バカは怖いもの知らずとよく聞くが、このバカは常軌を逸している   作:狂骨

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口は災いの元

 

 

別に取り憑かれている訳じゃないし、操られてる訳でもない。確かに俺の中には“鬼”が潜んでいる。

 

数年前、お父さんとお母さんと一緒に旅行に行った時に鬼の中でも酒呑童子の息子『鬼童丸』が扱っていたとされる『鬼哭丸』を見せてもらい、それに触れた事で、奴が俺に乗り移ってきた。

 

『ほぅ?お主…童にしては中々な妖力を持っておるのぅ…?』

 

「え?いや誰ですかアンタ」

突然と目の前に和服を来て頭に角を生やしたおじさんが現れて、いきなりこんな事言ってきて、最初は『なんだ?この変なおじさんは…』って思ったけど、まぁ、変なおじさんだった。

 

『我は酒呑童子が息子『鬼童丸』我を呼び覚ましたのがこんな童とは、いまだに信じられんのぅ。まぁ良い。久々に剣を震えて嬉しかったぞ!』

 

「……へ?」

 

『これからよろしく頼むぞ?我が依代よ』

 

その言葉と共に意識が暗くなり、気づけば俺は刀を握り締めて目の前のお堂を切り崩していた。

 

鬼哭丸に眠っていた鬼童丸の魂が俺に乗り移り、奴の能力と剣術を手に入れてしまったのだ。

 

 

 

住職は言った。

 

___確実に怨霊に取り憑かれてしまった。一刻も早く除霊しなければいずれ両親にも牙を向けるだろう__と。

 

そこからぬ〜べ〜という教師が転校先の別のクラスの担任をしているとの事で、両親は大急ぎで手続きを行った。

 

 

だけど、実際は全く違う。

 

確かに最初は怖かったけども、何故かずっと観光地にいたためか、色々とフランクであり、お堂を切り崩したのも久々に刀を握れて嬉しかったからだ。

 

普段は眠ってはいるものの、刀を握ったり寝たりすれば____

 

『おい翔一郎!!なぜ今日は我から離れた!?』

 

「うるっさいなぁ!!疲れたんだから寝かせてよ!!」

 

『なにを!?誰のお陰で安心に暮らせると思っておる!?お主は妖怪に狙われやすい体質なのだぞ!』

 

_____こんな感じで、うるさいほど話しかけて来る。

 

だが、それ以外は特に何もしない。転校前のクラスでうっかり表に出ておもちゃの刀で掃除ロッカーを真っ二つにし、皆から怖がられる要因を作った際は悪く思ってたのか、よっぽどの事が無い限りは出てこなくなった。

 

 

だから、別に除霊なんてする必要ないし、寧ろ俺自身は“霊を引き寄せてしまう体質”だから、身を守る上では必要なのだ。

 

 

 

除霊などさせてなるものか。しようものなら、ぶった斬る

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

翌日

 

「空に〜憧れて〜空を〜駆けぇええええええええええ!!!!!!」

 

少々具合が悪く、午前中の授業を休み、午後から登校していた翔一郎はルンルンと歌いながら扉を開ける。

 

「元気ですかぁあああ!!!って……あら?」

 

扉を開けた途端、その空気はいつもと違っていた。

 

見ればクラスの皆が美樹に詰め寄っていたのだ。

 

「あら?何だこれ?」

 

その光景に翔一郎は全く理解できず、近くに立っていた広へと尋ねる。

 

「ヒロちゃんや〜何があったんだい?」

 

「コイツがさ!どこから知ったのか分かんねぇけど、俺たちのこと色々と喋りやがったんだよ!!」

 

「ほぅ?例えば?」

 

「俺が律子先生のボインに触った事や、太が女子のリコーダー舐めようとした事や!!_____

 

 

 

______あ」

 

ここで広はうっかり喋ってしまった事に気付く。

 

「ちょっとヤダ〜!!いくら小学生で怒られないからって女の胸に触るなんてサイテ〜!!マジ腹立つんですけど〜!!その年でマセてんの〜!?」

 

「なんでギャルみたいな話し方になってんだよ!?しかも喋り方腹立つ!!!じゃあリコーダー舐めようとしたアイツはどうなんだよ!?」

 

