元E級のTS探索者は大金持ちになりたい   作:早乙女らいか

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第10話 どこまでも転がり続ける

「クソッ!! クソ、クソォオオオオオ!!」

「下野さん荒れてますねぇ……」

「最近のカナ民の扱いとか酷いしなぁ。凜華ちゃんにボコされたのも大きかったし」

 

 酒瓶を壁に投げつける。

 借りている大部屋だけどそんな事知ったことでは無い。

 

 最近、私の扱いが酷すぎる!!

 

 リスナーからはバカにするように煽られ、かつては女王様のように崇められていたのに今では女王様(笑)と完全にネタ枠として扱われる始末。

 オマケに実力までも下に見られてるし、私としては溜まったものではない!!

 

「葉道凛華め……アイツよ!! アイツが私を狂わせたのよ!!」

 

 ミラスタとのコラボで大躍進する予定だったのに、断られた挙句返り討ちにまで合って!!

 しかもその動画を全世界に晒されたのよ!?

 

『これはミラスターズとしての活動だ、隠すことではないだろう?』

 

 あっりえない!!

 サラッと動画を隠し撮りしやがって!!

 

 お前が負けたら絶対隠すつもりだったでしょ!?

 

 都合のいい事をするなんて許せない……!!

 

「はぁ……コメント見てもイライラするわねぇ……!!」

 

 最近のコメントなんて酷いものばかり

 

 〜コメント欄〜

・カナ様めっちゃイラついてて草

・今日も不憫で可愛い 

・強いとカナ様なのか疑うレベルだわ(笑)

・シンプルに雑魚

 

「ぁああああああああっ!!」

 

 なーにが雑魚だAランク舐めんな!!

 どいつもこいつも私を下に見て……!!

 

 最近はBランクのダンジョンを中心に活動しているから「本当にAランクなの?」って実力を疑われ始めている。

 AランクがAランクダンジョンを攻略できると勘違いしすぎでしょ!!

 

 Aランク以上は即死ギミックが多いから囮役を連れてこないと私でもきついし。

 

「行くよ」

「い、行くってどこに……」

 

 どうやら、ここで覚悟を決めた方がいいみたいだね。

 

「Aランクダンジョンだよ」

「「「っ!?」」」

 

 私の実力を証明してやる。

 画面越しにしか知らない本当の私で皆を分からせてやるんだから!!

 

 ◇◇◇

 

「こ、こんなヤベェとこ、宝物の欲地以来っすね……」

「何ビビってんだい、ちゃんと準備して来たんだから自信持ちな」

 

 見渡す限り白い霧に覆われており、視界はかなり悪い。

 油断するとはぐれそうだ。

 

 ここは”嘆きの洞穴” 

 推奨Aランクの高難易度ダンジョンだ。

 

 複雑に別れた地形と数多くの状態異常系のトラップ。

 そしてこの白い霧が多くの探索者を迷わせてきたという恐ろしい場所。

 

 カナフロンティアの底力を示すのにピッタリの場所だね。

 

(ここのモンスターはAランクダンジョンの中でも弱いハズ……私ならできる)

 

 配信という場において普段のように囮役を連れてダンジョンに潜るなんて許されない。

 バレたら本当に炎上して地位とか何もかもが落ちてしまうから。

 

 オフでは何度かこっそりやってたよ?

 けどオフでAランクダンジョンを攻略しても信じてくれないだろうし、配信で実力を証明するしかない。

 

〜コメント欄〜

・カナ様勇気あるなー

・痩せ我慢はやめた方がいいぞ

・逃げるなら今のうち

・GG

 

「私を臆病者だといいたいのかい? 舐めるんじゃないよ!!」

 

 今に見てな!!

 馬鹿にしていた自分の態度を後悔することになるんだから!! 

 

「下野さん、この辺はトラップが多いみたいです。解除しますね」

「あぁ、頼んだよ」

 

 視界に関しては固まって動きつつ定期的に呼び合えば問題ない。

 トラップもその手に詳しい役職の探索者がウチにいるから大丈夫。

 

 モンスターは……私達の実力なら何とかなるでしょ。

 

 万が一トラップに引っかかっても治療に必要な薬品類も持ち込んでいるし万全の体制だ。

 完璧とはこの事を言うんだね。

 

「よし、これで完了……っ!?」

 

 こんなダンジョン余裕で行ける。

 そう思っていた私達の元に脅威が襲いかかった。 

 

「うわあああああああっ!?」

「な、なんだこの蜘蛛の糸は!?」

「近くにモンスターの気配はないぞ!?」

 

 罠を解除していた仲間を蜘蛛の糸が拘束する。

 

 今のは一体!?

 気配も何も感じなかった。

 周りを見渡しても霧が濃くて何も見えないし、音だって目立つものは聞こえない。

 

 でも私達に蜘蛛の糸が発射された。

 

〜コメント欄〜

・これデーモンスパイダーじゃね?

・は? だとしたら終わりじゃん

・推奨Sだっけ、こんなとこ徘徊してるんだ

・逃げて!!超逃げて!!

