仮面ライダーアウトサイダーズ the other 〜永遠のヴァルハラ〜 作:大島海峡
試作型に負荷という負荷が加わった結果、ついに強化アダプターごとに、メモリは砕けた。
だが今度は、そこに封じられていた記憶も願いも、忘れまい。
克己はその残骸を、そっと床に下ろした。
「終わったようだな」
そこへ、多少よろめきながら、クロトーが近づいてきた。
「しぶといな」
と軽口を叩いて顧みた克己に、
「貴様に言われたくはない」
と、憎まれ口が返ってくるも、そこに剣呑さはない。
「……まぁその我々のしぶとさも、ここまでのようだが」
わずかな苦笑を滲ませて、クロトーは自らの掌に視線を落とした。
すでにその指先は、血管ごと薄らいで、天より差し込む光の中へと溶けんとしていた。
彼女のみではない。
地上で争っていたらしい異端者ども。敵味方を分かたぬままに刃を交えていた彼らもまた、混沌の中で溶け合い、天へと昇っていく。
それぞれの在るべき場所へ、結末へ。
あるいは虚無へ、あるいは真の地獄へ、次なる闘争へ。
「結局、奴らには我々を現世へ返すのは口約束、そもそもその能力があったかさえ、今となっては怪しい。倒したところで、何も変わりはしない……結局、すべては徒労だったのか?」
そう呟いたクロトーに、
「でもないさ。少なくとも、俺にとってはな」
克己は答え、自らのジャケットから鈍色の長方形を抜き取った。
それは、ハーモニカだった。
最初にT1のエターナルメモリを拾い上げた時、これも近くにあった。メモリ同様、よもやかつて自分が持っていた本物いうことはないだろうが、形や状態は酷似していた。
表面こそ煤け焦げ付いて、多少溶けてはいるものの、一吹きすれば、音色は問題なく風へ流れていく。
それから、曲へと繋げた。
「なんだ、それは」
クロトーがその行為自体と、その意味について短く問う。
「大切な、曲だ」
と克己は答えた。
オルゴールより流れていた時には、慈愛に満ちた、優しい調べだった。
しかし、今の克己が、明日を掴まんと前へと進む、そんな力強さが感じられた。
奏でたのは、ただの気まぐれだ。
ユエツらを蹂躙し全てが終わった時、これを頂で吹き鳴らしたのなら、どれほど痛快かと。
(鎮魂歌としちゃ、まぁ上等だろう)
と苦笑する克己の横を、多くの亡者達が通り抜けていく。
その中に、影山の姿もあった。
『俺も行くよ。兄貴を追って、俺たちの白夜を探しに』
鼻っ柱の傷をくしゃっとたわませた、屈託のない笑みを空に浮かべながら、消えていった。
「力を頼みに生き続けてきた私には、音楽とやらは分からない」
傍にあってクロトーは言った。
「……だが、悪くはない。先に待っている家族に、一つぐらい良い土産話が出来そうだ」
曇りのない微笑をたたえながら、クロトーもまた白いベールに包まれるように、消えていく。
かくして幕は下りて、主演は最後の時まで奏し続ける。
今天へと消えゆく、無間地獄をここまで戦い抜いた星々へ、曲を手向け続ける。
〜〜〜
そして、演奏は止まった。
勝利者を除く魂は悉く在るべき場所へと還っていった。
覚悟している時、存外に死は遠いものだ、とつくづく思う。
このまま座してその時が来るのを待つか。いや、そんなしおらしい死に様は、大道克己好みのものではない。
残る命を持て余していた克己の足下に、ふいに青白い光が湧き上がった。
その中心には、見慣れた小方形が据え置かれている。
「これは……」
すでに破損したはずの、エターナルメモリ。しかもT2のものが、元通りでそこに在る。
それを手にした瞬間、声が脳内に響く。
『不死身の戦士エターナルよ。
男の声。荘厳さを取り繕っているが、方向性、質ともにユエツと同じ。自分が絶対的な主導権を握っているという優越感が耳に滲みつき、鼻につく。
だが有無を言わさぬまま、屈んだままに克己を、鈍色に揺蕩うオーロラが飲み込んだ。
帳が払われた時には、周りの光景は刷新されていた。
過去か、それとも未来か。どこかのスタジアムの入口とおぼしきその場所で、克己は身をもたげた。
「またか」
うんざりした調子で呟く。
「いい加減きちんと死ねたと思ったんだがな」
不機嫌を隠さず独語した彼に、
「誰――?」
と硬い声で、横から若者が困惑の声を発する。
冷笑を浮かべつつ、克己は
「死神の名前か?」
と皮肉げに問い返し、再び手元に戻ってきた、運命のガイアメモリに指をかける。
まぁ、良い。
これこそ最後の余興。残り少ない
その瞬間が訪れるまで、おのが存在を刻むため、刃を振るおう。
「地獄に行ったらこの名を告げろ」
眼前に立ちふさがった男が、何者か。
知ったうえでなお、この若者が挑み、乗り越え、自らの明日を求め続けるというのなら、その覚悟を示したのならば――その時は、サムズアップの一つでもくれてやろう。
そう、己こそは――
ということで、何とか書き終わりました。
実は後半ちょっと体調を崩しておりまして、だいぶ遅れました。
リクエストの内容としては、作品ページの紹介そのままでした。
しかしながら出てきたのはダークライダーで括ってよかったのかわからない連中ばっかりでしたので、出来の良し悪しを差し引いても、若干の不安が残る感じにはなってしまいました。
とは言っても当初の構想より水増しした程度で、ペースはともかくストーリー自体は、だいたい予定通りに書き終えることが出来たので、その一点においては良かったと思います。
というわけで、ここまでお付き合いいただきまして、またこのような機会を与えていただき、ありがとうございました。
また何処かでお会いできるのを楽しみにしております。
ではでは。