仮面ライダーアウトサイダーズ the other 〜永遠のヴァルハラ〜   作:大島海峡

11 / 17
10.退路なき突入

『やれやれ、まさかこんなに早く嗅ぎつけてくるとはね』

 敵陣深くの塔より、声が運ばれてくる。一度聴けば忘れようもない、ユエツのものだった。

 

『少し君を見くびっていたかな、大道克己……どうかな? ここは何も見なかったことにしてくれないか。今だったら、君のメモリを復元したうえで不問にしてやるが』

「ずいぶんと上から目線だが……お前なりの命乞いか?」

 冷笑と共に、克己は問い返す。それが辛辣な皮肉なのは、誰にとっても明らかだった。

 先方にも、意図することは正しく受け取ってもらえたようだ。沈黙の間を縫うような浅い呼吸と微小の舌打ちが、それを証明している。

 

『……失礼した。どうやら無用の気遣いだったようだ。では君の蛮勇に敬意を表し、このタワーの頂上で待つとしよう。君がここに辿り着くか、それとも中途で力尽きて嬲り殺されるのをね』

 

 紳士然、公平者の仮面はしかしてかろうじて剥がれず。だが剣呑な物言いを合図に、黒い機械たちが動き出す。譲歩など示しつつ、元より帰すつもりなど無かったらしい。すでに後ろにも、兵は回されている。

 

「……お前ら」

 ふいに影山が、前へと進み出て言った。

「このまま真っ直ぐ突っ切れ。道は俺が拓く」

 と。

 

「……どういう風の吹き回しだ?」

 クロトーが胡乱げに、当然の疑問を口にする。

「どこみち逃げ道なんてもう無い……それに、俺がノコノコついてったって、どうせ信じてもらえないだろ?」

 影山は苦笑混じりに答えた。

 

「影山」

 その彼の肩を、克己は拳で突いて歩み始めた。

「任せた」

 とだけ伝えた。

 

「会ったばかりの、しかも一度裏切った相手に言うことか?」

 影山は呆れながらそう言いつつ、地中から這い出て飛び回る、バッタ型の変身装置……ホッパーゼクターを掴み取った。

 

「変身!」

 開けたバックルにそれを載せて滑らせると、ヒヒイロカネの装甲が、影山を包んだ。鉛色の飛蝗の、パンチホッパーの仮面が、引き締めた決死の形相を覆う。

 それを合図に、克己とクロトーは大地を捩るようにして走り出した。

 

 脇目も振らずにただ愚直に、ただ塔の入り口を目指す。

 無敵にして不可侵の防壁で守られていたからこそ、その防衛機構は分厚い鉄扉のみである。そこに、向かっていく。

 

 彼らの隙だらけの側背に、横撃追撃を加えるべく、ブラックバルキリー達が殺到する。

 

〈Clock up〉

 だが、鋭く尖らせた爪が彼らの肌を裂くより先に、彼女たちの高速を上回る速さで、吹き飛ばしていく。

 縦横無尽。四方より迫るマシンの兵隊の攻勢を、すでに姿見えざる影山が防ぎ切って行く。そして二人は、迷わず封じられたままの扉へ前進し続けた。

 

 その二人を、一陣の風が追い抜いた。

〈Rider jump!〉

 扉そのものを両足の掛かりに、それが破壊されるほどに強く踏み込むと、ゼクターより光の粒子が右腕に送り込まれ、充溢していく。

 そして、急反転したパンチホッパーは、再び克己とクロトーの真横を抜け、風と枯れ草を巻き上げながらそれを追う戦乙女たちに突っ込んだ。

 

「ライダーパンチ!!」

〈Rider punch〉

 

 衝き出した拳より、展開されたジャッキより一気に解放されたエネルギーがそのうちの一機を吹き飛ばし、その後続を、さらにその周囲を誘爆せしめる。

 

 克己たちは顧みない。一言も無い。ただ、彼の踏み砕いた扉の隙間より、塔の内部へと突入する。

 そして影山は殿(しんがり)となって、地上に留まって、浅い呼吸と共に追手を防ぐ覚悟を固めた。

 

『選択とつくべき相手を誤ったな、影山君』

 ふたたび、ユエツの声が響き渡る。

 

『では君には相応しい相手を用意しよう……裏切り者の血と屈辱の涙を、彩りに変えるが良い』

 乾いた風が無慈悲なその声と――青い薔薇の花弁を運ぶ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。