の取得に必殺技が必要なのか!その意図をお聞かせ願います!」

 

真面目な問いに、教師陣は順に答えた。これからの時代は特に即応性と戦闘力が求められる。状況に左右されず、自分の型を押し通すことができれば安定した戦闘行動につながり、それがそのまま戦闘力の高さとなるのだ。

 

必殺技は攻撃である必要はなく、飯田の「レシプロバースト」も立派な必殺技と呼べるという。

 

(……わたくしの場合、《刻々帝》そのものが必殺技のような気がいたしますが)

 

時崎は内心で小さく肩をすくめる。彼女の個性は概念系、時間を操るという存在そのものが必殺級。新たに技を考える必要性など、正直感じてはいなかった。

 

しかし、教師たちの厳しい視線は、そうした慢心さえ許さない。

 

(やるしかありませんわね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意気込んだは良いものの、時崎は一人、頭を抱えていた。

 

(必殺技が思いつきませんわね……)

 

腕を組み、眉を寄せて考え込む姿は、傍から見れば「悩める乙女」そのもの。だが実情は違う。 

 

やはり、彼女の個性《刻々帝》が、時間を操るという「必殺技そのもの」である。加速・減速・停止・巻き戻し・未来視•分身生成……全部がとんでもなく強力だ。

 

(発想力が低いと言われればそれまででしょうけれど......贅沢な悩みですわね)

 

自虐とも開き直りともつかぬ思考に沈みかけていた時、背後から無機質な声が飛んでくる。

 

「......君ノ個性ノ銃ハ威力が調整可能。ナラ、マズソコヲ鍛エルトイイ」

 

振り返れば、エクトプラズムが近くに立っていた。

 

カタカナ混じりの独特な口調に、時崎は思わず瞬きをする。

 

「なるほど.....銃の威力の調整、ですのね」

 

時崎はにっこり微笑む。

 

「そうですわね、まずはそこから始めましょう。エクトプラズム先生、ありがとうございます」

 

(......威力調整、弾丸の性質.....これを工夫すれば"必殺技"と呼べる形になりますわね)

 

その一部始終を、エクトプラズムはそのまま見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必殺技の問題はある程度解決したが、時崎には決定的な弱点があった。

 

そう、時崎は爆豪や緑谷のように瞬時に距離を詰める機動力を持ち合わせていない。

 

 

個性(刻々帝)は強力でも生身の人間が基盤である以上、彼女の体はどうしても限界を迎えてしまう。

 

(わたくしには機動力が致命的にありませんわ……)

 

心中でそう呟きながら、彼女はサポート科の工房へと向かっていた。運良く通路で緑谷、麗日、飯田と出会い、彼らもサポートアイテムを求めて工房へ向かうところだったため、同行することにした。

 

やがて到着したのは、校内でもひときわ騒がしい扉の前。

 

「ここですわね」

 

狂三が小さく呟き、緑谷が扉に手をかけた瞬間——轟音が走った。

 

「うわっ!?」

「緑谷くん!」

「デクくん、大丈夫!?」

 

爆発と共に白煙が吹き出し、3人は咄嗟に身を引く。緑谷は爆発に巻き込まれた。そこから咳き込みながら現れたのは、見覚えのある教師と、生粋の発明狂だった。

 

「ゲホッ……発目!今日これで何回目だ!!」

 

「覚えてません!」

 

「七回目だ!!思いついたもん何でもかんでも組むんじゃないよ!!」

 

怒鳴り声をあげるパワーローダー、その陰から顔を覗かせたのは発目明だった。

 

「おや!あなたは確か体育祭で見かけた……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーすみません!全員の名前忘れました!」

 

(……わたくし達全員と体育祭で関わりがあったはずですのに)

 

時崎は心の中で皮肉めいた微笑を浮かべながらも、その思いを飲み込む。

 

「それで?皆さんどんなベイビーをご所望ですか!」

 

いつもの調子でグイグイ迫る発目に、四人は順に要望を口にした。

 

「わたくしは機動力の底上げを図れるアイテムを」

 

「僕は……パンチ以外の必殺技に繋がるようなものを」

 

「僕は脚部冷却機の強化をお願いしたい!」

 

「私は浮いたときの酔いを抑えられるものを……機動力も欲しいんよ」

 

四人の回答を聞いた発目は、目を輝かせて手を打つ。

 

「今すぐには無理ですけど、時崎さんと緑谷さんのならあります!とっておきのが!」

 

工房の奥から何かを引っ張り出す気配に、時崎の紅い瞳がわずかに細まった。

 

自らの弱点を埋めるかもしれない「切り札」が、お目にかかろうとしているのだった。

 

 

 

 

 

工房の奥から発目が引っ張り出してきたのは、真新しい黒光りするロングブーツだった。踵や脛に埋め込まれた機構が、ただの強化靴とは思えない異様な存在感を放っている。

 

「名付けて!《脚力強化装備:トールギス》!

