仮面ライダーアウトサイダーズ the other 〜永遠のヴァルハラ〜   作:大島海峡

4 / 17
3.ルールと誘い

〈それでは、あらためてルールの説明といこうか〉

 あくまで紳士的でありつつも、悪意と嘲笑の微粒子を確かに感じさせる口ぶりで、ユエツは切り出した。

 

 まず、時間差で選手はこの拠点を退出。

 言わずもがな、この場での戦闘行為は禁止。

 

 全員が出たところで、戦闘開始とする。

 そこからは単純だ。

 自らの力で、あるいはステージ内に散らばったアイテムを駆使して、他の選手を打倒していく。

 

 ただし、それなりに制限もある。

 例えば、管制塔を中心としたエリアは時間ごとに、外円から縮小していく。無効となったエリアにはファイアーウォールが展開し、如何な力を有していようが何人をも滅却する。

 

 選手にはスペック、ゲームに対する協調性、オッズなど応じてポイントが設定されている。上記と同様、一定時間に達した際規定のポイントに達していない選手は、即刻退場となる。

 

 それ以外であれば、参加者同士で手を組むも良し。あるいはそれを騙し討ちにする良し。

 そして最後に残った一人だけが、ユエツの待つ塔への到達を許され、そこで望むままのものが授けられる。

 

〈もちろん、最低限の能力が無ければさっきみたいな体たらくになってお話にもならない。克己君、君のアイテムは他の参加者同様に、すでにこちらで用意させている〉

 

 ユエツの言葉に従い、ブラックバルキリーの一体が克己の前に進み出て小ぶりのトランクを突き出し、開けてみせた。

 そこに収まっていたのは、L字型の赤い機構を前面に持つ装置。そして青い端子を持つ、USBメモリ型のデバイス。

 克己が変身に用いていたロストドライバーと、エターナルメモリを中心としたT2ガイアメモリだった。

 だがこれらは己の敗北と同時に、破壊されたはずだったが……

 それを訝るように見遣った彼を、スピーカーがせせら笑う。

 

〈安心したまえ。別に自爆装置などは仕込んでいない。当時の物を忠実に再現させてもらった〉

 その言葉に、おそらく嘘は無いだろう。

 良心でも良識などは期待するべくもないが、彼の言葉から察するに、ある種の期待をされてここに招かれた訳で、それに水を差すような展開は、ゲーム的に求めてはいまい。

 克己と鼻哂を落としてそれをひったくった。

 それを合図に、ユエツは

〈では、自らの退出時間までのインターバル、好きに過ごしてくれたまえ。英気を養うなり、談合するなり……不可能な脱出計画を練るなりして、ね〉

 と告げたのだった。

 

 〜〜〜

 

 ポツポツと話し声や、そこから発展した諍いが漏れ聞こえる。低く陰鬱とした調子は、まさしく亡者の嘆きそのものだ。

 その中で克己は踵を返して、一人の前に立った。

 件の女戦士である。

 

「たしか、クロトーとか言ったな?」

 腰掛けたまま、胡乱げに見上げる彼女に、克己は言い放った。

「俺と組め。お前は、当たりだ」

 と、有無を言わせない調子で。

 

 本人よりも先に反応を見せたのは、周りの選手(ライダー)たちである。

「ブゥアッハッハッハ!! 正気か!?」

 如何にも悪の大臣ないし魔法使いでございという黒衣をまとった男が、けたたましく豪快な笑声を轟かせる。

「組むにしても、よりにもよって逃げてばかりのチキンとはな……俺様の子分になるってんなら、良い目見させてやっても良いぜ」

 どう見ても人間らしからぬ黒い鬼のような怪人が、その姿とは対照的な美声と共に背後から克己に腕から寄りかかる。

 

 それをにべなく振りほどき、克己はクロトーに向けて言い放つ。

「こいつの目はまだ、負け犬のそれじゃない」

 と。

 

「俺が言うのも滑稽だが……お前たちの方が、明日を諦めた死人に見える」

 そして周囲を()め回し、朗々とした声音に乗せて周囲へと届けられる、克己の言霊。反らした首と背は、そのまま彼の叛骨を表していた。

 

 わずかに目線を持ち上げたクロトーに、

「この先で待つ。俺と共に地獄から這い上がるつもりがあるなら、来い」

 口端に笑みをたたえたまま、確信めいた口調でそう告げた。

 そして己の番になり、ラウンジを出立する。

 

 いくらかの戸惑いと――それを上回って余りある憎悪と殺意の眼差しを、その背に受けながら。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。