 

 デーモンスパイダー?

 Sランク?

 

 悪い冗談はやめなさいよ!! 

 クソッ、こういう時こそ冷静にならないと行けないのに……!!

 

「あがっ……ごふっ……」

「お、おい!? どうしたんだ!?」

「ど、どくが……からだ……いだ……」

 

 糸で拘束された仲間の全身が紫色に染まっていく。

 まさか糸に触れただけで!?

 

 すぐに解毒剤を飲ませるもカナフロンティアの空気は重い。

 誰もが戦意を失いかけたその時、

 

「シュアアアアア……」

 

 ヤツは来た。

 

「な、なんだこのバカデカい蜘蛛は!?」

「一階層だぞ!? なんでボス級がいるんだよ!!」

 

 圧倒的な存在感と殺意。

 白い霧の中から突然姿を現したバカデカい蜘蛛のモンスターは私達を狙う。

 

 こいつがデーモンスパイダー!?

 少なくともAランクのオーラじゃないよ!!

 

 緊張で手足が小刻みに震えてしまう。

 

「う、うろたえるんじゃないよ!! 落ち着けば私らだって……!!」

 

 慌てて剣を向けるも、その動きすらデーモンスパイダーにとっては遅かったらしい。

 

「ぁあああああああああ!!」

 

 糸で拘束された仲間を一瞬の内に引っ張りあげる。

 そして、

 

「がっ……」

 

 グシャッ!! ゴシャァッ!!

 断末魔すら満足に聞けないまま、その仲間はデーモンスパイダーに喰われた。

 

「「「……」」」

 

 あまりにも瞬間すぎる光景。

 命が軽く失われていく姿にカナフロンティアの面々は、

 

「うわぁあああああああああ!!」

「に、にげろおおおおお!!」

 

 一斉に恐怖を味わった。

 

「ちょ、ちょっと!! アンタ達、勝手に逃げるんじゃないよ!!」

 

 恐ろしい存在を前にカナフロンティアの統率が崩れる。

 このまま尻尾巻いて逃げたら、またリスナー達から馬鹿にされるじゃないか!!

 

「”フレイム”!!」

「ひぃっ!? し、下野さん俺らに撃たないでくださいよぉ!!」

「逃げるなんて情けないね!! カナフロンティアならここで立ち向かって勝つものでしょう!?」

「無茶苦茶言わないでください!! 死にたいんですか!?」

 

 あぁもう!! どいつもこいつも情けない!!

 無理やり引き留めようと逃げる仲間に向けて魔法を放つも、一向に収まる気配がない。

 

 こんな時こそ一緒になって戦うべきなのに!!

 

 イライラする私、

 逃げ惑う仲間達。

 

 バラバラになった人間というのはモンスターにとって最高のエサでしかない。

 

「下野さん!!」

「へ?」

 

 だからデーモンスパイダーの攻撃をあっさり見過ごしてしまう。

 ゴキィ!!

 

「あっ……が、はっ……」

 

 今、何が起きた?

 鞭のような糸で殴られた?

 

 ただそれだけなのに、身体が動かない。

 視界もぼやけている。

 

 まさか私……死ぬの?

 

「シュウウウウ……」

 

「ひっ!!」

 

 やだ、嫌だ!!

 こんなとこで死にたくない!!

 

 私はAランク探索者なんだ!!

 絶対に生きて、絶対にこのダンジョンを攻略するって……

 

 プシュー!!

 

「匂い付き煙幕が出た!!」

「よし!! 下野さんを連れて逃げるぞ!!」

 

 情けない。

 なんでこんなヤツに。

 Aランクダンジョンの一階層で逃げかえるなんて……

 

(ちくしょう……!!)

 

 仲間に抱えられながら、私は心の中でイライラし続けた。

 

 ◇◇◇

 

「怜、そういえばデーモンスパイダーは大丈夫だった?」

 

 ダンジョン内を飛んでいる時、マリーに話しかけられた。

 

「デーモン……? まさかでっかい蜘蛛の事か?」

「そう。糸や体に触れただけで状態異常になるから」

「マジかよ!? あ、でも俺は”破竜強化”で状態異常にならないんだった」

 

 そんな恐ろしい能力があったとは。

 ブラッドカオスドラゴンよりも先に喧嘩を売ってたら死んでたかもな。

 

 しっかし”破竜強化”のスキル説明文で雑に書かれていた”状態異常無効”がこんな所で役に立つとは。

 ドラゴン様様だな。

 

「だから倒せたのか……」

「倒したの? やっぱり怜は凄いね。」

「凄いのはブラッドカオスドラゴンの力だけどな」

 

 とんでもない力を得たけど、その力を与えた意味についてはわからない。

 ブラッドカオスドラゴン……お前の目的は何なんだ?

 ヤツの不可解な行動について考えていると、やがて上空が明るくなっていく。

 

「もうすぐかも」

 

 地上が近いらしい。

 こんな一瞬で帰れるとは思わなかった……マリーって本当に凄いな。

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