 

胸を張って高らかに宣言する発目。緑谷は「す、すごい……!」と息を呑み、飯田は「な、なんという……!」と眉を吊り上げ、麗日は「なんかヤバそう」と小声で呟いた。

 

(……どこかで聞いたことある名前ですわね)

 

時崎は内心でそう呟きながら、紅い瞳を細める。由来はどうやら一昔前の“新機動戦記”なアニメに登場する機体の名前らしい。

 

発目は続けた。

 

「これは私が入学して最初に作った、すべてのベイビーたちのオリジン!この超圧縮バネ、踏み込むたびに内部のエネルギーが瞬時に解放し履いた者の脚力を極限まで増幅し、一歩踏み出すだけで壁すら砕きながら数十メートル先へ跳ぶ跳躍力!」

 

殺人的な加速で、敵の背後に回り込む・高所へ跳ぶ・狙撃ポジションを一瞬で取る!しかも軽く硬いから直接的な攻撃も可能!防御力•機動力•攻撃力を兼ね備えた、夢のアイテムなのです!!」

 

彼女の早口に、周囲は圧倒されるように黙り込んだ。確かに性能は凄まじい。だが、時崎は静かに口を開いた。

 

「そのトールギスのデメリットはなんでしょう?ここまでメリットがあるなら、相応の代償があると思いますの」

 

紅い瞳が、じっと発目を射抜く。その落ち着き払った問いに、緑谷や麗日、飯田も思わず頷いた。

 

「そ、それは……確かに……」

「リスク、絶対あるよね……」

「む、そうだな...」

 

空気が少し引き締まった、その時だった。

 

「……あぁ、リスクならとっくに証明されてるさ」

 

現れたのはパワーローダー先生だった。腕を組み、盛大にため息を吐く。

 

「これを履いて性能実験をした発目はな、サポート科で最初にリカバリーガールのお世話になったぞ」

 

「「「え?」」」

 

発目を除いた一同の声が揃って跳ねた。当の本人は涼しい顔をしている。

 

「確かに、コイツの性能をもってすれば、どんな場所でも一瞬で到達できる!だが……弱点はある……使用者が生身の人間だということだ!」

 

パワーローダーは指を突きつける。

 

静まり返る工房。時崎のブーツを見つめる視線は、憧れと恐怖の入り混じったものに変わっていった。

 

そう、《トールギス》は「スペックがあまりに高すぎる」という、サポートアイテムとしては致命的すぎる欠陥を抱えていた。

 

本来、サポートアイテムとは使用者の能力を補い、安全を確保した上で戦闘の効率を高めるための道具である。だが、このブーツは違う。

 

バネを解放した瞬間、内部に秘められた膨大な力が一気に炸裂する。それは確かに驚異的な機動力をもたらすが、同時に使用者の肉体を容赦なく叩き潰しかねない危険を孕んでいた。

 

つまり、この装備は「使用者を支援する」どころか、「使用者を傷つける」というとんでもないじゃじゃ馬だったのだ

 

元ネタとなったアニメを見ていた者であれば、なおさら首を傾げるだろう。

 

なぜ、アレと同じように人命を軽視し、ただスペックだけを突き詰めるという狂気の設計思想が、そのまま現実のサポートアイテムにまで持ち込まれてしまったのか。

 

安全性を度外視したその設計は、もはや「サポート」と呼ぶにはあまりに皮肉な代物だった。

 

「……要するに、これは“兵器”だ。サポートアイテムじゃないよ」

 

本末転倒である。

 

パワーローダーの低い声が工房に響いた。緑谷も飯田も麗日も、言葉を失って顔を引きつらせる。

 

ただ一人、発目だけは胸を張り、目を輝かせていた。

 

「でもでも!スリル満点!使いこなせれば超カッコイイ!それがこの子のロマンなんです!」

 

その熱弁を聞いて、時崎は「まぁ」と小さく微笑む。紅い瞳には、むしろ興味深そうな光が宿っていた。

 

発目はというと、

 

「使用者が生身の人間である以上、筋肉・骨・臓器が推進Gに耐えられる保証はゼロ!下手すれば一歩目で血管が切れる!内臓破裂も普通にあり得る!ブーツの形で推力を保つためにいろいろ詰め込んだ結果、安全装置なんてオミット!ただ飛ぶことに特化したモノになったのですが、使いこなせれば正に最高のアイテムです!」

 

言葉と同時に、彼女は親指を立ててドヤ顔を決める。

 

「なるほど……使う者の命を試すブーツですの。それはそれは、魅力的ですわ」

 

「納得するな!」

 

パワーローダーが頭を抱える音だけが、工房に響き渡った。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

緑谷、飯田、麗日。三人そろって固まった。

まるで「凶器を笑顔で売りつけられた客」そのものの顔である。

 

だが時崎だけは、楽しげに口元をほころばせていた。

 

「……わたくし好みですわね」

 

その声音は、むしろ嬉しげですらあった。

 

発目が熱を帯びたまま説明を終えると、工房内には一瞬の静寂が訪れた。黒光りするブーツは、まるで獰猛な獣のように光を反射している。

 

その沈黙を破ったのは、時崎の落ち着いた声だった。

 

「緑谷さん、どうでしょう……お使いになります?」

 

緑谷は目を大きく見開き、全力で首を横に振った。

 

「いや、これは……遠慮しておく……かな」

 

ブーツの凶暴な存在感を前にして、緑谷の慎重な反応は理解できる。麗日も飯田も、思わず顔をしかめた。

 

時崎は紅い瞳で緑谷を一瞥すると、微かに口角を上げる。

 

「そうですの。では、わたくしが使わせていただいてもよろしいでしょか?」

 

その言葉に、発目の目が輝き、期待に満ちた笑顔を浮かべる。工房内の空気が一瞬、戦闘前の緊張感のように張り詰めた。

 

時崎自身も、心の奥で小さく昂ぶるものを感じていた。試すのは危険極まりない装備だが、それこそが自分の戦闘スタイルに合致する唯一の方法なのだ。

 

緑谷は何も言わず、ただその決意を静かに見守る。時崎はブーツに手を伸ばし、慎重に装着の準備を始めた。

 

 

 




殺人的な加速って魅力的に聞こえますよね。そんなわけでトールギスがくるみんのサポートアイテムになります。

必殺技は仮免試験中に説明するので今回はカットします。ごめんなさい。お気に入りに登録や感想などが作者のモチベーションになりますので何卒よろしくお願いします。
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