バカは怖いもの知らずとよく聞くが、このバカは常軌を逸している 作:狂骨
その翌日。
「レリビー!!レリビー!!……ん?」
アナ○の曲調でlet it ○を歌いながら投稿していた翔一郎は、ある妙な服装の人物を見つけた。
「…」
その人物は、晴れている日でありながらも、厚手のコートを纏い、帽子にサングラスというほぼ不審者の様な格好であった。そんな不審者らしき人物は、目の前を歩いている広達の後を付けていた。
だが、その人物に心当たりがあるのか、翔一郎は前に出て尋ねる。
「おや?みっちゃん?」
「げぇ…!?」
その声に不審者はギョッとしながらも、少しだけそのコートを脱ぎ、素顔を見せる。
「黒田くん…」
「なにしてんですか?こんな真っ昼間に…まさか男児を…!!!」
「ショタコンじゃないわい!!」
すると、その声に気がついたのか、目の前を歩いていた広達が立ち止まる。
「やば…隠れて…!!」
「もぐ!?」
皆に気づかれないために、咄嗟に美樹は物陰に隠れ、その際に何故か翔一郎もコートの中に引き込んだ。
「ごめんね…バレると色々と面倒くさいんだ…」
「〜!ぷはぁ…それよりも離してくれませんか!?暑いし苦しい!!暑苦しい!!」
「我慢して…他の人に見つかったら大変なんだから…!!」
「…なぜですか!?…………まさかこうして幼い男児を引き摺り込んでチョメチョメする気だったんですか…!?恐ろしいぃいい!!」
「プッチーン…」
怒りマックスになった美樹は翔一朗の顔を挟み込むと小学生にしては豊満すぎる胸に押し付けた。
「人が悩んでる時にぃいい!!!良いわよ!本当にしてやるわよ!このまま窒息させてやろうかぁああ!?」
「〜!!!(ぎゃぁぁぁぁぁ!!ぐるじぃいい!!ごめんなさぁぁあい!!!)」
そんな中であった
「!?」
不意に広達を監視していた美樹は何かを発見したのか、声を静めた。
「ど…どうしたんですか…?」
「し…静かに…現れたわ…」
美樹の言葉に翔一郎も、彼女のマントの間から顔を出して、同じ方向へと眼を向けると、そこには路地の角の影に美樹の影があり、それが声を発しながら皆に話しかけていたのだ。
『ねぇねぇ!皆聞いてよ!!この間さ……』
「ふん!もうお前とは話さないって決めたんだ!」
「そうよ!ベェー!!」
影は意気揚々と、美樹自身と同じ声、イントネーション、テンションで話しかけていたが、既に昨日の出来事があってか、広と郷子は関心を示す事なく、吐き捨てながら眼を背けていた。
だが、もうこれでハッキリした。今までの噂話は全て自分の仕業ではない事を。
「…!!!」
そう確信するや否や、美樹はマントを脱ぎ捨てて飛び出した。
「それは私じゃないわ!!!」
「「「「「!?」」」」」
美樹の声がその場に響くと、広達は驚愕し、何度も何度も美樹と影を見てしまう。
「え…美樹!?じゃ…じゃああの影は…」
「私の偽物よ!!」
そう言いながら美樹は怒りを露わにしながら皆の間を抜けてその影へと向けて歩いていく。
「ちょっとアンタ!!よくもやってくれたわね!?学年一の美少女の私を学年一の嫌われ者にして!!」
「「「「び…美少女…?」」」」
そんな中であった。
「待て!!ソイツから離れろ!!」
「うっさい!!」
遠方から突然と翔一郎が声を上げた。だが、怒りレベルがマックスである美樹はそんな言葉に耳を貸す事なく、ぐんぐん近づいていく。
すると
___大人しくいびられていれば…イイモのを…
美樹の声が少しずつ変わっていく。いや、声だけではない。影の菅田、形までも、何もかもが崩れると共に変形していく。その形はやがて美樹の影よりも大きく巨大で____歪な姿の____
______無数の目と5本の長い舌を持つ不気味な妖怪へと変貌した。
「きゃあああ!!!」
「よ…妖怪!?」
「デッヘッヘッヘ!俺は妖怪『影愚痴』だ!貴様のようなお喋りが大好きな奴に取り憑いて人の陰口を叩くのが大好きな妖怪よッ!!」
その姿に郷子が悲鳴をあげると共に克也が冷や汗を流す中、それを嘲笑うかのように現れた妖怪は高らかと笑い声を上げながら美樹へと眼を向ける。
「お前を孤独地獄に追い込んでやるつもりだったが…バレてしまえば仕方ないねぇ…1人残らず食ってやるッ!!!」
「「「「!?」」」」
そう言うと、影愚痴の長い5枚の舌が美樹へと向けられた。
「まずはお前からだぁあ!!!」
「ひ!?」
その言葉と共に5枚の舌がしなりながら一番至近距離に立っていた美樹へと向かっていった。
「きゃああああ!!!」
「美樹!!逃げて!!!」
郷子の声が届いたとしてももう遅い。その舌が巻きつこうと美樹へと迫っていく。
その時であった。
向かってくる舌が全て切断された。
「へ……ぎゃああああ!!!痛ぇええええ!!!舌がぁあ!!俺の舌がぁあ!!!」
「え…?」
舌を切断されたことで影愚痴が駆け巡ってくるその痛みに転げ回る。その一方で、美樹は勿論、皆も何が起こったのか理解出来なかった。伸ばされた舌が美樹へと届く前に全て切断され、切断された舌は全て消えていった。
「美樹!」
だが、今がチャンスであり、すぐさま駆けつけた郷子達が美樹を介抱する。
「大丈夫!?」
「う…うん……え?あれって…」
郷子に支えられる中、美樹は目の前に1人の人物が立っている事に気づき、それに続き皆もその人物へと眼を向けると、眼を大きく開いた。
「黒田…くん…?」
目の前に立っていたのは、先程まで後ろに立っていた翔一郎である。だが、雰囲気が全く変わってた。
「…」
その手にはいつもランドセルの中に閉まっているおもちゃの日本刀が握り締められていた。だが、今はそれはただのおもちゃではない。見れば刀身が太陽の光に照らされて金属特有の光沢を放っており、完全なる真剣であったのだ。
「遅いなぁ」
ブツブツと、言葉として全く聞こえない程の小さな声で喋っていながらも、その姿勢はまさに完全なる武士としての姿であり、無駄のない精錬された態勢で刀を構えていたのだ。
「ギィ…ギギィ…!?」
一方で、触手を全て切断された影愚痴は自身に向けられる殺気と不気味な風貌から冷や汗を流しながら無数の目を翔一郎へと向ける。
「だれ…誰だ…テメェは…!?」
「…」
一体何者なのか?自身をここまで震えさせる程のこの小僧は。ただの人の子ではない。全身から見える妖気自体が妖怪としての質も威力も何もかもが違うのだ。
だが、翔一郎は答えることなく、刀を握り締めると_______
________一閃
「「「「「!?」」」」」
一同は目を疑う。翔一郎が刀を握り締めたかと思えば消えた後に、妖怪の背後に現れて、刀を鞘へと戻していたのだ。
カチン
「ぎゃああああ!!!!!!!!」
鞘と刀が擦れ当たる音が響くと共に、妖怪の身体は無数の亀裂が走ると、巨大な断末魔を上げながら木っ端微塵に爆散っていった。
「あっけねぇなぁ あくびが出ちまったよ」