「え?その人はもう存在価値がないから、いじる必要性もないでしょ。110番オンリー」

 

「心が抉られるぐらい酷い事言いやがった!?」

 

因みにリコーダーを舐めようとした太の落ち込み様は半端ではなく、完全に生きる気力さえも無くして崩れ落ちていた。

 

「さて、悪ふざけはここら辺にして、みっちゃん」

 

そんな光景を横目に翔一郎は気を取り直すと、落ち込んでいる美樹へと目を向ける。

 

「どうも不思議ですね。その秘密をどうやって手に入れたんですか?ヒロちゃんの話は、彼の性格からして、よく自慢とかするから、分からなくもないですが、リコーダーを舐めようとするなんて情報、白昼堂々とする以外、すぐに手に入る訳じゃないはず」

 

「だから私も知らないんだってば!!」

 

「ふむふむ。謎は深まるばかり…ただ、早く解決しないと、私がお母さんと一緒に寝てる話も、お父さんとお風呂に入ってる話も出てくるかもしれないからな…」

 

「いや…もう堂々と話してますけど…」

 

「卒業しろよそろそろ…」

 

郷子と広が突っ込む中、翔一郎は考え続ける。確かに美樹は噂話が大好物であるが、郷子によれば、人を傷つける話題に関しては絶対に触れない性分である。

故にこれ程までの噂話をペチャクチャと喋ることは無いはずだ。

 

すると

 

ガラガラガラ

 

扉が開き、ぬ〜べ〜が入ってきた。

 

「先生!」

それを見た美樹は即座に先生に駆け寄った。

 

「先生からも言ってよ!!私が無実だって!!!」

 

「美樹…」

 

美樹はぬ〜べ〜にも何とか自身が無実である事を伝えようとするも、返ってきたのは冷たい言葉であった、

 

「これで分かっただろ…?お前にとって面白い話題でも、本人にとっても知られたくない話もあるんだぞ?」

 

「そん…な…」

いつものような声色で、諭すようにぬ〜べ〜は美樹へと伝える。だが、今の美樹にとって、その言葉はナイフの様に鋭いものであった。

 

それだけではない。それに続けて背後に立っているクラスメイト達の蔑む声も聞こえてくる。

 

__やっぱりだ!あのおしゃべり女!

 

___まさかここまでするなんて信じらんない…!

 

____お前なんかもう友達じゃねぇ!!

 

 

__「因みに…りっちゃん先生の胸を触った奴とリコーダー舐めようとした奴は?」

 

__殺しちまうか

 

__そうだな。学校の近くに大きい裏山があった。あそこなら叫んでも周りに聞こえねえだろ。

 

様々な野次が飛び交う中、数人の男子が広と太へ方向転換する。

 

「よ〜し!広ぃ〜!俺達とかくれんぼしようぜ〜♪」

「太も一緒になぁ!!!」

 

「しねぇよ!怖ぇよ!」

「なんで僕まで!?未遂だろ!?」

 

「未遂だろうがなんだろうがやろうとしたら現行犯と同じなんだよォオオオオオオオオ!!!!」

 

次々と突き刺さってくる鋭い言葉に、広と太に詰め寄る男子達の嫉妬と怒りの声と理解してくれないぬ〜べ〜の冷たい視線。

 

次々と混濁してくる空気に、美樹はもう限界なのか、耐えられず、走り出す。

 

「うぅ…うわぁあん!!!!」

 

「美樹!?」

 

「待ってみっちゃん!!早退扱いになるよ!?」

 

「いやそこどうでも良いだろ!?」

 

涙を流しながら教室を出ていった美樹をぬ〜べ〜と翔一郎は追おうとするも、既に彼女は角を曲がり、姿が見えなくなっていた。

 

 

そんな中であった。

 

「…ん?」

 

ぬ〜べ〜は視線を感じ取り、辺りを見回した。視線といっても、ただの視線ではない。不気味かつ妖気を纏った視線。

 

すると

 

「…!!」

 

一瞬だけ見えた。天上の角から此方を除く不気味な目玉が。

 

「アイツは…」

 

 

この時、翔一郎もぬ〜べ〜と同じ方向へと眼を向けていたが、ぬ〜べ〜は知る由も無かった。

 

 

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